「未体験ゾーンの映画たち」という面白いのに未公開になりそうな作品を集めた映画館の企画もので見ました。
14歳のエリスタイシェリダンは親友のネックボーンジェイコブロフランドとミシシッピ川に浮かぶ島にある木の上のボートに遊びに行き、そのボートに暮らすマッドマシューマコノヒーと出会う。
マッドは2人にボートをやる代わりに食糧を持ってきてくれないかと持ちかける。マッドはとある女性を待っていると言い、ネックボーンは怪しむがエリスは食料を持っていく。そこからエリス、ネックボーンとマッドの交流が始まる。
マッドはジュニパーリースウィザースプーンという幼馴染の女性のために男を殺し指名手配中だと言う。ジュニパーに乱暴した男を殺したマッドをエリスは純愛を貫いている男として憧れというか尊敬というか、そういうまなざしで見ている。エリスは14歳で17歳の女の子に恋をしていたが失恋してしまう。両親はうまくいっておらず離婚寸前だ。そんなエリスにとって唯一マッドだけが真実の愛を信じられる理由となっていた。
宣伝では「現代版『スタンドバイミー』」とされていて、確かにそんな雰囲気がある。子役の2人がとても可愛いかった。ネックボーンを演じたジェイコブロフランドはうまいとは言えないと思うけど、エリスを演じたタイシェリダンはとても演技が上手だと思った。顔も男前になりそうだし、これからもっとたくさん映画に出演するかもしれませんね。
“現代版”なんて言ってはいるけど、アーカンソーのど田舎が舞台であんまり“現代”って感じはしなかったな。エリスの家はお世辞にも上品ともお金持ちとも言えないけど、南部特有の父親にsir、母親にma'amをつける丁寧な喋り方で両親と接しているところなんかがそう思わせるのかもしれない。ネックボーンは両親がいなくて叔父さんマイケルシャノンと暮らしているというから、何か背景に暗いものを感じはしたものの、この叔父さんもお金はなさそうだけど、基本的には良い人そうだったし、こういう話にありがちな子供を虐待しているとかそういうのも一切なかったのが、ちょっと意外な展開だった。それにしても叔父さんを演じていたのがマイケルシャノンだったから、何かストーリーに絡んでくるのかと思ったら本当に端役でびっくりしたよ。ジェフニコルズ監督の作品には全部出演しているそうなので、お友達なのかな。
マッドが恋する幼馴染のジュニパーっていう女性が、随分と自分勝手な人で、マッドの自分への気持ちを利用して困った時だけマッドに頼っているっていうのがワタクシにはどうにも共感できず、そんな人に恋しているマッドにも感情移入できず、エリスは14歳だからそれを「純愛」と呼んでしまうのも仕方ないとは思うけど、ワタクシはもうすっかり大人であんなものには騙されないぞと思ってしまった。あんな人を想い続けられるなんてある意味マッドの精神年齢も14歳くらいなんじゃないのかなぁ。まじないとかもやたらと信じてて好きな人の元カレを殺しちゃうとか、マッドってもしかしたら実はちょっと足りない人?と思ってしまった。そういう設定ではないのかな。
マシューマコノヒーの最近の活躍はすごいですね。あちらの記事には書くのを忘れたけど「ウルフオブウォールストリート」でも出演時間はめちゃくちゃ短いのに一番強い印象を残しちゃってましたが、本人もTexanでやっぱり南部もののほうがよく似合いますね。
少年2人が良いし、マシューマコノヒーも好きなので良かったですが、ストーリーとしてはもう一歩何かあればっていう気はしたかな。エリスくらいの年ごろの男の子の夏休みを描く~みたいなのってアメリカ映画のいちジャンルと言ってもいいかもしれません。そのジャンルのものしては悪くはなかったと思います。
母親の法事にやってきた弟・猛オダギリジョー。愛想良く法事に来たみんなを接待する兄・稔香川照之。父・勇伊武雅刀の話からすると猛は東京に出てカメラマンになったが、好き勝手に生きてきて母親の葬式にすら出なかったらしい。兄は実家のガソリンスタンドを継いでまだ結婚していないが、従業員の智恵子真木よう子に少し気があり周囲も2人はゆくゆくは結婚すると考えているらしい。
オープニングから少しずつこの兄弟のそれぞれの性格や過去、関係性が観客にスムーズに示されていく。兄の稔なんてあまりにも腰が低いので、最初はこの家のお婿さん?と思ったくらいだったが、それも兄の性格や生活を非常によく表していると思う。そして、この智恵子という女性と猛が過去に付き合っていたんだなってこともだんだん分かってくる。
法事の翌日、兄弟と智恵子は渓谷に出かける。猛は前日の夜、智恵子のマンションに上り込んでセックスしたが、朝を待たずに実家に帰っていた。兄には智恵子と久しぶりに飲んでいたことにして。昨夜のこともあり、渓谷ではなんとなく気まずい猛だったが、智恵子はなんとなく猛との復縁を望んでいるふうだった。そんな智恵子から逃げるように吊り橋を渡り一人で渓谷の奥へと写真を撮りに行く猛。智恵子は猛を追って吊り橋を渡ろうとするが、高所恐怖症の稔は危ないからやめようよと言う。稔を振り切って吊り橋に向かった智恵子。その後を稔も追った。「危ないから引き返そうよ」と智恵子にしがみつく稔。「触らないでよ!」とキツイ言葉で振りほどかれ驚いた稔。その瞬間バランスを崩して智恵子は吊り橋からはるか下の川へ転落して死んでしまう。
いったんは事故として処理されたが、稔が「自分がやった」と警察に行ったため捕まってしまう。稔を助けるため東京で弁護士をしている伯父・修蟹江敬三に助けを求める猛。猛は稔を無罪にするため奔走し、稔もそんな猛の気持ちに応え「自分がやった」というのは直接智恵子を押したという意味ではなく、自分のせいで智恵子は死んだという意味だという証言に変えるのだが、、、
レビューなどを見ると世間的にはこの実家を継いだ“良い人”の兄に感情移入して見ていた人が多いようなんですが、ワタクシはこの稔という人が気持ち悪くて仕方なかった。(多分)不本意ながら実家を継いで、弟の元恋人をひそかに想い、父親の面倒を見て、背中を丸めて生きている兄。周囲のために色々我慢して生きているこういう人って世間ではえらいねなんて言われがちだけど、ワタクシはあまり好きではない。なんか自分さえ我慢すれば、みたいなのってなんかイライラしてしまうんですよねー。香川照之がうまいからってのもあるんだけど、吊り橋で智恵子にしがみついてる姿なんてマジで気持ち悪いし、そりゃ恋人でもない人にあんなしがみつき方されれば誰だって怖い顔して振りほどくでしょうよって思った。
一方、自分の好きなように生きてきた弟は、勝手な人間に見えるだろうけど、自分の人生で好きなことをやって生きることの何が悪いかワタクシには分からない。まぁ、女グセは悪そうだったし、どんな事情があったか知らないけど普通に母親の葬儀に出ないとか考えられないけどな。よっぽど悪い親でもない限り。そこんとこの設定はちょっと無理があると思った。
この兄弟の関係性が2転3転して、裁判の行方もそれと並行して2転3転することになるんだけど、結局真実がどこにあるのかはワタクシは分からなかった。猛は本当は吊り橋での出来事は見てなかったのに、稔に挑発されたことで稔が突き落としたのを見たことにしたの?智恵子が自分のものにならないからって「お前の荷物を消してやったのさ」みたいなこと言ってたのは稔のウソだったのかどうかもワタクシには分からなかった。稔という人間ってなんかどっかでそういう黒い感情をずっと心の奥に持っていそうだもの。
