かっこうのつれづれ

麗夢同盟橿原支部の日記。日々の雑事や思いを並べる極私的テキスト

夏祭りに思う、コミケの行く末

2009-08-02 21:48:57 | Weblog
 今日は我が町内の夏祭り。町が誕生して40周年。いわゆるベッドタウンの一つとして高度経済成長期に片田舎の山を切り開いて作られた町ですが、ご多分に漏れず町内の高齢化が進み、私が始めてこの町に引っ越してきた当初に比べると、空き家売り家がやたら目立つようになって来ました。それでもまだまだお年寄りたちは意気軒昂で、自治会の力は並ならず、一自治会の主催する祭りとしては異例の規模で毎年この時期に2日間開催され、2日目の今日は21時から恒例の打ち上げ花火が行われました。花火と言うとここ数年は景気後退の影響もあってあちこちの祭りで中止される例が相次いでいますが、ここの自治会は余程花火が好きなのかして、自治会費はこの花火のために集めていると言っても過言ではないほど、会計の過半を傾けて、維持してきました。更に今年は創立40周年とあって自治会もずいぶんと奮発したようで、20分以上に渡って色とりどりな光の花で夜空を焦がし、腹に響くような炸裂音を町内にこだまさせてました。

 数年前までは、この夏祭りが終わるといよいよ私達の夏祭り、と言う感じで夏コミの準備に拍車がかかり、PCの熱暴走におびえつつ、もう全身汗だくで新作同人誌の印刷と製本に邁進し、心身ともに「夏」を満喫していたものですが、そういう熱さと暑さはここ数年経験しておりません。それはそれで寂しい気もしますが、さすがにもう改めて参加しようと言う意欲はわきません。「夏」は気力に加えて相当な体力を要求しますので、体がもう付いていかないのです。よくよく考えてみると、何故「夏」とか「冬」とか、季節的に厳しいときに開催するんでしょうね。それもお盆とか年末とか、ちょっと動きづらい時期に。これが「春」とか「秋」のような気候のよい時なら、また参加もしやすいように思うのですが。
 まあまだ夏が始まらないうちから言うのも何なんですが、この冬は無事開催できるのでしょうか。これまでは一部の過激な18禁同人誌に対する規制が問題でしたけど、今年に限っては、新型インフルエンザで都や国からイベント中止勧告や命令が出たりするんじゃなかろうか、と気になっています。

