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医療制度改革6

2004年12月24日 03時05分44秒 | 社会保障問題
前の記事では医師の養成に必要な最低限のコストを確保するというものでした。
次に医療費の手術や処置等、検査、薬剤等の実質的な報酬に関する改革ですね。これをどのように改革すべきかが問題ですね。


まず前提となる考え方を説明します。

現在主な病院では、在院日数を短縮しベッドの回転率を上げるような方向へと変わってきています。それは厚生省(現厚生労働省)の方針で、長期入院を減らすということに沿って改善が試みられるようになってきました。診療報酬についても、昔は入院料に差がなかったのですが、現在では短期の方が高く、長期になるに従い入院料を減額するような仕組みに変わったのです。

また社会的入院と呼ばれていた長期入院を出来るだけ減らし(今は療養型という区分になっていたと思います)、また介護保険制度の導入によりコストの安い施設入所などに移行させるようにしてきました。

こうして長期入院は昔に比べて少なくなってきています。さらに医療機関側の努力もありました。一つは、手術などで体に大きな負担がかかっていたものが、内視鏡技術の進歩などの恩恵もあって、非常に侵襲度(体への負担が少ない)が少ない手術方法が普及したことです(前の記事にも書きましたが、医療過誤の問題となった腹腔鏡手術もその一つです)。これにより回復が早くなり退院が早まったことがあります。もう一つは診療行為の効率化です。

これは「クリティカル・パス」と呼ばれる手法を導入したことが大きな効果をもたらしたと考えられます。例えば胃ガン患者の手術について、入院日から退院日までの行動予定や診療スケジュール、手術後のリハビリまで細かに予定表を作成して、ほぼ定型的にこの予定表に沿って進めてゆくというものです。勿論患者の個人差がありますから、入院後に多少の調整が必要となることもありますが、概ねこの通りに進めていくと効率的に在院日数が短縮されたのです。

厚生労働省としてはこの考え方に必ずしも賛同してはおらず、患者ごとのバリエーションを求めているようですが、臨床をよく知らない人間が考える為なのか単なる無知によるのか分かりません。医療保険制度の根本的方針は「患者ごとに対応するので一様化を認めない」ということのようです。しかし、診療報酬については一部包括化が認められているようですから、部分的には一様化も容認している側面があり、実質的に矛盾があるようです。

クリティカルパスの導入は、在院日数の減少ばかりではなく患者満足度の向上が見られたようです。従って、医療分野の多くの部分で導入可能であり且つ効率化を図るのには適した考え方であると言えるのではないでしょうか。これを拡大して考えてみます。


以上のことを前提として考えてみると、標準化することが効率性や経済性、また患者満足度につながる可能性があると思われます。
よって、まず入院部門ばかりではなく外来部門も標準化を行います。これによって医療サービスの水準もある程度確保されると思われます。

通常、病気があるかその疑いがあって病院へ行きます。その時に診察等によって疑うべき病気がいくつか考えられますから、必要な検査を行い、いくつかの病気の候補を振り落として鑑別します。病気が判明したら(臨床診断がつく)、その治療法のうち現在の症状に合わせまた個人差などのいくつかの要素を考慮して薬剤投与や手術や入院治療…等々が選択、決定されます。これらの過程は分厚いマニュアルとして医学書などが売られています。この全ての過程を標準化するのです。厚生労働省では難病等の研究班が研究成果を公表したりしていますが、診断基準も標準化されていますし、治療法もいくつかのバリエーションがありますが、基本的考え方や治療法は標準化されているといえるでしょう。心電図の自動診断も、ほぼ標準化されたソフトによってあっという間に診断結果が出てきます(健診ではこれにより判定されていると考えられます。間違いや見落としも多少存在するようですが概ね正しい結果が出てくるようです)。


