平安夢柔話

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大河ドラマ「義経」第25回&巴御前のその後

2005-06-29 17:52:29 | 2005年大河ドラマ「義経」
 大河ドラマ「義経」第25回の感想です。

 義経がいよいよ公式に都入りしましたね。そして、後白河法皇ともご対面。
今後、義経の運命を大きく変えることとなる法皇さまですが、二人の対面はなかなかドラマチックに描かれていて良かったです。ただ、史実では義経が法皇さまを救い出すなんてことはあり得なかったと思うのですが…。義仲は都を逃げ出すのに精一杯で、法皇を閉じ込めるなんていう小細工をやっている暇はなかったと思います。まあこれも、ドラマを面白くさせる演出なのでしょうね。
 「都育ちだけあって、義経は義仲と違って品がある。」と法皇は言っていましたけれど、そう言っている裏できっと策略を巡らせているのでしょうね。ちょっと怖いですけれど、この法皇さま、なぜか憎めないのです。

 さて、宇治川の合戦ですけれど…。だんなさんも言っていたのですが、宇治川にしては川の幅も狭いし、流れもそれほど急でないような気がするし…。宇治川ではもちろんロケはできないのでしょうから仕方がないと言えば仕方がないのかもしれませんが、それならそれでNHKお得意のCGを使うとかできなかったのでしょうか?
 それから、宇治川の先陣争いが描かれなかったのはやっぱり残念でした。梶原景季と佐々木高綱の駆け引きはとても面白いのに…。もっともこの二人の先陣争いは、高綱が名馬「池月」を頼朝から拝領できた時点で、九割方勝負がついていたかもしれません。名馬を使えば、急流の川も素早く渡れますものね。それと、やはり二人の性格の違いも大きかったと思います。。高綱が策略家であるのに対し、景季はあまりにも一本気で正直すぎるように思えます。
 それはともかく、宇治川の先陣争いは義経と直接関係がないので百歩譲ってカットされても仕方がないかもしれませんが、「平家物語」にも記述がある、義経と畠山重忠が戦略について相談している部分はカットしてほしくなかったです。何しろこの合戦は義経のデビュー戦なのですから、もうちょっと細かく描いて欲しかったです。
 ところで、ドラマの中の重忠さん、かなり年配に見えますけれど、「平家物語」によると宇治川合戦当時の年齢は22歳だったそうです。製作スタッフの皆様はこのことをご存知なのでしょうか?もっとも、14・5歳の少女の政子を、中年の熟女のような雰囲気を醸し出して、財前直見さんに演技させているのですから、重忠の年齢の奇妙な点程度のことは言っても仕方ないのでしょうね?!

 さて、今回の見どころはやはり義仲だったと思います。前回の放送では、法住寺合戦に勝利して大得意になっている義仲が描かれていましたが、今回の放送の最初の方ではすでに追いつめられていましたよね。私にはあまりの展開の速さが、ちょっと唐突にも思えましたが。
 義仲は法住寺合戦に勝利したあと、平家との和睦を模索したり、後白河法皇を北陸に連れ出そうと計画していたりしていたようです。しかし、これらの計画が進まないうちに、鎌倉の大軍が上洛してきたのでした。
 しかも、行家が反旗をひるがえしたため、義仲はますます孤立状態になってしまったのです。義仲を見限って去っていった兵も少なくありません。
そのようなわけで、義仲対鎌倉軍の戦の勝敗は決まっていたようなものでした。

 さて、そんな義仲の最後のシーンですが、義仲が敵に討たれ、最後まで付き従っていた今井四郎兼平がその後を追って刀を銜えての壮絶な自刃をとげ、画面いっぱいが夕焼けになったという演出はなかなか良かったと思います。
 でも欲を言うと、今井四郎兼平をもう少し目立たせて欲しかったです。彼は義仲の乳母子であり、最も親しい友人でもありました。「鎧が重い。」という義仲をいさめたりもしています。義仲と兼平の友情をもう少ししっかり描いた方が、二人の壮絶な最後がもっと感動的になったと思うのですが…。
 それから兼平は自刃する直前に、「東国の者ども、日本一の剛の者が自刃する手本を見せてくれるわ!!」と叫ぶのですが、ドラマでは当然のように、このせりふがカットされていましたよね。やっぱり兼平のこのせりふがなかったら、あの場面の感動は半減してしまうような気がしますが…。兼平をしっかり描くことが、義仲を引き立てることだと思うのですよね。
今回の義仲はなかなか個性的でしかも格好良くて、私個人としてはかなり好きだっただけにその点がとても残念でした。

 さて、義仲とどんなときにでも行動を共にしていた巴御前ですが、「ソナタは落ち延びよ。」という義仲の言葉に従って泣く泣く戦場を離れていきました。今回の「義経」で描かれていた巴は、武将としての勇ましさと同時に、義高のことを心配する女性らしい部分も描かれていて良かったと思います。
 では今回は、巴御前の簡単な略歴と、義仲と別れてからのその後のことについてを書かせていただきたいと思います。

 巴御前 (生没年不詳。一説に1157~1247年という説もあるようですが、確証はありません)

