かっこうのつれづれ

麗夢同盟橿原支部の日記。日々の雑事や思いを並べる極私的テキスト

09 神勅 その1

2010-10-31 10:51:18 | 麗夢小説『夢の匣』
 闇に沈み、闇に埋もれていく。肉体が、精神が、魂が、存在の全てが負に犯され、呑まれ、消化されていく。最後に残された夢のネルギーが尽き、戦士の衣装がバラバラとほぐれ、瘴気渦巻く暗黒の虚空へと飛び散っていく。入れ替わるように、肌を刺す冷気と身体がバラバラになりそうな痛みが全身を間断なく襲う。だが、それもそう長く続くことはないだろう。文字通り矢尽き刀折れ、戦う力を失った戦士には何も残らない。このまま闇に溶け、消滅するより道はないのだ。
 その消滅までの刹那の間、最後に残されたのは、侮恨と諦観、そしてたった一言の、けして届かぬ思いだった。
「……世界を、守れなかった……」
 今にも消え行こうとする瞳から、一滴の涙が溢れた。
「ごめんなさい……みんな……」
 すうっと瞳に灯る最後の光が薄れていく。全身の感覚が朧になり、意識が涙と共に抜け落ちていく。だから、時の終わりの最後の最後になって耳に響いたのは、単なる幻だったのかもしれない。
『一言謝ったくらいで許されるとお思いなの? 麗夢さん』
 麗夢の意識は、その直後に襲ってきた強烈すぎる凝集した闇の力に、もろくも消し飛んだ。だがそれは、不思議なほど恐怖や嫌悪を伴わない、不思議な爽快さをもたらす失神でもあった。

 麗夢を葬り去り、この世に残る全ての抵抗を排除したルシフェルは、意気揚々として麗夢が沈んでいった闇の中心に降り立った。かつてない力の漲りが全身を震わせ、体中を凄まじいエネルギーが駆け巡って、どす黒い欲望を高らかに歌い上げている。永遠とも思えた光と闇の闘争が、今、まさに闇の勝利に終えようとしていること、そして、その立役者が間違いなく自分であることを実感し、ルシフェルは、その喜びを吠え猛りたくなる衝動に駆られた。来るべき新世界、この世の全てを終焉へと導くカウントダウンが始まったのだ。もう引き返すことは出来ない。神でさえ、この滅びの時を留める術は無いに違いない。刻一刻と不気味に力を増す地獄の闇が、ルシフェルには喩えようもない魅力あふれる美の結晶にすら見えた。もうすぐだ。もうすぐ夢がかなう。もうすぐ!
 ルシフェルが、ついに我慢しきれず、両手を大きく上げてその感動と暗い喜びの咆哮を、闇に向けて解き放とうとした、その時。
 しゅるっとかすかに切り裂かれた空気の悲鳴が耳を付いたかと思った瞬間、ルシフェルは、自分の身体を拘束する、何本ものタコの足のような触手に目を見張った。
「な、なんだこれは?」
 視線を左右に投げ、すぐにその触手が、足元の闇の中から伸びてきているのに気がついた。これが、今迫り来ているはずの、地獄の使者達の先駆けなのか? それなら、地獄の釜の蓋を開けた功労者たる自分が、どうして拘束されるのか? 
 ルシフェルは訳が判らなかったが、咄嗟に危険を感じて、その触手を強引に引きちぎろうと力を込めた。だが。
「なんだと? な、何故外せん?」
 玉櫛笥によって増幅され、更に今は無限に闇の力の供給を受けてまさに無限大の力を行使できるはずの自分が、この程度の触手の拘束を力づくで解き放てないなど、およそルシフェルには考えられない事態であった。そのうちにも触手は本数を増やし、柔らかくも強靭な弾力を示して、ルシフェルの肉体をがんじがらめに締めつけてくる。
「ええい! 何だというのだ!」
 ルシフェルは振りほどくのを一時諦め、洞窟の天井目掛け飛び上がった。とにかく触手の本体を吊り上げ、相手の正体をつかもうとしたのである。そこへ透明度ゼロの静かな水面のような闇の中から、新たな物体が次々とルシフェル目がけて飛び掛ってきた。
「な、なにぃっ?!」
 触手が急に解かれた途端、飛来した八つの物体、あの忌々しい夢の中で、散々な目にあわされた記憶も生々しいミサイルが、ルシフェルを八方から包みこんで、いきなり爆発した。
 濛々と爆煙が充満し、火薬の刺激臭が鼻をつく。あの時の夢と違い、脅威的なパワーアップを実現した今のルシフェルは、爆発の中心にいても、さすがにカスリ傷一つ負わなかった。だが、その内心の動揺は、夢の中で翻弄されていた時を超えるものがあったかもしれない。
 何故自分が地獄の方から攻撃を受けねばならないのか。それにあの触手とこのミサイルは何だ? これではまるで、粉微塵に砕いてやったあの土人形共が復活しているかのようではないか。いや、そんなことはこの際どうでも良い。それよりも問題なのは、今浮上しつつあるモノの正体。あれは、地獄の蓋をこじ開けた自分を言祝ぐためにやってくる地獄の使者ではなかったのか? 
 全身に圧力となって感知される膨大な闇の力。渦巻く怨念と憤怒のパワーは、間違いなく自分の波長と同調する。なのに、なぜ?
 混乱するルシフェルに再び触手が襲いかかり、ミサイルが白煙をたなびかせながら、闇の中から次々と飛び出てきた。ルシフェルは訳がわからないままとにかく飛び続け、ついさっき、麗夢が立っていた闇の池のほとりに降りると、迫り来る触手とミサイルをきっと睨みつけた。
「ええい! いい加減にせんか!」
 ルシフェルの苛立ちが物理的な力となって迸った。ルシフェルを囲む直径3m程の精神力場がバリアとなって触手を弾き返し、ミサイルもその境界面で爆発四散する。はあはあと息も荒く当面の脅威を排除したルシフェルは、今自分が立っていた闇の池の中心に目をやって、あっと息を飲んだ。ミサイルの爆煙が薄れいく中、闇を割って浮上してきたもの。禍々しい瘴気を放ちながらも一種荘厳な神々しささえ覚える地獄の使者達の姿に、ルシフェルは言葉を失ったのである。
 その中央に立つ少女が、ずりかけた眼鏡をついと右手で直すと、朗々とルシフェルに語りかけた。
『我ら黄泉の国の支配者、黄泉津大神(ヨモツオオカミ)に仕える4人の巫女なり。汝(いまし)、異国の神に大御神の神勅を賜る。謹んで受けられよ』
「ちょっと待て! 何だ貴様らは! 何故貴様らがここに出てくるのだ! それにわしを神だと? たわけたことを言うな。虫酸が走るわ!」
 ルシフェルが叫ぶのも無理はなかったかもしれない。今ルシフェルの目の前で、4つのペアを作る大小8人の少女達(内一人は?)。南麻布女学園の制服を纏う8人のうち、小さい方の4人は、つい今しがた、自身の手を下して葬り去ったばかりの者達なのである。それに大きい方4人も、直接の面識はないながらも、その素性は十分過ぎるほど知っていた。
 原日本人4人の巫女。
 玉櫛笥を継承しながらもそれを使わずに闇の皇帝のような化物を使って麗夢に挑み、返り討ちにあって封印された、という、ルシフェルに取っては間抜けとしかいいようのない4人組の少女達なのだ。
 荒神谷弥生・皐月。
 纏向静香・琴音。
 眞脇由香里・紫。
 斑鳩仁美・星夜。
 ルシフェルの叫びに、8人の少女?は、一様にうんざりした顔を見せた。
「少し黙って聞いて下さらないこと? まだこの言葉使いには慣れていないのだから」
「年寄りって気が短いからイヤよねぇ」
「神様でいいじゃない。こっちでは悪魔だって禍津日神(まがつひのかみ)ってちゃんと八百万(やおよろず)の一柱として数えるんだよ? 知らないの?」
「全く、これだから夢守の民って奴は……」
 メインの4人が口々に溜息をつくと、その隣の小さい方も元気よく姉をけしかけた。
「弥生お姉ちゃん! あんなわからず屋、懲らしめてやらないと聞く耳もたないよ!」
「そうだな。日登美ねえ、もう一発かましてやったらどうだろうか?」
 ツインテールの小柄な少女、荒神谷皐月と、制服の袖口からニョロニョロと触手をのぞかせている斑鳩星夜が口々に言うと、纏向琴音、眞脇紫の二人も熱心に頷いている。ルシフェルは、珍しく頭痛と目眩を覚えながらも、8人に言った。
「ええい質問に答えんか! 何故、今ここに! 貴様らが現れるのだ! 地獄の使者はどうした! どこに居るのだ!」
「だからぁ、目の前に居るじゃない」
 ?
 纏向静香の間延びした口調に、ルシフェルの視線が固まった。
「わっからないのかな~? 私達4人が、その地獄ってやつ? の使者だって」
 ???
「最初に名乗ったでしょう? 聞いていらっしゃらなかったの?」
 斑鳩仁美があっけらかんと答え、続けて荒神谷弥生がもううんざり、と言わぬばかりにルシフェルを見据えて言った。
「我ら黄泉の国の支配者、黄泉津大神(ヨモツオオカミ)に仕える4人の巫女なり。どう、理解出来たかしら?」
 ようやくルシフェルは、今目の前で起こっている異常な事態を飲み込みだした。だが、疑問ばかりが募る。自分は、何か重大な過ちを犯しているのではないか? ルシフェルは、その疑問のままに目の前の少女達に言った。
「ど、どういう事だ……。この闇は、地獄に直結しているのではないのか?」
 すると荒神谷弥生が、腕を組みつつため息一つついて答えた。
「ここは八百萬の神々が統べたもう大八洲(おおやしま)。その天界は高天原。地獄は黄泉の国。どうもあなたが繋ぎたかった地獄とは、少し違うんでしょうね」
「違う? 地獄とは違うというのか?」
「こんなところで地獄との通路をつなごうなんてするからだよ」
 「キリストの神も仏教の仏様も、この大八洲では八百萬の神々の一柱なのぉ。あなたの望む地獄も、我が黄泉の国には、ほんのわずかばかり、一要素として混じっているには違いないけどね~」
 眞脇由香里と纏向静香に口々に言われ、やっとルシフェルも疑問が解けてきた。なるほど、地獄は地獄でも、この極東の片田舎で原始的なアニミズムによって形作られた地獄を自分は呼び出してしまったわけだ。だが、今この闇の影響を受けて漲る自身の力の程を見れば、それほど間違った選択でもなかったはずだ。
 気を取り直して、シフェルは言った。
「少しでもわしの望む地獄とつながっていればよい。ここを通路にして、わしの地獄を引き出せば良いこと。さあ、協力してもらおうか黄泉の国の巫女共よ」
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七〇の手習いで親父殿がパソコンを購入。サポートは前途多難です。