猛が吊り橋のところで稔の腕についたみみず腫れをとっさに隠すシーンがありますよね。あれってワタクシは古い傷に見えてしまって、稔に自傷癖があったのかと思ってしまったんですけど、あれはあの時についた傷でやっぱり最後の映像は本物だということなのかなぁ。
猛が智恵子とセックスして戻ってきた夜、「智恵子ちゃん、飲みだすとしつこいだろう」って稔はカマをかけた。猛は「あ、あぁ」と適当に話を合わせたが実は智恵子はお酒は一滴も飲めないことを稔は知っていた。だから、前夜猛と智恵子が何をしていたか渓谷の時点で稔は知っていたはずで。結局いつもいつも猛ばかりが欲しい物を欲しいままに手に入れることへの猛烈な嫉妬が稔にはあって、それが智恵子を突き落すという行動になったとしても不思議はない。
兄弟の会話がリアルでうまいなと思いました。役者も脚本も。兄を褒めようとして「俺なんか逃げてばっかだよ」と言う弟に「退屈な人生からだろ?」と言った兄。うまい!と思わず膝を打つようなセリフだったな。確かにその通り。退屈な人生から逃げられなかった兄は刑務所で何を思っただろう。実はそこが一番の逃げ場所になったのか。
セリフがリアルと言えば、この兄弟が両親のことを「お母さん、お父さん」弟が兄のことを「兄さん」と呼んでいるのもリアルだなぁと感じました。よくドラマや映画で「おふくろ」「おやじ」「あにき」とかって言ってますけど、第三者に言うことはあっても面と向かって「おふくろ」なんて呼んでる人リアルであの年代で見たことないし。そういうところに西川美和監督のリアルさを感じました。
最後に刑期を終えて出てきた稔が地元を離れるバスに乗ろうとしているところに猛が行くが、稔があのバスに乗ったのか猛の元へ行ったのかは描かれていなかった。ご自由に解釈くださいということなのだろうけど、ワタクシは稔にとってはもう地元からも猛からも離れた方が稔の人生にとっては良いんじゃないかと思った。
「蝶のように舞い、蜂のように刺す」この言葉は父親から教わった。ワタクシが物心ついた時には、モハメドアリウィルスミスという人はすでに第一線にはいなかったから、父親からすごいボクサーだったんだと聞かされたのが初めてアリを知ったときだと思う。
ウィルスミスは筋肉質ではあるけど、華奢でどちらかと言えばいわゆる「細マッチョ」に近い体型のイメージだった。顔が小さくてスラリとしている。そんな彼が1年かけて体重を20キロも増やし、大きなヘヴィ級チャンピオンに変身した。CGか?と思ってしまうほどの変わりようだ。服を着ていれば何とでもごまかしが効くと思うけど、ほぼ裸で戦うボクサーという役どころ。あの筋肉は、体型の変化は本物なんだーと心底驚いた。彼の変身ぶりを見るだけでも価値はあると思います。
本名カシアスクレイ。親からもらった名前は奴隷が雇い主からもらった名前だとブラックムスリムの指導者から「モハメドアリ」という名前をもらい改名。父親ジャンカルロエスポジートは親からもらった名前をと嘆くがアリは聞く耳をもたない。
彼は対戦相手との試合前の会見のとき、軽快に口からぽんぽんと飛び出す韻を踏む言葉で相手を挑発する。今で言う「ラップ」のような表現で彼の口は止まらない。あれだけ韻を踏む言葉が次々に飛び出すのだから頭の回転が早い人なんだろうなー。格闘技の選手が相手を挑発するのは自分への発奮と観客やメディアへのサービスもあるのだろうとは思うのだけど、それでもワタクシはあんまり好きじゃないんですよねー。なんかカッコ悪く思えてしまって。でも、あれがアリのスタイルだったようです。
アリがブラックムスリムに入ったのはマルコムXマリオヴァンピーブルズの影響だったらしいのですが、それについてはあまり映画では詳しく語られていなくて残念でした。その辺をもっと見たかったな。最終的にブラックムスリムに引き裂かれてしまうアリとマルコムXの姿のシーンはありました。
アリは兵役を拒否したのが印象的でした。「ベトナム人は俺のことを“ニガー”とは呼ばない」と言っていましたね。黒人差別にも声を挙げて戦ったアリらしい発言でした。兵役を拒否するというのは愛国者的なことが大好きなアメリカ人からすれば、とんでもない行動だったし、当然法律違反で裁判にかけられてしまう。最終的には数年の裁判で無罪を勝ち取るんだけど、その間にチャンピオンの称号やボクサーの資格などははく奪されてしまってパスポートも取れないから海外での試合もできなかった。アリほどの人なら戦地に行くことなく形式的な兵役だけで済んだ可能性が高かったみたいなんだけど、それでもアリは自分の信念に基づいて拒否したというのがすごいですね。
やっと無罪になってアフリカで試合をすることになったときのアフリカの人たちの歓迎っぷりがすごかったですね。例の「アリ、ボンバイエ!」っていう掛け声を共にファンたちと町を行くアリの姿がとても象徴的でしたが、ちょっとこのシーンは長すぎたね。
一方で3回の結婚についても語られていて、最初の奥さんジェイダピンケットスミスは奥さんの勝手で出て行ったから良いとしても、2番目の奥さんベリンダノーナM.ゲイは不遇な時代を支えてくれたのに、アフリカに遠征している間にうまく行かなくなっちゃってその場で3番目の奥さんベロニカマイケルミシェルに乗り換えたのはちょっとおいおいって感じだった。
そのアフリカでの試合で前半はずっとロープによりかかって相手に打たれっぱなしだったから、あれ?負けちゃうの?と思ったんだけど、あれは彼の作戦だったんだね。
ここまでの人生を紹介して157分かかっているから、これで終わりなのは仕方なかったのかもしれないけど、もう少し端折れるところを端折って、後年アトランタオリンピックの開会式で聖火の点火に登場したときのエピソードなどの再現があっても良かったかなぁという気はします。
彼の取り巻きの人間関係とかちょっと下調べしてから見たほうが良い部分はあるかもしれませんが、モハメドアリという人を全然知らない世代も彼を知る良い機会になる作品だと思います。
ウクライナ移民のアメリカ市民ユーリオルロフニコラスケイジは父親の冴えないレストランを手伝っていたが、ロシア人街で銃撃戦に遭遇したのをきっかけに武器を売る商売を始める。弟のヴィタリージャレッドレトを引き込んで2人で武器商人の道を歩み始めたユーリはその辺のチンピラを相手にするより、世界を相手に紛争地域で商売を始めようと考える。
武器商人ということで、かなりアブナイ橋を渡るユーリたち。商売が商売だけにヤバイ奴らを相手にしなくちゃいけない。それでも、ユーリはピンチを切り抜ける才能があり、無名の武器商人からのし上がっていく。ある商売相手にコカインで代金を払われてしまったことをきっかけにヴィタリーは麻薬に溺れ、中毒になり商売を抜けざるを得なくなるが、その後もユーリは自分一人でのし上がって行った。
昔から恋していた女性でいまはモデルのエヴァブリジットモイナハンに金持ちの紳士として近づき、正体を隠したまま結婚へとこぎつける。初めは見せ金しか持っていなかったユーリだったが、商売が軌道に乗り、エヴァへの見栄ではなく、本当に大金を稼ぐようになっていた。
