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原発停止と自治体首長権限に係る法的根拠の検討~2

2012年05月06日 01時28分03秒 | 法関係
続きです。

(2)都道府県知事、市町村長の権限

知事には、何の権限もない、法的根拠もない、などと言う連中がいるようだが、それは本当なのか?
到底、信じられないわけだが。
当方の見解を述べることにする。


①原子力災害対策特別措置法における権限

この法律には、都道府県知事や市町村長の権限の規定がある。


○原子力災害対策特別措置法 第7条

原子力事業者は、その原子力事業所ごとに、主務省令で定めるところにより、当該原子力事業所における原子力災害予防対策、緊急事態応急対策及び原子力災害事後対策その他の原子力災害の発生及び拡大を防止し、並びに原子力災害の復旧を図るために必要な業務に関し、原子力事業者防災業務計画を作成し、及び毎年原子力事業者防災業務計画に検討を加え、必要があると認めるときは、これを修正しなければならない。この場合において、当該原子力事業者防災業務計画は、災害対策基本法第二条第十号 に規定する地域防災計画及び石油コンビナート等災害防止法第三十一条第一項 に規定する石油コンビナート等防災計画(次項において「地域防災計画等」という。)に抵触するものであってはならない。

2  原子力事業者は、前項の規定により原子力事業者防災業務計画を作成し、又は修正しようとするときは、政令で定めるところにより、あらかじめ、当該原子力事業所の区域を管轄する都道府県知事(以下「所在都道府県知事」という。)、当該原子力事業所の区域を管轄する市町村長(以下「所在市町村長」という。)及び当該原子力事業所の区域をその区域に含む市町村に隣接する市町村を包括する都道府県の都道府県知事(所在都道府県知事を除く。以下「関係隣接都道府県知事」という。)に協議しなければならない。この場合において、所在都道府県知事及び関係隣接都道府県知事は、関係周辺市町村長(その区域につき当該原子力事業所に係る原子力災害に関する地域防災計画等(災害対策基本法第二条第十号 イ又はハに掲げるものを除く。)が作成されていることその他の政令で定める要件に該当する市町村の市町村長(所在市町村長を除く。)をいう。以下同じ。)の意見を聴くものとする。

3  原子力事業者は、第一項の規定により原子力事業者防災業務計画を作成し、又は修正したときは、速やかにこれを主務大臣に届け出るとともに、その要旨を公表しなければならない。

4  主務大臣は、原子力事業者が第一項の規定に違反していると認めるとき、又は原子力事業者防災業務計画が当該原子力事業所に係る原子力災害の発生若しくは拡大を防止するために十分でないと認めるときは、原子力事業者に対し、原子力事業者防災業務計画の作成又は修正を命ずることができる。



条文が長いので要点だけ、ざっくりと書くと次のようなことである。

・原子力事業者防災業務計画の作成・修正(検討は毎年)の場合には、管轄する都道府県知事、区域に含む市町村長、関係隣接都道府県知事に協議しなければならない(2項)。

・所在都道府県知事と関係隣接都道府県知事は、関係周辺市町村長の意見を聴く(2項)

・主務大臣は、計画が不十分であると認める時には、計画作成または修正を命令できる(4項)


従って、原子力事業者が防災設備を追加したり、変更したりするということで、防災対策業務計画の変更や修正をするとなれば、知事や市町村長との協議が義務付けられている。

関連があるのは、
・所在都道府県知事
・所在市町村長
・関係隣接都道府県知事
・関係周辺市町村長
ということになる。


関係周辺市町村について政令で定めるというのは、次の規定によるものと思われる。

○原子力災害対策特別措置法施行規則 第3条

法第七条第二項 の政令で定める要件は、次の各号のいずれかに掲げるものとする。

一  当該市町村の区域につき当該原子力事業所に係る原子力災害に関する地域防災計画等(災害対策基本法 (昭和三十六年法律第二百二十三号)第二条第十号 イ又はハに掲げるものを除く。)が作成されていること。

二  前号に掲げるもののほか、当該原子力事業所の区域との距離その他の事情を勘案し、当該市町村の区域につき当該原子力事業所に係る原子力災害の発生又は拡大の防止を図ることが必要であると所在都道府県知事又は関係隣接都道府県知事が認めること。

三  前二号に掲げるもののほか、地域防災計画等(災害対策基本法第二条第十号 ロ又はニに掲げるものを除く。)の的確かつ円滑な実施を推進するため当該市町村の協力が必要であると所在都道府県知事又は関係隣接都道府県知事が認めること。



これも非常に簡単にいうと、次のような場合である。
・地域防災計画が作成されている(1号)
・所在及び隣接都道府県知事が認める(2号、3号)
関係周辺市町村は、国が決めるのではない。知事が決める権限を有するのだ。


ここで言う「隣接」とは、海を挟んでいても隣接とみなすものと思う。「都道府県」になっているから、である。北海道には陸続きの県が存在しないが、海を挟んで隣接県が存在する。なので、海を挟んでも市町村は所在市町村と隣接市町村という関係は成立するものと考える。

従って、市町村長は知事に意見を言える、知事と所在市町村長は事業者との協議をする、という権限がある、ということである。

協議については、次の通り。

○原子力災害対策特別措置法施行規則 第2条

法第七条第二項 の規定による協議は、原子力事業者防災業務計画を作成し、又は修正しようとする日の六十日前までに、所在都道府県知事、所在市町村長及び関係隣接都道府県知事に原子力事業者防災業務計画の案を提出して行うものとする。この場合において、原子力事業者は、原子力事業者防災業務計画を作成し、又は修正しようとする日を明らかにするものとする。

