今回の福島第一原発事故の原因が津波か地震か、それが重大な問題を孕んでいることは素人目にも明らかです。津波が原因となれば、その言の正否はさておき「想定外であった」と言い訳することが可能です。事故原因が地震であったとすると、政府、東電、原子力委員会、原子力安全・保安院などその責任がより厳しく追及されて然るべきのみならず、現在日本に存在する54基の原子炉の安全基準の見直しだけでなく、今後の原子炉の存在の可否が当然に問われねばならないでしょう。
かってパブコック日立で福島第一原発4号機の原子炉圧力容器設計に携わった事があり、現在サイエンスライターの田中三彦は、「世界」5月号の中で次の様に書きました。
一般人が、地震直後、1号機においてどんな事態の推移があったかを知るには「3・27事故報告書」しかないが、現時点で、最も重要な3月11日のデータが開示されていないので、推測ではあるがと断り
『開示されたデータは、3月11日には、技術的見地からは起こるとは考えられない「冷却材喪失事故」が起きたことを強く示している』と書いています。冷却材つまり水です。その水が流出したというのです。
冷却材が失われた原因として
①津波が原因ではない。
②地震や津波による電源喪失が原因ではない
③地震による配管破損が原因である
と推測したのです。
ここでは省略しますが、その先の議論のために、彼は図入りで原発の仕組みを簡単に確認した上で、次の様な事故連鎖を説明しました。
地震により(再循環配管等の)配管の破損→原子炉内の圧力の降下と冷却水大量噴出による水位の低下→燃料棒の4割が露出→大量の水素の発生→大規模な水素爆発
この様な推論に対して原子力安全・保安院の審議官からの反論もあり、それなりに面白いのですが、いずれ書くべき機会に譲ります。兎も角、3月11日の全データーを開示し、そのうえで、事故がどの様な連鎖を経て最終的に水素爆発が起こり、メルトダウンが起こったのか、その任に当たる機関は、真実を国民の前に明らかにして欲しいものです。