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10 巨大怪獣 その2

2009-08-02 12:58:34 | 麗夢小説『向日葵の姉妹達』
 ついさっきまで見事な花火が、ちょうど大阪城の背景をなすようにして空を染めていた。やや距離があるためか、あるいはこのビルの防音が完璧なためか、榊の耳に花火独特の爆発音は一切届かない。ただ色とりどりの火炎の華が、広がっては消えていく光景が見えるばかりである。
 榊は申し訳ないと思いつつも、その一種幻想的な光景に目が向いていた。
 大阪ビジネスパークの一角にそびえ立つビルの一室。
 一時は行方不明になった麗夢達の足取りを探るため、東大阪市にまで出向いた榊だったが、その後、鬼童にヴィクターから連絡が入り、その件についてはあっさり片が付いてしまった。榊としてはそのまま京都に戻る手もあったのだが、麗夢の無事やシェリーの所在を確かめてからでも良かろうと、誘われるままここまで付いて来たのだ。
 ところが事態は思ったよりも複雑に絡んで、榊の足を止めた。
 まず真野昇造と名乗る老人の話を聞き、その孫娘にしてクローン人間(!)の佐緒里の事を知って驚きつつも安堵した束の間、その佐緒里の夢に入っている麗夢の様子がおかしいと、アルファ、ベータが言い出した。ただ調査に赴いたにしては、麗夢の気が異常に高ぶっていると言うのだ。そのことに不安を抱くやいなや、今度は麗夢がピンチだという第二報が榊の脳髄を貫いた。テレパシーとは便利なものだと感心する間もなく、二匹が相次いで麗夢の傍らで眠りにつく。結局榊は、麗夢達が目覚めるまで、待機することにしたのである。
「天神さんのお祭りですな。花火も年々派手になって、今年は四千発上げるそうですわ」
 いつの間にか傍らに真野昇造が歩み寄っていた。鬼童とヴィクターはやや離れたところで、高度な専門用語を駆使して何やら議論を戦わせている。真野氏としては、比較的暇を持て余しているように見える榊の相手をしようと腰を上げたのであろう。
 花火は既にクライマックスの連発を終わろうとしていた。おもむろに時計を見ると既に10時近い。
「真野さん、貴方心配ではないのですか? 佐緒里さんの夢の中では、どうやらただならぬ事態が生じているみたいですぞ」
「とはいえ、儂には何もしてやれることはない。黙って麗夢さんを信じるばかりです。貴方もそうですやろ?」
 そう言われては榊も返す言葉がなかった。仕方なくまた窓の外を眺めてみたが、花火はさっきのが最後の一発だったらしく、もう見えることはなかった。
「もう一人の佐緒里さんを迎えに行かなくても良いのですか?」
「そうですなぁ。祭も終わったし、ぼちぼち帰って来い言わなあきませんな」
 そう口では言いながら、真野はなかなか動こうとはしなかった。恐らく一緒にいるという円光を信頼しているのだろう。榊もそれは承知しているので、それ以上真野をせかそうとはしなかった。
「しかし、もしこれで佐緒里さんの心がやはり人間のそれとは違うと判定されたら、どうなさるおつもりなんです」
「うむ、儂はそんなことはないと信じてますけど、万一の時はやり直さなしゃあないでしょうな」
「で、佐緒里さんはどうするんです?」
「今までと一緒です。データ取って処分します」
 あっさり言い放った真野の言葉に、榊はちょっと驚いた。いくら何でもそれはないのではなかろうか?
「随分冷酷におっしゃりますな。仮にも貴方が生み出した命でしょう?」
「そうはゆうても、人の形をした人でないもんを、世間は受け容れてくれますか? 人の心はそんな強うない。ばれたらきっといらん軋轢が生じて、お互い不幸になるしかない。佐緒里もそんなことは望んでないですやろ」
「しかし……」
「法律にも触れてへんはずや」
 真野の強弁に、ちょっと待てよと榊は突っ込んだ。
「いや、2000年に「ヒトに関するクローン技術の規制に関する法律」で禁止されたでしょう? 貴方がご存じ無いはずない」
 すると真野は、しれっとした顔でこう言った。
「あんな阿呆な法律、守る価値があるとは思えませんな。でもそれはともかく、あれが規制しているのは個人の複製であるヒトクローン胚などを、人や動物の体内に移植して育てることや。一方うちのは、全部人工培養で一切生きモンの体はつこてません。どないです? 儂はどこかまちごうてますかな?」
 詭弁だな、と榊は感じた。第一真野はまだ命をそう軽々しく扱っていいのか? という榊の問いに答えていない。だが、それを正面から伝えても、この孫娘を生き返らせたいと必死に念じている老人の耳には届かないだろうことも、榊には判った。
 もはや是非の問題ではないのだ。しかもそういう風に開き直られると、もう榊には言う言葉がない。法律は、次々と革新されていく科学技術に対しては、どうしても後手に回らざるを得ない。クローン人間の国籍や戸籍はどうするのか、人権はどうするのか、いや、そもそもクローン人間を、人として認知するのか?
 その問題が法的に明確にならない限り、警察官としての自分には、真野老人に対し言えることはない。ただ一人の人間として、実験失敗と生み出した命をあっさり絶ってしまうその感覚に、強い嫌悪感を覚えるばかりである。
 榊が窓外の夜景から目を離し、真野に一言そう言ってやろうとしたその時。突然、榊の目が、窓の外から飛び込んできた膨大な光を感知した。思わず振り向き直った榊は、眼下でライトアップされた大阪城の向こう側に、赤い光の柱が高々とそそり立つのを見た。
「まだ花火が残ってたんかいな」
 真野はのんびりそう言ったが、到底それは花火くらいで生じる明るさではなかった。
「違いますぞ! あれを見て!」
 榊は、光の柱の中に浮かび出た、人型の影を指さした。やがて光が薄れ、人の形がはっきりと見えてくる。榊と真野が見つめるうちに、その姿が遂に動き出した。
「そ、そんな阿呆な……」
 真野が腰砕けにその場に座り込んだ。榊自身も、驚愕の余り動けない。そこに、軽快な着信音が真野のポケットから鳴り響いた。真野は感電したようにびくっと震えると、慌ててポケットから携帯電話を取りだした。
「ど、どないしたんや! なんやて? 佐緒里がおっきいなったやとぉ?!」
 それは、佐緒里、シェリー、円光につかず離れず尾行していた、真野の部下からの連絡であった。
「鬼童君! ヴィクター博士! 大変だ!」
 榊もようやく呪縛を解かれ、まだ向こうで議論を重ねている二人に、緊急事態の到来を告げた。
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