江戸糸あやつり人形

江戸時代から伝わる日本独自の糸あやつり人形。その魅力を広めるためブログを通して活動などを報告します。

劇場

2016-07-14 10:40:43 | 日記



出発前に会場の写真を確認したところ、
舞台の広さや照明設備などが確認でき、
荷物になるが、オリジナルの幕を持っていくことを決めた。

上陸初日に会場を下見し、愕然とした。
会場のスポーツ文化会館は、昨年の12月にできたばかりで、
照明は全部LEDライト、卓も立派なものが入っているのだが、
会場の担当者は、コントロールできないと言う。
説明書を首っ引きで読んだが、どこをどういじっても
今の状況から変化させることはできなかったと言う。

客席の上についているシーリングライトや、壁面のフロントは
全く点灯しない。
舞台上にはサスペンションライトや作業灯など様々ぶら下がっているが、
点灯するか消すかのいずれしかできず、
点灯すると各灯体がそれぞれ勝手にいろんな色に変化するようになり、
にぎやかというか、目がおかしくなりそうだというか・・・

調光卓を見たが、自分の持っている小さな調光卓ですらうまく使えないので
直しようが無くお手上げ。
そこにフォローライトがあったので点けてもらったが、
光量が弱い。
舞台上の明かりは、結局客席の蛍光灯の明かりを頼りにするしかない。
かといってまったく明りに変化をつけないと
舞台が白っぽい平板なものになるので少し工夫した。
最初は舞台上を点けずに、半分にした客席明かりとフォローを点け、
「黒髪」の時は客席を消してフォローのみにし、
最後の「獅子舞」の時はにぎやかに最初に戻したうえ舞台上も点けた。

しかも「黒髪」の最後に、絞りをだんだん小さくしていって、暗転
なんて演出を付け、担当者にリハーサルをしようかと尋ねると
「大丈夫だ」と親指を立てた。

さて本番、
客席数を確認しなかったが、250人くらいであろうか。
その8割がた入ったであろうか、ちょっと見た目にはほぼ満席に見える。
北対協(北方領土問題対策協会)の人も、こんなに入ったのは珍しい
と驚いていた。
会場のある紗那地区だけでなく、
近隣の村からバスを仕立てて駆け付けた所もあったそうだ。

「黒髪」の最後、
結局何の変化もなかった。
予想通りと心得済み。

択捉の新聞が通訳の人から送られてきた。
「日程の二日目が良かった。恒例の日本の伝統文化紹介では
江戸糸あやつり人形の公演があった。クリリスク(紗那)だけでなく、
他の村からも人々が集まり、食い入るように観劇し楽しんでいた。
大きな拍手が会場を包んだ」

文化担当のナターリア女史も、私の左手をずっと握りながら
いろんな褒め言葉をかけてくれた。
そして別れ際に、ハグ。


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哀悼 永六輔

2016-07-12 22:17:06 | 日記
立て続けに時代を築いた方々が亡くなられている。

永さんにお会いしたのはただの一度、
しかも私は小屋付の舞監という立場で、
彼のイベントを補佐しただけだったが、
その後の私のイベントでの出方などに影響を受けたのだった。

開場時間前に数十人もの観客が列をなして待っていて、
予定より10分早く開場した。

そして予定の開場時間になると、永さんは舞台に立って話し始めた。
「皆さんは開場前にいらっしゃって並び、こうして待っていらっしゃいます。
にもかかわらず出演者の私たちが楽屋でのんびりと、時に大笑いしながら
過ごしているのは失礼だと思うんです」
そんな内容を言った後
ぴたりと5分ずつ、本番のテーマとは全く関係ない話題を
しかも皆が関心を寄せているそれを話し始めた。
ぴたりと5分
これがすごい、
ラジオでずっと話し続けているから、
身体の中で5分という時間が取れるようになっているのだろう。

そして観客に対する心遣い。

それからの私は、大道芸のイベントで私たちの出を待っているのがわかると
そしてそのイベントで許されるのなら
私は番外編だと言って
小話を掛けるようにしている。

永さんとは関係なく、永さんが可愛がっている芸人さんたちと
楽屋が一緒になったことがあった。
一人が「最近の永さんは自分に冷たい」といったようなことを相談していた。
確かに「永さんは芸人をすっぱり切り捨てる冷たい人だよ」
と聞いたことがあった。
でも今思うと、
子飼いにしていつまでも可愛がっていればよいと言うことではなく
親離れのように、一度突き放した方がその芸人は伸びる、
と思ったかもしれないと考えるようになった。

