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健保組合は医療保険制度上で圧倒的に有利

2009年04月13日 11時17分47秒 | 社会保障問題
大雑把に言うと、「金持ちの家に生まれた子はいい医療を受けられるが、貧乏人の家に生まれた子は医療を受けなくてもいい。貧乏な家に生まれたのは努力が足りないからだ。」というのが、健保組合などの主張みたいなものですよ。


①健保組合は「昔からの特別な財産」を相続してスタートしているところがある

健保組合には多くの「昔からの遺産」が与えられてきた。主に大企業が運営し、サラリーマンなんてそんなに数がいなかった時代だったので(圧倒的多数が農業、他は自営だったから)、組合には国からの補助金が1人当たりいくら、という形でつぎ込まれた。そういう資産を長年積み上げてきているのが、大企業の組合なのだ。しかも加入者の圧倒的大多数が働き盛りの若年層であり、扶養家族も入っている、なんて言っても、年寄り自体が昔は少なかったじゃないか。65歳以上なんて、人口の1割にも達してはいなかった。60歳まで生きていたら長寿ですね、なんて時代だったからだ。

なので、給付するべき医療費なんて断然少なくて、病気を沢山持ってる年寄りに医療費がたくさんかかるようになる、なんてことも殆どなかった。だから、余ったお金で自前の病院を作ったりして、それでも十分黒字だったわけです。老人医療費の無料化さえ実施されたくらい、給付対象が少なかったのだ、ということ。

その他に、医療保険料率についての特別の優遇措置があったのだ。自主的運営に任せていたので、そうした運営費を賄うという名目で保険料負担を国から軽減してもらえたのだ。だから、組合の運営をやって給付が保険料収入を下回ると、企業が利鞘を稼ぐことが出来ていたのだ(集めた保険料に比例するので、相当大きな額となっていたはずだ)。そういうウマミが大きかったから、大企業では組合運営をやりたがっていた面もあったであろう。

バブル崩壊後に、厚生年金の代行返上が相次いだ時期があったが、企業が「もうやめたいです」という時には、ウマミがなくなっているのである。だから「やめる」と言うに決まっているのである。しかし、何らかのウマミがそこにある限り、「やめる」とは決して言わない。それは、従業員の健康が心配だから、とか、社会貢献したいから、とか、そういう生温い考えに基づいてなどいないわけである。単純に、企業が儲かるか儲からないか、その選択のみである。

これを肝に銘じて欲しい。
「健保組合を存続させろ」と強硬に主張する裏には、必ず「儲けの論理」によるウマミが必ずあるからである。

なければ、やめると言い出すに決まっているからだ(笑)。実際、そうなってる組合はあるしね。
公務員共済とかの、かなり裕福な団体なんかも、よく観察していれば判るよね。病院経営とか、一杯やってきたでしょ?あれって、金が余るからやってきたわけで、そういう過去からの大きな資産蓄積のあった連中というのは、それを手放したくない、って頑張るに決まっているよ。

大金持ちの家の息子が親からガッポリ遺産相続し、1億円持ってスタートしてる人間と、貧乏人の親の元に生まれて借金100万円背負ってスタートしている人間が、同じ制度に統一しましょうってことで持ってる資産は一括で集めて均等に配分します、ってなったら、金持ち息子は絶対に大反対するに決まってるだろ(笑)。息子が偉くて1億円を稼いできたわけではなく、元々は国からの大きな資金投入を受けてきたり、年寄りに給付せずに済んできたから、という、親の代で特権的ウマミにありついてこれたから、というそれだけの理由なのだ。

因みに、公務員共済から抜けてしまって、単独運営になると大変困った企業もあるようで、例えばJRやNTTなんかの組合経営はどうなのかと言えば、そりゃ「昔は良かった」ってな話でして。国からの金が引っ張れないとなれば、「保険料を上げる」とか「給付を削減(抑制)する」ということしかないわけで、現実にそうなってしまいましたな。組合の制度ってのは、これが普通なんだよ。だが、公務員共済なんかであれば、給付抑制もせず保険料値上げもしないが、「別なお財布=国庫から持って来い」ということで、好き勝手につぎ込めてきたのだ、ということですな。

組合の加入者たちに、「病気にならないように努力させたから、健保組合は黒字経営ができるんだ、貧乏人の多い国保は自己管理のできてない連中が多いから沢山病気になり、医療費がいっぱいかかるんだ、そういう努力を怠っているからだ」とか言う人がいるかもしれないが、そういうのは殆どが裏付け根拠のない、自助努力の結果とかいう「錦の御旗」に過ぎず、加入者の構成比とか過去の絶大なる遺産の上にあぐらをかいているだけ、ということがかなりあるだろうと思う。


②制度が単純化されると困る人間は誰か?

