シネマ日記

超映画オタクによるオタク的になり過ぎないシネマ日記。基本的にネタバレありですのでご注意ください。

アラバマ物語

2006-04-28 | シネマ あ行

これは1932年のアメリカ南部アラバマが舞台の1962年に製作された作品である。

主演はグレゴリーペック。彼は、往年の男優の中では日本人にはどの世代にも映画ファンじゃない人にももっとも知られている男優ではないだろうか?「ぐれごりぃぺっく?知らん」と思っている人でもあの「ローマの休日」の…と聞けば「あ~!」となるだろう。

彼は、ほとんどの作品で人々の「良心」と呼べるような役を演じているが、この作品でも誰に対しても誠実で毅然とした態度で間違いを正すことのできる父親を演じている。ま、面白味はあんまりないタイプのお父さんだけど、子どもたちにとっては絶対的な安心感を感じさせてくれる人で、そういう役をやらせたら右に出る者はいないといっても過言ではない俳優だった。(2003年に亡くなっている)

このアラバマ物語はアメリカ南部で行われる黒人差別を描いている。正義の人であるアティカスフィンチ(グレゴリーペック)が、白人女性をレイプした罪に問われている黒人青年の弁護を引き受ける。この裁判シーンはとても素晴らしく、心に訴えるだけでなくサスペンス的な要素もふまえていて映画史に残る裁判シーンだと言えると思うのだが、この作品の魅力はそれだけではない。

物語そのものがアティカスフィンチ弁護士の小学校に上がりたての娘スカウトの目を通して描かれ、近所の子どもや兄のジェムとの交流や、彼女の経験を通して父親と黒人差別をする白人の姿なども描かれる。学校の友達の父親がその差別集団に加わっていたりするところを彼女たちは目のあたりにする。逮捕された黒人をリンチしようと集団で出かけた先で、自分の息子の学校の友達に会い、彼はあきらめて帰って行ったが、そのことで彼は黒人差別を止めるだろうか?そのあたりの語られない人の行く末が気にかかる。

そして、その話と平行して、近所に住むブーという家族に監禁されている(と言われている)謎の子どもの正体を暴こうと恐る恐るもその家に近づく子どもたち。そういう子どもたちの純粋な行動と大人たちの汚れた思惑がうまく対比されている。そして、そのブーの正体が明かされたときのスカウトの行動には真の心の優しさが表されていて心打たれる。

派手な作品ではなく、展開もそんなにドラマティックではないのだけど、必ず正義が勝つわけではない世の中の無情さとその流れに流され自分が強い人間になったつもりで思い上がっている連中とその中でも誠実に生きようとする人たちの姿を子どもの目を通して自然に描くことである種のリアリズムをうまく生み出していて心に残る作品である。

オマケ1原題は「To Kill a Mockingbird」で原作の邦題は「ものまね鳥を殺すには」となっているらしいです。この題名にはきちんとした意味があり内容とリンクしていて映画のセリフの中にも出てくるので注目してみてください。映画の邦題は(昔は特に)製作者の意図を反映できない場合があるので残念です。

オマケ2ここに出てくるブーの役であの名優ロバートデュバルが出ていてビックリした。見ているとき「まさか」と思ったが、やはり彼だった。あとで調べるとこの作品がデビューだったらしいです。


AIKI

2006-04-26 | シネマ あ行
これは知っている人は少ないかもしれないけど、2002年の加藤晴彦主演映画です。

事故で車いす生活を余儀なくされたボクサー(加藤晴彦)が始めは自分の運命を憎んでヤケになっていたけど、「合気柔術」に出会い再生していくお話。実際にデンマークの男性が車いすになってから合気道で黒帯を取ったという事実にインスパイアされたものらしい。

全体的になんとなく「文部省推薦」的な感じで、なんか昔学校の視聴覚室で道徳の時間に見せられたような雰囲気で少しこそばゆい感じがするんだけど、お話自体はいいお話です。

この合気道というやつはワタクシはテレビで見たことくらいしかないんだけど、相手の力を受け入れ、それを利用して相手を倒すという、かかってくる相手を腕一本で倒してしまうようなにわかには信じがたい柔術で、それは相手がわざと倒れているんじゃないの?と正直なところ思ってしまうのだけど、実際にやっている方からすればあれは型をやっているのではなくで実際にそうできるものなのだということなんだろうな。一回、ワタクシも試してみたい気がする。かかっていくほうで。

この映画に合気道の師匠として登場する石橋凌がものすごく素敵なのだ。武道の師匠なのにものすごく穏やかで、物腰も柔らかく、言葉遣いも非常に丁寧。こういう人こそ本物の師匠と呼ぶにふさわしいと思わせてくれる。やんちゃな役のイメージのほうが強い石橋凌がとてもキメ細やかに演じていて、やはりとても演技の幅の広い人だなぁと改めて感心。

その他にも桑名雅博火野正平が脇を固めている。

妙に白々しいところもある映画だけど、素直な気持ちで見ていただきたい。


やかまし村の春・夏・秋・冬

2006-04-25 | シネマ や行
昨日の「やかまし村の子どもたち」の続編。これ、本当に続編です。前作は夏休みの間の子どもたちの姿が描かれ、夏休みが終わり新学期が始まるところで幕となりましたが、今回はまさにその新学期から始まり、季節が巡って行きます。

夏休みが終わった子どもたちはもうすでにクリスマスを心待ちにしています。「時間が経つのはなんて遅いんでしょう」なんて子どもならではの感覚。

クリスマスイブの朝、お風呂に入って晴れ着を着るなんて、まるでワタクシが子どもの頃過ごしたお正月のよう。そして、楽しいクリスマスのあとは大晦日の晩に新年がやってくるのを見ようと一生懸命に起きていようとする子どもたち。“新年がやって来る”なぁんて大人たちが言うもんだから、何かが空からやって来るのかと目を凝らして見ていたけれど、特別に“何か”がやって来たわけではなかった。