武器商人として軌道に乗り始めたころ、ちょうど冷戦が終結し、ソ連が崩壊。速攻で故郷ウクライナへ飛びそこにいる叔父のヴォルコフ少将ユージンラザレフに掛け合ってソ連が大量に残して行った武器を売っ払うことに成功。このときライバルの武器商人シメオンワイズイアンホルムのほうの申し出を叔父はユーリへの親戚のよしみで断ったためシメオンに殺されてしまう。
その後は、ユーゴスラビア紛争に世界の目が向いているのをいいことにアフリカで起こっている紛争でかなり儲けたユーリ。リベリアのバプティスト大統領イーモンウォーカーのお気に入りになったユーリだったが、大統領はかなり凶暴でイカれていて、ユーリでもビビッていた部分はあった。そんな大統領相手でもユーリはうまく立ち回っていたが、お前の叔父を殺したシメオンを捕まえてやったから殺せと言われたときは、相当参ってしまったようだった。
奥さんはユーリの商売について特に詳しくは聞こうとせず、輸出入商くらいに思っていたっぽい。まぁ、どうせ聞いても嘘言われてたから分からなかっただろうね。家に商品があるわけでなし。でも、インターポールのバレンタイン捜査官イーサンホークが奥さんにバラしてしまい、いったんはユーリも武器商から足を洗うが、それは長くは続かなかった。
取引がテンポよく語られ、インターポールの捜査をうまくかいくぐり、法の抜け道をすれすれですり抜けていくユーリの姿が心地よく、ともすればユーリが悪い奴だということを忘れさせてしまいそうで怖い。ユーリも自分が悪い奴という意識はないし。自分は商売として成り立つことをしているだけで戦争をしている奴らが悪いのだし、自分は戦争なんかで死にたくないと思っている。自分の商売が間接的に人を殺しているとしても、自分がやらなくても他の誰かがやるだけさ、くらいに思っているのだろう。そうでなければ、こんな商売できないよね。
ユーリは金に目がくらんだわけではなく、自分には才能があったからだと言っていたけど、確かにユーリの商才ってのは見ていて感心しましたね。ぶっちゃけあざやかな手口にスカッとした場面も。商才とピンチを切り抜ける才能がないと武器商人としては成功しないでしょう。
結局最終的にインターポールに捕まるんだけど、ずっと上層部からの要請でユーリは釈放されてしまう。アメリカを始めとする国際社会は彼のような存在が必要だからというオチだった。実際のユーリのモデルになった人は捕まって収監中のようですけどね。映画としてはこういうオチで良かったと思います。実際世界中にユーリのようにのさばっている武器商人はたくさんいるんでしょうし。
ユーリは「戦争で死なないためには自分からは戦争に行かないこと」と言っていましたね。世界がどう変わろうが戦争がなくなることはない。でも戦争で死ぬほど馬鹿げたことはない、と武器商人のユーリは達観していたのかもしれません。
「ザ・イースト」のブリットマーリングが素晴らしかったので、彼女の過去の作品を見てみようとレンタルしました。この作品でも主演だけでなく、脚本も担当しているのですね。サンダンス映画祭で審査員特別賞を受賞したそうです。
MITに合格した秀才高校生ローダ(マーリング)は合格祝いのパーティの帰り、「もうひとつの地球」という地球にそっくりの惑星が発見されたニュースをカーラジオで聞く。空を見上げるとその惑星が見えた。それに夢中になりながら運転していたローダは、大学教授のジョンウィリアムメイポーザーが家族と乗っている車に衝突。ジョンの妊娠中の妻、4歳の息子がその事故で亡くなってしまう。
4年の刑期を終えて出所したローダはエリートコースから完全に外れ、人と接触するのもイヤで高校の清掃員という仕事に就く。被害者のジョンに謝罪に行くつもりで彼の家に行ったが、怖気づいてしまい自分の身元を明かすことができない。事故の加害者に関しては未成年ということでマスコミには公表されず、ジョンは自ら復讐してしまうことを恐れて裁判記録を見なかったのでローダのことは知らなかった。
ローダは自分の正体を隠して、清掃サービスのお試し期間ですと嘘を言い、妻子を亡くして世捨て人のようにゴミ屋敷に住んでいたジョンの家を掃除する。それから週に一回ジョンの家を掃除するようになり、少しずつお互いに打ち解け仲良くなるジョンとローダ。ある日、一線を越え男女の仲になってしまう。
それと並行して「もうひとつの地球」に関する様々なニュースが流れ、「もうひとつの地球」には私たち一人一人が存在するということが分かる。自分とまったく同じ人間が同じように「もうひとつの地球」で暮らして同じ人生を歩んでいるのだと。ローダはそこに旅立つ一行に申し込んでいた。そして、その一行の一員に選ばれる。
恋人のような関係となったジョンにローダは自分がジョンの妻子をひき殺した犯人だと打ち明ける。当然、錯乱状態になりローダを拒否するジョン。2度と顔も見たくないと追い出されてしまう。
ローダが「もうひとつの地球」に旅立つ準備のために訓練に向かう前、テレビを見ていると科学者がこの地球と「もうひとつの地球」は我々が「もうひとつの地球」を発見したことでシンクロしなくなってしまっているという事実を知る。つまり、あちらでは事故は起きていないかもしれない。ジョンの妻子は生きているかもしれない。そう考えたローダは「もうひとつの地球」行きの権利をジョンに譲り、ジョンは「もうひとつの地球」へと旅立った。
その後、ローダの前に「もうひとつの地球」からやってきたもう一人のローダが現れる。
作品のポスターとか「もうひとつの地球」とか、やたらとSFチックな雰囲気なんだけど、物語はほとんどローダの心情とローダとジョンの関係が描かれ、SFというより「贖罪」の物語という色のほうが濃いので、SFものを期待した観客はがっかりしたんじゃないかな。ワタクシは特にSF好きというわけではないのでそれでも全然良かったですが。それにSFものって時に哲学的な要素を含んでいることがありますよね。この物語も「贖罪」とか自分たちの「存在」とかどこか哲学的な感じがしました。それにしても、この物語をSFと融合させようと考えるってすごい発想ですね。
ローダの清掃員の仕事仲間のおじさんが自ら目を潰したり、耳を潰したりしてしまった件に関しては詳しくは語られないけれど、それも彼が過去に犯した罪への「贖罪」の話ということでローダの心情とつなかっているのだと思いました。
結構終始暗~い感じなので、ブリットマーリングが美人さんじゃなかったら正直ずっと見てるのは辛かったかも・・・「贖罪」の話としてはよくできていると思いましたが。ローダがジョンと男女の関係になったときは「それはアカンやろー」と思ったけど、彼女は彼女なりにジョンを幸せにできるかもしれないと思ったんですよね。そして、多分自分自身も。そんな都合よく行くわけはないけど、彼女はまだ若いし、捕まった17歳で時が止まっているとしたらありえなくはないかな。でも、ローダの正体を知ったジョンとしてはたまらないですよね。自分の妻子を殺した女性を好きになってしまったわけですから。
