かっこうのつれづれ

麗夢同盟橿原支部の日記。日々の雑事や思いを並べる極私的テキスト

パソコン壊れた!

2010-04-30 22:31:34 | Weblog
 いつも使っているやつをなんだかちょーっといじっていたら、動かなくなってしまいました。仕方ないので、ずいぶん前にジャンクで買ったリコーのマザーボードを遊びで組み込んだやつを急遽セットし、もう本当に久しぶりに電気を通して、応急的にネット環境のみ、回復させています。
 連休中は、どうやらメインマシンの復帰に費やすことになりそうです。
 またOSのクリーンインストールなどやらなくちゃいけないのかなあ、とちょっとブルーです。明日の小説更新、果たしてできるかどうか・・・(泣)。

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この問答集は鵜呑みにしていいんでしょうか? 都の『青少年の健全な育成に関する条例改正案』

2010-04-29 21:55:55 | Weblog
 ゴールデンウィーク、始まりましたね。と言いつつ、私は明日金曜日はもちろん、明後日土曜日も仕事で出勤ですし、今日も仕事の関係先とメールでやり取りして書類作りしたりと在宅勤務状態でしたので、連休が始まった、という実感に乏しいのです。まあもう少し頑張って、5月2日以降は、それなりに連休を満喫することにしようと計画はしております。それを楽しみに、もうしばらくは頑張らねば、というところですね。

 さて、物議をかもした東京都の『青少年の健全な育成に関する条例改正案』、問答集を見かけたので、ざっと目を通してみました。何でも、質問殺到でその多くが情報不足による誤解や曲解による質問・非難であったため、都の見解を難解な条例文ではなく、判りやすく具体的な例も挙げながら説明することにしたのだそうです。既にネット上では、具体例に挙げられているアニメキャラの話でもちきりだったりしているようですが、これを読む限り、特段の心配は無さそうに思えてきます。都の言いたいのは、年端の行かぬ子供に、その子供達相当のキャラクターが酷い目にあっているのを見せたくない、という話で、そういうものを作ることや大人に販売することについては何ら規制するものではない、と言うことのようです。おおよそ、以前副知事がブログで書いていた通りのことがより詳しくまとめられ、執拗なくらい、この条例で漫画・アニメの製作・販売が規制されるわけではないことを繰り返し述べ立てています。
 その通りならまあ目くじら立てることも無い、と私は思うのですが、正直言って信用ならないのは、これがまだ都の事務局サイドの見解に過ぎないかもしれない点です。果たしてあの都知事は、この問答集にちゃんと目を通して、公開を決裁したんでしょうか? また、議会の各議員はどう考えているのでしょう? 前回の議会での討論を漏れ聞く限り、こんなぬるい内容が都の真意である、と信じるのは到底無理な気がするのですが。それに、誤解を解きたいのなら、この問答集に書いてある通り条例文を起こし、誰が見ても誤解が生まれないように明文化すればいいのです。都の看板で公開されたとは言え、どれだけ行政的に意味のある文章なのかも不明な問答集で納得しろ、といわれても、なかなか首を縦に振る気にはなれないと思います。単なる火消しのためのその場しのぎという疑いがどうしてもぬぐえませんから。

 そういえば、大阪ではBL系雑誌が「有害図書」指定され、18歳未満への販売・閲覧が禁止されましたね。ああいうのって消費者層は中高生が主体なんでしょうか? 正直よく判らない世界なので、この大阪の事態がどれくらい他に波及するのかいまいちピン、と来ないのですが、例えばインテックス大阪で開催されているCOMIC CITYなどはこれから規制対象になったりするんでしょうか? それならそれでタイヘンなことになった、と実感できるんですが。

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大極殿!

2010-04-28 22:37:46 | Weblog
 昨日のあれた天気などすっかり忘れたかのような上天気になった今日、連休を前に、少し休みをとって平城宮跡に出かけてみました。
 平城宮跡では、この間平城遷都1300年祭が始まった所なのですが、同じ県内に住んでいて、平城宮跡には今まで行ったことも無かったので、お祭りに乗じて行ってみることにしたのでした。ただ、連休などに行くと10中89ものすごい人出に呑まれてヒドイ目にあいそうに思えたので、少々無理をして有休を取り、連休直前の平日に行きました。それでもなかなかの人出で、遣唐使船のところなど行列もできておりました。集まっているお客さんは、おそらく修学旅行生と思われる制服姿の高校生や、遠足と思しき小学生の集団、それとお年寄りの団体ばかりで、私のような子供と年寄りの中間の男性、というのはほとんどおりませんでしたが、平日でこの調子なら、明日以降の連休中は想像通り相当な混雑になるんじゃないか、と思われます。
 さて、それはともかく、正直あんまり期待もしていなかったのですが、行ってみるとなかなか良いところで、久しぶりにデジカメ携帯で写真を撮りまくりました。困ったことに、デジカメのメモリからPCにデータを移すためのアダプタが見あたらず、写真をブログに登録することが出来ないのですが、とりあえず携帯からメールでアップロードした1枚を公開しておきます。鳴り物入りで建設された、大極殿です。近くを近鉄が通っておりまして、仕事で奈良市に行く時などよく車内から建設途中の姿を観ていたのですが、いずれも遠くから見ているだけなので、細かいところまでは判らず、タダなんとなく赤っぽいちょっと大きな建物が建っている、というようにしか感じませんでした。それが、実際に近くまで寄ってみると意外に凝った作りをしていて、絢爛豪華、と呼ぶにふさわしい意匠であることに気付かされました。そのあたりも撮影したはずですので、アダプタ見つかり次第おいおいアップして行こうと思います。
 ところで、会場へは車で行ったのですが、自家用車の場合はパークアンドライドで会場手前の駐車場で一端車を停め、そこからシャトルバスで行くようになっています。奈良交通バス全面協力のもと、バスの本数もかなり頻繁に出ていて、結構快適に移動できます。ただ、その駐車場の場所がわかりづらかったのが玉に瑕、でしょうか。一応本通りと言うべき国道筋から案内看板は建っているのですが、駐車場が国道から少し細い道を入ったところにあって、それも結構奥な上に途端に案内表示が少なくなっていたため、始めは本当にこの道であっているのか? と疑心暗鬼なまま進まざるを得ませんでした。駐車場は市立の運動公園のものを借り受けて運営されていたのですが、そのことがどこにも記されておらず、最初はそこと判らずに素通りしてしまいました。なるべく公共交通機関で来るよう求めているので、ひょっとしたら自家用車はわざと判りにくくしてあるのか、と邪推してしまいました。
 そのあたりの感想も含め、後日アップしたいと思います。