学校で吹雪がひどくなったとき先生はやかまし村の子達は先に帰りなさいと言った。(あ、やっぱり一番遠いんや)と言っても低学年の子どもたち6人だけで帰らせて大丈夫か?さすがに普段はやんちゃな子どもたちも泣き出しちゃった。帰り道の底意地の悪い靴屋のおじさんの家で少し休ませてもらうけど、このおじさんが怖くてまた泣いちゃう。でも、このおじさん、口も態度も悪いけどきっと悪い人じゃないんだろうなと、なんとなく思う。昔は近所にいたよね、こんなおじさんとかおばさん。

そうしているうちに雪が溶け春になる。最初の行事はエイプリルフール!やかまし村一番のガキ大将で学校でもそうらしいボッセくんが学校の時計をいじったり、廃品回収の人が石を買ってくれると友達をだましたり。またイースターには農業を手伝っている若い男女をくっつけようとしたり。

今回は季節が巡るので、それにともなってまた新たなエピソードが語られ、その細かいエピソードの中にそれぞれの子どもたちの性格や成長がより深く描かれている感じ。少しずつ成長する彼らを見ながら、「ゆっくり大人になってね」と目を細めつつ見守りたい気持ちと「あー、そのままいつまでも大人にならないで」という気持ちが入り混じる。

そして、季節が巡る分、子どもたちの衣装がかわいい、かわいい。夏休みのも可愛かったけど、やっぱり冬になって帽子をかぶったり、コートを着たり、春にはカーディガンを羽織ったりしている姿がもう可愛くて仕方ありません。

いつの時代になってもどんなに大人になってもこの作品を見れば子ども時代のふるさとに帰れるようなそんな作品です。

オマケ1この「やかまし村」2作品自体はあまり知られていないかもしれません。でも、監督は「ギルバートグレイプ」「サイダーハウスルール」などで有名なラッセハルストレム。彼がハリウッド進出前に撮った作品です。「ギルバートグレイプ」「サイダーハウスルール」の人と聞けば、この「やかまし村」がどんなに優しい雰囲気で撮られているか想像できる方も多いかもしれませんね。

オマケ2思い切り大きなお世話なんだけど、このラッセハルストレム監督の奥さんが「存在の耐えられない軽さ」や「ナインスゲート」のレナオリンと知ったときは結構驚きました。だって、彼女はセクシーな悪女の印象が強くて、ハルストレム監督と言えばすごく優し~いイメージがあったから。彼女が出演する作品と彼が作る作品の印象がほとんど正反対で。でもまたそこがなんだか素敵なご夫婦だなーと勝手に好きでおります。

やかまし村の子どもたち

2006-04-24 | シネマ や行
この作品の原作者、アストリッドリンドグレーンの作品は以前にも「ラスムスくんの幸せを探して」を取り上げたのですが、「ロッタちゃん」シリーズもとても好きでこれはまだ取り上げていないけれど、いつかきちんと見直して取り上げたいと思っています。リンドグレーンの作品はこの「やかまし村」を見たのが初めてでした。彼女の作品すべてに共通することだけど、本当に子供たちの描写が素晴らしい。ワタクシたちが普段忘れている「あ~、こどもってそうよなー」っていう場面がたくさん出てくるのです。

この作品は、3軒しかない「やかまし村」の子供たちの夏休みの風景を小さなエピソードを集めて見せるもので、特に起承転結があるわけではなく、子供たちの自然なやりとりとかを楽しんでいただければいいかと思います。

子供たちが書いたんじゃないかと思うほど、小学校低学年の男の子3人、女の子3人の兄弟姉妹、幼馴染みたち(プラスまだ2,3歳のおチビちゃん)が繰り広げる世界がリアルに描かれていきます。

お母さんにおつかいを頼まれたけど、帰り道に買い忘れを思い出して、何度も何度もお店に帰っていったり、(そのとき、戻るたびにお菓子をくれるおじさんへのお礼に、これはスウェーデンの習慣なんだろうけど、ヒザをちょこっと曲げてお礼を言う姿がとってもキュート)最後にはもう買い忘れを思い出さないように(!)走って帰ろうとか言ってダッシュで帰ったりだとか。

男の子対女の子でイタズラ合戦とかによくなって、お互いに「あいつらはバカだから」なんて言いながらも、3対3で結婚すればみんな仲良くやかまし村に住み続けることができるって実は信じていたりするところとか誰もが「あ~こんな時期があったなぁ」なんて思い出して心があったかーくなるんじゃないかなー?

最後に新学期が始まって6人が学校に行くとき、「私も行くーーーーっ!」と泣いてお母さんに抱き上げられる一番下のおチビちゃんのギャーーーーという悲鳴で幕を閉じる本当にどこにでもあるようなほのぼのした風景をスウェーデンの田舎の風景とともにお送りする作品です。

ワタクシと英語B面~留学編 ポーランド一人旅⑥

2006-04-20 | ワタクシと英語
というわけで、「ホテルワルシャワ」に帰る日まで滞在できることになり、ホテル騒動は一件落着。

ワルシャワの街のお話を少ししましょうかね。
ポーランドという国はみなさんご存知の通り、第二次世界大戦でナチにコテンパンにやられた国です。チェコ人いわく、“チェコスロバキアは比較的すぐにナチに降参したからあまり街を壊されずに済んだ。でも、ポーランドは抵抗したから徹底的にやられた”と。ポーランド人の受けた傷は深かったけど、きっとナチに抵抗したことは誇りに思っているんだろうなぁという印象でした。というわけで、大昔の町並みや建物がごっそり残っているプラハなどに比べてポーランドの歴史的建造物はごっそり消え去ってしまいました。昔の町並みが残っているのはクラコフくらい。だから、そこは観光客は多いみたい。でも、ワルシャワはいまひとつ観光の街にはなれない。ポーランド全体を見てもやっぱりチェコやハンガリーには観光産業では負けちゃうだろうな…

