シネマ日記

超映画オタクによるオタク的になり過ぎないシネマ日記。基本的にネタバレありですのでご注意ください。

ワタクシと英語B面~留学編 ポーランド一人旅⑥

2006-04-20 | ワタクシと英語
というわけで、「ホテルワルシャワ」に帰る日まで滞在できることになり、ホテル騒動は一件落着。

ワルシャワの街のお話を少ししましょうかね。
ポーランドという国はみなさんご存知の通り、第二次世界大戦でナチにコテンパンにやられた国です。チェコ人いわく、“チェコスロバキアは比較的すぐにナチに降参したからあまり街を壊されずに済んだ。でも、ポーランドは抵抗したから徹底的にやられた”と。ポーランド人の受けた傷は深かったけど、きっとナチに抵抗したことは誇りに思っているんだろうなぁという印象でした。というわけで、大昔の町並みや建物がごっそり残っているプラハなどに比べてポーランドの歴史的建造物はごっそり消え去ってしまいました。昔の町並みが残っているのはクラコフくらい。だから、そこは観光客は多いみたい。でも、ワルシャワはいまひとつ観光の街にはなれない。ポーランド全体を見てもやっぱりチェコやハンガリーには観光産業では負けちゃうだろうな…

そんなワルシャワも見るとこがないかというと、そんなこともなく一週間ばかしの滞在期間中いろんなところに行った。誰もが歴史で習う偉人が実はポーランド出身だったりするので、博物館とかが結構あるのですよ。ショパン、コペルニクス、キュリー夫人。それぞれの博物館に行ってみた。全体的にどこもチェコの博物館より狭いけど、その小狭ましいところにとっても整頓されて展示物がならんでおり、順路も分かりやすく、いろんな美術館や博物館に行ったけれど、ポーランドの博物館がどこよりも見やすかった。結構、几帳面な人たちなのかな?

そして、ワルシャワの旧市街。そこはナチに壊された歴史的な建物を全部キレイに再現してある街。第二次大戦以前と直後と再建されたあとの現在の写真が飾ってある。大戦直後は一面焼け野原で何もないのに、以前と現在の写真が時代を超えてほぼ同じなのだ。旧市街と言ってもとても規模は小さいがその風景にポーランド人の誇りを感じた。

旧市街だけじゃなくどこを歩いているときもだけど、さすが敬虔なカトリックの国、法王様が来ているというタイミングのせいもあったと思うけど、アイドルよろしく法王ヨハネパウロ2世のブロマイドが露店でいっぱい売っているのよー。今から考えたら記念に一枚買っとけば良かった?

プラハでウロウロしているときよりもワルシャワの街を歩いているときのほうが人々がなんだかゆったりしていて、なんだかeasy goingというか、同じ首都のはずなのにプラハで感じた都会の人間特有のイガイガ感がない印象を受けました。英語圏では「マヌケなポーランド人」ジョークというジャンルがあって、こういうちょっとポケッとしてるところからそういうジョークのネタにされているのかなーとか思ったりしました。(どうして、「マヌケなポーランド人」というのがジョークのいちジャンルにまでなっているのか真相は知りませんが)こんなゆったりした感じの人たちの中にどうしてあそこまで戦うパワーがあったのかと思ったりもしました。(今現在の彼らがナチに抵抗したわけではないけど、国民性としてね。)反骨精神旺盛な映画とかも多いしね。 

それと、プラハより英語が断然通じない。チェコでは若い人はお店の人とかだとだいたい英語が喋れたけど、ワルシャワでは若い人もあんまり喋れなかった。それで少し困ったけど、ホテルでは通じたし、基本的にみんな親切で道とかを聞くとなんとか助けてくれようとするので英語が通じなくても不便だけど大丈夫でしたね。帰りの切符を買うときの窓口のおばさんがまーーーーったく英語が話せなくて困っていたら「手伝いましょうか?」と英語で声を掛けてきてくれた子もいたし。彼女も天使に見えたなぁ。

あと、なぜかワタクシが歩いていると時間を聞いてくる人が何人もいたんですよねー。腕時計している人が珍しいのかなー???これは今でも謎のままだなー。

ワルシャワのあと、イタリアのボローニャとスペインのバルセロナに行って、ワタクシの留学生活は終わりました。また他の旅のことも機会が見つけて書きたいと思いますが、6回シリーズになるほどドキドキものだったのはワルシャワだけだった、印象深ーい旅でした。

まあだだよ

2006-04-20 | シネマ ま行
あ~なんてホッとする作品だろう。戦中、戦後を背景に繰り広げられる引退した先生松村達雄と過去の生徒たちとのひとつひとつの風景。

これは監督黒澤明が敬愛する随筆家内田百氏のお話らしいが、ワタクシは恥ずかしながら内田氏のことは何一つ知らない。でも、この内田氏のことは何一つ知らなくともこの作品は大いに楽しめます。

作家になるために教師を引退した先生。引退後もいつまでもいつまでも慕い続け先生の家に通いつめる生徒たち。(所ジージ、井川比佐志、寺尾聰などなどなど)この先生のあだ名は金無垢。どこまでも純粋で貴重な存在といったところか。このおじいちゃん先生。おじいちゃんでありながら、教師でありながら、ものすごく冴えたユーモアのセンスと純粋な心を持っている。世の中を風刺する明晰さと人の心を包み込む優しさにあふれ、まさに金無垢という言葉にふさわしいお人柄。

「まあだだよ」というのは、先生がなかなかくたばらないという意味で、生徒たちがかくれんぼの要領で「まあ~だかい?」と尋ねると先生が「まあだだよ」と応えるというこの辺りも非常に素晴らしいユーモアで先生と生徒のとーーーってもいい関係を表している。これを不謹慎なんて言う人はまずいないだろうが、ワタクシならそんな人がいたらその人の人生見てみたいなんていうちょっとイジワルな好奇心さえ芽生えてしまう。

あ~こんな先生がいたら素敵だなー。本当に心の底からそう思える。ワタクシは「先生」という言葉があまりにも簡単に使われていて嫌いなので、普段なら学校の先生のことは教師、病院の先生のことは医者と呼ぶし、弁護士や代議士を先生なんて死んでも呼ばないゾと思っているのだけど、この内田氏のことはなんだか、自然に先生と呼んでしまいそうだな。やっぱり大切なのは人柄だよねー。

少し映画から話がずれましたね。映画的なことを書くと、戦中、戦後の日本の姿をもの凄く自然に描いているし、先生の自宅が焼けたあと、ほったて小屋で過ごす時期に巡っていく季節の描き方が素敵だし、これは、個人的な趣味だけど、夏といえば男性は真っ白のスーツを着て麦藁帽子をかぶる時代でそんな衣装も良かったな。

黒澤明監督の映画は以前「生きる」を取り上げましたが、まだまだ取り上げたいものがたくさんあります。「黒澤明は偉大な監督」というのがもう「1+1=2」くらいに刷り込まれている人も多いと思います。そのせいで、逆に難しいんじゃないかとかって敬遠しちゃったりね。でも、カメラワークがどうだとか、演出がどうだとか、そんな技術的なことはすっかり置いておいて素直に受け取ることができる作品が多いと思うので、できれば見て欲しい。この「まあだだよ」は特に何も難しいところはないので黒澤作品のとっかかりにいいかもです。

オマケ「暗闇を怖がらない人間は想像力が欠如しているんだよ」という先生の言葉が印象的だったなぁ。そう、本当にその通りだと思う。と暗闇が怖いワタクシは先生の言葉に救われちゃいました。