最後にやってきたローダは何の目的でこちらに来たのかは分からないけど、こちらのローダとは違ってきちんとしたスーツを着て、キャリア女性っぽい風貌でしたから、やはりこちらの世界と「もうひとつの地球」とはシンクロしてなかったんだなということが分かります。ならば、ジョンも向こうの妻子に会えたはず。会えなかったとしても遠くから見たりすることはできたということでしょうね。向こうにも当然ジョンがいるわけですから、その妻子を自分のものにはできないけど、成長した息子やちゃんと生まれてきた赤ん坊の姿を見ることができただけでもきっとジョンは満足したでしょう。
これをだらだら上映されたら辛いところでしたが、93分とコンパクトにまとまっているところに好感が持てました。
公開時に興味があったのですが、見逃していたのでレンタルしました。ビートルズの曲ばかりを使ったミュージカル。使用した曲は33曲だそう。
1960年代。イギリス・リバプールに暮らすジュードジムスタージェスは、第二次世界大戦中にイギリスに駐在し、母親と関係を持った後アメリカに帰ってしまった父を探しに父の働くプリンストン大学へ。そこの学生マックスジョーアンダーソンと親しくなり、彼の妹ルーシーエヴァンレイチェルウッドに恋をする。
ジュード、マックス、ルーシーと聞けば、"Of Course!!!"ってなもんで、あとから例の曲が登場するんだなぁと思いますよねぇ。彼らがニューヨークに出てから知り合いになる人たちもビートルズの曲中に登場する名前を持つ人多し。
ワタクシは、ビートルズのファンではないので、一般的なビートルズの曲を知ってる程度です。33曲の中には知らない曲も数曲はありました。その程度の知識の者が書いた感想です。ファンの人にしてみたら、こういうのに使われるのは嬉しいのかイヤなのかどっちなんでしょうね。ビートルズが汚されたような気になる方もいるかもしれません。
ワタクシはとてもよくできたお話だと思いました。特にサプライズ的なものはなかったけど、ビートルズの曲ありきで構築しているのだから当然と言えば当然なのですが、うまく歌詞とその時のキャラクターの心情が合っているし、映像もファンタジックで良かった。映像をファンタジックにすることで、ミュージカルというファンタジーをうまく見せていると思います。ベトナム戦争、ラヴアンドピース、ドラッグとか1960年代、70年代のアメリカンカルチャーをうまく表現していますね。ビートルズはイギリス人だけど、あの時代、そういうものを背景にきわどいダブルミーニングとか、退廃的な曲とかが売れたのだと思うし。
"I Want You"って招集されて、"She's So Heavy"って自由の女神を背負ってベトナムを蹂躙していくアメリカのシーンなんてすごくうまかったですね。"Strawberry Fields Forever"で戦場を表すのもすごいアイデアだと思いました。ゲスト出演のサルマハエックとボノにもウケたなぁ。ボノが"I Am The Warlus"歌ってくれるなんて贅沢じゃないですかー。
主人公がジュードなので"Hey Jude"はもちろんですし、"All You Need Is Love"はこれ以上ないストレートな使い方。いや、むしろこれはストレートな使い方しかしてほしくない曲です。"Lucy In The Sky With Diamonds"はエンドクレジットだったんですねー。主人公が恋する女の子がルーシーと分かった瞬間から待ちに待ったよ。
ジムスタージェスもエヴァンレイチェルウッドもみんな歌えるんですね。ビートルズだからそんなにすごい歌唱力は求められない気はしますが(失礼)、みんなうまかったです。特にエヴァンレイチェルウッドは美人で演技もできて歌も歌えるってかー。ますます好きになっちゃいました。
*作品もR18、レビューもR18です。
今まさにレビューを書こうとしているところでこんなことを言うのもなんですが、この作品を取り上げるべきか否か実はまだ迷っています。なんと言っていいやら、好きな作品かと言われれば好きではないと答えるし、他の人に薦めるか?と聞かれたら、薦めないと答えると思います。園子温監督ねぇ、、、彼のことも好きかと聞かれれば好きじゃないと答えると思うんですよねー。ただやっぱりこのインパクトの強さは放っては置けない。
東電OL殺害事件を基にしたお話。昼間はエリートOLだった被害者が夜は時に数千円という値段で客を取り売春をしていたという事件だった。この被害者が映画では大学教授・尾沢美津子富樫真という設定に変わっている。彼女は昼は大学教授、夜は娼婦という生活を送っていた。そんな彼女に弟子入り(?)するのが潔癖症の小説家・菊地由紀夫津田寛治の妻いずみ神楽坂恵。彼女は初めは騙されてAVに出演させられるのだが、それが鬱屈した生活からの解放となったのか、後に知り合った尾沢美津子の世界へどんどん堕ちていく。
時系列が少しいじってあって、最初に猟奇的な死体が発見されるのだが、それがおそらく尾沢美津子で、その事件を調べるのが刑事の吉田和子水野美紀。一見ごく普通の女性に見える吉田だが、彼女は夫二階堂智の後輩児嶋一哉と不倫関係にあり、彼から性の奴隷のような扱いを受けていたがそれもまんざらでもないようだった。
「冷たい熱帯魚」もそうでしたが、とにかくエログロがえげつないです。今回はグロは少ないけど、エロがグロいです。正直気持ちが悪くなるようなセックスシーンが延々あります。あとはこの監督特有の妙な長回しシーンですね。ポンビキのカオル小林竜樹って男が何回も何回もピンクの蛍光塗料の入ったボールを投げつけてくるシーンとか、いずみが素っ裸で鏡の前に立って「ご試食いかがですか~」ってスーパーの試食のパートの練習するシーンとか、とにかく異常に長い。そういうわけの分からんシーンを長々と見せるのも園監督の特徴ですよね。彼には意味があるんでしょうけど、よく分からない。
しかもその素っ裸で「ご試食いかがですか~」って言ってた女優さんの神楽坂恵と園監督ってご夫婦なんですよね。。。当時はまだ夫婦ではなかったんでしょうけど、自分の恋人だか恋人になろうかっていう女性にあれをさせられる園監督ってすごいわ。それだけじゃなくてセックスシーンもすごいし。。。なんだろう。監督も女優さんもすごいなぁ。すごいすごいって書きながら褒めてるわけでもないんだけどねぇ。なんかもう突き抜けちゃってて感心はします。
こちらが吐きそうになるほどのエログロの中で、尾沢美津子がいずみに言う「愛のないセックスならお金を取りなさい」とか身を落としたいずみが言う「男はタダでやらせる女より、お金を取ってやらせる女を軽蔑する」という言葉なんかは妙にふむふむと納得してしまったりもしたなぁ。いや、売春に賛成しているわけでは決してないのですがね。
尾沢美津子といずみに関しては、一応娼婦にまでなってしまう彼女たちなりの理由というのはあるのですよね。もちろん、なぜにそこまで!?という思いはあるにしても、それなりの理由はある。一番マトモそうで一番不可解なのは実は刑事の吉田でごく普通に思える彼女が不倫相手の性の奴隷になっていた「理由」は一体何だったんだろう。「女ってそういうものよ」なんて言ってみせたりもするけど、それこそ男目線での女の捉え方なんじゃないのかなーとか思ったり。いや、特に深い理由なんてないのかもしれないけれど。