そんなワルシャワも見るとこがないかというと、そんなこともなく一週間ばかしの滞在期間中いろんなところに行った。誰もが歴史で習う偉人が実はポーランド出身だったりするので、博物館とかが結構あるのですよ。ショパン、コペルニクス、キュリー夫人。それぞれの博物館に行ってみた。全体的にどこもチェコの博物館より狭いけど、その小狭ましいところにとっても整頓されて展示物がならんでおり、順路も分かりやすく、いろんな美術館や博物館に行ったけれど、ポーランドの博物館がどこよりも見やすかった。結構、几帳面な人たちなのかな?

そして、ワルシャワの旧市街。そこはナチに壊された歴史的な建物を全部キレイに再現してある街。第二次大戦以前と直後と再建されたあとの現在の写真が飾ってある。大戦直後は一面焼け野原で何もないのに、以前と現在の写真が時代を超えてほぼ同じなのだ。旧市街と言ってもとても規模は小さいがその風景にポーランド人の誇りを感じた。

旧市街だけじゃなくどこを歩いているときもだけど、さすが敬虔なカトリックの国、法王様が来ているというタイミングのせいもあったと思うけど、アイドルよろしく法王ヨハネパウロ2世のブロマイドが露店でいっぱい売っているのよー。今から考えたら記念に一枚買っとけば良かった?

プラハでウロウロしているときよりもワルシャワの街を歩いているときのほうが人々がなんだかゆったりしていて、なんだかeasy goingというか、同じ首都のはずなのにプラハで感じた都会の人間特有のイガイガ感がない印象を受けました。英語圏では「マヌケなポーランド人」ジョークというジャンルがあって、こういうちょっとポケッとしてるところからそういうジョークのネタにされているのかなーとか思ったりしました。(どうして、「マヌケなポーランド人」というのがジョークのいちジャンルにまでなっているのか真相は知りませんが)こんなゆったりした感じの人たちの中にどうしてあそこまで戦うパワーがあったのかと思ったりもしました。(今現在の彼らがナチに抵抗したわけではないけど、国民性としてね。)反骨精神旺盛な映画とかも多いしね。 

それと、プラハより英語が断然通じない。チェコでは若い人はお店の人とかだとだいたい英語が喋れたけど、ワルシャワでは若い人もあんまり喋れなかった。それで少し困ったけど、ホテルでは通じたし、基本的にみんな親切で道とかを聞くとなんとか助けてくれようとするので英語が通じなくても不便だけど大丈夫でしたね。帰りの切符を買うときの窓口のおばさんがまーーーーったく英語が話せなくて困っていたら「手伝いましょうか?」と英語で声を掛けてきてくれた子もいたし。彼女も天使に見えたなぁ。

あと、なぜかワタクシが歩いていると時間を聞いてくる人が何人もいたんですよねー。腕時計している人が珍しいのかなー???これは今でも謎のままだなー。

ワルシャワのあと、イタリアのボローニャとスペインのバルセロナに行って、ワタクシの留学生活は終わりました。また他の旅のことも機会が見つけて書きたいと思いますが、6回シリーズになるほどドキドキものだったのはワルシャワだけだった、印象深ーい旅でした。

まあだだよ

2006-04-20 | シネマ ま行
あ~なんてホッとする作品だろう。戦中、戦後を背景に繰り広げられる引退した先生松村達雄と過去の生徒たちとのひとつひとつの風景。

これは監督黒澤明が敬愛する随筆家内田百氏のお話らしいが、ワタクシは恥ずかしながら内田氏のことは何一つ知らない。でも、この内田氏のことは何一つ知らなくともこの作品は大いに楽しめます。

作家になるために教師を引退した先生。引退後もいつまでもいつまでも慕い続け先生の家に通いつめる生徒たち。(所ジージ、井川比佐志、寺尾聰などなどなど)この先生のあだ名は金無垢。どこまでも純粋で貴重な存在といったところか。このおじいちゃん先生。おじいちゃんでありながら、教師でありながら、ものすごく冴えたユーモアのセンスと純粋な心を持っている。世の中を風刺する明晰さと人の心を包み込む優しさにあふれ、まさに金無垢という言葉にふさわしいお人柄。

「まあだだよ」というのは、先生がなかなかくたばらないという意味で、生徒たちがかくれんぼの要領で「まあ~だかい?」と尋ねると先生が「まあだだよ」と応えるというこの辺りも非常に素晴らしいユーモアで先生と生徒のとーーーってもいい関係を表している。これを不謹慎なんて言う人はまずいないだろうが、ワタクシならそんな人がいたらその人の人生見てみたいなんていうちょっとイジワルな好奇心さえ芽生えてしまう。

あ~こんな先生がいたら素敵だなー。本当に心の底からそう思える。ワタクシは「先生」という言葉があまりにも簡単に使われていて嫌いなので、普段なら学校の先生のことは教師、病院の先生のことは医者と呼ぶし、弁護士や代議士を先生なんて死んでも呼ばないゾと思っているのだけど、この内田氏のことはなんだか、自然に先生と呼んでしまいそうだな。やっぱり大切なのは人柄だよねー。

