シネマ日記

超映画オタクによるオタク的になり過ぎないシネマ日記。基本的にネタバレありですのでご注意ください。

七人の弔

2008-03-27 | シネマ さ行

「しちにんのトムライ」こういうのを説明するのもナンセンスだとは思うけど、一応これは「七人の侍」を文字ってつけたタイトルですね。でも、内容はまったく本家の映画とは関係なく、本家のパロディでもなんでもありません。監督はビートたけしの弟子のダンカンです。なぜか映画を作るときにこのタイトルが一番先に浮かんで、そのあと内容を肉付けしていったらしいです。

夏休みの親子キャンプに参加している7人の子供たち。それぞれ年齢も性別もバラバラ。両親と来ている子もいれば、片親と来ている子もいる。片親と来ている子もシングルマザーやシングルファーザーの家庭の子や、両親は揃っているけど、このキャンプには片方の親とだけ来ているという子もいる。中には、父親とその後妻と一緒に来ている子も。この子たちにはなんの共通点もない…かに思えるのだが、、、

ここに登場する親子関係がどこかおかしいということはすぐに観客に明かされる。親たちは子供たちを臓器売買に提供するつもりでこのキャンプに連れて来たというのだ。子供を売ってお金を儲けようとする親たち。彼らはこんな商売の話をどこで知り、また通報もせずに申し込んだのだろう?そう思っていると、この親たちの共通点が明かされる。彼らは自分の子供たちを虐待している。臓器売買の組織はおそらく、それぞれの親子関係を調べた上で話を持ちかけたのだろう。こういう親なら断りもしないし、断ったとしても自分たちのことを通報もしないと。

この作品はブラックユーモアと言うのかな?たとえブラックでも「ユーモア」という感じではない。「シニカル」と言うのかな。まだそちらのほうが近いか。これを現代の親子関係を見直すとかそういうテーマで撮ったのだとしたら、ちょっと違う気がする。子供を虐待している親がこの映画を見ても、特に気づきにもならないし、(いや、その種の人たちは何かを見て“気づき”があるとかそういう問題ではない気がする)それ以外の人が見ても、特に社会的なメッセージは感じない。少なくともワタクシは感じなかったな。映画そのものは楽しんだけど。

テーマがテーマだけに後味が悪いという人もいるだろうけど、ワタクシが楽しめたのは最後の展開に救いがあったからだと思う。あれを“救い”と呼ぶことそのものに抵抗を感じる人も多いと思うけど、ワタクシにとっては“救い”のあるラストだった。現実的には虐待されている子供たちがどんなにヒドイ目に遭わされても親が自分を愛している、殴られるのは自分が悪いからだと思ってしまう現実に反して、「そんな親ならいらない」と堂々と子供たちが行動を起こせるのはある意味“夢”のあるファンタジーの世界だったと思うからだ。中にはあれはエグい終わり方だと思う人もいるだろうけど、ワタクシにとってはカタルシスのある終わり方だった。やっぱりダンカンって実力のある人だと思う。


Ray/レイ

2008-03-25 | シネマ ら行
ワタクシたちの世代で盲目の黒人歌手と言えば、スティービーワンダーだ。レイチャールズはもちろん知っているけれど、実際のところは「いとしのエリー」をカバーした往年の歌手っていうイメージのほうが先かもしれない。でも、そのころ彼が大物だということだけは十分に知っていたワタクシは彼の歌う「いとしのエリー」を初めて聞いたとき、「え?これってサザンの曲やと思ってたけど、原曲はこの人が歌ってたん?」と思ったほどだった。それだけ彼が大物歌手ということだけは、のちの世代にも浸透していたということかもしれない。

さて、このレイチャールズジェイミーフォックス。女ったらしで、ジャンキーで。家庭を顧みず、愛人との間に子供まで作って。かつ平気な顔して、「僕には家庭がある。困るから堕ろしてくれ」なんて平気で言う男。歌手としては抜群だったけど、人間としてはサイアクじゃん。そんな彼も最後には麻薬から完全に足を洗い、コミュニティーにも貢献する本当の意味での大物へと成長する。それにしても、レイの愛人たちはみな初めから彼が結婚していることは承知の上で関係をスタートさせているくせに、すごく往生際が悪いというか、ワタクシに言わせればレイもろくでもない奴だけど、愛人たちも同じ穴のムジナだと思うけどね。