 信濃の豪族中原兼遠の娘で、樋口次郎兼光や今井四郎兼平の妹に当たります。
 巴はいつ頃のことかはっきりしませんが、源義仲の妾になったようです。
なお、義仲の正妻は巴の姉または樋口次郎兼光の娘だったとも言われています。もし姉が義仲の妻だとしたら、巴は姉と一緒に義仲の妻になったとも考えられますし、樋口次郎兼光の娘が妻だとしたら、彼女はその娘が成人するまでの身代わりのような存在だったのかもしれませんね。いずれにしてもはっきりしたことはわからないようです。今回のドラマでは、樋口次郎兼光の娘という説を採用していたようですが…。

 さて、義仲が平家討伐の兵を挙げると、巴も義仲に従って戦場に出て数々の武功を挙げたと考えられます。寿永二年に義仲と共に入京。「平家物語」によると巴は「色白く髪長く、容顔まことに優れたり。」と記述されています。美しさと強さを兼ね備えた女性だったのでしょうね。

 では、義仲と粟津で別れた巴はその後どうなったのでしょうか?

 これがどうやら色々な説があるようなのです。
泣く泣く戦場を落ち延びて故郷の信濃に帰ったという説、越後国の友松という所で尼になったという説……。今回の放送のエンディングで紹介されていた琵琶湖畔に尼となって住み、義仲の菩提を弔っていたという説もその一つです。

 ちょっと代わった説は、「源平盛衰記」に記述されている「巴は鎌倉の御家人、和田義盛の妻になり、彼との間に朝比奈義秀を産んだ。」という説でしょうか。

 巴が鎌倉にやってきたのはこんな経緯があるようなのです。
 これは次回の放送で取り上げられると思いますが、頼朝の許に人質として送られてきていた義高(義仲の子)は、義仲の死と共に頼朝の命令で殺害されてしまいます。頼朝は、「義高を生かしておいたら長じたときに自分に仇を成す。」と考えたのでしょう。
 しかし、義高を恋い慕っていた頼朝の娘、大姫にとっては、義高が殺されたことは大きなショックだったのでしょう。大姫は飲食を絶ち、ついに寝込んでしまいます。
また何にも興味を示さなくなり、誰とも口を利かず、気鬱のようになっていったようです。これには頼朝夫妻も驚き、何とか大姫の機嫌を直そうとあらゆる手段を使います。義高を殺害した男を斬ってしまったのもその一例ですが、どのようにしても大姫の機嫌を直すことはできなかったようです。
 そのようなこともあり、頼朝夫妻は義仲の一族には必要以上に気を使わざるを得なくなったわけなのです。美濃国に住んでいた義仲の妹の宮菊を鎌倉に召し出し、政子が猶子にして大切にあつかったのもその一例です。
 そして信濃で隠棲していた巴もまた、鎌倉に召し出されたようなのです。しかし「巴は宮菊のようにおとなしく政子の猶子になる……。」というわけには行かなかったようです。
 そんな巴を見て、「このような強い女性なら、きっと立派な子供を産んでくれるに違いない。」と思って彼女を妻にしたのが、御家人の和田義盛でした。やがて巴は義盛との間に朝比奈義秀を産むことになります。
 建暦三年=建保元年(1213)、義盛は北条氏に反旗をひるがえして兵を挙げました。いわゆる「和田合戦」です。その結果義盛も義秀も戦死してしまいます。巴は越中に逃れ、そこで尼になって91歳まで生きていたと言われています。
最後にはかなり零落していたようです。

 しかしこの話は年齢的に無理があるのだそうです。
朝比奈義秀は戦死したとき38歳だったのだそうです。そうなると彼の生年は安元二年(1176)ということになります。安元二年というと、巴はまだ信濃で義仲や中原一族の人たちと暮らしていた時期ですから、これは計算が合いません。おそらく義仲の通称である旭将軍の「旭(あさひ)」と、朝比奈義秀の「朝比(あさひ)」をかけた後世の人たちの創作なのではないかと思われます。また、若い頃才能を発揮したり名声を上げた女性たちが最後には零落するという話も、よくあるパターンの伝説のような気がします。巴を巡るこのような伝説も、おそらく後世の人たちの創作でしょうね。

 巴が鎌倉に召し出されたのは事実なのかもしれませんが、私には和田義盛の妻になったかどうかはちょっと疑問に思えます。おそらく巴は建久年間(1190年代)には出家し、義仲や中原一族の人たちの菩提を弔いつつ生涯を終わったのではないかと思います。その方が、巴らしい生き方のような気がするのですが…。念のため、これはあくまでも私の考えなので確証はありません。巴の後半生は謎に包まれており、はっきりしたことは全くわからないというのが事実だと思います。

 さて来週は、上記にも書いたように義高の悲劇が描かれるようですね。義高も大姫もかわいすぎるだけに、涙なしでは観られないかもしれません。
 そして静が再登場のようですね。さらに一ノ谷合戦を前にした義経がどう描かれるか楽しみです。いつまでも清盛を慕ったり、「人類皆兄弟」と思われるような甘い言動はやめて、源氏の武将として、そろそろ平家を討つ覚悟を決めて欲しいものです。