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市立札幌病院事件6

2005年01月04日 16時20分13秒 | 法と医療
前の記事を読んでみて下さい。続きです。

日本には司法取引が存在しているのかどうかは分かりません。松原医師は起訴前に医師法違反を認めるならば、「罰金2万円でよい」と言われ(略式起訴?)たようです。起訴後の記者会見で、そのような発言を被告は行っていました。しかし、この申し出を受けると、救急研修が法的に大きな制約を受けることになってしまうため、拒否したそうです。



検察側の冒頭陳述は次のようなものでした。

松原医師が
・独断で歯科医師のレジデントを救命救急センターに入れた(慢性的な人員不足を補うため)
・歯科医師3人と共謀し、気管内挿管等をはじめとする絶対的医行為を医師法違反であることを知りながら行わせた
というもので、松原医師の経歴や立場などに言及し、その立場(センターの責任者であり、厚生省の委員会委員などでもあった)を利用して慢性的な人員不足を補うことを目的として歯科医師を利用したという「絵」を描いたようです。冒頭陳述としては珍しく、30分弱に及ぶ検察官の長い「演説」であったようです。

共謀事実について、弁護側から日時やどのような内容か質問したがありましたが、公判で明らかにしていくという回答だったようです。



私は「共謀」の法的定義がよくわかりません。しかし、証人の証言では、センター長であった松原医師が個々に歯科医師に医行為の内容について指示したりしたことはなく、基本的に指導的立場にあった上級医師がそれぞれ指示をしていたことは明らかでした(どこの大学病院や大きな病院でもそうですが、研修医に教授や責任者がいちいち細かな指示を与えることは少なく、直属の上級医師が教育することが多いようです。長となる者が、末端の人間に全ての指示を与えることが少ないのは会社とかでも同じようなものですね)。このような間接的な関与でも、共謀事実があったと言えるものなのでしょうか。


また、「人員不足を補う目的で」歯科医師の受け入れを決定したことについても、普通の感覚ではあり得ないと思われます。前に書いた医療制度改革5の記事でも述べましたが、若手医師に教育することは足手まといや面倒なことはあっても、戦力としては数に入れることなど到底考えられないし、新人なんてはっきり言って役立たずの存在でしかないでしょう。効率を第一に考えると、ベテランばかりで構成されている方が有利に決まっているのです。検察官はこんな簡単なことに何故気づかなかったのでしょう?

裁判に検察官と一緒に来ていた司法修習生が居眠りしていたことがあったそうですが(検察官の証人尋問があまりに的外れで、弁護側主張を崩せるものではなかったらしく、傍聴に来ていた記者がそのように述べたようである)、そういう研修の立場の人間の面倒を見ることが大変なのは司法の世界に限ったことでもないと思いますが。居眠りした司法修習生は何も教えなくても一人で何でも出来て、手がかからない人だったのかもしれませんけれども。


検察官は検察側証人(センター副部長の医師)に尋問した時に、弁護側主張とほぼ近い証言(歯科医師受け入れは個人的判断ではなく病院の会議を経て決定されたとの認識、歯科医師が行った絶対的医行為が医学的に不適切ではなかったこと、歯科医師の研修が公的に認められるべきであること、など)をしたため、苛立ちから(事前の取調である検面調書と)「随分違う発言をしますね」とか「被告の前では発言しにくいのか」「弁護側から圧力がかかったのではないか」「弁護側が検察側証人に面会しあれこれ聞き出すのは問題がある」などと発言したとされる。裁判において、検察官がこのような発言をすることは非常に問題があるのではないか。証人は自分の考える事実を話しており、検察官が考える「絵」にそぐわないからといって、証人を揶揄するかのような発言や単なる推量で「弁護側の圧力説」を公判中に発言するなど、不適切なのは検察官側と思うのです。

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3 コメント

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Unknown (こねこ)
2005-01-05 15:15:15
まさくにさん、



私立札幌病院事件シリーズ、内容が濃いのですが、ちょっと長いです~。 要約を入れて頂いたら、夜寝る前に読んでもボケタ頭でも理解することが出来るかな。。。?



まだ10時ですが、もう眠いです☆



今年もネットで楽しく遊びましょうね~♪
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Unknown (通りすがり)
2005-01-07 04:52:25
『(事前の取調である検面調書と)「随分違う発言をしますね」とか「被告の前では発言しにくいのか」「弁護側から圧力がかかったのではないか」「弁護側が検察側証人に面会しあれこれ聞き出すのは問題がある」などと発言したとされる』・・・この部分,検察官としては,後に検面調書を刑事訴訟法321条1項2号後段の書面として証拠請求する前提での質問である可能性が高い。刑事訴訟法321条1項2号後段の書面を請求する前提であれば,検察官として不適切どころか,しておかなければならない類の質問だと思います(質問方法,態度が適切であったかどうかは,別問題として残りますが)。
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Unknown (まさくに)
2005-01-07 10:54:12
正確なコメント有難うございます。私は裁判や刑事訴訟法はよくわかりませんが、検察官が起訴前に捜査した結果、被告が「独断で、もしくは発言力を背景に強硬に」レジデントを受け入れたのではないか、という推量をしたと考えています。その根拠は、主に病院の事務局員とセンター副部長の証言であったと思いますが(病院会議の議事録に受け入れのことが載っていなかったこと、ちなみにこれは議事録が抜き出されて破棄された可能性があると言われています、センター内で事前の討議がなかったことなどと思いますが)、一方のある証言だけを採用して他の証言を無視するような「絵」をかくということが疑問なのです。自分が作成した検面調書を証拠請求するのは当たり前のような気がしますが(自分の「絵」を証明するにはそれが必要に決まっています)、法廷で自分の「絵」に固執するが故の発言と思います。判決ではこの検察側主張は退けられていますが、真実とは言えないような調書を作成した挙句、それをどうにか立証しようとする裁判上のテクニックが本当に必要なのか?とも思います。裁判における戦術としてその方法が正しいとしても、真実を明けらかにしそれに基づいて被告の法的責任を問うという根本理念からはかけ離れた態度であると思うのです。国民はそんな裁判を望んでいるのでしょうか?
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