少し映画から話がずれましたね。映画的なことを書くと、戦中、戦後の日本の姿をもの凄く自然に描いているし、先生の自宅が焼けたあと、ほったて小屋で過ごす時期に巡っていく季節の描き方が素敵だし、これは、個人的な趣味だけど、夏といえば男性は真っ白のスーツを着て麦藁帽子をかぶる時代でそんな衣装も良かったな。

黒澤明監督の映画は以前「生きる」を取り上げましたが、まだまだ取り上げたいものがたくさんあります。「黒澤明は偉大な監督」というのがもう「1+1=2」くらいに刷り込まれている人も多いと思います。そのせいで、逆に難しいんじゃないかとかって敬遠しちゃったりね。でも、カメラワークがどうだとか、演出がどうだとか、そんな技術的なことはすっかり置いておいて素直に受け取ることができる作品が多いと思うので、できれば見て欲しい。この「まあだだよ」は特に何も難しいところはないので黒澤作品のとっかかりにいいかもです。

オマケ「暗闇を怖がらない人間は想像力が欠如しているんだよ」という先生の言葉が印象的だったなぁ。そう、本当にその通りだと思う。と暗闇が怖いワタクシは先生の言葉に救われちゃいました。

ワタクシと英語B面~留学編 ポーランド一人旅⑤

2006-04-19 | ワタクシと英語
またその翌日、またしても朝ホテルを出て新しい宿を探さなくてはならない。
ホテル探しに歩いていると、一人のおばさんが英語で声を掛けてきた。ワルシャワではホテル以外であまり英語が通じなかったので、つい受け答えした。

「ホテルを探しているの?」
「はい」
「おばさんね、民宿やってるのよ。いっぱい学生とか泊まりに来るの。あなたも来ない?」と、名刺みたいなものを差し出してくる。
「はぁ…」(えっ?なんか怪しくないか?ん~、人の良さそうなおばさんやけど…こんないい話に騙されて付いて行って身包みはがれたらどうする?でも、ホテルないしなぁ。どうしよ。)
「あの橋の向こうよ」
と、おばさんが指したところはガイドブックにその橋の向こうは危険な地域だから行っちゃいけないと書いていたとこだった。
「いや。いらないです。」(あかん、あかん。あの先は行ったらあかん
「そう?じゃ、ホテルが見つからなかったら連絡してちょうだい」
と、ワタクシに名刺を渡しておばさんは去った。
案外、あっさり引き下がったもんだ。まぁ、本当はただの親切な民宿のおばさんだったのかもしれない。けど、不用意に付いて行かなくて正解だと思う。

その後、安くてまぁまぁキレイな感じだったので「ホテルワルシャワ」というところに入った。フロントでは相変わらずぽーぷが…と言われたがシャワー付きの部屋が空いていた。昨日、泊まったところよりもさらに安い。それに値段の割には汚くないし、朝食も付いていた。それでも、もう少し安く泊まれるならとシャワーは共同を希望したがいまはいっぱいで、空いたら明日かあさってに部屋の移動をさせてくれると言う。

次の日の朝、朝食を取りに行った。貧乏旅行であまりマトモなものを食べていなかったワタクシにはただのソーセージとタマゴとパンとジャムがすごく嬉しかった。そして、何よりも嬉しかったのは紅茶だった。ヨーロッパでは熱い飲み物も普通のコップに入ってくることがある。そこでも、多分ただのティーバックからの紅茶が昔のサントリーのビールのコップみたいなのに入ってきた。しかし、これが、もう。うま~い涙が出そうなくらいおいしかったワタクシはその紅茶をむさぼるように、かつ、いとおしむように飲み、ウェイトレスのお姉さんに「これはおかわりできる?」と聞いた。「えぇ、でも、無料ではないわ」と言った。少し迷ったが、このただの紅茶をワタクシはおかわりした。2杯目はすごく贅沢な味だった。

2日後くらいの朝、フロントでシャワーがついていない部屋が空いたから移動してと言われたので、荷物を持ってフロントに行くと、さっきのは手違いだと言う。やっぱり元の部屋に戻ってくれと頼まれ、シャワー付きがやっぱり快適やなぁと思っていたワタクシは快く引き受けた。そして、自分の部屋に上がろうとするとおじいちゃんのポーターさんが荷物を持ってくれた。どうやら、ワタクシを新規の客と勘違いしているらしい。ま、いっかと思ってそのおじいちゃんポーターに荷物をもってもらって部屋へ。この部屋はワタクシがもともと使っていた部屋だからベッドメイクもしてないし、少しだけどちらかった状態だった。それを見ておじいちゃんポーターはパニック英語が話せないらしく、頭を抱えてポーランド語でどうやら一生懸命謝っている。そして、いますぐベッドメイクさせるからちょっと出て待ってってくれないか。みたいな感じのことを必死で汗もかかんばかりに言っている。「いやいや、あのね、この部屋にワタクシ泊まってるのよ。これはワタクシが汚したのよ。だから、大丈夫やから。ここはワタクシの部屋なのよー」というのをワタクシも一生懸命英語で言ったけど、おじいちゃん、英語はワカラナイ。でも、どうやらワタクシが別にいいからと言っていることだけは分かってくれて、謝りながら出て行った。多分、案内された部屋がちらかっていたのに、快く許してくれたキトクな日本人と思われたんやろうなぁ。

Vフォーヴェンデッタ

2006-04-18 | シネマ あ行
「人民が政府を恐れるのではない。政府が人民を恐れるべきなのだ」

おお、かっこえぇー。

なんかよう分からんけど、もう一回見たくなる映画

それが率直な感想であります。

よう分からんとかいうほど、話はややこしくないんですけどね。
陰謀の内容とかも別になんも珍しいもんではない。政府vs人民という構図も対して珍しくはないし、政治色と言っても空想部分が大きいがためにそこまで現実味を帯びてこない。