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なんだか一日になんども台風が通過しているかのような、慌ただしい天気でした。

2010-04-27 22:02:31 | Weblog
 今朝、4時にものすごい風の音に一度目が覚めました。ところが、6時過ぎに目覚ましで起きてみると、雨はそこそこ降っていましたが、あの嵐を思わせる風は全然吹いていません。狐につままれた思いで出勤いたしますと、途中、八重桜の並木が満開になっていた道が一面ピンクの絨毯を広げたように美しく彩られ、木の方はすっかり若葉に変わっていました。やはりあの風でひと吹きに飛び散らされたんだな、と納得したのですが、走っていくうちに南の空には青空が見え、職場にたどり着いてみると、雨もすっかりやんでしまいました。一日雨という予報がこれで終わりか、と拍子抜けしていたのですが、時折、全くの無風状態からいきなり猛風が吹いてびっくりさせられるような天気が続き、昼にはまた雨が降ったりして、一日めまぐるしく天気が変わりました。帰宅の時など、職場を出るときは別に風も無かったのに、しばらく行くと、信号待ちで止まっていても凄まじい風に車体が揺すぶられるのが分かるほどに風が吹き、家に着く頃にはまたやんで無風に、一息ついて風呂に入っている最中にまた猛烈な風が吹いて、とまるで落ち着きがありません。アメダスデータではせいぜい4,5mの風なのですが、瞬間最大は多分桁違いに吹いていたんじゃないか、と思います。明日には天気も落ち着いてくるそうですが、ほんとメリハリがあるというか極端と言うか、瞬間湯沸かし器みたいな天気の激変には本当に驚かされます。
 
 でもそろそろ桜も散り果てましたし、表紙のしかえ時ですね。休みの日に、少しいじるといたしましょう。

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なんだか生ぬるい『仕分け』で、やる必要もなかったような気もしますが、まずは何よりでした。

2010-04-26 21:47:08 | Weblog
 なんだかようやくにして、回復してきた、というのを実感できる程度には体調が復調してきたみたいです。とりあえず咳が出なくなり、のどの痛みはほぼ消失しました。後は鼻詰まりと時折襲ってくる猛烈なくしゃみですが、これは毎度完全消失するまでは結構かかるので、少しずつマシになればよかろう、と達観しております。
 それにしても、自分では全然意識していなかったのですが、土曜日の突然の乱調は、その日の朝の寒さにあったようです。この日、奈良県内でも氷が張る最遅記録を更新したそうですが、とにかく寒い朝だった、とのこと。ただ、日が出てからは急速に気温が上がったために、寝坊した私は、意識すること無く無防備に我が身をその寒さに晒してしまったわけです。まあ、原因がわかったからと言ってどうしようも無いわけですが、少なくとも、今年はもう4月も終わろうか、という時期になって、まだ氷が張るほどに寒くなることもある、という近年にない異常気象ぶりを示してくれる年だ、ということを、身をもって体感しえた、という点は収穫といってよいでしょうか。まあとうに判っていたことと言ってしまえばそれまでですが、多分この調子でこの一年は狂いっぱなしの天気が続くのでしょう。その覚悟を意識しえただけでもよしとしておきましょう。

 さて、行政刷新会議の事業仕分け2日目、科学技術分野の話は、前回のノーベル賞受賞者をはじめとする各位の猛反発に懲りたのか、随分穏やかで丁寧な印象を受ける対応、しいて言えば腰が引けているようにも感じられる節もある様子で行われ、結局、科学技術振興機構JSTなどの独法の研究助成予算が削られずに済んだのは僥倖でした。これで少しは仕事がやりやすくなりそうな気がします。ただ、この仕訳のおかげで予算の執行がいつになく遅れてしまってるようなことはありませんか? 研究によっては一日たりとも無駄に出来ない、今しかチャンスが無いような課題もあるでしょうに、その時点で肝心の資金が無く、いざお金が使えるようになったときにはとうに時期を失して、来年まで一年を棒に振る、なんてこともあるでしょう。これは別に仕分けに限らず、国の予算のつけ方、使わせ方にもある問題ですが、せめて科学技術予算だけでも、単年度予算主義ではなく、事業採択決定以前の必要経費も含めて数年分まとめて最初に渡すなりして、少しでも研究者に使いやすい形にする、という努力が必要だと思います。まあ徐々にそういう方向になってきてはいるのですが、いろんなところでまだまだその手の無駄がはびこっていて、そういうところこそ「仕分け」して効率化を図って欲しい、と思うのです。

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麗夢のガチャポンがでるんだそうですが、このところ毎年麗夢関係で何か動きがあるのがうれしいですね。