以前から記事に書いているように(「医療制度改革」シリーズを読んで下さい)、医療用統合情報ネットワークが構築されていれば、この標準化はそれ程困難な技術を伴うことはないのではないかとも思っています。主に主訴や症状などが不安定要素となるかもしれませんが、他の客観的データ(検査結果などですね)によって、標準化の区分(または場合分けのある部分)に該当するかが決まれば、それほど大きな治療方針の差が出にくくなるかもしれません(勿論手術するかしないかとかの選択は別に分けておく必要がありますが)。元のソフトを作る時に、治療に対する考え方の違いが出てくるかもしれません。そこについては、各学会を中心に標準化の作業を分担して行うべきでしょう。現時点で、例えば高血圧症の治療については、学会の治療指針のようなものや診断基準などが作成されていますから、実質的に標準化されている部分が多いとも言えるでしょう。

このように標準化された「クリティカルパス」に該当するものがあれば、その費用を支払うことでそれを超える費用については患者ごとの「バリエーション」として個人負担とすることも可能です。「私は標準化された方法以外に別なこの方法を選択したい」という人は、その対価を自己負担するということです。

薬剤についても、ジェネリック薬(後発薬品)がある薬剤はその費用を標準化のベースにすることで、同じ効果のコストの高い他の薬剤を使用した場合には超過分を全額自己負担とするのです。医療機関側は、患者負担が大きくなれば他の病院を選ぶ患者が多くなるかもしれないので、自己負担が少なくなるように必然的に配慮するようになるでしょう。標準化されていない治療法や薬剤を希望する場合には、標準化分の医療費を差し引いてそれ以外の部分について全額自己負担とします。混合診療の形に似ていますね。標準化以外の治療法はあらかじめ決まったパターンを認定しておくことにした方がよいでしょう。この範疇に入らないものについては全額自己負担(いわゆる自由診療です)とします。今の保険制度の複雑な算定方法を簡略化でき、医療費総額の抑制がある程度可能になり、患者は自己負担の制約を受けるものの選択範囲は広がります。

この他、医療機関ごと、または診療科ごとに加算する部分も設けます。現在も特定機能病院など指定を受けている病院は費用が異なっていますね。それに近い考え方です。例えば高度先進医療に該当するような治療を行っている専門的な医療機関については、その診療科に実施実績に応じて加算金を支払います。また心臓バイパス手術や腹腔鏡手術などについても、指導できる専門的医師がいて実施実績があればその実績に応じて加算金を支払います(特定のものについてあらかじめ決めておきます)。このようにすることで、高度な技術をもつ医療機関は有利な面ができますし、そこで修行する医師が存在してもそのコストを捻出できるようになるでしょう。治療成績については公表するような方向がよいと思います。

医療機関の機能の相違についてのコストを、利用者が支払うという考え方をやめるということになります。現在救急指定病院や小児救急等についても補助金の交付があると思いますが、一度補助金についても整理して、医療機関コストは先に述べたような加算金もあわせて適正に分配する必要があると思います。


また、医師が一人とか少数の小規模医療機関は経営的に苦しくなる可能性がありますが、検査等については大きな病院の施設に検査のみの依頼ができるように(初診料とかがなく、単に検査のみ行う)することや(医療情報はネットワークで共有できているので比較的容易であると思います)、標準化コストの患者自己負担率の割引をするとかでしょうか。家庭医的役割としての存在(今のかかりつけ医ですね)を想定するならば、初期診断技術が高ければよく、風邪とか特別高度な治療を必要としないような慢性疾患については大病院に行く必要がないという認識が浸透するように、患者自己負担を減らすことでバランスをとるようにします。

あちこちに検査器機を導入しなければ、一箇所当たりの検査器機の使用回数が増やせるので、医療資源としての無駄が少なくなります。検査技師さんのコストもペイしやすくなるかもしれません。高額な検査器機のコストは先の医療機関コストの補助金によって賄えるようになると思います。


ちょっと複雑な説明となったかもしれません。まずは、標準化をおこなうこと、そしてこれに基づいて診療報酬を支払うことにより、かなりコストの低減が図れると思います。


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