まず、厚生労働省の役人どもの天下り先がなくなるから、困る、ということになる。更に、制度が複雑であるからこそ、仕事も複雑になり、外見的には管理する部門(お役所&役人たち)の存在意義が強調されることになるだろう。国民皆保険なんて言って、だったら「基礎年金」と同様に同じ共通制度にしたらいいじゃないか、という話だわな。けど、そうはならない。
だから、役人たちにとっては制度が簡単になってしまうと様々な面で不利なわけで、当然そんな仕組みを作ろう、なんてことには賛成しないだろう。つまり、そもそも健保組合との共犯関係にある、ということだな。彼らが結託すれば、どんな制度改革案だって潰せる。

組合理事とか、数々のポストが単純化され整理されて、コスト削減になっていいじゃないか、と思うわけだが、そういうことには「絶対反対」という理由があるらしい(笑)。

法律も一本、制度も一本、ということで、効率的運営に大きく寄与できると思うのだが、大反対なのだそうだよ、彼らは。
健保組合の9割以上が赤字で大変だ、という、大変だ大変だ不満を散々述べているくせに、だったら「自主運営をやめて公的な運営機関に全部一括で」という提案を受け入れればいいだけじゃないですか。なのに、どういうわけか、「赤字で苦しんでいる」とか文句を言い、あれこれと不平不満を並べ立てていながら、運営権を手放さないのだ。厚生年金の代行返上はできたのに、健保組合だけは死守せねばならないと思っているらしい。


③高給取りの大企業正社員だけが、大きなメリットを享受できる

日本の代表的企業の例として、トヨタを上げてみよう。
標準月額報酬が500000円の人が、健康保険料を年間いくら払うと思うか?介護保険料も込みで、いいですよ。

何と、117000円だ。月に1万円を切っているわけである。保険料率は本人負担分が2.38%でいいのだ。
別な一部上場企業で見ても、例えば3.09%、といった水準で済んでいる。

一方、都道府県単位に無理矢理させられて、役人のポストばかりがごまんと増えた協会けんぽですが、こちらは同じサラリーマンなのに本人負担分が4.665%も払うのですよ。トヨタだと50万の月給の人が払う保険料117000円と同じ負担をするのは、協会けんぽのサラリーマンだと標準月額報酬が209000円の人なのだ。トヨタの月50万の人が払う保険料も、この僅か4割程度でしかない月20万ちょっとの人が払う保険料も、同じ本人負担分なんですよ。

もっと酷いのは、フリーターで働く若者が国保で一体いくら払うと思っているのか?
京都市の国民健康保険料(ネットで検索したら計算ができる国保で上位に出てきていたので京都になっているだけです。特に他意はありません)を概算で計算してみたら、年収240万円の人が払う国民健康保険料は167187円だった。月20万円くらいの収入の人が、協会けんぽだと117000円くらい、京都市国保だと167187円、ということだ。こういう市町村国保に加入させられる人たちをどう思っているのか?大企業の連中がぬくぬくと高給を食んでいる傍らで、地方に残してきた自分の親や祖父母の面倒は、田舎の微々たる収入しか得られない非正規雇用の若者たちに見させているようなもんだろ。

こんなバカなことをやってきたんだから、そりゃ、車も売れなくなるってもんだぜ(笑)。少しは思い知れ、と言った意味が判ったろう?

もう1回書いておくぞ。

         標準月額報酬    健康保険料
トヨタ       500000円     117000円
某大手企業   315000円     116802円
某伝統企業   440000円     167000円
協会けんぽ    209000円      117000円
京都市国保   200000円     167187円*
(*:国保のみ介護保険料は含まず)

これが現実だ。
一番収入が不安定で立場の弱い人たちが、一番高い保険料を払わされているのだ。一方では、大企業の健保組合に入ってる正社員達だけが守られる、という仕組みになっているのである。こんないい話を、健保組合側が手放すハズがないでしょ?だって、一緒にさせられる、ということだけで、即保険料アップが待ち構えているからだ。自分たちだけは低い保険料で済むという大きなメリットを失うからだ。こうやって、日本というのは持てる人間だけがますます優遇されるという制度を組み上げてきたのだ、ということさ。


④健保組合には高齢者が極端に少ない

一般に、高齢者と若年者を比べると、高齢者の方が1人当たり医療費がかかる、ということは十分予測されるわけだ。なので、高齢者をはじき出せば、財政的にはゆとりが出るに決まっているのである。これも何度も書いたのだけれどもね。
後期高齢者医療制度への攻撃の手が緩んだのは何故?