2010-04-25 22:18:55 | ドリームハンター麗夢
 休みで気が抜けたのか、昨日は症状がにわかに改まり、一日中、それは酷い有様でした。咳が止まらないし、鼻は詰まるし、頭はぼうっとなるし、そろそろ治るかな? と期待していただけに、これはちょっとショックでした。夕方頃には少しマシになったので、なんとか連載小説のアップにこぎ着けましたが、流石に今回は休載已む無しかな? と一時は覚悟してしまいました。あんまりマトモな頭の状態ではなかったのですが、とりあえず破綻はしてないはず、と思っています。ただ、昨日寝る直前、もっとああ書けばよかった、と思いついたところが2,3あって、今朝起きたら少し書き直そう、と思っていたのですが、実際に今日になってみるとそのときの思いつきがほとんど記憶に無くて、結局ほんの少しだけ書き加えただけになってしまいました。今もなんとか思い出そうと頑張っているのですが、まだ全然出てきません。ひょっとして思いついたポイントは、それ自体夢だったんじゃないか、と思うようになってきています。そんなわけで、今一番怖いのは、この後の展開に影響するような書き方になっていないかどうかという点。来週までにそのあたり確認して、場合によっては書き直すこともありかも? とやや弱気になっています。
 まあ昨日はそんな感じで一日を休養に当てたためか、今日はどうやら快方に向かい、マシな状態に落ち着いています。中でも咳が落ち着いたのがありがたいです。明日以降、なるべく早く快復してくれたらいいな、と切に願います。
 
 ところで、ドリームハンター麗夢のガチャポンのフィギア、正式名称は何て言うのか知りませんが、いよいよ7月に出るのだそうですね。初めてこの話を聞いたのは、確か一昨年の夏、御大とお会いしたときに伺ったと記憶しているのですが、その後何のアクションもないので、残念ながらあれは企画だけされて結局流れたんだ、と勝手に思い込んでおりました。それがこうして日の目をみようと言うわけですから、なんともいつもながらの不死鳥のごとき様子にはほとほと感心してしまいます。
 また御大から情報が入るようなことがあればお知らせしようと思いますが、もうネットで発売するぞ! と公開されているわけですし、ゆっくり発売の日を待とうと思います。
 3年前はDVD、一昨年から昨年はコミックス、今年はガチャポンフィギア、ならこの次は? なんて期待するのは、気が早すぎますでしょうかね?

