マーちゃんの数独日記

かっては数独解説。今はつれづれに旅行記や日常雑記など。

『「これから」の時代(とき)を生きる君たちへ』を読んで

2020年07月08日 | 読書

 イタリア・ミラノで新型コロナウイルスの感染が拡大し始め、休校指示が出されたとき。アレッサンドロ・ヴォルタ高校の校長先生が、突然休校となった生徒たちに、「どのように考え、どう過ごせばよいか」を伝えた手紙をホームページに掲載しました。イタリアの古典的名作をモチーフにしながら、休校中の過ごし方を伝えたのです。このメッセージは日本にも伝わり、これを読み、感動した人々の手を経て本書は作られ、私も読みました。

 そこには、高校の校長先生から自分の高校の生徒へ向けて、是非伝えておきたいことが綴られているのですが、その文章は生徒たちだけなく、大人へのアドバイスにもなっていて、私の心にも伝わって来るものがありました。

 手紙はこう始まります。“アレマン人(注1)がペストを連れて、ミラノに侵入してくるのではないか、という保健省の恐れが本当になった。感染が広がり、イタリアの大部分で犠牲者が出た・・・”。これは、アレッサンドロ・マンゾーニの小説『いいなずけ』(注2)31章の冒頭部分で、1630年、ミラノで流行したペストによって街が打撃を受けた様子が綴られていて、校長先生は、混乱のさなかにあるいまこそ、この本をじっくりと読むことをすすめています。

 外国人やよそ者を危険だと思い込む、役所同士が激しく対立する、最初の感染者、いわゆる“ゼロ号患者”を突き止めようと躍起になる、専門家の意見を軽視する。さらにウイルスを広めた人たちの追跡、制御のきかない噂話やデマ、根拠のない治療、生活必需品の奪い合い、そうする間に危険にさらされていく人々の健康・・・、これらの様子が描かれている、そうです。
 そして校長先生は次のように伝えたいたことを挙げます。
 《冷静さを保ち、群集心理に惑わされないでください。
 必要な予防策をとって、いつも通りの生活を続けてください。
 休校中の時間を利用して、散歩したり、良書を読んでください。
 元気なら、ずっと家に閉じこもっている理由はありません。
 スーパーや薬局に駆け込む理由もありません。
 マスクは、体調が悪く、必要としている人たちに残しておいてください》
 最後に校長先生はこう締めくくりました。
 《・・・しかし。14世紀や17世紀に伝染病が蔓延した時代よりも、現代医学はかなり進歩しています。私達の貴重な財産ー社会組織や人間性を守るには、理性的な思考を持ってください。もしそれができなければ、本当に“ペスト”が勝利するでしょう。学校で皆さんに会えることを、心待ちにしています》

 校長先生の生徒への温かい思いが伝わってきます。何よりも大切にされなければならない子ども・児童・生徒たち。日本でも、多くの学校で先生方は同じような思いを抱き、新しく始まる諸々の準備をしていたことでしょう。漸く、日本でも学校が再開され本当に良かったと思います。しかし、同じことが繰り返されないとは限りません。万一の時のためにもこころに仕舞っておきたいメッセージです。

 注1 ドイツ南西部に侵入し、ローマ人を追い出して支配したゲルマン系の民族。
 注2 翻訳があり図書館に予約した。

 


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