強烈なセックスシーンを見せつける女性3人が主人公の作品なんだけど、実はもう一人尾沢美津子の母親・尾沢志津大方斐紗子という人が一番強烈だったりした。顔色ひとつ変えずにいずみに「あなた、売春はいつから?」とか聞いちゃうんだもんなー。なんなんだ、あの婆さん。このキャラは他の女性3人と違って完全に監督が作りだしたキャラでしょうから、やっぱり良くも悪くも強烈な個性を持った人だなぁ、園監督って。
なんか嫌いなのに、目が離せないっていうね。ラヴアンドヘイトな関係に入ってきてるような気がします。園作品とは。
ケーブルテレビで見ました。
離婚はしたが、娘想いの父ブライアンリーアムニースンは、娘キムマギーグレイスの近くにいるため仕事を辞め、娘の町に越してきた。その辞めた仕事というのはCIAだか何だかの秘密工作員。この父親、只者ではない。
ある日、キムは友達とヨーロッパ旅行に行くと言いだす。物分りの良い母親ファミケヤンセンは簡単にOKを出すが、世界の危険なところばかり見てきたブライアンはそう簡単にOKとは言えない。しかし、娘の懇願にほだされて空港に着いたら一番に電話することだの、一日の終わりには必ず電話することだの、色々と条件をつけて携帯電話を渡して旅行を了承する。
パリに着いたマギーは浮かれモード。すっかり有頂天のマギーの友人はタクシー乗り場で知り合ったフランス人と仲良くなり、パーティに行く約束までしてしまう。友人ほど有頂天にはなれないマギーだったが、それでも父親へ電話するのをすっかり忘れるくらいは浮足立っていた。
なかなか電話がかかってこないことにイライラしていたブライアン。やっと電話がつながったキムに「空港に着いたら電話しなさいと言っただろう」と怒ったのもつかの間、なんとその電話の最中にキムたちの部屋に男たちがドカドカとやってきてキムの友人をさらってしまう。その一部始終を電話で説明していたキムだったが、ブライアンは冷静に「男たちはお前のこともさらうだろう。男たちが来たら冷静にどんな風貌の男か電話に向かって説明するんだ」と言う。
果たしてブライアンの予想通り、キムも男たちにさらわれてしまう。キムが電話の向こうで言い残した数少ない手がかりを持ってブライアンは現場へと急行する。
もうここからのおとーさんがすご過ぎる。まず、キムたちに空港で声をかけた男の行方を追い、そいつを追いかけまわした挙句、その男は車に轢かれてしまう。電話でのキムの叫び声などを元に誘拐したのが人身売買目的のセルビア人の一行だということを突き止め、敵のアジトにどかどかと乗り込んでいく。
ギャー、おとーさん、つおいよー、つお過ぎるよーーーー!!!
だいたい、こういうアクションものっていいもんの人がいざって時に敵に情けをかけたりして、それで立場が逆転してピンチになって、その時にいいもんの味方の誰かが都合よく助けに来て、とかそういうパターンが多いでしょ。でも、このおとーさんは違います。敵に一切の情けはかけません。白状しない奴、嘘つく奴、容赦なくぶん殴って、ぶっ殺してやります。まどろっこしさ一切ナシ!娘を取り返すためならエッフェル塔だって倒す!んだそうです。。。
いやー、ほんと見ていて気持ちが良いですよ。北野武のバイオレンスくらい容赦ないです。あ、こっちのおとーさんはいいもんですけどね。元秘密工作員だし、知力体力共にハンパないんですもん。そんじょそこらの奴には負けません。リーアムニースンがそれを黙々とこなしていくのがまたいいんですよねー。これをスタローンとかシュワちゃんがやっちゃうと、そりゃ勝つやろって気がしてしまいますけど、リーアムニースンだからこそ、インテリジェンスも光る感じで良いんですよねー。
上映時間たった93分。まさにシンプルイズベスト!な作品です。
ケーブルテレビで見ました。公開中、結構良いらしいというウワサを聞いていたので楽しみにしていました。
大学に不正に聴講に来ていたおおかみおとこ大沢たかおと恋に落ちた花宮あおい。妊娠し、大学をやめ結婚生活を始める。1人目の娘を雪の日に出産し、「雪」と名付ける。2人目を妊娠し、幸せな結婚生活を送っていた彼らだったが、2人目を生んだその日おおかみおとこは川に落ちて死んでしまう。2人目の息子を生んだその日は雨で「雨」と名付ける。
おおかみおとこ亡き後、花は苦労して2人を育てる。少し興奮するとおおかみに変身してしまう2人。アパートでは「犬を飼っているでしょう」と苦情を言われたり、雪がシリカゲルを飲んで吐いてしまったときには「小児科」に連れて行くべきか「動物病院」に連れて行くべきか迷ってしまったり。結局都会にはいられず、「ど」のつくほどの田舎に引っ越すことを決心する花。
田舎の家では、2人の素性を隠すためなるべく人と関わらないように暮らしていく花だったが、近所のおじいちゃん大木民夫が何かと世話をしてくれるようになり、やがて近所中の人と仲良くなる。
人前で絶対におおかみになっちゃダメだと雪と雨に言い聞かせる花だったが、やがて雪が小学校に上がる歳になり、花の不安はつきないが雪は「うまくやるから~」と能天気に言い、小学校に通うようになる。
小さいときの雪と雨がめっちゃくちゃ可愛くてねぇ。くるくるとおおかみになったり、子供になったりする雪の姿がたまらない。ワタクシが大型犬を飼っているせいかもしれないけど、雪と雨がおおかみの姿でするいたずらが本当にパピーのようで愛しくてしょうがなかった。特にお転婆なお姉ちゃん、雪の行動が可愛すぎです。
徐々に普通の人間として小学校に馴染んでいく雪と馴染めない雨。赤ちゃんのころからうじうじうじうじ弱虫で田舎に来てからも都会に帰りたがっていた雨は、小学校にはほとんど通わなくなり、山の資料館で働く花にくっついてどんどん山の生活に魅せられていく。
あんなにおおかみとしての習性を謳歌した子供時代を送った雪と、おおかみはいつも絵本では悪者でこんなのイヤだと泣いていた雨の立場が徐々に逆転していく姿がとても興味深かったです。雪には好きな子もできて秘密を共有できたりもし、人間として「うまくやっていく」ことを覚えていったようだけど、雨はどんどん人間界から離れ、山の主のキツネに教えを請い、おおかみとして生きる道を模索し始める。
人間界ではたった10歳だけれど、おおかみとしては立派な大人という雨が森で生きることを選んだ時、花は泣きながらも最後には「元気で。しっかり生きて!」と高らかに叫びます。この母から子供への力強いメッセージにすごく心打たれました。雨と離れることがどんなに辛くても花は雨が選んだ道を同じように信じてそう叫ぶのです。親から子供への愛情というのは、えてして親のエゴがかなりの割合で含まれることが多いです。エゴというのはちょっとキツすぎるかな。親の願望とでも言いましょうか。子供を愛していると言いつつ、親はなんとか自分の理想に近づくよう子供をコントロールしがち。でも、ここでの花はそうはしません。雨を信じ、雨の決断を信じ、「しっかり生きて」と叫ぶのです。元気でしっかり生きていてさえくれたら。それが言える花の強さに涙があふれました。
人間界に馴染もうとする雪のエピソードのほうも切なくて泣けちゃったりもしました。でも、途中途中は結構くすくす笑えるシーンも多かったかな。小さい雨が三毛猫にやられたシーンは爆笑だった。
花役の宮あおいちゃんって本当にうまいですねぇ。花が「雨!」と呼ぶシーンが何度も出てくるんですが、名前の呼び方ひとつに感情を込め、意味をもたせることができる技量を持っています。雪や雨を演じた子供たちもとても自然で上手でした。