この映画。どこまで本当なのかは知らないけど、映画としては大変面白い。伝記ものとは思えないほどドラマチック。この役でアカデミー主演男優賞を受賞したジェイミーフォックスの演技は言うことナシ。実際のレイチャールズのことは晩年しか知らないから、似てる似てないと言うことはワタクシにはできないけど、それでも、この俳優がジェイミーフォックスということを忘れさせるような演技。そりゃ、「アビエイター」のディカプリオも「ミリオンダラーベイビー」のイーストウッドも押しのけて受賞できるわな。

レイチャールズの歌手としての歩みもさることながら、やはり特筆すべきは幼い頃のエピソードだろう。弟を水の事故で亡くし、それがトラウマとなり、病気によって失明したあとは母の強い愛によって育てられるレイ。あんなに母親が心を鬼にして深い愛情を持って育てあげたレイなのに、なんてそんなに不誠実なワケって途中では思ったりしたけど、最後にちゃんと気付いてくれて良かった。あのまま行ってたら、いま現在彼が世代を超えて記憶に残る歌手にはなれていなかったかもしれないね。彼が本当にあーいう幻を見たのかどうかは分からないけど、彼のお母さんが「他人に絶対に盲目と言わせちゃダメだ」と言って彼を育てたのはきっと本当なんだろうな。本当は手を差し伸べてあげたいのに、息子のためを思って、自力で這い上がるのを見守るお母さんの切なさに胸を打たれました。

上映時間152分ですが、まったく長さを感じさせません。黒人さんの顔の区別がつかない人はがんばって見て下さい。

オマケ1レイの若き日の交友関係で、現在ではアメリカの有名な作曲家クインシージョーンズが登場しますね。(久石譲ってクインシージョーンズを文字って「くいしじょう」「久石譲」っていう名前にしたんだって

オマケ2どっかのスピリチュアルなお方が和田アキ子にはレイチャールズの守護霊がついてるとかなんとか言ったんですってね。レイは草葉の陰でどんな気持ちなんだろ???

バンテージポイント

2008-03-24 | シネマ は行
米国大統領暗殺の真相を8人の目撃者、8つの視点で迫るサスペンス。

まずはスペインのサラマンカのマヨール広場で開催される首脳会議を中継しているGNNのスタッフたちの視点から、大統領ウィリアムハートが広場に入ってくる前から、大統領の入場、そして暗殺の瞬間、その後の広場内の爆発までを見せられる。ここまで、話が進行したかと思いきや、VTRがちらちらと巻き戻って、今度は大統領のシークレットサービス、トーマスバーンズデニスクエイドが広場に向かう大統領に付き添う準備をしているところまで時間が戻る。そして、今度は彼の視点で広場の爆発後までが語られ、そこからまたVTRは巻き戻り…

こうして観客は何度も同じシーンを違った視点で見せられる。何度目かのところで、ちょっと「もういいよ」っていう気持ちになるのは、仕方ないような気がする。ワタクシは、シーンが繰り返されることよりも、あの巻き戻しがちょっと鼻についた。

そして、何度目かのところで“OH, COME ON! GIVE ME A BREAK.”って感じになったときに、やっと爆発後の話まで進んでくれてホッとした。

結局、犯人グループはどういう思想を持って大統領を暗殺しようとしたかとか、どういう経緯であのシークレットッサービスのケントテイラーマシューフォックスは犯人グループに加わったのかとかは詳しく語られないんだけど、その辺はとくにこの作品が政治的なメッセージよりもサスペンスとアクションに力を入れているということでヨシとしよう。

何回も違う視点で同じシーンを見せられるというのは、頭がこんがらがりそうになるんだけど、最後の時間通りに進んでいくシークエンスの中で、すべてがきちんと明かされるようになっているから、それに関して見終わったあとのストレスはなく、途中はハラハラドキドキさせられ、最後にすっきりするというとても気持ちのいい作りになっている。犯人グループも大統領護衛の裏を読んでいるし、護衛側もそのまた裏をかくという頭脳の争いが映画としてとてもおもしろかった。まぁ、最後の大統領の救出劇は偶然と言えばそうなんだけど、そこにつながる一般市民の行動が描かれていることによって、その偶然さえ必然に思わせるというところがなかなかいい。

デニスクエイド、シガニーウィーバーフォレストウィテカーエドゥアルドノエリエガと映画ファンにはそこそこ豪華と言えるキャストも楽しかった。エドゥアルドノリエガは久しぶりに見たなぁ。男前だし、英語も喋れるし、もう少しハリウッドで活躍してもいいと思うんだけど。スペイン映画に出ていたいのかな?