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03.南麻布学園初等部 その2

2010-04-24 23:17:44 | 麗夢小説『夢の匣』
 自分の教室の前にたどり着いた瞬間、キーンコーンカーンコーン、と間延びした音色が鳴り響いた。既に予鈴は職員室で聞いたから、これは間違いなく本鈴だろう。教頭先生の魔の手を逃れ、廊下をダッシュし、一足飛びに階段を駆け上がり、もう時間よ止まれ! とばかりに頑張りつつも、流石にもう間に合わないか、と悲観的に思っていただけに、本鈴と同時に到着できたのは、私に取っては奇跡的な僥倖だった。ほっと一息ついて、本鈴が鳴り止むまでに部屋に入ろうと、引き戸の取っ手に手をかけて、はたと力を込めるのを抑えた。
 まず上を見る。
 ついで、左右を。
 廊下に面して、教室の摺りガラスの窓が、何事もないかのように整然と壁面を作っている。窓ガラスの並びの向こう、後ろの出入口の扉もピタリと閉じていて、やはり中の様子は伺えない。
 ……静かすぎる。
 向こうの隣のクラスから、先生のかけ声や子供ざわめきが廊下に漏れ聞こえてくる。だというのに、自分のクラスはというと、まるでヒトがいないかのように静まり返っている。
 おかしい。普段は他クラスに負けず、うるさいと感じるくらいに元気で活発な子供たちなのに。
 きっと何か仕掛けてあるのだろう。
 私の脳裏に、この間の屈辱的ないたずらの記憶が蘇った。
 これみよがしに扉の上に挟まれた黒板消しに気づいて、まあなんて単純な、とほくそ笑みつつ扉を引き開けると同時に飛び退いたら、廊下にばらまかれたパチンコ玉をもろに踏み、それはもう見事にお尻からすっ転んだのだ。あの時は、クラスのマセガキ共に思い切りスカートの中身をさらけ出すわ、お尻が痛いわ、ちょっと所要で遅れてきた副担任の教頭先生にも呆れられたり怒られたりしたわで、もう散々な目にあった。もちろん、犯人の子も教頭先生に捕まってたっぷりお説教を受けていたけれど、それくらいでおとなしくなるような子たちなら、私もこの静けさを警戒したりはしない。なにせ新学期始まって以来、ここは文字通り戦場なのだ。
 私は本鈴が鳴り止むのも構わず、じっくり状況を観察し、万一飛び退いた時に備えて背後の床にも目を配って当面の危機的要素が無いことを確かめてから、改めて入口の扉に手をかけた。
 ガラガラガラ、と歴史を感じさせる校舎にふさわしい音を立てて、教室への扉が開かれる。既に遅刻しているけれど、慌てずゆっくりと教室に足を踏み入れる。
「ごめんなさいね、遅れちゃって」
子供たちに笑顔を振りまきながら、上下にさり気なく気を配り、床にも頭上にも異常が無いことを確かめて、後ろ手に扉を閉める。
 正面にはいつも使っている教卓。
 その右手の壁に沿って黒板。
 扉を挟んで反対側の窓には、初夏の麗らかな空が映え、そして、ずらりと並ぶ席に収まる、すまし顔の子供たち。
「あれ? どうしたの? 随分静かじゃない」
 なんとなく不気味な物を感じつつ、それでも努めて笑顔を崩さず、こちらを向いている子供たちの顔を順に見る。でも、誰一人目を合わそうとしない。
 ようやく教卓までたどり着き、自分の教科書や、プリントを置く。普通ならここで日直の子が、「起立!」と声を掛けるのだが、この午後はそれも無い。
「本当にどうしたの? 今日の日直さんは……」
 背後の黒板の端に記されている、日直の名前を確めようと振り向いたその目の前が、突然ピンク色に染まった。鼻に、ツン! と甘いけれど濃厚で刺激的な香りが押し入ってくる。な、なに?! 新手のいたずら? と飛び退きかけた時、そのピンクの束が下げられ、見覚えのなる男の子の顔が、余り見覚えの無い真剣な顔つきで、声をかけてきた。
「1周年だってよ。先生」
「へ?」
「ほら、記念の花束」
 男の子、サカキシンイチロウ君が、再び私の目の前に見事な花束を押し付けてきた。
「おめでとうございます先生」
「ちぇっ、もっと早く辞めるかと思ったのになあ」
「私は信じていたもんね」
「嘘言え! 3ヶ月で辞めるって賭けてたじゃないか」
「そ、それはそれ、よ」
 途端に教室の中が蜂の巣をつついたような喧騒を取り戻した。
「あ、ありが、とう」
 私はとにかく花束を受け取ってはみたが、いまだ何が何だか判らないまま、いつもいたずらばかりする男の子の顔をボケっとみた。すると、そのふてぶてしい顔が見る間に赤く上気して、やがて我慢し切れないというように、ぷいっと子供たちの方へ振り返った。
「もういいだろ! 役割は果たしたからな!」
「ダメよ! ちゃんと先生に1年間いたずらしてごめんなさい、って言ってないじゃない」
「わ、分かったよ」
 サカキ君が改めて振り向いて、ぺこり、と頭を下げた。
「この1年、色々いたずらしてごめんなさい! これでいいだろ!」
「え? ええ……」
 私はまだ呆然としたまま、胸を張って自分の席に帰るサカキ君を見送っていた。
「先生、大丈夫ですか?」
 流石にずっと呆けたままの私に、子供たちも気づいたらしい。教室の真ん中に座るクラス委員長の荒神谷皐月さんが、立ち上がって声をかけてきた。
「わ、私、何のことだかさっぱり、なんだけど……」
 すると、教室中に「えーっ!」と驚きの声が重なった。見事な合唱ぶりにビクっと驚いてみんなの方に振り返ったが、その時、初めて後ろの黒板に大きく書きつけられた文字に気がついた。
「1周年おめでとう! 綾小路先生!」
 1周年? 何の?
 まだ面食らって目を白黒させている私に、荒神谷さんが苦笑しながら話しかけてきた。
「ですから、先生がこの学園に赴任されてから、今日でちょうど1年なんです」
「え?」
「そして、5年生の途中で、事故で入院されたマツオ先生の代わりに担任になられてから1年、ってせってい……」
「! と、とにかく私たちの担任として1年になるの!」
 荒神谷さんの隣で、眞脇紫君が言いかけたのを、斑鳩星夜さんがその後ろから羽交い締めにして強引に遮った。なんだか不自然なやりとりだったけど、私はそれよりも、自分の辿ってきた時間に思いを馳せる方に気をとられていた。
 『1年』……。
 そうか、ソウダッタンダ……。去年、どこの学校にも採用が決まらずに落ち込んでいた私が、この学園の急な空き募集に藁もつかむ思いで応募し、採用してもらってから、あっという間の1年間。私の頭の中に、その『1年』の出来事が文字通り走馬灯となって『整然』と、順を追って流れ去った。
「先生が来てくれなかったら、あのシニガミが担任でした。だから、僕たちは感謝しているんです」
 席についたサカキ君の隣で、いつも彼とつるんでいたずらばかりしているキドウ君の声だ。
「……そう。これは、その御礼」
 いつもは本当に口数少ない纏向琴音さんが、彼女にしては長いフレーズの言葉を紡ぐ。
「み、みんな大げさよぅ」
 私は、思わず花束を抱きしめながら、自分としてはさり気なく目元をぬぐった。
「でも、ありがとう。先生、これからも頑張る!」
 ヘンな夢や教頭先生の愛のムチでめげかけていた気力が急激にチャージされるのを実感する。これだ、これがあるから教師はヤメられないのだ。私は素直に感動して、この子達のために、少しでも未熟な状態から脱皮していこうと心に誓った。そんな感動の嵐に飲まれていたせいか、荒神谷さんがにやりと笑って、なにかつぶやいたのは聞こえなかった。
「……これでツカミはオッケーね。あとは……」
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真っ暗闇の漆黒の夢を見たのですが、ところどころあるはずのない映像の記憶が残ってるのが不思議です。

2010-04-23 22:34:49 | 夢、易占
 天気予報のごとく、今は毎日体調が気になるわけですが、喉の調子はとりあえずひきつるような鋭い痛みは大分収まり、鈍痛位に変わってきました。それに取って変わるように、むずがゆい咳の発作が強くなり、昨夜は布団に入るまではまだマシだったのですが、身体が温もってくるに従って咳が出て難儀を致しました。多分今夜も似たような調子になるでしょう。明日は休みなので、多少寝付きが悪くても安心できるのがせめてもの救いでしょうか。

 さて、そんな夜でしたが、夢だけはしっかり見ました。と言っても、「見た」といってよいかどうか。一応記録しておきましょう。
 真っ暗な闇の中です。音もありません。ただ、不安は全く無く、どちらかと言うと心地よい感じがしています。隣に誰かいます。私より若干背が低いヒトです。性別は不明ですが、多分女性ではないか、と思われます。私は子犬を抱いています。彼女(便宜上そう呼びます)は子猫を抱いています。子犬、子猫はもちろん、彼女も真っ暗闇なのでどんな姿をしているのかさっぱり見えませんが、何故かそこにいてそれぞれを抱いている、という確信だけはあります。と、子犬が私の懐から飛んで逃げました。すると、彼女が私に子猫を預けてきました。柔らかな毛で覆われたしなやかで赤ん坊のような小さな身体が私の手のひらに収まります。猫は脇腹をかいてやると気持ちよいだろう、と言うことで、片手で軽く脇腹をかいてやりますと、お礼なのか正面から大きな目をくりくりさせて私の顔に猫パンチを繰り出してきました。私は爪でひっかかれるとイヤだな、と思いつつも我慢していると、肉球が頬に触れるだけで、傷つけられることはありませんでした。