子どもたちが病気になったとき、病院はどうしたの?一回も病気にならなかったの?とか突っ込みたい気持ちはぐぐっと端っこに追いやって見てください。そもそも“おおかみおとこ”と恋に落ちて“おおかみこども”が生まれるお話ですので、いろいろ突っ込みたい人にはあまりオススメできません。それでも、ファンタジーと現実世界を非常にうまく融合したお話だなぁと思ったら「サマーウォーズ」の細田守監督なんですね。あれもファンタジーと現実がうまく融合したお話でしたね。
実在したホワイトハウスの黒人執事の人生を描いた作品。試写会に行って参りました。
綿花畑の奴隷の子として生まれたセシルゲインズフォレストウィティカー。母マライヤキャリーは雇い主の白人アレックスペティファーに手籠めにされ、父は射殺された。そんなセシルに同情してか女主人ヴァネッサレッドグレーヴは彼を“ハウスニガー”にする。外で農作業をしなくてもよくなり、セシルは家の中の小間使いとして仕事を覚えるようになる。
青年になり生まれた家を出たセシルは“ハウスニガー”としての経験を生かし、ホテルで働くようになる。そこでの働きを認められホワイトハウスの執事としての仕事の声がかかる。
アイゼンハワーからレーガンまで7代の大統領に仕えたセシル。ホワイトハウスでは優秀な執事として重宝されていた彼だったが、家庭の中には嵐が吹いていた。
長男ルイスデヴィッドオイェロウォが反抗期になったころ、世間では公民権運動のきざしが見え始めていた。ルイスは白人に仕える父親の職業を恥じるようになり、家を離れ南部の大学に進学することになる。そこでルイスは公民権運動に没頭し、「フリーダムライド」に参加し刑務所に入れられたりするようになっていった。そんな長男の姿を見て妻グロリアオプラウィンフリーはアルコールに手を出すようになり、次男はベトナム戦争に志願して戦死してしまったりとセシルの家庭はボロボロの状態だった。
一度は身も心も離れてしまったかのように見えたセシルとグロリアの夫婦だったが、次男の死の悲しみを乗り越え夫婦の危機も乗り越えた。しかし、長男ルイスはキング牧師的な運動のほうからマルコムX的な運動に傾き始めブラックパンサーに籍を置いていることを知ったセシルはルイスを勘当してしまう。
ルイスは一度はブラックパンサーに在籍するも、彼らの過激さについては行けず、政治家の道を目指し平和的なデモなどを行うほうになるがセシルはなかなかルイスを許せないままでいた。
というのが、セシルの家庭側の話でこれにセシルの近所の人、仕事場の人間関係、ホワイトハウスでの大統領たち。と色んな話が絡んできてセシルの子ども時代から7代の大統領分ですから、132分というのがちょっと長いけど、まぁなんとか頑張ってまとめましたという感じ。
まぁなんと見どころがたくさんあり過ぎて大変です。ワタクシは題名からホワイトハウスの中の話のほうがメインになると思っていたので、ここまで公民権運動の話とは思っていなくて期待とは違った作品でした。それはワタクシが勝手に想像していただけなので、それで減点するのはフェアじゃないなとは思いますが。
ホワイトハウスの中の場面ももちろん作品の半分近くの時間が費やされてはいるのですが、それも大統領との心温まるエピソードとかは少なくて、その時の大統領が公民権に対してどのような態度だったかを示すシーンが多かったと思います。ちょっとアメリカの近代史、特に公民権運動について知識があったほうが楽しめるでしょう。
せっかくなので大統領を演じた役者を挙げておきます。
アイゼンハワー大統領→ロビンウィリアムス。アイゼンハワーはどんな感じの人だったか知らないので似ていたかどうか分かりません。
ケネディ大統領→ジェームズマースデン。若々しい颯爽とした雰囲気が合ってました。
ジョンソン大統領→リーヴシュライバー。もっと年齢が高い役者が演じるイメージですが、違和感がなかったのはやっぱり彼のうまさかな。
ニクソン大統領→ジョンキューザック。外見は一番似ていませんでした。外見だけじゃなくて全部あんまり似てなかったなー。ジョンキューザックって人が良さそうに見えるからニクソン大統領の狡猾そうな雰囲気がなかったです。庶民的な雰囲気はありました。
レーガン大統領→アランリックマン。上の2人も意外なキャスティングですが、彼が一番意外でしたね。ちょっと笑えた。
ナンシーレーガン→ジェーンフォンダ。大統領たちがかなりの特殊メイクで頑張る中、彼女が一番ナチュラルに似ていたような。ナンシーがレーガンを尻に敷いている様が面白かったです。
ナンシーレーガン以外は外見は似ていないけど、雰囲気で似せようとしている感じでした。
余談ですが、ケネディ政権時代にセシルがケネディの娘に絵本を読んであげるシーンがあって、「あれがあのいま駐日米大使のキャロラインさんだー」と気が散ってしまいました。
いまテレビでCMを見る限りかなりホワイトハウスの内幕もの的に宣伝されていますが、実際は公民権運動の話のほうに重きを置いていますので、それを念頭に見ると良いと思います。
1980年代~90年代にウォール街で名を馳せたジョーダンベルフォードレオナルドディカプリオの自伝を映画化。そのころと言えば「ウォール街」という映画にもなったゴードンゲッコーが"Greed is Good."(良くは善なり)という有名な言葉を残した時期。ウォール街は空前のバブル期だった。
まーーーー、この男。すごい。1987年のブラックマンデーによって最初に入った証券会社があっさり潰れてしまい一度は夢破れたかに見えたのだが、ペニー株を売るチンケな証券会社で一気にのし上がり、相棒となったドニーアゾフジョナヒル(なんか変人)とともに会社を立ち上げる。その辺でくすぶっているセールスマンたちをかき集めて作った会社だったが、ジョーダンのセールス方法を学び、会社はどんどん大きくなっていく。
会社が大きくなるのと比例して彼らの蛮行もどんどん大きくなっていきます。そう、あれはもう「蛮行」でしょう。ドラッグ!セックス!!ロックンロール!!!ってロックンロールは関係ないか。とにかくMONEY!!MONEY!!MONEY!!MONEY F-CKING TALKS!!!ってわけで金に物を言わせて好き放題。コカインやって女買ってナンボでしょ!!!ってなワケで、これ下品過ぎてダメっていう人も結構いるかもしれませんね。ワタクシは、もう突き抜けてて、もうどんどんやっちゃえーーーーって楽しんでしまいましたが。そりゃこんな人が実際に隣にいたら軽蔑するでしょうけどね。
こういう話でいつもすごいと思うのは、やっぱりこういう世界でのし上がっていく人って結局そういう才能がすごくあるんですよねー。ジョーダンが良い人とか悪い人とかそういうことはまったく別としてとにかく売り込みの才能があるということは間違いない。どんなに嘘八百並べようが何しようがとにかく客をその気にさせるのがうまい。ジョーダンはアホなことをいっぱいしますけど、それでも商才は間違いなくある人なんですよね。最後にはお決まりのコースで捕まっちゃいますが。。。