2010-10-30 22:51:36 | Weblog
 台風は結局南方洋上を通過して、奈良には少し雨を降らしただけで去ってしまいました。気象庁の台風情報を見ますと、どうやらこの時間には、関東にも上陸すること無く、行ってしまった模様です。数日前にはやきもきして台風情報を見ていたのがウソのようなあっけない結末となりました。今年は流石にこれで打ち止めなんじゃないか、と思いたいところですが、過去には11月末になってからやってきた台風もありましたし、もう少しだけ、様子は見ていたほうがいいのでしょうね。

 さて、親父殿がパソコンを買うのだ! ということで、そのアドバイスと使えるようにするセッティングのために、実家まで一っ走りしてきました。デスクトップならとりあえずうちの余った部品を組み合わせれば、それなりのを一台くらい組むことは出来たのですが、これからの季節、こたつの上でやりたいとかいう話で、するともうノートパソコンしか選択肢がなかろう、と、結局親父殿を連れて電気屋さんまで行き、一台選んできたのです。展示品処分でお値段的にもなかなかお得ないいものがあったのですが、お店のデモ設定から出荷初期設定に戻すのに半日かかる、と言われ、その状態からまた私が実家で使えるようにセッティングする時間が取れないため断念。代わりに、少し性能は落ちますが、即お持ち帰り可能なヤツでまずまずお値段手頃なのを粘って少しだけ値引きしてもらい、買って帰ったのでした。
 親父殿は一応何ヶ月か前からパソコン教室なるものに通ってはいるそうですが、セッティングを終えたパソコンを前にしたその姿を見ていると、まだまだ前途多難という感じです。それが予測されたので、私の本音としては、なるべくならパソコンなどに興味を持ってもらいたくはなかったのです。ただ、昔から新しい機械には目のない男で、近所で最初にテレビを購入したり、クーラーを取り付けたりしていたヒトですから、今のご時世においてパソコンに手を出さずにいる、というのは避けられない事態ではありました。たださすがにもう七〇をとうに過ぎたいわゆる後期高齢者。目も大分弱ってきていますし、果たしてお迎えが来る前にパソコンを操作できるようになるのかどうか。心配はしつつも、しばらくは頻繁に実家に通って様子を伺う事になるのでしょう。

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いくらお茶が体に良くてもそう何でも効くものでもないと思います。

2010-10-29 22:30:47 | Weblog
 台風14号、昨日の時点ではまだ、やって来るかも? という一抹の不安がありましたが、今日の予報を見る限り、こちらに大きな影響を及ぼす可能性はほとんど無くなったようです。とりあえず、明日台風対策に臨時出勤、という話はこれで無くなりそうなので、一安心というところです。もっとも、万が一、という話はまだありうるので、一応明日までは警戒をしておきましょう。

 さて、私は日常緑茶をがぶ飲みして、時々紅茶をはさむ、というお茶党で、コーヒーはほとんど受け付けないのですが、無意識的に、茶の方が身体によさそう、というイメージを持っていることは間違いないと思っております。もっとも、お茶にもカフェインが含まれていて、胃の弱い私にはあまり良い飲み物とは言えないところもあるのですが。
 それはともかく、お茶に豊富に含まれるカテキンは強い抗酸化活性を持つため、ガンの予防に効くんじゃないか、と研究も進められている素材です。最近はカテキンがダイエットに効果的、という宣伝を良く見かけるのですが、他にも消臭とか抗菌とか色々と機能が取り沙汰される飲み物であることは確かです。ただ、効果がはっきり証明されたものもあれば、単に言われているだけで根拠なし、というようなものもあるので、その見極めが大事な時代になっています。
 そんな中、国立がん研究センターがお茶カテキンで乳がんの発生を抑制できるか大規模な疫学調査を実施し、その結果を発表されていました。お茶に注目したのは、欧米に比べアジアで乳がんが少ない点に注目したのだそうで、その原因として緑茶を飲む習慣の駄目だ、という仮説を立て、乳がんとの関連を調べたのだそうです。しかしながら、お茶を飲む頻度と乳がん発生の間には意味のある関係は見られなかったということで、少なくともお茶に乳がんを防ぐ機能は期待できそうにない、という結果が得られたそうでした。
 健康食品、と言われるものについては、その効果がはっきりしない話が多いのですが、お茶ほど知れ渡っている健康飲料でも病気次第では大した効果がない、というのは、まあ当たり前といえばそうなのかもしれません。まあなにはともあれ、効きそうにない、という情報もまた意味のある大事な話ですので、今後もこういう調査研究が進んで欲しい、と切に思います。