 見えているはずがないのに、まるで時折見えているような気がする、不思議な夢でした。それにしても、猫がそれで気持ちよくなるのかどうか、私は知りませんが、脇腹をかいて喜ぶのは普通犬ですよね。それと、私はキホン犬が大好きで猫は嫌いなヒトです。ですので、いくら可愛らしい子猫だからと言って、現実世界ならあんなに可愛がることはないはずなのですが、そこが夢の面白いところで、夢の中では私はまるで愛猫家の一員になったかのごとくでした。
 さて、夢占いでは、猫は女性を暗示するのだとか。そういえば、ここ最近何故か妙に女性と仕事することが増えてきています。大学の先生も、以前は男性ばかりだったのですが、このところの国策もあるのか、助教クラスには女性が増えてきています。企業の方も、女性スタッフが増えているようで、そういう方々と仕事の話をする機会が多くなってきているのです。まあ仕事ですから、相手が女性かどうかよりも、そのヒトが何をできるか、私と仕事をする上でどれだけパートナーとして互いに役に立てるか、と言う点が大事なので、あんまり性別は関係ないのですが、それでも無意識下では相手の性別は結構厳密にとらえているのかもしれません。それが反映しての夢なのかどうか。犬は病気や凶運を象徴し、猫は幸運を表わすという夢占いの暗示もあるようですので、病気が去って幸運がやってくる、というような夢解釈が成り立つのなら嬉しいのですが。

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アイスランドの火山、飛行機が飛ぶ飛ばない、だけでは済まない事態になるかもしれません。

2010-04-22 22:20:52 | Weblog
 のどの痛みはようやく和らいできていますが、まだ鼻の奥がひきつるような感覚が残り、時折鋭い痛みが走り、回復までの道は遠い、という様子です。更に、今日は昼過ぎから咳が出るようになってきました。毎日すこしずつ症状が変化していくのはみようによっては面白いのですが、せめて痛みが消えてくれないと、変化を楽しむ気分にはなかなかなれません。多分、この土日は休養のみ心がけて過ごすことになるのでしょうね。

 さて、そんな症状には厄介な気象変動が続く今年のおかしな春ですが、アイスランドの噴火は、更に輪をかけて天気をおかしくしてしまうかもしれない、という懸念が広がっているようです。つい最近では、1991年のフィリピンのピナツボ火山の噴火が影響して、1993年、日本では何時まで経っても梅雨が明けず、結局夏らしい夏の無いまま季節が過ぎて、米が凶作になり、タイ米を輸入しないとやって行けなくなったことがありました。毎日しとしと雨が降り続き、毎晩ムカデが這い出してきて困った記憶がまだ鮮明に残っています。あれと同じことが、これから起きるかもしれない、というわけです。聞くところによると、今回の噴火はなかなか収まらずに1年くらい続くだろう、なんていう話もあるようで、しばらくは冷夏や世界的な凶作、ひょっとして飢饉? なんてことも、警戒しないといけないかもしれません。我が国でも、鹿児島県桜島が例年になく活動活発で、小規模の爆発や噴煙は、既に昨年の総数を超えたのだとか。ひょっとしてひょっとしたら大正時代以来の大噴火なんてこともあったりするのかもしれません。そうなれば1,2年以内の凶作はほぼ確実。影響が我が国の農業だけにとどまるはずも無く、例えば水不足で悩むお隣の超大国など、もし凶作になったりしたら、それこそ暴動、下手すりゃ革命がおきかねない不安定状態をもたらすかもしれません。そうなったらなんとか我が国が飢えずにすんだとしても、戦火のとばっちりを食わずに済むとはとても思えず、といって戦前のように我が国も参加して各国協調進駐し、安定を計るなんてことは到底出来ないでしょうし、今や我が国は、とんでもない危地に立たされているかもしれないわけです。子ども手当やら高速道路実質値上げやら米軍基地問題やら農家戸別補償やらで右往左往するような頼りない政府を戴いている余裕は全くない緊急事態を迎えつつあると言っても過言ではないはずなのですが、政府の方々や農水省のお役人などにそのような危機感があるのかどうか。選挙に勝って国滅ぶ、なんてことのないようにして欲しいのですが。

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「はやぶさ」が帰ってくるというのに、「きぼう」撤退なんてつまらない事を言う輩が信じられません。

2010-04-21 21:36:26 | Weblog
 眠気は思ったほどキツクは無かったですが、それでも午前中は気を抜くと眠り込んでしまいかねないような不安がつきまといました。午後からは、クスリも切れてきたのか眠気は失せ、代わりに鼻がムズムズしてきました。喉は相変わらず痛いので、一日中のど飴を舐め続けています。虫歯もいらないのでなるべくノンカロリーの方を嘗めるようにしているのですが、食べ過ぎるとお腹が緩くなるので、適宜砂糖入りのも嘗めていたりしています。流石に一日中だと食傷気味ですが、これもいたし方ありません。