ディカプリオは彼一人で引っ張るっていうタイプの作品が多くて、今回もそうだけど、やはりそれだけの魅力のある役者だなぁと思います。いつもそんなに大きく印象は変わらないんだけどねー。彼のチャーミングさっていうのは3時間の鑑賞に堪えうるだけの何かがあると思います。まぁこれは好き嫌いの問題かもしれません。これでアカデミー賞っていうのはちょっとどうかな?と思いますが、ドラッグ“レモン”が効いてきたときのヘロヘロ演技は最高でしたね。あの足でガルウィングを開けるディカプリオのお股が広がっていくシーンは傑作だと思いました。
ディカプリオ一人で引っ張っていく作品とは言っても、今回はかなり多くのキャストが登場します。ジョーダンの取り巻きを演じた面々もなかなかに面白い面子が揃っていましたが、ジョーダンの父親を演じたロブライナーとほんのワンシーンですがペニー株を売る会社でジョーダンの面接をする人を演じたスパイクジョーンズが魅力的でした。2人とも本業は映画監督なのに、他の役者さんより目立ってるってどういうことでしょうねぇ。
内容的にはほんとにジョーダンがのし上がってめちゃくちゃやってっていうだけなんですけど、それを179分も見せて飽きさせないマーチンスコセッシ監督ってやっぱりすごいなぁと思います。ストーリテリングが実にスムースだし、このスピード感なんて70歳を越えている人が作っているとは思えないけど、やはりこの演出とか編集のうまさは円熟の実力のなせる技ではないでしょうか。
実際にあったことなのに、「お堅いこと言わずに楽しんじゃってください」って言うのでなんか変ですけど、それくらいの心構えで見ないと結構辛いと思います。ジョーダンの人生そのものがふざけちゃってますから、他人の人生だけどエンターテイメントだと割り切ってお楽しみください。
公開されたときに見に行きたかったのですが、見逃していた作品です。レンタルで見ました。
東西の冷戦が終わり、統一されたドイツ。東ドイツの生活の実態を調べ始めた社会学者たちが驚いたのは、西と東で相当に異なる性へのスタンスだった。
物資に乏しく、商品の選択肢がほとんどない東側。ポルノや風俗は国から禁止され、性的な活動という意味では西より劣っていると思われていたが実は、、、
第二次世界大戦後、男手が足りずどんどん社会に進出して行った東側の女性たち。国もこれを大きく支援し、男性並みに働き、子供を産んでからも会社に託児所が多数設置されているので変わらず仕事を続けられる。社会主義では国力というものが非常に重視されるので子供は国を挙げて歓迎され、労働力もまた同じ。そのように自立していった女性たちは性的にも奔放で、ベッドでも主導権を握った。そんな女性たちに触発されて男性たちもベッドでのテクニックを向上させていった(のかな???この辺は真偽のほどは分からんけど、男性が自分本位のセックスをすることを東の女性たちは許さなかっただろうから、その点で向上したと言えるかも)
一方、労働力としての男性が不足せず、男性優位の社会を築き上げて行った西側では女性は家庭に入り、いかに男性を喜ばせる(悦ばせる?)かということに心血を注ぐ。まぁいわゆる花嫁修業なるものが盛況で、教会の教義も手伝って女性には貞淑が求められた。1960年代に入り性の解放が叫ばれたが、女性たちはタントラとやらに魅せられ自分で自分のGスポットを探すという講座に夢中になったりと、ここでも相手の男性に求めることはできなかった。
西側がピルの倫理性について真っ二つに分かれて議論していたころ、東側ではピルは当然のように流通し、人工中絶も合法化されていた。教会がない分、婚前交渉も当たり前で女性が自立しているので離婚も多いが、若い夫婦やシングルマザーへの援助が完璧な社会主義の社会では、特に家庭が荒れるということもなさそうだった。子どもたちへの性教育の必要性も叫ばれ東側は躊躇せずどんどん教育する。
まぁ、外に刺激が多過ぎて内に刺激を求めない西側と他になんの楽しみもなくセックスにふけるしかない東側という単純な見方をすることもできるんだけど、社会学者さんたちの分析を見ていると、それが大いに女性の自立に関連していることが分かって興味深い。西側の60~70年代のフェミニズムも東側には全然敵わなかったということかな。
東西が統一されて、西側のポルノや風俗に目を丸くし夢中になる東側の人々に対して、最初は同情を感じおそらく優越感さえ感じたであろう西側の男性たちであったが、性の充実の実態というものはポルノや風俗で語れるものではなかったということだろう。この作品が発表された時点で東西統一から15年経って、性に対する態度や認識も統一化されてしまったと言っていました。どっちにどう統一されたんだろ。それも興味深いですが引き続き研究されているんでしょうか。
タイトルは刺激的ですが、内容はいたって真面目です。途中にたくさん挟まれるアニメが楽しいです。しかしまぁ、色んな事象を分析している学者さんたちがいるもんですね。
高評価だった「世界でひとつのプレイブック」がいまいちで同じデイヴィッドO.ラッセル監督の「ザ・ファイター」も「スリーキングス」もいまいちだったので、もうこの監督のは見ないでいいやって思っていたのですが、またこの作品が高評価プラス色んな賞レースにかかってきたのでやっぱり気になって見に行きました。最悪ストーリーが面白くなくても役者陣は絶対良いだろうとは思っていたし。
詐欺師のアーヴィンクリスチャンベールは愛人で詐欺の相棒シドニーエイミーアダムスとともにFBI捜査官リッチーブラッドリークーパーに逮捕される。服役を免れるために2人してリッチーの手先となり、大物政治家の収賄事件おとり捜査をすることになる。
なんかこのリッチーっていう捜査官が一人で政治家を捕まえてやるんだーってはりきってるんだけど、どうもその内容が特に超悪徳政治家ってわけでもない人たちにわざわざおいしい話を持って行って、大金で釣って逮捕してやろうっていうどうにも煮え切らない内容なんだよなぁ。実話だからしょうがないけど。このリッチーってのがつまらん奴で手柄をあせりまくってるって感じがやらしくてイヤだった。実際この手法はあとで問題視されたみたいだけど。最後にはリッチーはコケにされた形で終わったからそこはまだいいかな。
まぁ、とにかくイヤな奴しか出てこないっていうか、みんな下品で誰にも共感できない。それって結構ワタクシの嫌いなこの監督の作品に共通しているかも。イヤな奴とか下品とか、ダメな奴って映画にはいくらでも登場して、その人たち全員を嫌いってわけじゃないんだけど、どこかしらにチャーミングさがあるとかある程度共感できないと厳しいんだよねー。かろうじて今回は詐欺師のアーヴィンの良心ってやつには救われたけど。
それにしても出演している役者たちの演技は確かにずば抜けている。
クリスチャンベールはカメレオン役者の域だから、もう多少ハゲようが太ろうがびっくりはしないけど、外見だけじゃなくてその仕草とかセリフ回しとかやっぱりすごいなぁと感心します。
エイミーアダムスもここ数年で一気に演技派の階段を駆け上がった女優さんの一人ですね。有名になったのってほんとこの数年だと思うんだけど、出る作品出る作品で何かしらノミネートされてますね。それにしても彼女のノーブラのドレス姿はどうなのよ?と。あんな女がウロウロしてて政治家が信用するかねー。70年代ってあれが普通?
