かっこうのつれづれ

麗夢同盟橿原支部の日記。日々の雑事や思いを並べる極私的テキスト

新物好きの親父殿のお世話をしつつ、メーカーももっと年寄り向けの工夫をして欲しいと思いました。

2009-08-16 22:31:35 | Weblog
 今日はお盆と言うこともあり、枚方の実家に行ってきました。往復の道が想像以上に空いており、なかなか快適なドライブで普段からは考えられない短時間で行き来できました。これくらいで毎回往復できるのならもう少し頻繁に実家にも顔を出せるのですが、もう少し道の整備も進まないと、普段の渋滞はそう緩和されることも無いでしょう。

 さて、実家では、また新物好きな親父殿がデジカメと写真印刷機を購入していて、私がその操作方法を教えに来るのを待ちかねていた、と言う状況でした。まあ新しいデジカメといってももちろん一眼デジカメではありません。お年を召した両親は、既にコンパクトなデジタルビデオでさえ持ち歩くのが億劫になって私に払い下げているくらいで、新しく買ったものも当然の如く軽くてかさばらないコンパクトなやつでした。したがって特段な技術を必要とするものは何もないので、とにかくフルオートに設定してシャッター押すだけにしておきました。別に芸術的な写真を撮ろうというわけでもなく、旅行に行ったときのスナップ写真が目的ですので、余計なごてごてしたオプションは全て不要で、レンズ付フィルムの如く、そこそこの画質でそこそこの写真が得られれば十分なのです。デジカメメーカーもうちの両親のようなお年より向けに、コンパクトなやつは思い切って夜景とか逆光とか動きの早い被写体とか言うようなオプション設定は一切省き、更に日付や時間もあらかじめ設定しておいて、箱から出して電池とメモリカードをセットしたら即撮影できます、と言うような形にして出荷できないものでしょうか。また、写真印刷などはお店に任せたほうが安上がりで出来も安心ですので、高く付くし操作も年寄りには面倒なプリンタなどつけずに、その分本体を丈夫で軽く作ってくれないものかと思います。あのシチュエーション選択のオプションなんて、今のコンピューターとセンサー技術で自動的に最適な選択をカメラ側で判断できるように組み上げられないものでしょうか? 横文字のボタンが3つ以上になった途端操作が怪しくなるうちの年寄りのことを思うと、もっともっと老人と機械のマンーマシンインターフェースには工夫の余地があるように感じます。
 食事は、宅配ピザを食べたことがない、と言うので、ためしに取って見ました。私はこのピザと言う食べ物について、香辛料がやたらとキツイ脂っこい食べ物と言う印象があってあんまりうまいものとも思わないのですが、ごくたまに食べるとそれなりには食べられました。なにより、年寄り二人がしっかり食べられたのにはちょっと驚きでした。

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11 決断 その2

2009-08-16 09:38:43 | 麗夢小説『向日葵の姉妹達』
 ばさり、と音を立てて、改良ドラコニアンのテスト結果がケンプの足元に落ちた。釘付けになった視線の向うで、ぐったりとうなだれるシェリーのいたいけな姿がアップになる。その耳に、切迫した日本語が飛び込んでいた。
「……身長推定40メートルの怪物が、現在大阪城に向かっております! その手に一人の少女が囚われている模様です! 午後10時5分、大阪市中央区、都島区、城東区に避難警報が出されました。また、大阪市全域に避難勧告が出ております! 市民の皆さんは落ち着いて、大阪府警と自衛隊の誘導に従って下さい! 繰り返します、これは特殊映像ではありません!……」
「か、閣下、ど、どうしたら……」
 さしものケンプも2秒ばかり心が空白になっていたらしい。剛胆で鳴る信頼すべき部下の狼狽ぶりにはっと気が付いたケンプは、思わずびしりと怒鳴りつけた。 
「馬鹿者! フランケンシュタイン公国の栄えある戦士が、何をうろたえておるか!」
 その一言は、ケンプ自身をも落ち着かせる効き目があった。ケンプは一言で部下の狼狽を強制停止させると、努めて冷静に榊に言った。
「どう言うことか、落ち着いて正確に説明してくれないか」