それでも、“V”ヒューゴウィービング(「マトリックス」のエージェントスミスです)という謎の仮面の男に強烈なカリスマ性があり、観客はその男に魅かれる。この辺りはコミックが原作というところの強みかもしれない。(あ、関西のかた“V”のカツラをカンペイちゃんと間違えないでね

全体的に映像は暗いのに、なぜかそこに美しさを感じるのは、謎めいた“V”の存在とナタリーポートマンの荒野に咲く一輪の花のような可憐な美しさのおかげなのか?彼女の丸刈りになる前のたおやかな髪は丸刈りとのコントラストの狙いがばっちり成功している。

そして、物語を別の側面から支えるフィンチ警視スティーブンレイ(ちょっと欽ちゃんに似てる?)“V”のマスクやナタリーポートマンの丸刈りにばかりスポットが当たる中、実は物語の語り部として重要な役割を果たしている。“V”をして「君のような存在を待っていた」と言わしめる陰の主役。

つまらない人にはかなりつまらない作品だと思うのだけど、入り込めた人にはラストに最高のカタルシスが待っている。そして、そのカタルシスを引きずったままもう一度見たくなる。そんな作品だった。

ワタクシと英語B面~留学編 ポーランド一人旅④

2006-04-18 | ワタクシと英語
さて、翌日である。実質ワルシャワ一日目。マリオットホテルの部屋を出て新たにホテル探し。地図を購入し、手ごろな値段で小ぎれいなホテルを探す。ワタクシは全然キレイ好きじゃないけど、不潔なところは嫌いなもので。

手ごろそうなホテルに当たってみた。
「空いてますか?」
「あなたねぇ、ホテルを探してるの?ないと思うわよー、こんな時に。なんてったってPopeが来てるんだから。いま、ワルシャワにはポーランド中、いえヨーロッパ中から人が来てるのよ。」
「ぽ……ーぷ?」(ぽーぷてあの?Pope?Popeって法王やろ?あの?
ヨハネ?パウロ?2世???
「そうよ、Popeよ、ほ、う、お、う、さ、ま

ワタクシはよりにもよって、法王様と同じ時期にワルシャワに来てしまったのである。ポーランドは敬虔なカトリックの国。法王見たさにたくさんの人がワルシャワに押し寄せていた。これか、昨日のカンファレンスの人たち。そういえば神学博士とか名札付けてる人いたなー。

ガーンホテル、見つかるやろか…
そんな不安を引きずりながら何軒かのホテルを訪ねたがやはり満室。しかし、あきらめるわけにもいかず探し続けた。どこへ行っても「Popeが…」と言われ、もういい加減知っとるわい、こんな時に来たワタクシが悪うござんしたねぇという気になっていた。

しかし、何軒目かは忘れたが、比較的疲れが出たりする前に部屋の空いているホテルが見つかった。

「一部屋だけ空いています。それも今日だけなら。なんせ…」
あぁぁぁぁ、みなまで言うな。
「あー、ぽーぷが来てるんでしょ?」
「あ、ハイ」
「いくらですか?」
「○○です」←いくらやったか忘れたけど、数字だけ言われた。
「それはアメリカドル?」前日で懲りていたワタクシは用心深くなっていた。
「いえいえ、ズヴォティ(ポーランドの通貨ね)ですよ」向こうは“とぉんでもない”というように言った。

とりあえず、今日の宿は確保して明日はまた朝からホテル探しかぁ…でもま、今日の宿は見つかったしよしとしよ。

というわけで、ホテルも見つかったしと思って観光へ。ワルシャワの旧市街なんかを見て回ったりした。

ワタクシと英語B面~留学編 ポーランド一人旅③

2006-04-17 | ワタクシと英語
さて、ホテル探しである。
「ホテルは現地でなんとかなるやろ~」と軽~く考えていたワタクシはいきなりガーンと頭を打つことになる。19時前くらいのポーランド。薄闇が襲ってきていて暗くなりつつあった。いったん、暗くなり始めると早いものである。ワルシャワ駅から地上に出たワタクシは「暗いよ~、恐いよ~、女がいないよ~」あ、いやいやもとい、「暗いよ~、恐いよ~」で荷物を抱えたまま夜のワルシャワをさまようことをあきらめ、一旦地下街に戻った。しかしである。「ワルシャワ駅の地下街は危険」どこかにそう書いてあった。ワタクシは急いで唯一知っていたワルシャワ駅と直接つながっているホテルへ。ホテルマリオットである。ホテルマリオットと言えば高級なホテル。でも、ここはポーランド。高いって言ってももしかしたら安いかも。な~んてあま~い希望を抱きつつフロントへ。

「部屋は空いてますか?」
「いえ、あいにく一人用のお部屋はいっぱいで。ダブルの部屋なら空いています」
(さすが、高級ホテル。英語が問題なく通じる!)それだけでも小躍りしたい気分なワタクシ。
「そこでもいいです。おいくらですか?」
「350ドルです」
「ド、ドル?アメリカドル?350アメリカドル?」
「はい。さようでございます。」

迷った。350ドルって…痛すぎる。貧乏旅行しようと思ってたのに…他のホテルを探すか…?し、しかし、外界は恐すぎる。
旅慣れている人が聞いたら笑うだろうが、なんせ、初めての一人旅である。こわかったんだよ~350ドル出すか、あの漆黒の闇(おおげさ)に放り出されるか…
背に腹は代えられん。命には代えられん。(おおげさ)
350ドル…払うことにした。あ~頼りになるVISAカード、命の恩人VISAカード
今日のところはここに泊まって明日昼間に安いホテルを探せばいい。