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山とヒトの境界域では、日々戦争状態と言っても過言ではないと思います。

2010-10-28 22:28:49 | Weblog
 台風14号の予報円、大分収斂してきましたね。昼ごろには潮岬沖を流れていってしまうかも? と期待できる予報でしたが、今最新の気象庁予報を見たら、また紀伊半島を引っ掛けそうな塩梅になってきました。最悪の場合は休日返上で台風対策で出勤しないとなりませんので、願わくばなるだけ遠くを外れて欲しいのですが、果たしてどう動いてくるか。既に偏西風に乗っていると思いますし、それほど進路にブレは出ないとは思うのですが、関西に上陸するかどうかは、明日にならないとわかりそうにないようです。

 さて、最近やたらと熊の出没が目立っています。うちの近所では、さすがに熊は今のところ出てきた、という話は聞きませんが、イノシシはよく出ますし、私自身も、このところタヌキや野ウサギのたぐいをしょっちゅう見かけます。夏の高温でどんぐりなどの出来が悪く、山に餌が不足しているために町中に現れているらしいのですが、何とも厄介な事だと思います。
 かねてより、私は過疎の村などのいわゆる限界集落はとっとと畳んで住民を街に収容し、地方都市人口の確保と、非効率極まる過疎地域の行政サービスの停止とそのマンパワーの有効活用によるきめ細かで効率的な行政を実現すべきではないか、と、考えているのですが、結局この野生動物街にアラワル! な問題も、単に山に餌がないから、というだけじゃなくて、ヒトが住む集落側の密度低下によって野生動物の忌避圧力が低下していることや、山と集落との境界域のバッファ領域が消えかかって、互いの棲み分けが上手く行かなくなっていることも大きいのではないか、と思うのです。ならば、山に近い方からヒトを撤収し、自然に対する反撃密度を高めて野生動物とヒトとの境界線を明確に再設定するべきではないでしょうか。
 まあそれは行政なり政治なりが考え、その地域の住民が決断すべきことでしょうから、住民でもない私がとやかく言うことでもないのでしょうが、住民の危険を慮って、町に出てきた熊を銃殺したことに対し、全国からかわいそうだと非難殺到、という話には、馬鹿なことをいう輩が一杯いる、と溜息が出るばかりでした。私は幸いにして熊と遭遇したことはありませんが、イノシシやニホンザルだって、近くでみると結構恐ろしいものです。イノシシなんて、とてもブタと近縁とは思えない迫力あるガタイをしていますし、あんなのが突進してきたら、生身なら生命の危険、車でも大破は免れない、と思われるものがあります。まさに猛獣と呼ぶにふさわしい生き物です。これが熊となれば更に想像を絶する体格とパワーとを兼ね備えているわけで、大人でも恐ろしいのですから、子供やお年寄りにとっては言わずもがなでしょう。それに、山に餌が無く、町にあると理解した野生動物は、たとえ麻酔等で眠らせて山奥に運んで放しても、必ずまた町に出てきてトラブルを起こします。このような野生動物の恐ろしさを知らないヒトがとやかく口出しすべき問題ではないと私は思うのです。

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政治が役割を果たしていないんじゃないかと感じるようなことばかり起こっている気がします。

2010-10-27 22:08:06 | Weblog
 台風、ジリジリと北上を続けていますが、月末にどこに到達するのか、まだまだ予報円が大きすぎてもう一つはっきりしないところがあります。気象庁は盛んに東に曲げたい様子ですが、先々日位から東にコース変更を予測しては外れ、台風はひたすら北上を続けていますので、果たして今の予報も明日にはどうなっているかわかりません。コース次第ではまともにこっちに来る可能性もあるので、のほほんと構えてもいられないのです。でも、多分はっきりするのは明後日になるのでしょうね。叶うものなら気象庁の予報が当たって紀伊半島洋上遥かを流れていってもらいたいです。

 さて、TPPなる横文字略語が騒々しくなってきていますが、最近この手の略語が多くて何がなにやら、という点でも混乱が大きい気がしています。それはそれとして、このTPPこと環太平洋戦略的経済連携協定、折角ですのでちょっとググッてみますと、そもそもシンガポール、ニュージーランド、ブルネイ、チリの4カ国が結んだ協定で、2015年までに各国が原則として100% の関税を撤廃することになっており、現在、アメリカやオーストラリア、ペルーも参加を表明、ベトナムがオブザーバーとしての参加を表明するなど、まさに環太平洋な経済連携になりつつある、と出ていました。我が国も管政権が推進しているのだそうですが、どうも急に話が降って湧いたような感じがするのは気のせいでしょうか?
 まあそれはともかくとしても、今、このTPPに日本が参加したらどうなるか、という試算が色々出ていて、それがまた全く違う数字になっている、というのがいかにも我が国の混乱ぶりとまとまりの無さを象徴するようで興味深いものがあります。
 内閣府は実質GDPが2.4兆~3.2兆円(0.48~0.65%)押し上げ、経産省は参加しないと参加しないと2020年には、自動車、機械産業、電気電子の主要3業種の年間生産額が10.5兆円減少、81.2万人の雇用喪失、農水省は参加すると食料自給率が14%に激減、農業生産額4.1兆円減、GDP7.9兆円減、環境面の損失3・7兆円、計11・6兆円の減少、という大赤字を予測、という具合に、全く違う数字が踊っております。それぞれ色々な前提が付帯事項として付いているのですが、おそらくは、それぞれ自分に都合よく数字を極大化出来るように付帯事項を設定しているために生じている齟齬なのでしょう。こういう時こそ、国益全般を考え、大所高所に立って決断するのが政治の役割なのでしょうけれど、こうして配下であるはずの官僚から異論続出、という状況を見る限り、政府の舵取りは全く五里霧中をさまようがごとき有様としか見えないのが難儀なところです。
 