 10分後、榊から大体の状況を聞いたケンプは、ここまで連れてきた信頼厚い腹心中の腹心4名を、応接室に集めた。
「殿下は御無事か?」
「はい。現在殿下は大阪への移動を見合わされ、京都で待機なさっておられるとのことです」
「そうか、では心残りはないな」
「閣下?」
 先任のハイネマンが、怪訝な顔でケンプに問いかける。ケンプは軽く手を挙げて未然にその疑問を封じると、おもむろに口を開いた。
「既に諸君もこの大阪の街を襲う脅威について知っているだろう。私の孫娘が置かれた状況も」
 無言で四つの厳つい顔が頷いた。
「フランケンシュタイン公国軍陸戦部隊統合司令官として命じる。貴官等はこれより直ちにカール皇太子殿下の元に参じ、その御心を安んじたまえ」
 思いもよらないケンプの言葉に騒然となる仲間を抑え、静かにハイネマンが問いかけた。
「閣下はどうされるのです?」
「儂はたった今除隊させてもらうことにした。一日遅れにしていたが、ちょうど良い機会だ。今度こそ陛下には儂のわがままを聞いていただこう」
「お嬢様を救いにいかれるのですね?」
 ケンプはこくりと頷くと、四人に言った。
「これまで皆よく儂に付いてきてくれた。これでさらばだ。貴官等の未来に栄光のあらんことを」
 ケンプは言いたいことは言った、とばかりに、手を振って解散を命じた。が、四人は動かなかった。
「どうした、一刻も早く殿下の元にいけ! これは命令だぞ」
「いいえ、その命令、お受けできません」
「何?」
 静かに、しかしきっぱりとハイネマンは言った。
「閣下はたった今除隊された以上、我々に命令する権限はありません。我々は、自ら情勢を判断し、行動させていただきます」
「な、何を言うのだハイネマン」
「貴方一人を行かせはしません。閣下」
「ば、馬鹿なことを言うな! これは儂の問題だ! 貴官等まで付き合うことはない!」
 ケンプが激するほどに、ハイネマンは盤石の岩のごとく静かになった。
「ケンプ将軍。我々はフランケンシュタイン公国軍陸戦部隊士官でありますが、それ以前に、栄えある公国騎士団の一員であります」
「公国騎士団……」
 フランケンシュタイン公国軍の組織は、古く公国騎士団をその母体としている。時は移り、戦いが騎馬戦から戦車戦へと変化しても、その気高い敢闘精神と高潔なる魂は、代々受け継がれてきた。特にケンプが直率する陸戦部隊は、精鋭を持って鳴るフランケンシュタイン公国軍の中でも、特段に高い戦闘力と厚い忠誠心を誇る、文字通り現代の騎士達なのである。
「そうであります! 公国の騎士たる我らは、我が国に徒なす邪悪なる者達をうち払い、公国の平和と安寧を守る義務を負っております!」
 ハイネマンの隣で、自他共に熱血漢で鳴るモーリッツが叫んだ。
「それぐらい判っている。だから儂は殿下を、と……」
「いいえ。あの少女も、れっきとした我が公国の民です。我らが今これを見放したとなれば、神の身元に召されるとき、我らの居心地が悪くなります」
「その通りです閣下。閣下は我らに天国において先達達の笑い者になれとおっしゃりますか?」
「ヨハン、シュナイダー……」
 次々と部下達が反旗を翻し、ケンプは呆気にとられてそれぞれの顔を見た。
「もう良いでしょう、閣下。我らもシェリーお嬢様救出の栄に浴したいのです。同行を許可願います」
 最後にハイネマンが締めくくり、ケンプの決断を迫った。ケンプは右目を瞠って四人の顔を順に見た。どの顔も、けして自分から目を離さない、強い意志を内に秘めている。ケンプは再びハイネマンのところで視線を止めると、おもむろに呟いた。
「皆、私に力を貸してくれるのか?」
「はい」
「もちろんですとも」
「閣下!」
「一言ご命令を。ついて来い、と」
 ケンプはじっと一人一人の目をもう一度見つめ、もはやその意志を覆すことなど出来ないことを否応でも悟った。それはそうだろう、とケンプは思った。皆、儂が手塩にかけて一から叩き込んできたのだから……。
 ケンプは決断した。
「では改めて貴官等に命ずる。この街を蹂躙する化け物を倒し、友邦国の街と市民を守るのだ」
「閣下、シェリーお嬢様は?」
「この街の市民保護を最優先とする。だが、私は一人の人間として諸君らにお願いしたい。どうかシェリーを助けるのに、手を貸して欲しい」
 四人は、敬愛する将軍がどれほど孫娘を大切に思っているかを痛いほど理解している。恐らく将軍は、今すぐでもこの部屋を飛び出していきたいに違いない。だが、敬愛する鉄の魂は、部下に対してあくまでも公務を優先するよう命令した。それでも四人の考えは微塵も揺らぐ事がない。将軍をお助けしてシェリーお嬢様を救出する。それが自分達の最優先任務であると理解したのである。
「閣下、さしあたってどうしましょう。この国の軍に武器を借りる訳には恐らく無理でしょうが……」
 場合によっては強奪してでも、と言外に匂わせたハイネマンに、ケンプは自信ありげに答えた。
「武器ならある。ここにもっとも頼りになる我らの剣が」
 ケンプは落とした書類を拾い上げ、にやりと笑みをこぼして見せた。それは、かつて無敵と言われた鍵十字軍団を迎え撃った時と同じ、獰猛な戦士の微笑みであった。
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