 さて、我が体調の方は今年前半でもっとも悪化する低調期ですが、小惑星探査機「はやぶさ」の方は順調に飛行を続け、ついに、6月13日(日)23時頃、地球に帰還、小惑星「イトカワ」からの採取物を抱いているかも知れないカプセルをオーストラリアに落としてくれるのだそうです。一時は帰還自体が絶望的にも思えたこのプロジェクト、時間こそかかりましたが、ほぼ完全な形で幕を閉じてくれそうです。
 13日はどんな報道体制がとられるのか知りませんが、もしオーストラリアのカプセル落下予定地点至近からの生中継とか、この帰還をリアルタイムで祝う番組が催されるのなら、久々に自らテレビの前に陣取ってもいいな、と思っております。
 一方で、宇宙ステーション実験棟「きぼう」が、存続の危機に立たされているのだそうです。企業の関心が薄くて商業利用がほとんどされず、巨額の費用に見合った成果が得られないために、前原誠司・宇宙開発担当相の私的諮問機関とやらが撤退が妥当、と意見しているのだそうで、費用対効果を明らかにすべき、と提言もされるのだとか。
 私などから見れば、宇宙開発のような先端科学の分野で即商売が成り立つなどと考える方がどうかしている、と思うのですが、これまでに費やした8000億円や、年間維持費400億が惜しくてたまらないヒトがいるようです。あの馬鹿げたとしか言えない「子ども手当」のわずか100分の1にも満たぬ少額で宇宙空間に地歩を築き、各種のそこでしか不可能な実験を行い、無人輸送機HTVの成功など我が国の宇宙工学に計り知れない経験を積ませ恩恵を与えてきた、文字通りの「きぼう」に対し、その価値をたかがビジネスになるならぬの次元で語ろうと言うのが私には理解できません。まあそこそこの成果は出ているのだし、今は撤退してまた余裕ができたらやりましょう、なんて考えてるのかもしれませんが、技術は休んだらそこで振り出しに戻ってしまい、再開などそう簡単にできるものではないことを理解していない「ビジネスマン」が多すぎるのではないでしょうか? そもそも、すぐにビジネスが成り立つなら、ほっといても民間企業が自主的に動きます。そういう即時的な期待が持てない分野だからこそ、国がわざわざ税金のうちから金を出して開発を進め、技術を磨き、いずれビジネスになる遠い将来に備えるのでしょうが。政治家の、科学技術に対する見方というか、期待する方向性が根本的に間違っているような気がしてなりません。

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花粉症ひどくなってしましました(泣)。

2010-04-20 22:19:54 | Weblog
 困ったことに、昼ごろからくしゃみが連発して鼻の奥が炎症を起こしたようで、風邪を引いた時みたいに痛くなっています。流石にこれはどうしようも無いので、夕食後、花粉症のクスリを飲みました。眠くなるリスクはありますが、もしこじれて本当に風邪にでもなって熱でも出た日には大変です。多少のリスクは覚悟してでも、アレルギー症状はここで抑えこまねばなりません。でも、明日の昼間はそれはそれは眠くて仕方ないだろうな。いっそ時間単位で有休とって昼寝でもしたほうが良いかも?
 それはそうと、既に眠気もひどくなってきていますし、炎症を回復させるためにも早く寝た方がいいに決まっているので、今日はとっとと寝ることにします。明朝少しでもマシになっていたらいいんですが……。

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もう牧草花粉の襲撃に怯えねばならぬ季節になったようです。

2010-04-19 22:12:20 | Weblog
 今日は午前中久々に野外での仕事をしていたのですが、2時間ばかりしたところで、急に鼻がムズムズしてくしゃみを3連発した後、目がしょぼしょぼして頭痛と目眩が起こって午後は難儀しました。何が起こったのか、と最初は訳が分からなかったのですが、後でつらつら考えてみると、どうやらそろそろイネ科の牧草の花粉が飛び出しているんじゃないか、と思いつきました。もちろん自分がこいつらの花粉にはすこぶる弱いので、花が咲いていないか、花粉が出ていないか、仕事しながらもかなり注意して観ており、草は伸びているもののまだ花がさくところまでは至っていない、と判断して息苦しいマスクは無しでおりました。でも、おそらくですが、気の早い極少数の牧草が花をつけ、おりからの暖気に誘われて花粉を飛ばしていたのでしょう。本当に真っ盛りの時にそんなところに出ようものなら、マスクくらいでは到底太刀打ち出来ませんし、くしゃみや眼だけじゃなくて、全身に異様な発疹が生じて気分が悪くなり、脱力して気力も何も失せます。ほとんどアナフィラキシーショック状態ですから、そのうち命に関わるんじゃないか、とびくついてもいるのですが、今回はそこまでは行かなかったので、多分花粉もまだ本当にごく低濃度だったのでしょう。それでも不愉快な目眩が居座り難儀したのですが、どうしても片付けないといけない報告書が有ったので、こんな目眩くらい気力でしのいでやる! とばかりに午後の自分を鼓舞して頑張り、幸い夜には心身の異常は解消しました。ですが、ぼちぼち第2の花粉時期、それもスギ花粉とは比較にならないほど恐ろしいヤツの季節が始まるようで気が重いです。
 ただ、スギ花粉と違ってあんまり遠くまで飛ばないのか、草むらに突進でもかけない限り酷い目に遭う事は案外無いのも確かです。今日は仕事で仕方なくフィールドワークでしたが、これからはしばらく息をひそめて、雨の日以外は外に出るのを控え、草むらには絶対に近づかないように気を付けるようにしないといけません。
 明日からはまた雨が続くみたいなので、ちょっとほっとしています。

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カラオケで病気を吹き飛ばすことって本当に出来るものなのですね。

2010-04-18 22:03:23 | Weblog
 昨日は連載小説をアップした後、職場のカラオケ愛好家達で毎月開催している8時間カラオケマラソンに参加した後、ファミレスで夕食をとりながら駄弁り続けるという有意義な休日を過ごし、小説以外にブログをアップすることが出来ませんでした。でも、久々の仲間とのカラオケは楽しかったです。正月からこっち、土日も学会で出張だとか色々とタイヘンでなかなか都合がつかず、3ヶ月も欠席してしまったのですが、今回は昨年6月以来積み上げてきた曲目数がついに一千曲を超えたという祈念すべき会で、それに参加できたのは僥倖でした。のべでは既に一千曲を超えていたのですが、重複を除いて数えていって、ようやく大台に乗ったのです。始めたときはもっと早く届くんじゃないか、と思っておりましたので、感慨もひとしおでした。
 
