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米中連携ということ~4・尖閣事件再考

2010年09月29日 12時33分37秒 | 外交問題
詳しく見たわけではないので正確には分からないが、今回の一件で軍閥の暴走といったような珍奇な解説があったようだ。また、これを機に「日米関係強化」というスローガンをやたらと有難がる連中が、まるで手先の如くに吹き上がっているのを見るにつけ、愚かというのは罪だなと感じた。
日本というのは、こうも簡単に操作されてしまうものなのだな、と落胆と共に危機感を覚えた。今回の政府対応が典型的な例であると思うが、基本的に知識層・エリート層の堕落と無知蒙昧が酷いレベルになっている、ということを示したものと思う。


こういう言辞がいとも簡単に通用してしまう、ということである。

はてなブックマーク - 中国政府がおかしい: 切込隊長BLOG(ブログ) Lead‐off man's Blog


中国の対応が徐々にエスカレートしていったのは、軍閥の暴走だの何だのといったことのようには見えない。ただ単に、「中国の利益」というものを考えればそうなるだろう、ということだけで十分である。自国の利益になるから、という理由があるだけで実行に踏み切れる、ということだ。
更には、日本政府の対応がお粗末過ぎたということが影響しており、もっと優秀で勘の良い人間がやっていれば、ここまでの事態には至らずに収束していた可能性は高いであろう。

当初は抗議とガス田交渉延期申し入れという、比較的軽微な反応であった。この時点くらいで落とし所を探っておけば、ここまで大袈裟になることもなかったはずである。
しかし、日本側の対応が鈍い上に、マスコミの論調なども「中国は失礼だ」といったものばかりで、「解決に向けた動き」というものを一切見せなかったことが、中国側の硬化を更に招くことになったであろう。

例えば、菅総理の訪米では日米会談のセッティングにだけ集中しており、代表戦後の菅総理が中国側首脳と会いたい、という申し入れすら全くしていなかったであろうから、余計に厳しい反応を招くということになるであろう。
そうした外務省の対応についての観測(日本国内報道)が流れて以降、観光客の大規模キャンセル、SMAP公演中止、という具合に、中国側は政府間のやりとりに留まらず、広範な分野での「拒絶のメッセージ」を送り続けてきたわけである。このような搦め手戦術の是非については、異論は多くあろうけれども(決して褒められたものではない)、日本側は無視し続けたわけであるから、更なる措置を招いたというのが中国側の言い分であろう。


中国は米中会談を控えていて、それなりの成果を示そうとしていたはずである。その一部が、こうした日中間の「緊張」というものであった。米国は、これに便乗してもよい、或いは「この程度まではやるだろう」という暗黙の了承の下にあった可能性すらある。米国の反応は後述するとして、再び中国の強硬な措置に話を戻そう。

分岐点となったのは、19日の勾留延長だった。
報復措置として、上海万博訪問団の一方的拒否、政府の省や部の交流・遣り取り停止、21日にはニューヨーク入りした温家宝首相の「無条件釈放要求、起こることは日本側が責任を負う」という強い声明が遂に出されることとなったわけである。中国側首脳の直接的表現となったのは、この温発言が初めてであり、少なくともそれ以前には国際社会に向かっての強烈なメッセージというものは出されていなかったわけである。

これ以後は、取られる手段がより強硬となった。
まず4名の邦人拘束、翌日にはレアアースの輸出停止が報じられた。


そして、温・オバマ会談、前原・クリントン会談、菅・オバマ会談となった。
日本での釈放は、これらの流れの中で実施された。特に、前原・クリントン会談で米国側からの「早期解決」を暗に求められていたものと思われる。

菅総理とオバマ大統領の会談では、尖閣問題に触れることすらなかったからだ。
前原大臣は、日米安保の適用を確認した、と報じられたので、尖閣問題について話す機会を持っていた。で、翌日に釈放となったわけである。

中国はこのタイミングというものを予め知っていたか、読んでいたのではないか。つまり中国側がかなり強硬な手段に出たとしても、米国側から「早期に解決を目指せ」と求められれば、日本が「釈放に応じるだろう」ということを予期するのはそう難しいことではない、ということである。つまるところ、「日本はアメリカの言うことを聞くはずだ」ということを織り込んでいた、ということである。中国にとっての利益とは、これだ。
間接的に「日本がアメリカのいうことを聞く」というのを達成できれば、それは米国への利益提供なのであり、そこは米中間での損得勘定、ということなのだから。