2  所在都道府県知事又は関係隣接都道府県知事は、法第七条第二項 の規定による意見の聴取を行うため、相当の期限を定めて、前項の規定により提出を受けた原子力事業者防災業務計画の案の写しを関係周辺市町村長に送付するものとする。


事業者は計画案を作成し、60日前までに知事と市町村長に提出する(1項)。知事はその計画案の写しを関係周辺市町村長に送付し、検討期間を確保した後で意見聴取を行う(2項)、となっている。


②環境影響評価法における権限

過日、沖縄の普天間基地問題でも出てきた法律である。防衛省がドサクサで沖縄県庁に運び込んだのが、このアセスに関する書類だった。

○環境影響評価法 第2条第2項

この法律において「第一種事業」とは、次に掲げる要件を満たしている事業であって、規模(形状が変更される部分の土地の面積、新設される工作物の大きさその他の数値で表される事業の規模をいう。次項において同じ。)が大きく、環境影響の程度が著しいものとなるおそれがあるものとして政令で定めるものをいう。

一  次に掲げる事業の種類のいずれかに該当する一の事業であること。

イ 高速自動車国道、一般国道その他の道路法 (昭和二十七年法律第百八十号)第二条 に規定する道路その他の道路の新設及び改築の事業

ロ …
ハ …

ニ 空港法 (昭和三十一年法律第八十号)第二条 に規定する空港その他の飛行場及びその施設の設置又は変更の事業

ホ 電気事業法 (昭和三十九年法律第百七十号)第三十八条 に規定する事業用電気工作物であって発電用のものの設置又は変更の工事の事業

(以下略)

この「第2条第2項第1号ホ」では、電気事業法における発電用設備工事に関する事業が該当する。第一種事業は、アセスを行うことになる。

簡単に手続きの流れを書いてみる。
・方法書送付(6条)
・公告、縦覧(7条)
・意見ある者は意見書提出(8条)
・管轄都道府県知事、管轄市町村長に8条意見書概要を送付(9条)
・管轄市町村長の意見を聴く(10条2項)
・9条書類に配意しつつ、管轄知事の意見を書面で提出(10条1項)

つまり、知事は意見書を提出できる、市町村長は知事に意見表明できる、ということになるわけである。


また、再稼動の場合の権限は、これとは異なると思われる。
第一種事業ではなく、第二種事業が該当すると思われる。

○環境影響評価法 第2条第3項

この法律において「第二種事業」とは、前項各号に掲げる要件を満たしている事業であって、第一種事業に準ずる規模(その規模に係る数値の第一種事業の規模に係る数値に対する比が政令で定める数値以上であるものに限る。)を有するもののうち、環境影響の程度が著しいものとなるおそれがあるかどうかの判定(以下単に「判定」という。)を第四条第一項各号に定める者が同条の規定により行う必要があるものとして政令で定めるものをいう。

前項の全部の条件を引用すべきだが、複雑になるので割愛する。二号イの規定において、
『その実施に際し、免許、特許、許可、認可、承認若しくは同意又は届出が必要とされる事業』
とあるので、原子力発電所の通常の検査後再稼動がこれに該当するものと思われる。

この第二種事業の場合には、アセスを行うべきかどうかについて、意見を求める必要があるのである。


○環境影響評価法 第4条第2項

前項各号に定める者は、同項の規定による届出(同項後段の規定による書面の作成を含む。以下この条及び第二十九条第一項において「届出」という。)に係る第二種事業が実施されるべき区域を管轄する都道府県知事に届出に係る書面の写しを送付し、三十日以上の期間を指定してこの法律(この条を除く。)の規定による環境影響評価その他の手続が行われる必要があるかどうかについての意見及びその理由を求めなければならない。

この条文は何を言ってるのか判り難いが、規定の意味をざっと書くと次のようなことである。

第二種事業の場合には、30日以上前に管轄都道府県知事に対して、アセスを行う必要があるかどうか、を聴かねばならない、ということだ。意見とその理由を求めよ、ということである。なので、原発の場合だと、再稼動をしたいが、「アセスをやるべきですか、どうですか」と聴け、ということになる。知事が「いや、あまり環境に影響はないので、アセスは必要ないですよ」と答えると、じゃあ再稼動を許可しますね、ということになるわけだ。

で、知事に意見を求める人は誰か、ということになるが、前項各号で決まっている。
原発再稼動の場合だと、4条1項1号と思われるので、許認可(承認、同意含む)権を行使する者や届出受理者(普通は所管省庁の許認可権者)ということになる。

で、第二種事業は、知事から回答が得られ、アセスが必要ないよ、という回答(4条3項2号)が行われるまでは、実施できない(4条5項)。


アセスの手続きに準じる場合には、市町村長は知事に意見を述べる+知事は意見書を出す、ということで、原子力災害対策特別措置法と似たような仕組みになっている。アセスの必要がない旨を知事が理由とともに意見を述べるのであれば、第二種事業として以下の手続きを進めることになる。この回答が得られるまでは、第二種事業を実施することが禁じられている。原発ならば、再稼動できない、ということになる。

期間規定があるので、30日以上前ということから、4月中というのは元から困難だった可能性がある。都道府県知事宛に送付されたのがいつか、というのが気になるところである。


と書いてきたが、第一種及び第二種事業は、環境影響評価法施行令で定められており、原発事業に関しては、新規設置とか発電設備新設を伴う工事とかだけだ。しかもこの場合、第二種がない。
なので、本法における知事権限は、再稼動とは関係なさそうかも。

ただし、実務上では、これに準じて協定などが存在しているのかもしれない。



以上、(1)と(2)をまとめると、
・電気事業法29条届出の供給計画に不備が存在
・原子力災害対策特別措置法7条の防災対策業務計画変更に伴う知事や市町村長の協議と意見聴取

といったあたりが、原発停止の理由として挙げられるであろうか。




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