オマケ1大統領ってきっと毎日こういう危険にさらされてるんよねー。どんなにアホな大統領でもまぁ大変なワケだ。

オマケ2大統領は「POTUS(ポータス)」と呼ばれていましたね。「President of the   United States」ということですね。念のため。

仮面の真実

2008-03-19 | シネマ か行
この映画、めちゃくちゃ地味ですねー。こんな地味な映画なのでいつの間に公開されていたことやら、全然気付かんかったわーと思っていたら、日本劇場未公開でした。出演者はポールベタニーウィレムデフォーヴァンサンカッセルとそれなりに名前の知れた人たちなんですが、と言って映画ファン以外の人たちにそこまで知れた人たちではないし、設定自体も地味な感じだし、イギリスとスペイン合作の作品ということですが、日本で未公開ということは本国の興行成績もかんばしくなかったのかもしれません。

ワタクシはポールベタニーが最近結構好きということもあるかもしれませんが、結構好きな作品でした。中世が舞台なので、映像も暗めなんですが。

自ら罪を犯してしまった僧侶(ベタニー)が旅回りの一座と出会い、ともに旅をしたどり着いた村でおこった殺人事件を基にその真相を暴く芝居をする。僧侶自身が自分の犯した罪を贖うかのように、無実の罪を着せられた女性を助けるために奔走する。

この事件の真犯人は誰なのかというミステリー的な要素もあるわけですが、どうしてもそのからくりは現代物に比べてたいしたことのないものになってしまうので、ワタクシは事件の真相そのものよりも、この僧侶の贖罪と、(これで彼の犯した罪が許されるわけではないと思いますが)ウィレムデフォー以下劇団員たちの人間模様や、劇中劇がなかなかアーティスティックで良かったと思います。ウィレムデフォーって怖い顔してるけど、芸術家肌というか、旅回りの劇団の団長という役柄がとても似合っています。

劇中劇のせいっていうのもあるかもしれないけど、この作品って映画っていうより、演劇みたいです。ワタクシは演劇についてはくわしくはないけど、なんとなく、シェークスピアとかそのへんの感じを狙っている?そういう時代の演劇をセリフを現代語にした感じがしますね。その分詩的さが消えてしまってちょっと情緒が欠けているかもしれません。

画面とお話そのものの暗さのために、一般ウケはしない作品だとは思うのですが、上に挙げた役者さんたちが好きな人はぜひ。

Sweet Rain 死神の精度

2008-03-18 | シネマ さ行
試写会に行ってきましたよー。

ワタクシ、以前にここで書いたことがあったと思うんですが、「ココリコミラクル」という番組を見ていて、こにたんこと小西真奈美が大好きになりました。彼女が番組を卒業したときはとても悲しかったものです。彼女が抜けてから、あんまり番組も面白くなくなっちゃったんですが、番組が終わるときに、総集編っていうのをやってたんですよ。そのときにまたこにたんの色んなキャラが見られるかと思って楽しみにしていたら、こにたんの映像はまったくなく…まるでこにたんなんて存在しなかったような感じになってました。他の元レギュラーのなつかし映像とかも特になかったんで、こにたんの事務所の方針とかではなくて、最終メンバーだけの総集編だったんだろうけど。というわけで、邦画やテレビドラマをほとんど見ないワタクシはCM以外ではこにたんを目にすることが全然なくなってとても寂しかったのですが、今回試写会でこの映画を見られることになってとても嬉しかったです。

主役は死神役の金城武。彼もワタクシ久しぶりに見ました。ワタクシは基本的に男性の長髪って「切らんかいっ!耳出さんかいっ!」って思ってしまうんですすが、金城武は長髪のほうがずっとカッコイイですね。だから、この作品では2番目のエピソードのときの彼が一番カッコ良かったです。