というわけで、一日だけホテルマリオットのキングサイズなベッドに寝た。しつこいようだけど、350ドルも払ったんだからどうせなら満喫してやろうと、入浴剤を盛大に使い、タオル類もいっぱい使ってやった。あ~つくづく貧乏性

ちょっと暇なのでホテル内のお店でも見ようと思い、ロビーへ降りるとなんかのセミナーだか、カンファレンスだかに集まっているようなお堅い感じの人たちが男性女性入り混じってたくさんいた。大きなホテルだものー、そんな用途にも使われているんだなぁなんてなんとなく思っていたが、それがなんの集まりだったかはのちのち分かる。

ちなみにワタクシはバックパッカーよろしく汚い格好でそんなホテルをうろついていたものだから、そのカンファレンスの人たちにはジロジロ見られるわ、お店の人には「こちらにお泊りですか?」と聞かれるわで恥ずかしい思いをしてしまい、早々に部屋へ引っ込んだ。

ワタクシと英語B面~留学編 ポーランド一人旅②

2006-04-14 | ワタクシと英語

天使が降りていったあと、コンパートメントにあのおばさんが戻ってきた。いくら「ほっとけばいい」と言われていても、初めての一人旅で英語の通じないところでガンガン文句を言われたのである。そのおばさんが帰ってきてワタクシの体はこわばった。

しかし、今度はそのおばさん、ワタクシには目もくれずに旦那さんと喋っていた。「なんやねん、このおばはん…。ま、でもおとなしくしといてくれるんやったらええわ」とワタクシはただひたすら窓の外を凝視していた。「とにかく早く着いてくれ」

そうこうしていると、コンパートメントの前に売り子さんがやってきた。すると、さっきのおばさんの旦那さんがワタクシに何やらまたポーランド語で話しかけてきた。ウォッカを飲むかと言っているらしい。断るのも妙に恐かったので、「OK」と言い、けどストレートでウォッカなんか飲んで寝込んでしまって泥棒されてもたまらないと思い、(実際そういう手口の泥棒がヨーロッパの電車ではいると聞いていたから)「一緒にコカコーラもいる」と言った。「ストレートで飲めよ」とおじさんは言っていた(らしい)が、ワタクシがかたくなに「コカコーラで割る」と言い張ると、おじさんはコカコーラも買ってくれた。

なぜかさっきまでワタクシに文句を言っていた夫婦とワタクシは一緒に飲むことになっていた。なんのこっちゃ…ワタクシは展開がまったく読めなかった…

みんなで「カンパーイ」(ポーランド語で)
ワタクシはチェコ語で「乾杯」を何ていうか知っていたので、それとそっくりなポーランド語の「乾杯」の意味は分かった。おじさんに「君は英語で言いなさい」と促されて「Cheers」と言ったらおじさんたちは嬉しそうに「Cheers」と繰り返した。

その後おじさんと通じないながらもポツポツと話をした。
おじさん「ロシア語話せる?」(東ヨーロッパの社会主義時代の人たちの第二言語はロシア語だ)
ワタクシ「ニエ」(ポーランド語でno)
おじさん「ドイチュ?」(ロシア語がダメならこの世代のその次のメインの言語はドイツ語だ)
ワタクシ「ニエ。アングリツキ」(「英語」という意味)
おじさん「あー、アングリツキ~」(いかにも残念そう)

この後、ヤポンツコ(日本)から来たとか、おじさんの息子がワルシャワで働いてるから今日会いに行くんだとかくらいのことをちょぴっとだけ知っているチェコ語とドイツ語と英語を使って話した。しかし、この辺りでお互いに理解できる範囲は終了する…

それ以降はお互いに話せることもなくただひたすらウォッカを飲み、しかし、ワタクシはそれでもやっぱり酔っ払って寝てしまっては絶対にいけないと気を張って、トイレに行く時には荷物をごっそり全部持っていった。

そのおじさんたちには本当に何の悪気もなく、ただ純粋に息子に会いにワルシャワに来ただけだということはホームで息子との再会を喜ぶ姿を見るまでは信用できなかった。ホームで彼らを探し、「ジェンクイン」(ありがとう)と握手を交わして彼らと別れた。息子に会った彼らはワタクシのことなぞもうどうでもいいといった感じがして、(当たり前だけど)なんか寂しい気持ちになったが、「さて、ホテル探しっ」と自分の道を行ったのであった…


デュエリスト

2006-04-14 | シネマ た行
いままでファンの人も多いだろうからと遠慮してきたけど、もう言わせて。

韓流ブーム、早く終わって。
プリーズ。


韓流ね、嫌いなんです。だったら、試写会なんて行かなきゃいいのにね。募集してるとついつい応募しちゃう。当選するとついつい行ってしまう。あ~映画オタクの悲しいサガよ。

韓国の文化にくわしくないので分からないのだけど、いろんな韓国映画を見る限り、女性の可愛い仕草の定義がおそらく日本人とは違う?いや、国が違うから違って当然。違うことが悪いなんて言ってるんじゃあないですよ。(苦情は受け付けません)ただ、少なくともワタクシの感性とは違う。ヒロインがする仕草や突然大声出したりするさまがワタクシにはなんのアピールもしないんだなー。

そして、韓国映画にはありがちなとびとびのストーリー。はしょりすぎてる割にいらぬシーンは多い+すごく深いことを言っているように匂わせる+たいした歴史もない二人なのにやたらと回想する。ごめん、無理。

あと、効果音が…刀を抜いたり、戦ったりするシーンの効果音が高すぎる。これはかなり個人差あると思うんでワタクシだけかもしれませんが、あのシャキーン、キーーーーンっていう音が耳について、なんかいや。刀をさやから抜くだけであんな大げさな音立てんでも…それと、中盤、後半で使われるピアノとバイオリンの曲がなんか壊れたレコードプレーヤーから流れるようになんか音かおかしいのななぜ?わざと?