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木枯らしが吹く中、台風が接近しつつあるという不思議。

2010-10-26 21:31:09 | Weblog
 台風が近づいてきています。関西最接近は30日から31日にかけてのようですが、今のところ気象庁の台風予報でも、予報円が大きすぎてどこに来るのか見当がつきません。ただ、昼に見たときの予報よりも北に振ってきているので、このまま少しずつ北にずって行けば、ひょっとしたら近畿直撃、なんて事にもなるのかもしれません。随分季節外れの台風だな、と思わざるを得ないのですが、調べてみたら平成2年には11月30日に、和歌山県の白浜付近に上陸した台風28号なんてのもいましたから、全くありえないわけでもないようです。
 その一方で、今日は近畿に木枯らし一号が吹いた、との話も見ました。朝からなかなか気温が上がらず、妙に風が強いな、とは感じておりましたが、昼以降気温がどんどん下がっていって、21時現在で職場付近のアメダスは9.9℃とついに10℃を割り込んでしまいました。この分だと明日朝はどれだけ冷え込むのか見当もつきませんが、少なくとも防寒着だけはしっかり整えて行く必要がありそうです。
 この寒さは長続きしない、という話ではありますが、北海道や青森では初雪が観測されたそうですし、いよいよ冬の入り口に差し掛かりつつあるのかな、という感じがいたしました。
 台風と木枯らし、どうもあまり同時に観測されそうに無い事象ではありますが、週末にかけてどういう天気になるのか、予断を許しませんね。

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愚痴は愚痴として、小説の方はいよいよラストです。

2010-10-25 21:43:46 | Weblog
 書いていた内容がまた消えてしまいました。
 タイトルが長すぎるから修正するように、という表示が出たのでタイトルの文字をどう削ろうか考えていただけなのですが、なぜ消えてしまったのか、理解に苦しんでいます。それ以上に、小一時間かけた文章が雲散霧消してしまったこの憤りをいかに鎮めたものか。そりゃ大した価値もない駄文には違いないと思わぬこともないのですが、テキスト愛好家としてはその駄文にだって相応の愛情と執着をもって書き込んでいるわけで、それが何の前触れもなくあっさり失われることには、強い怒りとやるせなさを覚えずにはいられません。いつになったらこの種の非生産的な怒りを覚えずに済むようにPCやネットは進化してくれるんでしょうか?

 さて、もう気力も萎えて言葉も出ないので、とりあえず一言だけ。
 連載小説、昨日も普段よりも大幅増量で、およそ3割強長い文章になりました。もう少し書き足して2回に分けようかな、と一時は思ったくらいなのですが、そろそろ大団円を迎えたいですし、勢いの付いたところで割ったりしたら折角の流れが切れてしまいそうですし、とにかくキリのいいところまで出してしまいました。とんでもなくパワーアップした死神の前に、麗夢ファミリーは壊滅の危機! なのですが、まあ主人公の仇敵たるもの、これくらい強くなってくれた方が私としては好ましいところがあります。
 まあなんにせよ、最終決着まであと一歩の距離までようやく書いてきましたから、ラストスパートはすっきり決めてしまいたいです。来週……、いや、再来週かな?