 ただ、何故だか毎月のこの会合の際、体調が万全だった時がほとんどないのです。今回も3日ほど前から寒気がして、4月らしからぬ寒さのせいだ、と思っていたのですが、一作日あたりから喉までおかしくなって、いよいよ風邪でも引いたかも? と、先日見たムカデの夢なども思いあわせて不安を抱えておりましたところ、昨日は酷い下痢に見舞われ、30分ともたずにトイレに駆け込むような有様で、よほど参加を断念しようか、と思ったくらいでした。易で占った結果、なんとかなりそうだ、と判断して家を出発したものの、途中具合が悪化したら躊躇なく中断・帰宅するつもりでした。なにせ始めのうちなど体に力が入らず、食欲も無く、フリードリンクはひたすら暖かいお茶系を選択してそれを飲みすぎないよう注意しつつチビチビやって、歌は無難にあまり力まずに済む軽いのを選ぶ体たらくです。それがなんとも現金なもので、歌っているうちに次第に体調が回復してきて、終り頃にはすっかりいつもの元気を取り戻しておりました。今にして振り返って見ると、この体調不良、風邪だけじゃなくて、何らかのストレスも関係していたのかも知れません。やっぱり多少無理してでも、好きなことをするときはあとのことなど考えず思い切りやった方が健康にはよろしいようです。まあ昨日頑張ったせいか、今日は朝も遅く起きて、あとはひたすらDVDなどを観て過ごしてしまいましたが、たまにはこうして無駄に時間を潰してみるのもいいんじゃないか、と余裕を持って感じられるのも、昨日のカラオケのおかげでしょうか。……少々言い訳がましいかもしれませんが(苦笑)。

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03.南麻布学園初等部 その1

2010-04-17 12:00:00 | 麗夢小説『夢の匣』
「……せい、……うじせんせい!、……起きなさい!」
「ふぇ?」
 突然の衝撃に揺さぶられ、一瞬遅れて額を襲った衝撃に、私は、やられた! と気を許した自分の不覚をなじった。なんとなく遠くで、「この馬鹿者が!」と舌打ちしている声が聞こえてきたような気がする。
 …… …… …… 。 
 あれ? ここどこ?
 奴は……?
 ……、……奴って
 ……誰だっけ……?
「先生、早く起きなさい。午後の授業が始まりますよ」
 おぼろに霞む目を開き、がっくり落ちた首をもたげて見上げた視線の先に、さっきまで争っていた敵の魁偉な顔が浮かぶ。ロマンスグレイと呼ぶにふさわしい豊かな銀髪の下に、血色のあまり良くない痩せた顔つき。その割にやたらと鋭い目と、まるで突き出されたように聳える見事な鷲鼻。
「……ア、シニガミハカセ……」
「くっ! 貴女までくだらないあだ名を……ま、まだ寝ぼけているんですか? 綾小路先生!」
 アヤノコウジセンセイ……。
 その名前が耳に入った瞬間、私は一気に覚醒した。思わず視線が教頭先生の顔から職員室中央の柱にかかる時計に走って、一瞬だけほっと胸をなで下ろす。午後1時10分前。まだ、充分に間に合う!
「す、すみません! 昨日あまり寝てなくて……」
 慌てて取り繕う私に、シニガミ、じゃない、教頭先生の盛大なため息が襲ってきた。
「まだ1年ちょっとの貴女が初めてクラス担任になって、慣れない仕事で多忙を極めているのは判っています。故に、昼休み机の上でいぎたなく昼寝をすることはまだ容認しているのです。ですが、仮にも教師が授業に遅れるなど、貴女を指導する副担任として許すわけには行きません。何時までも新米気分でいてもらっては困るのですよ」
「……すみません」
「それとも、何かお悩みでも? ならば私が、専門家としてカウンセリングして差し上げますよ」
 言葉は丁寧で口調は柔らかそうだが、その端々に有無を言わさぬ圧力を覚える。なにせ相手はこの南麻布学園初等部教頭にして、副担任と言う名前の、初めて6年生のクラス担任を受け持つ私のお目付け係。そして、T大文学部心理学科を首席卒業し、れっきとした学位を持つ優秀な研究者。しかし、その物腰柔らかな仮面の裏に、怜悧で傲岸不遜な本性を隠し持ち、なかなか言う事を聞かない生徒を心理的に追い詰めて矯正する徹底した指導ぶりは、一部生徒たちに「死神博士」の令名を轟かせている南麻布きっての辣腕教育者だ。本当に文字通り新米だった去年はまだ判らなかった私も、今やその言葉の鎌で命を刈り取られ続ける毎日を送っているんだから、寝ぼけ眼で思わずポロッとその二つ名をこぼれてもしょうがないというもの。でも、今も口元をひくひくさせながらお説教モードを続ける様子からも、ご本人がそのあだ名を相当気にしているのが分かる。
「あ、あの、本当に、大丈夫ですから。教頭先生」
「そうですか? 何やらうなされていましたよ。何か嫌な夢でも見たのではないのですか?」
 自分の顔が急に発熱したのを自覚する。教頭先生の指摘は、当に図星だった。確かにこの数日、私は奇妙な夢に悩まされている。けれど、だからといって、死神博士のカウンセリングなんて、死んでも受けたいとは思わない。いくら優秀な心理学者だからといって、わざわざその噂に聞く『実験台』に上がるなんて、御免被りたい。
「いえ、本当に大丈夫ですから」
「先生、夢を甘く見てはいけませんよ。夢は無意識の窓。貴女が意識しない貴女の本質や悩みを知る絶好の手がかりになるのです。さあ、話してみなさい。夢分析は少々専門外ですが、充分にお役に立てると思いますよ」
 しまった、食いつかれた! 私は狼狽してとにかくこの場をごまかすことにした。
「い、いえ! ご相談したいのはやまやまなんですけど、実はどんな夢を見たのか覚えていないんです」
 すると教頭先生は疑わしそうな目で一瞥し、なおも執拗に迫ってきた。正直、その目と態度が怖い。
「ふむ……。では、催眠療法など試してみましょうか。一時的に失われた記憶を呼び覚まし、貴女の深層心理に眠る問題点を切り出して、解決に導きましょう」
 もう! あー言えばこう言う! このままじゃ死神博士の格好の餌食だわ! 私は大慌てで職員室を見回すと、ようやく一点の光明を見つけて、目の前の鷲鼻に笑顔を向けた。
「教頭先生、あの、時間がもう……」
 私は、さっき目覚めた時に見た時計が後2分で午後1時を告げようとしているを遠慮がちに指差した。
「え? こ、これはいけない! 私としたことが……! 綾小路先生はすぐ教室に行きなさい! お話は放課後伺いましょう! ……なんです? その顔は」
「な、なんでもないです! 行ってきます!」
 え?放課後も? とあからさまに嫌な顔をしてしまったのを、きっとシニガミは放課後までしっかり覚えていることだろう。あーぁ、これはちょっと取り返しのつかない失敗だ。放課後は相当みっちり絞られるに違いない。これも、またヘンな夢を見てしまったからだろうか……。
 私は、実はまだ忘れていなかった、というよりすっかりおなじみになって忘れようにも忘れられなくなっているさっき昼寝の最中に見た夢を思い出しながら、担当の教室に急いだ。
 でも所詮は夢だ。
 無意識からの警告だとか暗示だとか、専門家の教頭先生にいわれなくても、私も人並みにその程度の知識ならかじっている。昔からその手の話は好きだったし、教育者への道を選んだのも、それがきっかけでもある。だから、その夢には人一倍興味と関心と、そして不安があった。でも、それで仕事や生活が左右されているわけでもない。実害も、こうして危うくシニガミハカセの毒牙にかかりそうになったり、授業に遅れそうになって廊下を駆け足で走らされたりするくらいのものだ。
 ……ただ……。
 そう、ただなんとなく、まるでその夢が自分を眠りに誘い込んでいるような気はしていた。昼休み、教頭先生いわく「いぎたなく」眠りこけてしまうのも、単に疲れだけとは言えない気がする。何の根拠もない、ただの印象だけれども。
 でも、そんな思考は自分の受け持ちクラスが見えてきたところで封印した。
 今はとにかく授業に集中しないと!
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筍を掘り出す吉夢を見ました。