そして、この映画に作品賞を与えた韓国批評家賞も「?」

途中から、「なんやねん、この映画ー、こんなんアニメで作れやー」と思っていたら原作はコミックだった。あー納得&ワタクシの目もまんざらふし穴ではなかったわなー。原作がコミックということならこういう感じも少し許せる。

なんか悪口ばっかり書いたのでスッキリした、あ、ではなくて悪口ばっかなのでいいことも書きます。

これまで渋い系の役しか見たことなかったアンソンギがちょっとコミカルな役で出ていてGOODやっぱり芸達者な役者さん。ひっぱりだこなのも分かります。そして、主役のカンドンウォン。彼を目当てに見に行かれる女性のかたも多いのでしょう。確かに彼は男前。けっこう「?」な人気韓国俳優もいる中、彼は涼しげな男前でいいんじゃないでしょうかね。

オマケ超個人的ですが、MBS(大阪ローカルの放送局です)の八木早紀ちゃんが見れて良かった。知らない人がほとんどだと思いますが、関西では有名なアナウンサーです。試写会の案内に出てきたんですよ。標準語の中にちょこっと話す関西弁がキュート。彼女も「この映画はストーリーを追うより映像を楽しんで」と言っていた。自分の会社主催の試写会でそんなこと言うてええんか?でも、そんな正直なアナタが好きよ

ワタクシと英語B面~留学編 ポーランド一人旅①

2006-04-13 | ワタクシと英語
だんだん「ワタクシと英語」というカテゴリーから離れてきたけど、ま、いっか。

トロントでの留学期間が終わり、ワタクシはルームメイトの国チェコに一緒に行ったどうせなら、この帰りにヨーローッパを少し回ってこようと考えたのだ。ワタクシにはたいして計画もなかったけど、チェコに行くのなら隣の国ポーランドに行くのもいいなぁとおぼろげに考えていた。理由はやはり映画で、ポーランド人のクシシュトフケシロフスキーという監督がワルシャワを舞台によく映画を撮っていたので、ワルシャワに行ってみたいと思った。ポーランドなら一番昔の町並みが残っているクラコフに行くのが普通らしいが、ワタクシはケシロフスキー監督のワルシャワを見たかった。

ワルシャワへはプラハからプシェロフというところで乗り換えて、電車で、ん~何時間くらいだったかなー。朝早くでて19時くらいに着いた気がする。

プシェロフまでのワタクシは非常にゴキゲンだった。なんせ6~8人用のコンパートメントに独りっきりである。ボヘミアの牧歌的な風景を眺めながら、ウォークマンから流れる曲を大声で歌っていたりしたお~、こりゃ楽チン、楽チン。とのんきに構えていた。

プシェロフでワルシャワ行きに乗り換える。その電車が来るまで1時間以上は待ったように思う。トイレがいかにも東ヨーロッパのトイレで紙代を取られてなんだか恐かった。ここのホームでたむろしている男の人たちも意味もなくこわかった

ちょっぴり心細くなりながらも、次の電車が来て乗り込んだ。今度はさっきとは違ってコンパートメントはいっぱいだった。

そこで自分の席に着くとまもなく、ワタクシの向かい側に座っていた中高年の夫婦の奥さんのほうがワタクシに向かってギャーギャーと何やら文句を言い始めた。どうやらポーランド語らしかったが、ワタクシの顔のすぐ前で人差し指を激しく振りながら明らかにワタクシに対して文句をがなりたてた。ワタクシはワケが分からず、英語で「何ですか?」とか、「ポーランド語は分かりません」とか言ったが、相手が英語が喋れないのだから何の意味もない抵抗だった。その奥さんは旦那さんにもガーガーと文句を言っていたが、その内容はワタクシに対する文句っぽかった。

そのおばさんの言うことはまーーーったく理解できなかったけど、よくよく観察しているとどうもその席にワタクシが座っていることが気に入らないらしかった。「ん?もしかして、ワタクシ間違った席に座ってる?」と思ってチケットをチェックしたが合っていた。

そこで、次におばさんががなりたててきたとき、英語で「ここはワタクシの席です。間違ってません」と言ってチケットを見せた。おばさんは「ふんっ」って感じでコンパートメントを出て行った。

なんのこっちゃー。なんでワタクシが怒られなあかんねーん。と思いながらもひっじょーに恐かったワタクシはとりあえずおばさんが出て行ったので「もう帰って来んといて」と祈っていた。

その時、隣から英語が聞こえた。「あのおばさん、酔っ払ってワケ分かんないこと言ってるのよ。ほっとき、ほっときー」と隣の若い女の子がワタクシに言った。この時の彼女が天使に見えたということは言うまでもない。

当時まだタバコを吸っていたワタクシは、少しほっとしてその子に「タバコ吸っていいかな?」と言ったら「ここ喫煙車よ」という答えが返ってきた。その当時、ヨーロッパはまだ喫煙天国であった。喫煙車に乗って「タバコ吸っていいですか?」なんてご丁寧に聞く奴はどこにもいない。当然、吸っていいに決まってるやんって感じだった。

その子に「ワルシャワまで行くの?」と聞くと、「いいえ、次で降りるわ」と、、、

えーん最後までいてよー。こわいよー。と思ったが言えるはずもなく、彼女は次の駅で「じゃあね」と爽やかに降りていった。この時の彼女の後ろ姿はいまだに覚えている。天使に見放された瞬間だった。