 
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08 原日本人の秘宝 その5

2010-10-24 12:00:00 | 麗夢小説『夢の匣』
 麗夢は、剣を杖がわりになんとか立ち上がった。もともと玉櫛笥の結界で力が不足しているところに、思念波砲を撃つ無理を重ねた身に、さしたる力も残っていない。だが、喜色満面で呵々大笑するルシフェルを、このままにして良いわけがなかった。
 せめて一太刀。
 その企みを妨害し、あわよくば頓挫させる攻撃を、今繰り出さないでいつやるのか。麗夢は、たとえ刺し違えても止めてみせる、と最後の気を振り絞り、剣を構えた。
「ほう? まだやる気か麗夢。無駄なあがきも、過ぎると興冷めだぞ」
「無駄かどうかはやってみないと判らないでしょ! 覚悟なさい! ルシフェル!」
「やれやれ、だが、これ以上の余興は不要、っと! 手癖の悪い奴め!」
 ルシフェルが急に腰をひねって、よろよろと伸びてきた細い手から、玉櫛笥を引き離した。
「お願い……、玉櫛笥を返して」
 息を吹き返した荒神谷皐月が、邪険に遠ざけられた玉櫛笥めがけ、必死に手を伸ばしている。ルシフェルは残忍な笑みを浮かべて言った。
「心配せずとも、貴様の夢も叶うだろうて。もう少し黙って最後の結末を見ていくがいい」
「皐月ちゃんの夢? どういう事なのルシフェル!」
「別にどうということはない。この土人形はな、ただ主人を蘇らせたかったのだよ。もう一度会いたい、という虚仮の一念でな」
「主人って、まさか!」
 麗夢は、ついこの間この場所で葬り去った4人の女子高生達を想起せずにはいられなかった。
 荒神谷弥生。
 纏向静香。
 眞脇由香里。
 斑鳩日登美。
 南麻布女学園古代史研究部員にして、原日本人の血統を今に伝えた4人の巫女。
 思えば荒神谷皐月は、彼女たちの妹と名乗って現れたのだった。原日本人4人の巫女の後継者、という名乗りに囚われて、この子達もまた、原日本人の復権を狙っているものと麗夢はすっかり勘違いしていた。でも確かに最初の出会いで皐月は宣言していたのだ。自分達の目的は復讐ではない。いうなればリセットだ、と。その後のハプニングで詳細を聞きそびれたせいもあって、麗夢はその言葉をあまり重視していなかった。だが、今ならはっきりと理解できる。彼女たち、おそらくはあっぱれ4人組が大事にしていた4体の埴輪の目的は、単に主人たる4人に会いたいということ、ただその一点だけだったことを。
 麗夢のうめきに満足気な笑みをこぼしたルシフェルは、右手の玉櫛笥を頭上高く差し上げた。途端にルシフェルの周囲を揺らめき絡む白と黒のエネルギーの帯が急速に回転速度を上げ、既に途方もなく高まっていた力を更に練り、収斂させていった。頃合いよし、とみたルシフェルは、最後通牒、とばかりに麗夢に言った。
「さあ、無駄話も終わりだ麗夢。時は熟した。この世界の最後を、生命の続く限り、その目でとくと見届けるがいい!」
 はっとなって飛びかかろうとした麗夢の目の前で、ルシフェルの右手が鋭く振り下ろされ、手にした玉櫛笥が地面に叩きつけられた。同時に、回転を速め、修練していったルシフェルを取り巻く白黒二本のエネルギーの帯が、まるでドリルのように玉櫛笥の後を追って地面に突き刺さった。
 突然、ルシフェルの足元から地面が消えた。
 底知れぬ闇と化したその空隙が、次の瞬間には100倍にも拡大して、南麻布学園地下大空洞の地面に、巨大な穴を穿った。
 あっという間もなく支える地面を失った榊、鬼童、円光、それにアルファ、ベータまでが、突如生まれた黒い闇に消えた。
「アルファ! ベータ!」
 夢の中ならありえない高さに飛び上がる二匹の魔獣も、文字通り底なしとなった巨大な陥没には為す術もなかった。辛うじて穴の縁で落下をまぬがれた麗夢の叫びも、ただ虚しく闇に呑まれるばかりだった。
「さあ、貴様の役割も終わった。好きなように捜しに行くがいい。貴様らの主人をな」
 左脇に抱えていた皐月を、ルシフェルは無造作に放り投げた。一瞬の無重力に息を呑んだ小柄なツインテール小学生の身体が、次の瞬間には先に逝った3人の仲間と同じ、土色の小さな埴輪に変化した。それをルシフェルは思い切り蹴り飛ばした。埴輪はもろくも砕け、たちまちのうちに闇に吸い込まれていった。
 ルシフェルの嘲り笑う大きな声すらが虚しさを覚えるかのようにうつろに響く。麗夢は、足元の闇の中から立ち上りつつある気配に戦慄した。
 何かが来る。
 もはや想像することすら許されない巨大な力。世界を漆黒に塗りつぶす闇の力を振るう何かが、ゆっくりと、だが確実に、遥か深淵の底から這い上がってこようとしている。
「さあ来たぞ、地獄からの使者が。このわしとともに、この世の光という光を飲みつくすためにな。手始めは麗夢、まず貴様からだ」
 闇の宙に一人佇むルシフェルの右手に、愛用の大鎌が現れた。ルシフェルはそのまま、まるで見えない橋の上を進むように、闇の穴の上をゆっくり麗夢に向けて歩き始めた。その間にも、穴の奥深くから闇の力がせりあがり、それに応じて、黒い穴も少しずつ周囲に広がっていった。麗夢は慌てて飛び退り、穴とルシフェルから距離をとったが、ルシフェルはまるで慌てる様子もなく、悠然と歩き続けた。恐らく、幾ばくもしないうちに、退く場所を失うのは間違いないと麗夢は感じた。いや、学園地下だけではない。多分この穴は、南麻布一帯を覆い、武蔵野の地を呑み込み、更に東京そのものを、貪欲にその闇へと引きずり込んで行くに違いない。そして更に、更に、この世のあらゆる光を貪り尽くし、無に帰するまで拡大を続けるのであろう。まさに世界崩壊の序曲が奏でられつつあるのだ。
 麗夢は、もう一度暗黒の深淵の奥に目を凝らした。ついさっき、この闇に呑まれていった仲間たちの安否は全く判らない。闇の力が強すぎるせいか、アルファ、ベータの気すら感じられないのが、麗夢を激しく動揺させた。たとえ運良く墜落死をまぬがれていたとしても、闇の中の闇、鬼童言うところの黒の想念が濃密に凝集した魔の空間では、榊、鬼童はもちろん、弱りきっていた円光も、幾許の間もなく生命を火を暗黒に呑まれてしまうだろう。アルファ、ベータだって無事かどうか分からない……、麗夢は、もう何もかも投げ出してしまいたくなるような激情に身を駆られるのを辛うじて抑えこんだ。まだ、皆が死んだとは限らない。円光が結界を作り、アルファ、ベータも踏ん張っているかもしれない。今、自分が諦めたら、そんなみんなをどうやって救い出すというのか。しっかりして! 麗夢!
 麗夢は、よろめく足を叱咤して、迫り来る死神に対し、手にした剣を構え直した。気力を振り絞り、剣に戦い抜く意志と力を込めていく。全てが闇に包まれようとする地下洞窟の中で、その剣の放つ青白い光だけが、今麗夢が頼れる唯一の希望だ。
「ルシフェル。貴方だけは、止める!」
 麗夢は、もはや至近に迫ったルシフェルの懐目指し、思い切り飛び込んだ。力強く光を放つ夢の剣を大上段に振りかぶり、シルクハットに隠れた死神の脳天目掛け、全身のバネを極限まで振り絞って、その切っ先を文字通り叩きつけた。大鎌を手にしたルシフェルも、その瞬速の剣さばきには意表を突かれたかに、麗夢には見えた。
「ふん!」
 キン! と鋭い金属音が耳を打った。と同時に体中の骨がバラバラに砕けそうな衝撃に、麗夢は痛みを感じる間もなく吹っ飛ばされた。そのまま、闇の陥没に至っていない洞窟の地面に勢い良く背中から落とされ、肺から空気が一気に吐き出される。
 何かが高速で空を切る音がしたと思った瞬間、キラキラと青白く輝くものが、麗夢のすぐ顔の脇にグサッと刺さった。切断された髪の毛が幾筋か、その勢いに跳ね飛ばされていく。まだ青白い残光をまとっていたその切っ先は、刃の半分ほどを地面に突き刺すと、瞬く間に光を失い、鈍い銀色の刃面へと変じていった。
 麗夢はその切っ先と、衝撃に痺れて感覚が無い右手に残る柄の部分を信じがたい思いで呆然と眺めた。
 夢の剣が、折られた?……!
「今のわしには、地獄から無限に闇の力が届いておるのだ。その程度の力で跳びかかって来るなどまさに愚の骨頂。アリが象に立ち向かうようなものだ」
 見えなかった。
 激突の刹那、ルシフェルが振るった鎌の一閃。
 麗夢の反射神経と動体視力では、その動きがまるで捉えられなかったのだ。
 この剣がその斬撃を防いでくれていなかったなら、今こうして両断されて転がっていたのは、胴体を切り飛ばされた自分自身だっただろう。でもそれは、本当に偶然に過ぎなかったのだ。
「さあ、これで、終わりだ」
 あまりに近くから声を感じ、はっとなった瞬間、麗夢は首を鷲掴みにされて強引に立ち上がらされた。充分に距離を置いていたはずのルシフェルが、麗夢が気配を感じることすら許さない速度で一気に近寄り、麗夢を捉えたのである。
 息が止まるどころか、このままあっさり首の骨を折られそうなくらいに強烈に喉を締め上げられ、麗夢はうめくことも出来なかった。必死にルシフェルの身体を蹴りつけ、まだ持ったままだった剣の残骸をその顔に投げつけ、両手で首を締める鶏ガラのようにしか見えない死神の手首を引き剥がそうと力を振り絞った。だが、ルシフェルの身体は鋼鉄の鎧をまとうかのように麗夢の蹴りをまるで受け付けず、投げつけた剣の柄も、その高々とそびえる鷲鼻に当たって、傷ひとつ負わせることも無く弾き返された。その上、ルシフェルの腕は頑丈な万力のようにびくともしない。ルシフェルは、そんなあがきを心地良い音楽でも聞いているかのように陶然と眺めると、ほとんどキスでもしかねないほどに、ぐい、と自分の鼻先に麗夢の顔を引きつけた。
「フフフ、麗夢、貴様とは長い付き合いだが、今、貴様は最高によい顔をしているぞ」
 麗夢は咄嗟に右手人差し指を、ルシフェルの半面、まだ肉眼が残っている方へ突き込んだ。
「くっ!」
「そう、その顔だ。いいぞ麗夢。更に怯えた顔も見せてくれると嬉しいのだがな」
 麗夢は、首の骨のきしみに加え、突き指した痛みに意識を失いそうになった。麗夢の指は、間違いなくルシフェルの眼球を貫いたはずなのに、その指はまるで鋼鉄の塊を突いたかのようにしか感じられなかった。
「さあ、余興はこれで終わりだ。生まれ来る新たな闇の生贄となるがいい!」
 ルシフェルは、陰惨な気が充ち満ちて、今まさに出現とする地獄の使者に捧げるべく、麗夢の身体をその陥穽の中心目掛け投げつけた。麗夢は抵抗する術もないまま、ボロ雑巾のように闇に落ち、そのままルシフェルの視界から消えた。
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やっぱり廃棄されるそうですが、個人的には許しがたく思わざるを得ません。

2010-10-23 23:03:47 | Weblog
 昨日のブログで話題にしたカルピスの99%果汁ジュースもどきの処置について、夢防人さんのコメントや別のニュースを見て結局廃棄処分されることを知り、どうにももったいないという思いが募ってやみません。コメントにも書きましたけど、少し書き足りない気がしたので、今日はもう少し書いてすっきりしてから寝ようと思います。