お話は3つの時代に分かれています。死神は不慮の事故で亡くなる予定の人の前に現れその人の人生を観察し、その計画を実行するかまたは見送るか決定する。千葉という死神(金城武)はいままで常に「実行」という決断を下してきた。今回の人間は藤木一恵小西真奈美。いつものように「実行」しようと思っていたが、彼女は歌手になるチャンスを掴むところだった。“ミュージック”が大好きな死神は今回は「見送り」という決定を下す。2番目の時代はヤクザの抗争に関わるもの。3番目の時代。千葉は70歳の老女富司純子(この歳でも娘よりずっとキレイの観察をすることに。この二つの時代も実は千葉が藤木一恵の死を見送ったことと無関係ではなかった。

死神はなぜか音楽が大好きで、そしてなぜか音楽と言わずに“ミュージック”と呼ぶ。そのことになんの説明もないのだけど、“ミュージック”が好きなのは千葉だけかと思いきや、死神仲間は全員そうらしい。

彼ら全員の上司があの黒い犬(フラットコーテッドレトリバーのディア)だったのか、千葉だけの上司だったのか分からないけど、千葉がこの世に来る時はいつも雨なので、この犬はいつもびちょびちょに濡れていてなんだかちょっと可哀想だったな。

ミュージックが大好きというところでも分かると思うけど、ここに出てくる死神はおそろしい死神というイメージとはほど遠く、どこかユーモラスで「ナンパ」を「難破」、「醜い」を「見難い」と間違えたり、言っちゃいけない秘密をバラしちゃったりと、この世にいる人間とはどこかチグハグでかみ合わず、結構笑えるシーンが多かったのが良かった。

あんなに引っ込み思案だった藤木一恵さんがどうやったら、あんなハスッパなおばあさんになるのかちょっとやり過ぎ感はあったけど、それだけ辛い人生を送ってきたってことなんかな?富司純子はいつもすごく清楚なイメージがあったけど、あんな感じの演技もできるんだぁって新鮮な驚きがありました。

笑いあり、泣けるところもありという、見終わって、とても爽やかな気分になれる死神映画です。邦画は好きじゃないという人も抵抗なく楽しめるのではないでしょうか。

オマケ小西真奈美ちゃんが「藤木一恵」としてCDデビューしましたね。歌のうまさはごく標準的だけど、話しているときより少し低めの声が素敵です

歌追い人

2008-03-17 | シネマ あ行
1907年のアメリカ、大学教授で音楽学者のリリージャネットマクティアは当時の男尊女卑の体制のせいで、出世することができず、絶望の中アパラチア山脈の山岳地帯で学校を開いている妹ジェーンアダムスのところへ向かう。そこにいたアイルランド移民の女の子が歓迎の歌を披露してくれるのだが、リリーはその歌にとても驚いた。学会ではすでに失われているとされていた200年前の民族の間に伝わる歌だった。聞けば、その地方の村人たちはそんな歌を何曲も知っているという。リリーはこの村に残り、口伝えで村人たちが知っている曲を録音して譜面に起こし、本を出版しようと考える。

ひとくちに曲を録音すると言っても、現代のように簡単にはいかない。山岳地帯の村に巨大な録音機を持ってあがらないといけない。なかには頑固な村人がいて、彼女のしていることを良く思わず断固拒否する連中もいる。そんな中リリーは村人の心を懐柔し、次々に曲を集めていき、それを通して村人とも交流を深め、一番頑固だった男エイダンクインと恋に落ちたりもする。

音楽学者が伝統歌を集めて回る、というシチュエーションはとても風変わりで、これまでたくさん映画を見てきたワタクシも初めての設定のような気がする。そのプロセスはとても興味深いもので、村人たちが歌う歌もアイリッシュ特有の歌いまわしとふしでとても心地よい。

途中、さまざまな困難や、妹の同性愛の問題、当時の男尊女卑の問題などが絡んでくるが、最後は思いがけない人がハッピーエンドを運んでくれて嬉しい結末。

出演者がとても地味だし、映画そのものもとてもマイナーなので、残念ながらほとんど見ている人はいないと思うのだけど、ケーブルテレビやなんかで見る機会があればぜひ見ていただきたい。