2010-04-16 20:47:58 | 夢、易占
 なんか異様に寒いですね。そろそろコートもしまおうか、と考えていたのに、今日はコートマフラー手袋全部装備して出勤しました。昼間もちっとも気温上がらないし、本当に今4月? 桜終わったところ? と冷たい風に疑問しきりでした。
 かつて、十数年前にも一度こんな年があって、その年は何時まで経っても梅雨があけず、ついに気象庁が梅雨明け宣言しないままに涼しい夏とは言い難い夏が過ぎて、秋になってしまいました。今年もそんな異常気象年になるんでしょうか? 夏涼しいのは過ごしやすくってありがたいですが、春寒いのは体調崩れやすくなるので勘弁して欲しいです。

 まあそれでも夜眠る布団の中は別天地で、昨夜も色々と夢を見ました。覚えているのはひとつだけですが、それを記録しておきましょう。

 私は以前住んでいた家の駐車場にいます。その家は山の麓にあって竹林に囲まれており、駐車場もそんな竹林を切り開いて車一台分踏み固めた場所で、頭上は茂った竹が幾重にも重なり、天然のカーポート状態になっています。何故か車がないその駐車場に、何人かの知り合いの人とともに私は立っています。駐車場の向かって右の竹林沿いに、一列になって筍が生えてきています。駐車場奥は既に50センチくらい地面から頭を出していて筍から竹に変わろうとしており、出入口に向かって少しずつ小さくなって行きます。筍は頭を出してしまう前の地面が少し盛り上がったり割れたりしている時に目ざとく見つけて掘り出すと、柔らかくてエグ味の無い美味しい筍が取れるのですが、頭が出てしまうと急速に硬さとエグ味が増して、おいしくなくなってきます。私はほぼ20センチ間隔に並ぶその筍の列を順に見て、もこっと土が盛り上がり、少しひび割れているところを見つけて、スコップで掘りました。30センチばかり掘り下げると、立派な筍が一本、現れました。下手にスコップを入れると途中で折れるので慎重に穴を掘り広げ、太ももほどもありそうな筍を掘り上げました。その掘り出した筍を含めて、1列に並ぶ筍は、全部で10本ありました。そうこうしていると、一匹のムカデが地面を這っているのに気づきました。竹林にはムカデが一杯いて、土の中で冬眠しています。出てくるには少し早いですが、多分掘り返したりしたのでびっくりして動き出したのでしょう。私は即座に退治することを決断し、スコップで殴りかかりましたが、簡単には潰れません。そこでスコップを立てて頭から5センチ位のところで叩き切りました。頭を失った足の方は跳ねるようにうごめいて暴れていましたが、頭の方はそれを残してひたすら逃げています。私は、足の方はほっといてもいずれ動かなくなるので、まずは頭に止めを刺さないと、と更にそれを追いかけました。

 夢占いによると筍や竹は生長や成功、宝など、幸運の象徴であり、いいことがある前兆なのだそうです。ムカデにもお宝の象徴があるらしいですが、どちらかと言うと私にとってはクモ同様体調の悪化を暗示するモノとして認識しています。そのせいでも無いのでしょうけれど、やたらと寒気がしますし、喉がいがらっぽくも感じられます。ムカデは一応夢の中では退治したので、筍の本数ぶんだけ何かいいことがあればいいんですが。

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