 この種の加工食品で問題が生じたとき、大抵廃棄処分されてしまうことに、そろそろ疑問の声を上げていかねばならないなと思っています。まあ、食品ではない異物が混入してしまったり、それが毒物だったりしたならこれはもう問答無用で回収・廃棄もやむなしと思います。でも、食品としての安全性や栄養価値などに問題がないのに、日付などのパッケージの表示が間違ったとか、今回のケースのように、ほんの僅かな瑕疵でその食品を廃棄処分してしまうのは、どこか間違っている気がしてならないのです。全国で膨大な量の食品廃棄物があることは知っていますし、うちの冷蔵庫でも、食べるのを忘れていてカビを生やしてしまい、罪悪感に苛まれつつも生ごみとして処分してしまったことも一度や二度ではありません。でも、だからといって何の問題もなく食べられるものを廃棄処分する、というのは、単にもったいないというよりも、何か空恐ろしい罪を犯しているような気にさせられるのです。企業論理として食品として再利用を図るよりも廃棄処分したほうが結局損失を抑えられる、というのは判りますが、だからといって食べ物を粗末に扱うことを食品で商いする会社が安易に選択して良いのか? と思わずにはいられません。
 しかしながら、今回のケースでは杓子定規なJAS法にだって問題は大有りだと思います。原材料は100%ブドウなのですから、ジュースでいいではありませんか。多分カルピスの開発担当や営業のヒトも、そういうつもりでいたんじゃないでしょうか? 全く果実とは関係ない甘味料の添加が認められるのに、香りを裕にするための果実発酵物、それもわずか1%の混入がアウトだなんて、私には理解できません。
 そうでなくても将来は食料が危機的状況になるとか、環境に負担をかけるのはよくない、とか言うような話が出ているのですから、今こそ、こういう事で食品を粗末にすることをなくすための法なり技術なり環境なりの整備が必要なんじゃないかと思います。それも、今後同じミスをしないように、とカルピスの不注意を罰して終わり、なんてことじゃなくて、食べられるものを大量破棄することを禁止することや、そのような大量のもったいない食品を別途流通に乗せ、ちゃんと消費できるようにすること、この二つを可能にする様々な諸問題を検討して、然るべき手を考えていくべきだと思うのです。

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もったいない、と思う気持ちが眠りを妨げそうで・・・

2010-10-22 23:24:25 | Weblog
 なんだか昨日は寝付きが異様に悪くて、ほとんど寝た気がしないまま朝を迎えてました。昨夜風呂に入っている時に例によって半身浴しながら本を読んでいたのですが、いつの間にか意識が落ちていて本の短い間でしたが完全に熟睡しておりました。それで睡眠欲がかなり満足してしまったらしいのと、鼻が妙に詰まってそれが気になって気持よく眠りに落ちることが出来なかったのです。ただ、ある程度眠りに満足している上に、そんな些細なことが気になってしまうほど、気持ちが高ぶるような何らかの問題が心身に生じていたのでしょう。というわけで今は眠くてしょうがないのですが、なんとなく、すんなり眠りにつけるか不安もあります。まあ明日は休みですから夜ねられなかった分は朝惰眠を貪ればよいのですが、あまりそれに身をまかせると生活リズムが狂ってまた月曜日に痛い目を見るので、昼まで寝てしまう、というような事にはならないように注意せねばなりません。

 さて、そんな状態ではありますが、もったいないな、と思わせるニュースがあったので、記録がてら此処に記しておきましょう。
 大手の飲料メーカーさんであるカルピスが、発売予定していた「ブドウジュース」を辞める、という発表をしました。なんでも、JAS法によると果汁100%以外はジュースと表記できないのに、新しい製品は、香りを増すために果汁を発酵させたものを1%分加えていたのだそうです。実はジュースには、砂糖などは加えることが出来る法律になっているとのことで、発酵果汁も許されると勘違いしていたのだそうです。
 どうも砂糖を混ぜるのが許される、ということ自体理解に苦しむのですが、99%果汁で出来ているものをジュースと呼んではいけない、という法律も訳がわからない気がします。それも、混ぜ物はもともと果汁なのですから、原料としては果汁100%と言っても間違いではない気もします。第一、国民一般、清涼飲料水のたぐいはかなりのものをジュースと呼びならわしているのではないでしょうか? それなら、99%果汁をジュースと呼んでどこが悪いのか、私には理解ができません。
 なにより発売を中止した、というこのジュース未満の飲み物、一体カルピスはどう処分したのでしょうね。発売を控えそれなりに生産に入っていたと思うのです。それを再加工して他の飲み物として利用したのならまあ結構なのですが、万一廃棄処分とかしているようなら、何とも勿体無い限りです。ニュースにはそこまで触れられていませんでしたから、どうもそれが気になって、難儀なことに不眠の種になりそうで怖いです。

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まだ台風がうろうろしているのですね。

2010-10-21 21:35:06 | Weblog
 奄美大島の大雨にたまげまして、気になって気象庁のサイトで久しぶりに天気図を見たのですが、超大型の台風13号、とっくに大陸に上陸したのか、と思っておりましたら、まだ台湾海峡付近でうろちょろしていたんですね。しかもなんだか南海上に2つも台風のコドモが生まれていたりして。ひょっとしたら1週間位して本土に突っ込んでくるんじゃないでしょうね。その時13号並みに成長していたりしたら、とんでもないことになりそうで恐ろしいです。かすっても、秋の果物が全滅したり、また野菜が高くなったり、色々生活に響く問題が出てきそうな予感。しばらくは目が離せないですね。

 一方で朝夕はすっかり寒くなってきて、山の紅葉も少しずつですが目に映りだした気配です。10月もあと10日あまり。もうすぐ木枯らし吹きすさぶ季節になるのか、と思うとチト気が滅入りますが、温かい布団の中で惰眠をむさぼる至福を味わえるかと思うと、それもまた悪くないか、と思ったりもします。
 
 
 
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貴重な資料の流出は一応やめになりましたが、このままではいずれ散逸は免れそうにない気もします。

2010-10-20 22:10:28 | Weblog
 イギリスの研究機関に寄贈する事になった我が国の考古学関連学術文書、少し気にしていたのですが、日本考古学協会が開催した臨時総会での投票で、賛成922、反対1111となり、一旦凍結、ということになったというニュースを、今日になって見つけました。既にイギリスとは覚書をかわしているとのことですが、これを白紙にする可能性もあるのだそうです。16日土曜日に既に配信されていたニュースなのですが、土曜日の私は何をしていたのか、その時はまるで気づきませんでした。「発掘報告書は失われた遺跡の貴重な記録。知的財産の海外放出は許されない」など会員から反対の声が相次いだとのことで、その事自体はむべなるかな、とも思うのですが、では具体的に行き詰まりつつある資料の保管費用や研究者のために閲覧可能なように態勢を整えていくにはどうしたら良いのか、というような具体的な今後の方策は、まだまだこれからのようです。こういう資産価値は無くても我が国の財産として計り知れない価値を有する貴重なものこそ税金で援助すべきではないのか、と私などは思うのですが、学会の方々は、もっとそのことを国民に広く訴え、理解を求めるべきなんじゃないでしょうか? その上で、できるだけお金をかけずに上手くやれる方法を皆で考えて、実現に向け努力するのが学会理事会の役割ではないか、と私は思います。
 いずれにしても、なんとか上手く国内で保管できる態勢を整え、願わくばどこか一箇所で綺麗に整理整頓して、いつでも誰でもその資料を手に取ることができるように専用の図書館をこさえるくらいの所まで行ってもらいたいものです。