では、米国にとっての、今回の一件はどうなるだろうか。
日本の愚かな連中にしてみると、「日米同盟の重要さが確認された」とかいうお得意のスローガンを言うに違いない。それは、アメリカにとっての成果、ということになるだろう。

傍観者を決め込んでいた米国にとっての利益とは、まさしくこのような日本国内の反応・雰囲気を作り出すことである。だからこそ、米国が日本に突きつけた要求とは、先日も書いた(米中連携ということ~3)が「金よこせ」というものなのだ。

18日に思いやり予算の増額要求が報じられた。その大義名分とは、「対中抑止・対中戦略経費」といったものだ。つまり、「今のように尖閣で暴れる中国」を相手にするのだから、もっと金出せ、ということである。米国にとっては、中国が暴れれば利益となるのである。だからこそ、米中は今回の一件で呼吸を合わせていたと見ることができる、ということだ。


キャンベル次官補は、釈放が報じられた後で「釈放してよかった」と述べた。更に、菅総理や前原外相を持ち上げる、クサイ外交辞令を述べた。2人の指導力や政治的決断を褒め称えたのである。これは、どう見ても怪しいわけである(笑)。

ベーダー上級部長は、オバマ大統領と温首相の会談で尖閣の話を一切しなかった、と述べた。

米国務長官:尖閣問題で日中に「対話」促す、米は中立表明(Update1) - Bloomberg.co.jp

オバマ大統領は、菅総理との会談時にも尖閣問題はおろか、中国には一切触れなかった。普通であれば、人民元問題について協調して取り組みましょう、とか、中国軍事力に共同で対処しましょう、とか、定型的な話を取り上げてもよさそうではあるのに、全く触れなかったということだ。

その上、日本の愚かな連中は「尖閣が安保の対象という言質を得た」と大喜びで語っているけれども、PJは「尖閣諸島の”主権”に関してはいかなる立場もとらない」と明言しているわけである。この意味を考えることができないのだろうね、犬どもは。
「主権が日本にある」とは言ってない、ということなのだよ。

それを、米国は尖閣を守ってくれる、とか信じているなら、なんてお目出度い連中なんだ、とは思うね。ここまで来ると、本物のアホかな、と思う。
本当にアメリカが日本のことを大事に思っているのなら、中国に警告の一つも言うはずだ。自分の彼女が悪者に絡まれたら、「オレの女に手を出すな、どうなるかわかってるのか」くらいのガンを飛ばすくらいできるだろ(笑)。そういうのがない、ってことだな。


ここ最近の海外メディアの論調が中国に批判的になったもんだから、米国政府も「(韓国や日本という)パートナーを支援します」という表現をしてくるようになっただけ。
少なくとも日米会談前までは、尖閣問題について完全中立・完全傍観者という立場を米国がとっていたわけで、これは客観的には「中国寄り」ということを意味しているわけである。



結局、米国は外交的利益を獲得した、とみなすことができる。

日本には、思いやり予算増額要求、普天間は返さない(かグアム移転費大幅増額を示唆=棚上げ)、日米同盟の効果を強調、などである。

中国との間では、ゲーツ訪中を中国側から招請、停止していた軍事交流再開、人民元問題に触れるが目立たず、胡錦涛国家主席の訪米調整、などだ。


従って、日米中での関係で見れば、日本一人負け、である。


中国は、「日本が低姿勢なら、応じる用意はあるよ」ということで、頭を下げてくれば元に戻してやってもいい、というようなものだ。時間が経てば、さほど傷はつかない。

04年のASEMでも中国側が拒否とかあったし、原潜の侵犯事件とか反日デモなんかが05年にかけてあったけれど、一時的にデメリットはあったがその後の中国の商売ができなくなったりはしなかった。もしそういうリスクをもっと評価していたりするなら、05年以降の中国の経済活動はもっと停滞していてもよかったはずだ。



要するに、尖閣についての米国の言質を取れた、なんて、今更何言ってんの、と。日米同盟の価値云々なんてのも、勘違いとしか思われず。中国の脅威についてとか、05年以降からずっと言われてきたことで、欧米諸国の一時的措置などは幾度かあったし。


日本は外交の資質に欠けている。
外務省がバカなのは、理由があるんだろう。彼らだけの責任でもない、ということかな。




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