1500万人の組合員が支える後期高齢者はたったの60万人。こりゃ、楽でいいよね。そもそも給与水準が高い、加入者の平均年齢が若い、生活水準が高いので健康なことが多いということもあるかもしれないし。労働者数が6千万人いるとして、その4分の1で支える高齢者は60万人ってことだな。60/1500 だから、4/100だわ。で、残りの労働者たちが、4500万人で約1400万人の後期高齢者の面倒を見ろ、と。そうすると、1400/4500だから、31.1/100くらいだね。健保組合の支える数とどんだけ差があるのか、って話なんですわ。8倍ですか。しかも、この4500万人には、フリーターもパートも派遣も、そういう非正規労働者たちを全部含めての数字ですから。

市町村国保だが、捨てられた地方(高齢化の著しい過疎地など)みたいな部分が多いので、市町村国保は火の車だ。公費投入の底なし沼みたいなものでもあるのだ。これが市町村財政を更に圧迫する要因になっているのである。しかもこれからは協会けんぽとか言う都道府県単独運営ということになっていけば、税収の多い東京や名古屋(笑)だけが大幅に得をする、という仕組みになっているのである。こうして格差拡大を率先してきたのは一体誰なのか、それをよく考えてみることだ。

制度間の調整を図る為に健保組合も負担をさせられているのだ、という意見もあるが、何と言おうが、現実は③の保険料負担額が全てを物語っている。つまり、不公平は確実に存在している、ということに他ならない。

別に、健保組合の連中が他よりもひときわ賢く死ぬほど努力してきたから保険料が低いのではない。


(続く)

参考記事:

すかさず反論ですか?(笑)

医療制度を議論する前に




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3 コメント

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国民健康保険組合 (井上信三)
2010-03-29 14:24:09
 不公平な健康保険制度について非常にわかりやすい解説ありがとうございます。

 日本は世界160か国中で幸福度がおよそ100位、もちろんOECD諸国では最低だという事を何日か前のたけしの番組でやっていました。その現われの1つが健保制度の不公正にあったのですね。

 ところでまさくにさんは「国民健康保険組合」というものをご存知でしょうか。

 ここには書かれていなかったのでご存じないのではないか、と一瞬思いましたが、これだけの詳しい情報をお持ちのまさくにさんですから知らないはずは無い、との前提で書きます。ただ、読者はご存知で無いかもしれませんので、概略を記します。

 国民健康保険組合とは同業者同士が集まって設立された健康保険組合の事で、全国におよそ170組合があります。組合の例としては土木・建設者組合、医師組合、弁護士組合、美容師組合、芸能人組合、税理士組合、文芸家組合などがあります。全国組織のものや、各県単位の組合などがあり、県毎の組合は土木・建設組合に多いようです。

 組合員数は、私には詳しい事はわかりませんが、総数100万人ほどではないかといわれています。他の健康保険と同じようにそれらの健保組合にも国や自治体から補助金が支出されています。その補助金の率は他の健保と比べると高いもので、総額は数千億円に達するといわれており、厚労省のサイトで公示されていますが、私のPC技術では閲覧不能でした。厚労省の普通のサイトは簡単に閲覧できますのに、こういった補助金がらみのサイトはなぜかPC初心者には簡単には閲覧できないようになっています。かんぐれば、余りおおぴらにしたくないのでしょう。

 そして、国保組合の保険料はいずれの組合もきわめて低く(普通は定額制で、組合員1名あたり1万何千円という低いものが多いようです)、市町村運営の国保と比較すると最大5分の1程度。それだのにいずれの組合も資金に余裕があり、昨年あたりまで組合員本人は表向き3割自己負担としながら、後日割戻しがあって実質本人負担ゼロ、というのが普通のようでした。

 上に書いたように、国民健保組合の組合員いはほとんどが高額所得者で、普通の国保ならば年間60万円ほどの保険料が、いくら高所得でも年間20万円以下、しかも本人負担は実質的にゼロ。

 大企業の健保組合でも赤字になって政府管掌健保に加入を余儀なくされる時勢であるのに、せいぜい1万人程度の組合が上記のように物凄く恵まれた給付をしていて、しかも多額の剰余金が積みあがっている最大の理由は、市町村運営の国保の何倍もの補助金を受けている事です。しかも前にも書きましたが、一部の組合を除いて組合員はほとんど高額所得者。

 公務員共済も不公平ですが、健康保険組合も極めて不公平です。

 先に書いたように私は資料の調査が良くできませんので、まさくにさんにこの国民健保組合について調べて発表して戴きたいと存じます。
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訂正 (井上信三)
2010-03-29 21:46:25
 上のコメントの最後のほうで「・・健康保険組合も極めて不公平です。」とあるのは「・・国民健康保険組合も極めて不公平です。」の誤りです。

返信する
詳しく判りませんが (まさくに)
2010-03-31 21:36:57
国保組合には色んな団体があるみたいなので、正確には判りません。
補助金額ですが、報道では、約3千億円という規模のようです。

http://www.asahi.com/national/update/0104/TKY201001040332.html

政府の公費投入額約12兆円からすると、約2.5%を占めるということになるかと思います。或いは、生活保護の医療費補助の約17~20%程度、ということかな、と。

あまりに水準の補助は問題かと思いますが、改善されてきているかと思います。
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