それは。あっという間だった。
1分もかかっていないのでは、と思えた。
我が家は昼間、余り空調機を使わない。
今日も窓を全開し、自然の風を満喫していた。
丁度ベランダに向かって立っていた時
突然目の前に黒い物体が飛んできた。
ヒヨドリだ。
すぐそのまま入ってきたところから出ると思ったが、
蝶や蜂とは違って身体が大きすぎて、
部屋の中でUターンができなかった。
一気に台所に向かったが、
残念ながら台所の窓は閉まっていた。
私は思い出した。
小学2年の夏休み、
我が家の便所は肥溜め式
臭気を抜くための煙突が付いていたが、
そこに雀が巣を作ってしまった。
ある朝私がしゃがんでいると
下の方からバサバサ音がする。
その頃妖怪物が流行っていて
私はその音に、
下から手が伸びてくるのかと想像したものだから、
下から黒い影が飛び出してきたときは
驚いてひっくりかえってしまった。
それは雀だった。
親父が巣を取り除いてしまったので、有ると思って飛び込んだ雀は、
そのままクソツボに落ちてしまったようだ。
台所に行くと
ヒヨドリは窓から逃げようと必死に羽ばたいている。
私は腕を伸ばして鍵を外す。
その時ヒヨドリは私の方に振りかえったが、
必死に逃げようとする恐怖の目つきではなく
”早く開けてよ”
と媚びるような目つきだった。
メスだったのだろうか。
窓を開けると、一散に飛んで行ったが、
もう1羽が待っていた。
つがいだったようだ。
立つ鳥跡を濁さず
何て言うけれど、
後を見るとしっかり糞をしていて、
後を汚していた・・・・