存命中に尺貫法が復活されなかったのは、さぞや残念だったろう。
メートル法を禁止せよと言っているのではない、
禁止されている尺貫法を、改めて生かしてほしいのだ。
改憲派は必ず”日本の伝統”を口にするが、
ならば尺貫法をまずは復活するべきだろう。
尺貫法自体を知らずに”日本の伝統”なんて、口にして欲しくないのだ。

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たかが椅子ひとつ

2016-07-09 18:08:56 | 日記


失敗した。
写真を撮りながら、上手くは撮れないだろうと思っていた。
ところが、写した写真を確認する時間が、全くなかった。
何せ団体行動が基本で、次へみんなが移動していたからだ。

上陸初日の最初は、私たちだけ別行動をとって
会場の舞台を下見させてもらっていた。
終わってみなと合流したところが、学校。
写真の会場で生徒が、択捉島についてプレゼンテーションをしていた。
もちろん正面のスクリーンを使って、スライドを見せていたのだが、
後ろから2番目に座った私は、スライドが見易いことに気付いた。
床は平、私の前には私より体の大きな人も座っている、
さて、なぜだろう、
こうなると、話の内容は聞こえてこない。
いつの間にか話は終わり全員が会場から出た時、初めて気付いた。
椅子が微妙にずらしてあるのだ。
計算して置かれてあるのだろう、
ずれないようにと、ベンチにして固定しているのだろうか。
観る側に立った細やかな配慮。
文化を尊重するロシアならではの事例。
文化大国ロシア。
それに引き換え、文化貧国日本。
見る側を意識した劇場がどこにあるだろうか。
無いとは言わないが、本当に少ない。

”えとぴりか”の食堂で一人コーヒーを飲んだいたら、
船員が声を掛けてきた。
食堂に100人は入りますと自慢げに言われたけれど、
こんなの俺にでも設計できるよ
何せ釜やポットを置くところが無い、
食器を置くところが無いんだよ、
テーブルを潰して置くしかないだろう、
使い勝手なんか何にも考えていないんだよ。

文化貧国日本
これは政治にも言えるのだ。
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はしけ

2016-07-09 00:39:34 | 日記
国後島で入域審査を受ける前、館内に放送が流れた。
「これから入域審査官がやってきます。一切の写真撮影を禁止します」
緊張感が走る。
皆が呼ばれる。
申請書類と顔を確認するためだ。
初めて横付けされた船を見る。

ん?

機関砲を搭載した警備艇を想像していたが、
荷物を運ぶように作られた船、
それがはしけだと、後になって分かった。



択捉のはしけは、国後のはしけとは違うと、勝手に思い込んでいた。
乗り込んでびっくり、
同じ船員たちだった。
国後から我々の船を追いかけるようにやってきていたのだ。

彼らは審査をしている小1時間ほどの間に
何とカレイを10尾ほども吊り上げていた。
巧みにどんどん吊り上げる姿に、我々は感嘆の声を挙げていた。
と同時に、海の豊かさを実感した。



初日は快晴、思い思いに甲板に立ち、これからに思いをはせる。
ブリッジに「根室造船所」とプレートが貼られていた。

二日目は午後から大荒れになるとの予報。
朝から結構雨風が強い。
我々は船室に入ったのだが、
天井の低い狭い1室に60人が入ったものだから、人いきれで蒸し暑く
収容所に連れて行かれる時はもっとひどいのだろうなと想像していた。
言葉にしそうになったが、冗談の言える雰囲気ではなかった。



波が高くなるとはしけが使えなくなるので、
場合によっては公演を中止してでも引き上げると、前夜に言われていた。
しかし、波が高い方がよく釣れるようで、
船の上は大漁だった。



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択捉島

2016-07-07 22:53:30 | 日記


択捉島は日本と時差がもともと1時間ある。
しかも今はサマータイムということもあって、2時間もの時間差。
ところが我々の行動は、北方領土は日本だからという理由で、
日本時間で指示される。
朝食は5時(択捉は7時)、だから4時過ぎには起床しなければならない。
こんな時間に起きたことが無かったので、ちょっと面喰ってしまった。

宿泊は港内に停泊した船、
そこからはしけに移って、桟橋に向かう。
初日は穏やかに晴れ渡って、すがすがしい朝だった。

根室を出港してから国後で入域審査を受けたのだが、
ずうっと霧が立ち込め、
幻想的ですらある。
択捉には空港があるのだが、
濃霧で離発着できない日が何日もあると言う。
冬は流氷に閉ざされるとか。
北の自然の厳しさを知る。

山は南チリップ山か、7月だと言うのにしっかり雪が残っていた。
この日の最高気温は20度、
30度まで上がる日もあると言うが、
朝晩は結構寒かった。




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