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国会中継がなんだかとても面白くなっていますね。

2010-10-19 21:10:15 | Weblog
 昨日はネットで国会中継の映像を見てたのですが、あんまり面白いのでつい夜更かししてしまいました。次の日眠気に苛まれるのは判っていたんですが、途中で止めるのが惜しくて、近年、アレくらい面白い映像もそうなかったんではないか、と思いたくなるくらいのものでした。自民党の丸山議員が仙石官房長官との密談で「(日本が中国の)属国化は今に始まったことではない」ということを言った、と暴露したシーンが入っているものですが、それ以外にも、言を左右にしてなんとか言い逃れようとする菅総理とか、「逆質問できない」と苛立っていたような前原大臣とかの様子が見られて、あっという間の1時間でした。
 後になって、官房長官殿は丸山議員がいい加減な人だ、と非難轟々ですが、そんなに後で怒るのなら、国会の時に、健忘症だの何だの自らの職務遂行能力を疑わしく思わせるような事は言わないで、直ちにその場で、事実無根の侮辱だ、発言を撤回せよ、とでも何故に怒らなかったのでしょう。もし仮にそんなニュアンスの発言をしていたにせよ、政治家として、あそこは怒っとかないといけないんじゃないか、ヘラヘラ笑ってその場はごまかしておいて後から怒るなど、およそ政治家としては最低なんじゃないか、と動画を見ながら思いました。
 前原大臣も菅総理も、ひょっとして「野党の方が良かった」、あるいは『野党の方が楽だった」なんて思っているのではないでしょうか。およそ当事者意識が欠けている様子で、逃げを打っている感アリアリなのが目につき、ますますこの政権ほんとに大丈夫なのか? と疑問が増すばかりでした。
 もう一つ、印象的だったのは、ヤジがほとんど聞こえなかったこと。自民政権時代、国会中継を見ていて一番耐え難かったのがヤジで、発言者の声が聞こえにくくなるほどのヤジは見ていて腹ただしいだけでした。選良と呼ばれるいい大人が寄り集まって学級崩壊したコドモと同レベルのことしか出来ないのかと思うと情け無い限りでしたが、今回の動画ではそれが気づかないレベルになっており、少しは改善したんだろうか、と見直した次第です。

それにしても、テレビも下らない改編期特番バラエティなぞよりも、国会を中継するなり、録画して流すなりしたほうが、余程視聴率も取れ、お茶の間を楽しませることが出来るんじゃないかと思います。こんな面白いもの、もっと露出を高めてどんどん国民に知らしめることこそ、マスコミのやるべき仕事なんじゃないでしょうか?

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やっぱり証拠のビデオは国民皆で見て判断すべきなんじゃないかと思います。

2010-10-18 22:18:09 | Weblog
 ラストが近いせいでしょうか。昨日はずいぶん熱を上げて連載小説を書いておりました。あんまり大量に文章をアップするのもどうか、と思いましたので、一旦切りましたが、まだ同じくらいの量が手元にあります。更にもう少し書きつければ、いよいよお話も大団円です。

 さて、尖閣諸島での中国漁船衝突事件、ビデオ映像がようやく国会に提出されるとのことですが、やはりというか、一般公開は無く、あくまで秘密裏に予算委員会の中で見るだけになるらしいです。でも、既に日本が悪者、中国の漁船が被害者、という図式が国際的に定着しつつある、というような話もどこかで見ました。理由は、証拠のビデオがありながらそれを隠して公開しないから、なのだそうですが、この意見に私はまるで反論ができません。もしかして、実は本当は中国の方が悪い、と心の中では思っていたとしても、片方の当事者である日本が何かやましいことがあるかのごとく中国に対して下手に出て、当のビデオも出さずにいては、何を持って日本の主張を肯んじさせることが出来るでしょうか。本当に今更遅きに失しているとは思いますが、やはりこのビデオは公開してしかるべきではないか、と心から思います。
 一方で、官房長官殿は我が国の粛々としたデモは非難して中国のデモには言及されないとか、中国には敬語を使ってしゃべるとか、日本の中国属国化は今に始まったことじゃない、と言ったとか、まさに内憂外患の見本みたいな話があり、本当にこれで大丈夫なのだろうか、と不安にさせられることしきりです。
 官房長官殿としては、自分が頑張って中国のエライ人と話をつけてことを丸く収めようとしているのに、なんで邪魔するのか、と考えてたりするんじゃないか、と勝手に思っていたりするのですが、そろそろ丸くおさめる、という考え方そのものをやめた方がいいんじゃないか、とも思います。落しどころを探るにしても、喧々囂々やりあって互いに言いたいことを言いあったほうが、皆納得する落しどころを得られやすいのではないでしょうか。