椿山課長の七日間

2008-03-14 | シネマ た行
突然、死を迎えた椿山課長西田敏行がなんと若くて美人のおねいさん伊東美咲になって現世に戻ってくる。

向こうの世界へ行く前にその日死んだ人が集められて天使だかなんだか分からない使いの人マヤ和久井映見が現世に遣り残したことがある人は3日間だけ戻れますと言う。もちろん、たくさんの人がそれに志願するが、許可されたのは3名のみ。椿山とヤクザの武田(死ぬ前:綿引勝彦、死んだあと:成宮寛貴)と小学生の雄一(死ぬ前:伊藤大翔、死んだあと:志田未来)。それぞれが現世に遣り残したことがあると向こうの世界で認められた者たちだ。そして、それぞれが生きていたときとはほぼ正反対と言っていい容姿でよみがえる。

さて、椿山課長が現世で遣り残したことというのは本人は残された家族のこととか仕事のこととかそういうことだと思っているんだけど、実際はマヤにあなたは重要な事実を知らずに死んだ。それを知る必要があると言われる。その事実とは何なのかを探る3日間となるわけで、おそらく椿山課長と同年代のサラリーマンたちはかなり自分と重ね合わせて考える部分が大きいのではないだろうか。

ワタクシはヤクザの武田と小学生の雄一の遣り残したことにも泣いちゃったな。まぁ、いずれも先が読める程度の遣り残したことなんだけど、ヤクザの武田の弟分の市川大介國村隼とその妻市毛良江の昔かたぎの雰囲気がとても良い感じで、彼らのエピソードに感動させられた。そのおかげで、ワタクシにとって椿山課長はすっかりお笑いパート担当って感じでした。

とは言え、椿山課長のほうも実はその重大な秘密っていうのが子供のことに関してかと思いきや、実はこっちのほうが重大な秘密だったんだよねっていう意外な秘密があってこっちにも感動しちゃったな。

よみがえった姿が伊東美咲と成宮くんで、この二人がお互いに中年サラリーマンとヤクザの親分ということを知らずに接近してしまうところが面白い。いよいよってとこでお互いに気づいてセーフ!になるわけだけど、成宮くん扮するヤクザの親分が「ヤッてから気づけば良かった」って言うのが笑える。その他にも椿山課長のエピソードには結構笑えるものが多かった。伊東美咲の演技力にはハテナがつくんだけど、西田敏行と正反対の容姿という意味で、伊東美咲はそれだけで満点をつけてあげてもいいかなー。


キャッツ&ドッグス

2008-03-13 | シネマ か行
公開時の「世界はどちらの肉球に?」っていうコピーを考えた人って天才って思いましたねー。そのまんまやけど、よく思いついたなぁと。

これねー、猫好きの人は見ない方がいいかもです。ワタクシは犬を飼っているけど、猫も好きです。だから、猫だけが一方的に悪者に設定されているのはちょっと納得がいかないところなんですけどね。一般的なイメージとしては犬より猫を悪者にしやすいのかなという気はします。まぁ、ジョークということで猫好きさんも本気で怒らないでねって感じでしょうか。

主役たちは犬なので、基本、犬の世界がそこに広がってるんですが、やぱりスパイにふさわしいイメージなのはドーベルマンなんですね。が、しかし、1頭のビーグルくんがスパイと間違えられて任務につくことになる。ビーグルってワタクシの大好きな犬種のひとつなんですけど、ドーベルマンとかのキリッとしたイメージの犬とは正反対のご陽気なイメージですよね。ちょっとオマヌケさんと言うか…ドーベルマンも本当は甘えたさんが多いんだろうけど、その話はここではやめときましょう。

そんなビーグルくんが人間の犬アレルギーを治す研究をしている博士ジェフゴールドブラムの家に派遣されて、彼の実験を世界征服をたくらむ猫族から守るというお話。

途中、「俺たちはいい大人なのにいつまでも赤ちゃん言葉で話しかけてくる人間に耐えてやってるんだ」とかっていう人間に飼われている犬のホンネがちらりと見えるところがあって笑えます。他にも爆弾処理をするときに「赤いコードを切れ!」「俺たちは犬だ。色は分からない」とか細かいギャグがちりばめられてあって笑えます。

ただ犬をいい者には置いているものの、最後にはまるでどこやらの政府みたいに、大義のためには少数の市民を犠牲にするという決断を犬族がするところは、たんなる猫好きさんへの配慮か、それとも隠れた反戦メッセージ?

