いい国作ろう!「怒りのぶろぐ」

オール人力狙撃システム試作機

若年者の悪性新生物の罹患率は近年上昇したか

2015年10月19日 19時45分58秒 | 社会全般
前の記事で甲状腺癌が何故か03年以降に罹患率上昇が見られた、と書きました。これに関連して、追加記事を書いてみます。
区分する年は03年というのが特に理由があるわけではありません。なので、04年でも05年でもよいのですが、90年以降のデータ数が多い群と、05年以降のデータ数がかなり少ない群に分かれてしまうので、有意な上昇なのか判定が難しいかと思って、03年で切り分けることにしました。


で、こうした傾向は、甲状腺癌に限らないのでは、ということが分かりました。
甲状腺癌の場合というふうに、発生部位を特定することなく、全部位での罹患率を見てみることにしました。すると、やはり意外な結果が出たのです。数値は、国立がん研究センター発表のものです。


年齢階級別で15-19歳、20-24歳、25-29歳という、全年齢に比べて、悪性腫瘍術後の生存率が低いとされる世代で見てみました。


各年毎の罹患率を90~02年と03~11年のグループに分け、t検定を実施してみました。

 検定結果:
   N  有意差なし
  *1  P<0.01
  *2  P<0.001  


【15-19歳】

   年     男     女 
  90~02    10.62   13.55
  03~10    11.33   17.36
  検定結果    N    *1


【20-24歳】

   年     男     女 
  90~02    18.80   8.72
  03~10    23.30   11.12
  検定結果   *2    *1


【25-29歳】

   年     男     女 
  90~02    15.13   29.26
  03~10    19.83   39.43
  検定結果   *1    *1



ご覧の通り、15-19歳男性だけが有意差なしでしたが、他は有意差ありという結果でした。

問題は、どうして03~05年頃から、15歳~29歳という悪性腫瘍の罹患が高齢層に比べて少ないとされる年代において、これほどに悪性新生物の罹患が増加しているのか、ということです。

全年齢での悪性新生物の罹患数とか死亡率の増加というのは、長寿化などの理由がある程度は思い浮かびますけれども、若年層の特に結婚出産に適した年代での悪性新生物罹患率の増大は、社会的にも大きな問題だろうと思います。


福島原発事故以前においてでさえ、こうした状況ですから、若年者の悪性腫瘍対策というのが急務であると思えます。直近の数字を早くまとめると共に、減少に転ずるなどの傾向の変化がなければ、原因検索も含めて、きちんと対策するべきでしょう。


若年者の甲状腺癌について

2015年10月19日 18時43分20秒 | 社会全般
少々調べてみたので、書いておきたいと思います。
国立がん研究センターの出している調査結果があり、そこから数字を拾ってみました。


①甲状腺癌での死亡例(1990年~2014年)

1990年以降で、20歳未満の甲状腺癌患者における死亡数は、10歳未満は男1名のみで他は全て10代であり、男4名、女6名だった。合計11名で極めて稀である。

一方、20~39歳においては、年齢増加と共に死亡数も増加し、次のような結果であった。


  年齢    男   女 
  20~24   6    9
  25~29   11    4
  30~34   18   11
  35~39   31   48


甲状腺癌の手術適用となる大きさに成長するまでの時間経過が、5年以上とか10年以上といった長期の場合には、30代以降に治療開始ないし手術実施となると、死亡する可能性は高くなるかもしれない。早期判明例が不利益とは限らないだろう。

甲状腺癌の罹患率は女性の方が男性よりも高く、女性の早期診断は甲状腺癌の死亡リスクを低減効果があるかもしれない。


②若年層の甲状腺癌罹患率

15歳未満での罹患率は、1990年~2010年の期間における平均で男0.058、女0.112であった。非常に稀な疾患である。同年代男性1000万人中に6人程度しかいないということである。

15~39歳の年代において、興味深い傾向が見られたので、以下に述べる。
90年~02年の期間と、03年~10年の期間では、罹患率の傾向に違いがあった(罹患率は死亡数、死亡率と異なり、10年までのデータしか見つけられなかった)。各年毎データの平均値は以下の通り(他省略)。


    年      男      女 
   90~02   0.82    3.99
  03~10   1.57    5.67



つまり、03年以降においては、男女とも甲状腺癌の罹患率が上昇していた。
t検定では1%水準で有意な上昇(p値は男0.0012、女0.0059)


15歳未満では甲状腺癌の罹患率は低下傾向にあり、発症が後ずれした可能性はあるのだろうか?(例えば以前だと12歳で発覚していたものが、最近では17歳で発見されるようになった、とか)
仮にそうだとしても、15歳未満での罹患そのものが男性だと0.1にも満たないわけで、15歳未満での患者がゼロで全部の累積が15~19歳で発覚した場合であっても、これほどの上昇(0.82→1.57なので+0.75)の理由とはならないだろう。

ちょっと、謎ではある。これは、また別の機会に。


以上、①と②から、甲状腺癌が早期スクリーニングにより治療対象とされるとしても、

・年齢依存的に甲状腺癌死亡率は上がる(30代での死亡数は10代より断然多い)
・03年以降はそれ以前に比べ甲状腺癌罹患率の上昇が見られる

という点から、発見により相対生存率の改善につながるかもしれない。