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08 原日本人の秘宝 その3

2010-10-17 12:00:00 | 麗夢小説『夢の匣』
「どうした、もう終わりか?」
 膨らむ疑問、そして手も足も出ない手詰まり感に動きが止まった麗夢に、ルシフェルの嘲笑が突き刺さった。今、飛び込んでも、正直この剣が届きそうには思えない。だが、余裕綽々でこちらを見下すルシフェルを見ては、やはり無理矢理でも攻めて、突破口を探るよりない。麗夢は憤然とルシフェルに言い返した。
「これからよ! 覚悟なさい!」
 麗夢は改めて気力を奮い起こし、練り上げた力を手にした剣に送り込んだ。力を受けた剣の青白い光が、一段と輝きを増して辺りを照らす。だが、今度はルシフェルを斬るのではない。あの箱が生み出す夢と幻を切り裂いて、ルシフェルの実態を引きずり出すのだ。これで本当にルシフェルの幻術が破れるかどうかは判らない。玉櫛笥の生み出す濃密な夢の結界の中では、麗夢とて揮える力に現界がある。ならば少しでもこの力を増幅できればいいのに……、とそこまで考えて、麗夢はようやく、一つの方法を思いついた。
“そうだ! これならなんとかなるかも!”
 麗夢はその突破手段を持っているはずの仲間に声をかけた。 
「鬼童さん! 今、アレ持ってる?!」
「アレ? なんですか麗夢さん」
 苦しい息をつきながらも、鬼童は必死に麗夢の問いに反応した。
「ほらアレよ! 闇の皇帝を封印するときに使ったヤツ!」
「え? し、思念波砲ですか? この装置にも組み込んでありますけど、一体なにを……」
 足元で所在無げに転がっている巨大拡声器もどきを見て戸惑う鬼童に、よし、と麗夢は頷くと、一足飛びに鬼童の脇まで下がった。
 アルファ、ベータが油断なく麗夢の退いた後を受け、ルシフェルに睨みを効かせて唸り声を上げる。麗夢はルシフェルが嵩に懸かって来ないことを改めて確かめると、今思いついたアイデアを鬼童に言った。
「ルシフェルに一太刀浴びせるにはあの幻術を破るしかないわ! だから、闇の皇帝を封印した時みたいに私の力を増幅してぶつけてやるの!」
「なるほど、でも……、円光さんの力はあてにできませんよ」
 鬼童も必死に頭を働かせ、おおよその計算を組み立てた。だが、闇の皇帝封印の時は、麗夢と円光二人の白の想念を増幅して打ち出した。その円光は今も力を失ったまま回復すること無く、ルシフェルのすぐ前で倒れ伏したままだ。それでもやるしかない、と麗夢は言った。
「代わりにアルファとベータがいるわ! とにかく少しでもあの結界を揺さぶらないと、ルシフェルに剣が届かない!」
「判りました麗夢さん。やるだけやってみましょう。榊警部! 力を貸してください!」
「分かった」
 鬼童はよろよろと上体を起こすと、傍らに落ちていた大型拡声器もどきに手を伸ばし、幾つかのスイッチを押して、思念波砲モードを立ち上げた。榊も脱力した身体に気合でムチを打ち、鬼童の装置を二人がかりで持ち上げて、その砲口をルシフェルに固定した。
「アルファ、ベータ! 来て!」
 麗夢の呼びかけに、二匹の魔獣が飛び下がった。榊、鬼童の二人がかりで支える思念波砲のすぐ後ろに麗夢が立ち、その麗夢を挟みこんでアルファ、ベータが陣を取る。
「何をするつもりか知らんが、無駄なことだ」
 ルシフェルが、半ば呆れたようにしゃべるのを、麗夢は大声で遮った。
「無駄かどうか、受けてから言いなさい! 鬼童さん!」
「準備OK!」
「ようし、いくわよっ! アルファ、ベータ、気を集中して!」
 麗夢はルシフェルを睨み据え、大きく息を吸い込むと、意識を集中して心のエネルギーを練り上げた。一瞬遅れて、左右からアルファ、ベータの霊力が無形の波となって立ち上がり、どんどん高まっていくのが感じられる。麗夢は気を更に高めながら、ふとルシフェルの足元に踏みつけられていた荒神谷皐月の顔に目がいった。苦しげに顔をしかめつつも、こちらを向いて何か必死に訴えようとしているようだ。待ってて、今助けてあげるから。麗夢は心のなかでそう呼びかけると、更に気力を集中した。アルファ、ベータの力がそれに寄り添い、重なりあって、一段と強力に増幅されていくのが判る。これなら行ける!
「今です麗夢さん!」
 鬼童の叫びに、麗夢は貯めに貯めた全力を、一気に解き放った。
「思念波砲! 発射!」
 一瞬、麗夢とアルファ、ベータの気が爆発的に大きくなったかと思うと、そのエネルギーが鬼童の装置を通じて更に巨大に炸裂した。その力は、凄まじい霊力の津波と化して、猛然とルシフェル目がけて疾駆した。その先頭がルシフェルの構築した結界にぶつかり、周囲に強烈な電光がほとばしった。予想外の威力にルシフェルの目が驚愕に大きく見開かれ、榊や鬼童が勝利を確信したその時、強引にルシフェルの足を外した皐月が叫んだ。
「ダメぇーっ!」
「え?」
 全力を振り絞った虚脱状態に剣を下ろした麗夢は、皐月の叫びに、ルシフェルの顔がひきつるように崩れるのを見て目を疑った。
 笑ってる? なんで……?
「もらったぞ! 麗夢!」
 ルシフェルは再び皐月を踏みつけて黙らせると、自ら結界を解いて襲い来る思念波砲のエネルギーに身を委ねた。
 ルシフェルの手の玉櫛笥が、突然倍、更に倍と巨大化したかのように麗夢には見えた。その一瞬後。
 突如夢匣が爆発した。ルシフェルの放つ闇を瞬く間に呑み込み、辺りを真っ白に塗りつぶす燭光を放つ。
 円光の身体が、暴風にさらわれた木の葉のように吹き飛び、榊、鬼童を巻き込んだ。麗夢も、巨大な光の圧力に抗しきれず、あっさりと後方へ弾き飛ばされた。アルファ、ベータは身体を低くして四肢を踏ん張り、絡まり合って倒れる円光達を支えるのに精一杯だ。鬼童の霊波測定装置が、甲高い警報音をわずかに鳴らして、すぐに沈黙した。測定限界を遥かに超える力の前に、その機能を完全停止したのである。
 それは、ほんのコンマ数秒程度の、正しく刹那の出来事だった。
 視神経が灼き切れるかと疑うほどの凄まじい光の奔騰が止んだ。まだ、朧に霞む視界よりも先に、麗夢、円光、アルファ、ベータ、更に榊、鬼童ですら、圧倒的なボリュームで魂を圧する、漲る力を肌に感じ取った。思わず怖気を震う面々に、嬉しさを隠せないでいる死神の哄笑が降り注いだ。
「礼を言うぞ、麗夢、それに榊と鬼童よ。そのガラクタ、思念波砲といったか、わしから見れば幼稚で未熟な機械だが、まあ役には立った。褒めてやるぞ」」
 呼びかけられて、3人は涙のにじむ目でルシフェルを見た。その姿は、一見、いつもの闇を体現する漆黒の老紳士然とした姿にしか見えなかった。さっき異様に膨らんだように見えた玉櫛笥の小箱を右手に持ち、いつの間にまた抱えたのか、左脇に小柄な皐月の身体を無造作に持って、泰然として佇んでいる。だが、麗夢と円光、それにアルファ、ベータの5感を超える研ぎ澄まされた超感覚が、ルシフェルを取り巻く膨大な力の存在をはっきりと感じ取っていた。その力は、白と黒の太い二本の帯となってルシフェルを足元から幾重にも取り巻くように交差し、ゆっくりと回転しつつシルクハットの上まで揺らめいている。ちょうどルシフェルの細身の体に、二匹の色の異なる大蛇が絡みついているような姿だった。
「これが見えるか? 麗夢」
 ルシフェルは、その二本の帯に目配せして言った。
「これは、わしと貴様らの力、即ち、ドリームガーディアンとしての力を寄り集め、増幅した純粋なる夢のエネルギーだ。黒はわしの力、白は貴様らの力というわけだ。分かりやすいだろう?」
「な、何をするつもりなの? ルシフェル!」
 尻餅をついたまま、辛うじて麗夢は言葉を返した。最悪の予想が脳裏に浮かび、思わず額に脂汗が浮かぶ。対するルシフェルは、そんな麗夢の焦りなど歯牙にもかけぬ様子で、朗々と喜びを口にした。
「これでわしの夢が叶う。増幅された貴様とわしの力、そしてそれを更に強力に練り上げる夢の至宝、玉櫛笥。この全てがそろった今こそ、この世に地獄を顕現するまたとない好機よ」
「地獄を顕現する?」
「その通り。わし一人の力ではまだ不足した。もちろん貴様の力を使っても、この世に地獄そのものを安定化させるには足りない。だが、今、わしの手にはこの玉櫛笥がある。これさえあれば、ここに地獄そのものを露出させ、現世と、霊的にも、物理的にも文字通り地続きにすることができるのだ。そうなれば麗夢、貴様が幾ら剣を振るおうとも、もはやどうにもならぬ。この世は真の闇に覆われ、光が駆逐されて消滅する。死と恐怖が全てを律し、破壊と混沌があらゆるものを支配するのだ。この世は破滅し、宇宙は滅びる。わしのこの手で、究極の終焉へと世界が導かれるのだ。どうだ、素晴らしいと思わぬか麗夢!」
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