ノックアラウンドガイズ

2006-04-12 | シネマ な行

マフィアの第二世代の苦悩というと、まずは「ゴッドファーザー」でアルパチーノが演じたマイケルコルレオーネを思い出す人が多いだろう。この作品はあそこまでシリアスにではないが、現代のマフィアの第二世代の苦悩を描いている。マフィアのNo.2デニスホッパーを父に持つマッティーバリーペッパーは堅気の世界で生きようと、どこの会社に面接に行っても父の素性がバレた途端断られてしまう。そこで、父の右腕テディジョンマルコヴィッチに頼み組織の大きな仕事を任せてもらう。父は息子をバカにして大切な仕事を任せてくれないが、テディは父に口を利いてくれた。

大ボスから借りる金を父の元へ届ける手配をすることになったマッティー。他の二世代たちと一緒に仕事をすることになった。だが、運び屋のジョニーセスグリーンがしくじって金の入ったカバンが盗まれる。こいつがまたどん臭くて腹が立つっ

そのカバンを見つけたのはオバカな高校生の二人組。大金の入ったカバンを見つけ、ヤバいなんてちっとも考えずにおおはしゃぎ。盛大に好きなものを買いまくる。しかし、そのうちの一人が警官の息子で金は警官の手に渡ってしまう…

この辺りまではオバカな高校生が金を使いまくり、この警官が悪徳野郎で金をくすね、そしてそれを必死で取り返そうとするマフィアの第二世代の4人がいる、という、んっ?これは何?コメディなのか?という展開を見せるんだけど、後半に向かうにつれてどうもコメディってワケじゃないらしいという雰囲気が漂ってくる。製作側は大真面目みたいだ。

真剣に父に認めてもらいたくて奔走するマッティーを演じるバリーペッパーがスラリとした若いマフィアで堂々としていてなかなかにカッコよく、その右腕を演じる同じく第二世代(でも、母親がユダヤ人だからマフィア界では出世できないと言っている)ヴィンディーゼルの抑えた乱暴者がいい感じだった。彼は街で500回喧嘩をしたという乱暴者だが、静かにインテリジェンスと優しさも光らせてスマートな相棒ぶりを見せていた。

92分とあっという間に終わってしまい、最後の展開はあっけないがクドクド語られるよりこのほうがすっきりしていて良かったかもしれない。もの凄くいい作品というわけではないが、地味目に面白い作品である。

オマケバリーペッパーよりもヴィンディーゼルのほうが名前が売れているので、DVDのパッケージなどもヴィンディーゼルがメインの作品のように扱われているけど、実際にはバリーペッパーがメインなのでファンの方はご注意をでも、出番は少なくてもヴィンディーゼルの役はカッコよかったですよー。


ミシェルヴァイヨン

2006-04-11 | シネマ ま行
ワタクシはF1にはまったく興味がなく、それどころか車そのものにも対して興味はない。車は持っているが、「足」以外の何ものでもない。んなわけで、この映画に登場するレースがF1なのかどうかもはっきり分からないのだけど、とにかくカナダのロードレースやらル・マン24時間耐久レースが登場するお話。まぁ、モータースポーツのことは知らなくても「ル・マン」という名前くらいは聞いたことがある。まぁ、くわしく知らなくてもこの映画は楽しめる。くわしく知っていればもっと楽しめるのだろうなぁ~と思いつつ。

まぁ~とにもかくにも映像が美しいこれはもう、環境ビデオか?と思わせるほどに自然の映像が美しい。そして、レースのシーンもすごく臨場感があるし、雨粒がグラサンに一粒落ちるところや、蝶がスタートするレースカーから飛び立つところなど詩的な映像もあってこれもまた美しい。車に興味のないワタクシでも思わず感動してしまう。思わず、カーレーサー野郎になった気分になってしまう。なんてったって、実際に「ル・マン」に出場して撮影したってんですからね、そりゃ、興奮する映像に出来上がっているでしょ。

カーレーサーと聞くとなんだか横柄な自己中心野郎なイメージがあるが(ん?ワタクシだけか?)ここに出てくる「チームヴァイヨン」の連中は違う。家族経営であることもあるが、その他の仲間も全員「家族」なのだ。生死を預け合い、「生の喜び」と「情熱」を分かち合う仲間。そこに変な妬みや憎しみが存在しないところがワタクシは好きだった。

それに引き換え、敵チームがあまりに卑劣でその辺りが少しこの作品をチープなものにしているようで少し残念だった。敵がちょっと汚い手を使って勝とうとするというのはこういう映画では常套だけど、これでは少し行き過ぎていないか?と思ったら、このお話、もともとフランスの人気コミックなのねー。それを考えるとこのチープさも納得、納得。

そして、ヒロインを演じるダイアンクルーガーが美しい。「ナショナルトレジャー」でも「トロイ」でもそれほどもの凄く美しいとも思わなかったけど、この作品では非常に美しかった。彼女、ドイツ人だけど、フランス語のセリフは吹き替え?フランスに留学経験アリだから喋れるのかな?口の動きは自然だったけど。フランス人の役ではないから多少下手でも問題はないのでしょう。しかし、この映画のキャストを見るとどこにもダイアンクルーガーの名前がない。へっ?っと思っていると「ディアーヌクルージェ」???もしや…と思って調べたらやっぱり…フランス映画やからってフランス語読みするなよ、ややこしい。多分、当時彼女はほぼ無名だったからフランス映画だしフランス語読みされちゃったんだろうね。

ま、あんまり深く考えずに映像だけ楽しんじゃってください。