本物の犬猫たちの演技もありますが、CGのところはちょっとアニメちっくでちゃちい感じ。リアルに戦わせると苦情が出そうだからわざとちゃちくしてるのか?

ま、むずかしいことは考えずに軽~い気持ちで見てみてください。

オマケ色んな種類の犬が登場してたので、ワタクシんちのワイマラナーも登場するかと目を凝らして見ていましたが、残念ながら登場しませんでした…

ビッグフィッシュ

2008-03-12 | シネマ は行

ティムバートンの映画で好きなのは「バットマン」あのゴッサムシティの暗さがいい感じ。そして、「チャーリーとチョコレート工場」子供向けほのぼの映画かと思ったらあの毒っ気が良かった。そして、この「ビッグフィッシュ」。多分、バートン作品の中からこの3作品を選ぶのはバートンファンではないということでないかな。どれもバートン色はもちろんありながら、それが強く全面に押し出された作品ではないような気がする。

どうしてこの作品はジョニーデップが主演じゃなかったのかなー?スケジュールが合わなかったとかそういうこと?ワタクシはユアンマクレガーのファンなので、ジョニーがやるよりずっと良かったのでありますが。ユアンマクレガーとその晩年を演じたアルバートフィニーって全然違和感ないですねー。顔が似てるってわけではないと思うんですがなんかかもし出す雰囲気が似てる気がする。

虚言癖というか空想癖があるお父さん(ユアン→アルバートフィニー)にうんざりしている現実的な息子ビリークラダップ。しかし、お父さんが病気で倒れて面倒を見ているうち、背を向けていた父親を再発見するというお話。

このお父さんの空想に登場する人や町がとてもユニークで、ここはバートンの得意とするところではありますが、それが他のバートン作品とちょっと違うのは、その空想の世界がとても明るくて可愛らしくて夢がある。その能天気で、天真爛漫で誠実な感じが演じるユアンにぴったり。

お話が向かう方向がまったく予想がつかず、このお父さんの空想の世界に身をゆだねて観客もどんぶらこどんぶらこと流れていくしかないのでありますが、お母さん(少女時代アリソンローマン、のちジェシカラング)との出会いから、戦争中のエピソードにワクワクし、お父さんの浮気疑惑のエピソードにはドキドキし、そのほかどれもまるで絵本を読んでいるかのような楽しさがあります。

結局、このお話はどこに行き着くのかと思っていると、しっかり父と息子の絆の話にまとめてくれて、スッキリだけど、そのまとめ方も普通の映画のようではなく、きちんとこの映画全体に流れる雰囲気を守ったまままとめてくれるので、心がほんわかしたまんま、どんぶらこどんぶらこと心地良く流れに乗ったままエンドタイトルをながめることができるという映画ファン冥利に尽きる幸せな作品です。ハードコアバートンではなくてソフトバートン。ハードコアバートンが苦手なワタクシは大満足でした。


デンジャラスビューティー2

2008-03-11 | シネマ た行
テレビでやっていましたね。「1」は映画館に見に行って、面白かったんだけど、ブログに書いていないのはブログを始める前に見て、レビューを書くほど詳細には覚えていないってことだな。また、見る機会があったら「1」も書きたいな。と、そう思わせてくれるくらいに「2」も面白かった。

単純で、明快で、突っ込みどころは満載で、「んなワケねーだろ」っていうことばっかなんだけど笑えちゃう。ちょっと安っぽいB(プラス)級ムービーってとこですかね。

ワタクシはサンドラブロックはまぁまぁ好きなほうなんで、その分もプラスになってるかもしれません。

「1」で準ミスアメリカになっちゃったFBI捜査官グレイシーハート(サンドラ)は有名になりすぎて表立った捜査ができなくなり、FBIのスポークスマンとなって、マスコミ対応をすることになる。その彼女のボディーガードをすることになったのが、ケンカっぱやくて、みんなにパートナーを断られる問題捜査官サムフラーレジーナキング。この二人が出会ったときからお互いの印象はサイアク。犬猿の仲の二人がともに行動するうちに友情が芽生え、、、っていうアメリカの刑事物にはよくあるパターン。