アーヴィンの妻を演じたジェニファーローレンスも高い演技力で評判ですが、今回の役は一番面白かったねー。なんかちょっと精神病的でオツムは弱いはずだけど、妙に鼻が利くから世渡りはうまいのか?っていう危うい女。出演時間は短いけど、一人で場面をかっさらってしまってた。オスカーを取った「世界でひとつのプレイブック」より良かったよ。2年連続もありえるかも。
一般的なレビューでも両極端に2分されている印象ですね。好みに合うかどうかというところでしょうか。
いま「世界でひとつのプレイブック」と「ザ・ファイター」の自分のレビューを見直してみても、演技は素晴らしいけど、内容はねぇ、、、ってなことが書いてありました。今回と同じ感想だな。やっぱもうこの監督の作品は見るとしても映画館では見ないことにしよう。
「LATimes」が選ぶ去年もっとも過小評価された映画ということで興味があって見に行きました。ワタクシ好みの作品が多いFOXサーチライトが製作ということもあり期待大でした。
面白かったー。最初から物語にぐっと引き込まれてそのままラストまで心地よい緊張感を持ってみることができました。
元FBIエージェントのサラ(偽名)ブリットマーリングは現在、環境テロリスト集団の攻撃を受ける可能性のある大企業を顧客に持ち、彼らにテロリスト集団の情報を流す会社の潜入捜査官をしている。今回、環境テロリスト集団「ザ・イースト」に潜入することになる。
浮浪者のような生活をする中でザ・イーストにつながる若者ルカシャイローフェルナンデスと知り合ったサラは、うまく彼に取り入ってザ・イーストの本部へ連れて行ってもらう。そこにはベンジーアレキサンダースカルスゲルドを中心に過激なイジーエレンペイジやとある薬の副作用に苦しむ元医師ドクトビーケベル他数人が自然環境の中で共同生活をしていた。
まずこの集団にサラが初めて潜入したときは、この集団はカルト的な集団で中ではマンソンファミリーのようなことが行われているのかとドキドキしました。実際リーダー・ベンジーはそんな風貌だったし、男女があんな狭い空間で共同生活していたら変な方向に進んでいきそうなもんだし、ちょっとだけおかしな儀式的なことも行われていたし。でも、ベンジーはリーダーとはいえ、一人だけカリスマ的に集団をまとめあげているのではなくて、他のメンバーにも男女同等に発言権があったし、浮世離れはしているもののマンソンファミリーのような異常性はないなということが分かってくる。
ヘンテコな儀式と言えば彼らの食事風景。全員が拘束服を来て食事をする。新入りのサラはどうやって食べるかやってみろと言われて皿を口で引き寄せ犬食いするが、、、「地獄と極楽の三尺箸の話」を知っている人にとっては答えは簡単なのだけどね。彼らはスプーンを口でくわえ横に座っている人にスープを食べさせてあげます。これがザ・イーストの考える思いやりの基本ということなのでしょう。
ザ・イーストのしているテロ攻撃というのは企業に対する「目には目を歯には歯を」で、企業が経済活動を優先にするあまり、人々の健康被害や自然への悪影響などは無視してしまっている現状に、その罪と同等の罰を与えるというものだった。「目には目を歯には歯を」とは過激な報復の代名詞のように使われることがあるが、実際にはその犯した罪以上の罰を与えてはいけないという意味だから、彼らもその企業にふさわしい罰を与えることを信条としていた。
いくら相手が倫理的に許されない罪を犯している大企業とはいえ、彼らのやり方には反発を覚えるサラだったが、テロのターゲットの報告を上司シャロンパトリシアクラークソンにしたとき、「その企業はうちの顧客じゃないから関係ない」と一蹴され、自分のしていることの正当性が曖昧になってきて、ザ・イーストのメンバーへの共鳴もあり、精神的にもきつい状態になってしまう。
サラが潜入捜査官であることのドキドキ感と、ザ・イーストのミッションのドキドキ感がハンパない。ザ・イーストと上司シャロンあるいは自分のキャリア、自分の信条と新たに吹き込んできた考え方、ボーイフレンドジェイソンリッターとベンジーの間で揺れ動くサラから目が離せない。サラを演じるブリットマーリングが正当派な美人ということもあって、サラに危機が訪れるときのこちらの緊張感といったらもう!
元FBIだし、企業のエリート潜入捜査官というバックグラウンドを持つ頭脳明晰なサラが様々なピンチをどのように切り抜けていくのかというのも見どころのひとつ。か弱い乙女のように見えて実は強かなサラに爽快感さえ覚えます。
最終的には潜入捜査にはありがちな「ミイラ取りがミイラに」という状況になるんだけど、ワタクシは環境テロリストを支持はできないけど、大企業のしている悪事にうんざりしているタイプなので、サラが彼らに傾倒していってしまう気持ちも分かりました。ザ・イーストか自分の会社かという選択を迫られながらも、リーダー・ベンジーの過激さにも違和感を感じ、どちらの選択肢でもなく独自の道を行くというラストは非常にクリエイティブで良かったと思います。
主演のブリットマーリングですが、こんな美人さんいままでどこにいたんだろう?でも、この映画でいきなり主演ってどういう縁で?と思ったらなんと彼女自身が脚本も書いて製作もしたというからオドロキ。ジェシカチャスティンがドラマの脚本も書くって知ったときと同じ驚きだなぁ。才色兼備って本当に彼女たちみたいな人のことを言うんでしょうね。これからの彼女の活躍が楽しみです。
ドキドキ感があると言っても題材はわりと地味だし、アクションとかではないので万人受けはしないと思いますが、ちょっと映画を見慣れている人にはぜひ見て頂きたい作品です。