6月22日(水)の午後、東池袋にある劇場「あうるすぽっと」へ、「NOISES OFF」を観に出掛けました。お目当ては千葉哲也と佐藤オリエ。芝居の内容より、昔馴染みの俳優。又また懐古趣味です。(といつたら千葉哲也に失礼かも)
佐藤オリエは、1960年代に一世を風靡したテレビドラマや映画「若者たち」で、5人きょうだいの長女オリエを演じました。最近の朝日新聞に登場し「最近、演技が上手くなったように思う」と語っていました。一方、千葉哲也は、下北沢の「すずなり」や「本多劇場」に良く出掛けていった頃の、私たちにとってのスター。演劇企画集団「ガジラ」の中心的俳優で、個性ホトバシル演技力に魅せられました。今は舞台演出も勤め、好評を博しているようです。この二人の久し振りの舞台。期待を裏切られませんでした。
出し物は”壮大な”ドタバタ劇です。
「NOISES OFF」誕生のきっかけは、作者マイケル・フレインが、自身の書いた別の喜劇を舞台袖から見ていた際、前(客席)から観るより、後ろ(舞台裏)から観た方が面白く感じたことからでした。「NOISES ON」という芝居を上演する、とあるカンパニーの舞台稽古から千秋楽までを描いた、劇中劇なのです。
第1幕目は、開演を翌日に控えたリハーサル場面。舞台稽古の最中です。舞台には、壁伝いに8個のドアや窓がセットされ、このドアから、まずは家政婦役の佐藤オリエが颯爽と現れます。その後、次々と袖から登場する俳優たちは、いずれもドアから後ろの舞台裏に消え、舞台裏からドアを通じて再登場。これを何度も何度も繰り返します。時々、俳優の演技の酷さに呆れ果てた監督役千葉哲也が客席側から登場します。兎も角ドアが一番重要な舞台装置です。
第2幕目のその1は、舞台裏です。その舞台裏のセットで、ドアは、当然ながら1幕目とは線対象に配置されています。次第に明らかになる”ぐじゃぐじゃな”人間関係。要するに役者間の愛憎物語。それが絡み、演技に大きく影響し”ぐじゃぐじゃ”になる舞台。それを舞台裏のドタバタ劇を通して表現します。この強烈なドタバタ劇を、見事に演じきる俳優たちの”目にも止まらぬ”素早い動きが凄い。
第2幕目のその2は、千秋楽の表舞台です。私たち「アウルスポット」の観客は劇「NOISES OFF」を観ているわけですが、劇中劇「NOISES ON」の観客にもなっているという複雑ながら私の好きな構造。ドタバタ劇はより混乱を増しながら幕となります。
千葉哲也ならではの”剛速球”の演出。ボールはストライクゾーンに入ったと思います。若い俳優たちに混じっての68歳佐藤オリエ、体力もまだまだ十分と見ました。藤木孝が泥棒役で、”なよなよ”とした絶妙な演技を見せてくれます。