前回で有名になったグレイシーはマスコミに出ることで、おしゃれにもまたまた目覚め、自分が有名なことを鼻にかけたちょっとイヤな奴になっちゃってるんですが、そのへんのところは特に大きく取り上げられることもなく、最後に目覚めがあるわけでもなくスルーされているのが、多少気になったものの、随所に笑えるところがあって、すごく面白かった。テレビで日本語吹き替えで見たのがそういう点では良かったのかもしれないな。

グレイシーを飾り立てるのは、またもやゲイのスタイリスト。映画において、ゲイの男性というのはいつもおもしろパートを引き受けていますね。今回の彼ジョエルディートリックベーダーもいろいろおもしろいことをやってくれるし、いいところで肝心のアドバイスをしてくれたりもします。彼が変装を手伝ってくれるサンドラの“ビッグバード”は最高でしたね。あと、サンドラがおばあさんに変装したシーンもかなり笑えました。

こういう映画は批評家からそんなに高い評価を受けるタイプのものでもないし、続き物とあって辛くなりがちだとは思うのですが、アクションということには期待せずに、女性が主役のコメディという意味では結構いける作品だと思います。

阿修羅のごとく

2008-03-10 | シネマ あ行
向田邦子さんという人はワタクシがものごころついたころ、というか小説家とかそういう人を認識する歳になったときにはすでに亡くなっていて、ワタクシの中では“飛行機事故で亡くなった人”というイメージが先行している。実際、彼女の脚本のテレビドラマってぜんぜん見たことないしなぁ。

この「阿修羅のごとく」も人気のあったテレビドラマだったらしい。そんなこともこのレビューを書くにあたって、ちょこっと検索してみるまで知らなかった。というわけで、そういう予備知識は何もなく見た感想です。

まず、大竹しのぶ黒木瞳深津絵里深田恭子というそれぞれの世代を代表すると言っていい女優陣。黒木瞳はいつもおんなじ演技だけど…大竹しのぶの演技力は言うまでもなく、ふかっちゃんは教科書どおり、深キョンはたまにビックリするくらいバケるから面白い。

彼女たちが4姉妹で、三女の滝子(深津絵里)が探偵を雇って父仲代達也の不倫現場を写真に取り、他の姉妹に相談するところから始まる。真面目だと思っていた父の裏切り。しかも、隠し子まで。年老いた母八千草薫はそんなことは何も知らずに暮らしているのだろうか?それを機に4姉妹それぞれの持つ秘密も暴露されていく。

秘密と言っても、そこまで重大なもんでもなく、長女の不倫、次女の旦那が不倫、四女の同棲、妊娠ってことくらいか。時代が昭和54年ですからね。今みたいに不倫なんておおっぴらに言えるような時代ではなかったし、いまよりずーーーっと女性がガマンしていた時代。男の浮気なんてバレたところで、開き直られて終わりみたいなことも多かったんじゃないのかな。男の甲斐性ってね。

一見平和な日常の裏には人に言えない秘密があって、一見平穏に見える心の奥底には阿修羅が潜んでいるってことなんだとは思うけど、これも時代背景をよく考えないと現代の感覚では理解できないことが多いだろう。

ただ、ワタクシは詳しくはないけれど、向田邦子のどこか軽快な独特の世界をいうのが繰り広げられていて、見ているほうはなぜか引きこまれる。セリフの感じなんかがとてもいい。ワタクシの感覚で言うと最後の“浮気してたお父さんよりお母さんのほうが一枚上手”的な展開は好きではないんですけどね。それで、すべてが許されるみたいなのって納得いかないタチなんで。でもまぁ、悪いところもあったろうけど、いわゆる「古き良き時代」を見られるんじゃないでしょうか。服装とかもレトロな感じでなんか可愛いし。

ウィキで調べて見ると、この映画で母親役を演じている八千草薫がドラマでは長女役を演じていたそうで、時代の流れを感じますね。

ロードトゥヘヴン

2008-03-07 | シネマ ら行
これはアメリカではテレビ映画として作られた作品で、もとは170分だかそれくらいあるそうで、それを120分にまとめているらしく、ダイジェスト版だそうですが、まぁ、ワタクシはそれなりに楽しめました。

南部の女性たちを描いたもので、原住民との戦いに行く男性たちの裏で女性がどうしていたかとか、奴隷制、女性の参政権と当時の女性たちの生き方を描いた大河ドラマってとこでしょうか。

レイチェルリークックアンジェリーナジョリーが主役のように扱われていますが、これはただ二人のネームバリューを宣伝に利用しただけで、実質の主役ではありません。しかも、驚いたことにレイチェルリークックがアンジーの幼い頃の役なのです。あー、ビックリ。

なんか、あんまり評判良くないみたいなんですけど、ワタクシは結構好きでした。アンジーは幼い頃(レイチェルの頃)自分に原住民の血が入っているということに苦悩するって役だったのに、アンジーになってからは南部のワガママなお嬢様って印象になってしまった。でも、彼女が女性の参政権を求めるところは彼女の強いキャラにピッタリでした。

日本のDVDではすっかり脇役扱いになっているアンジーの親友フィミアナベスギッシュのお姉さんサラダナデラニーがめっちゃくちゃカッコ良いです。実質の主役は彼女でしょうね。戦争に行く男性たちの留守を預かり、女性たちをまとめるリーダー役を立派に務め、攻めて来る原住民にもひるまない。堂々とした南部の女性。こういう南部系のお話にはよく出てきますね。本当にこういう女性たちがいたってことなんでしょうね。こういう人たちがいたからこそ、現在の女性の参政権などがあるってことなんでしょう。ダナデラニーという女優さんはちょこちょこ脇役で見る人ですが、いつも結構芯のしっかりしたいい役をやっているような気がします。

レイチェルやアンジー目当てで見た人はちょっとガッカリするかもですが、南部の女性たちの歴史みたいなものをかじるにはいいドラマかもしれません。

ノーカントリー

2008-03-06 | シネマ な行
ジョエル&イーサンコーエン兄弟の作品かー。アカデミー賞作品賞獲得かー。コーエン兄弟の作品の中では「ミラーズクロッシング」「オーブラザー!」「ディボースショウ」は結構好き。でも、その他はほとんど好きじゃないなぁ。「ビッグリボウスキ」「バーバー」「ファーゴ」っていう世間では絶賛されてる作品が特に好きじゃない。好きじゃないっていうか、ワタクシには理解できないです。何がいいのか分からない。だから、この作品も今回ねー、アカデミー賞取っちゃってますからねー、ヤバイなぁ、多分分からんやろうなーと思いつつ試写会に行ってきました。

案の定、分かりませんでした。いや、なんかね、なんとなくは分かるんですよ。セリフとかいちいち意味深やしね。原作があるんだから、完全にコーエン兄弟の世界ってわけじゃないんやろうし。でもなー、なんかなー。この殺し屋シガーハビエルバルデムには彼独自のルールがあるとかって言われるけどさー、なんかよう分からんルールやったな。そこに一貫性があるっていうのもよう分からんかったし。彼が麻薬や金のために殺してるんじゃないっていうのは分かっても、所詮麻薬や金に起因してるんじゃねえの?って感じだった。“ハンニバル博士以来の”なんて言われてるけどさ、シガーは全然芸術的でもなんでもないし、“一緒にせんといてよっ”っていう気になっちゃう。ハビエルバルデムはすごく好きな俳優さんなんやけど、これでアカデミー賞助演男優賞っていうのもよう分からん。不気味は不気味やったけどねぇ。。。しかし、あれは凄かったな、あの酸素ボンベでボンッってやつ。

ただ、これ舞台が1980年なんですよね。そこはなんとなくね、最初に保安官のエドトムトミーリージョーンズが言う最近の犯罪は理解できないって言うのはね、なんか時代の移り変わりを示してるっていうか、時代に流れる虚無感とそこからつながっている現代へのメッセージっていうのはなんとなく感じましたけど。その辺アメリカ人が見るのと日本人が見るのとではまた感想が違うのかもしれないな。

批評家の人がね、「この映画はワケ分からん」って言うのはすごく勇気がいるでしょうね。ただの映画ファンですら、“映画ファン失格”って言われちゃいかねないですね。ま、ワタクシは映画ファンですけど、コーエンファンではないから、まぁいっか。

アカデミー賞作品賞かー。「フィクサー」「つぐない」「ゼアウィルビーブラッド」「ジュノ」っていう他のノミネート作品はまだ見れないから比べようがないし、判断のしようがないですけどね。ハリウッドも暗くなったなぁ。

ライラの冒険~黄金の羅針盤

2008-03-05 | シネマ ら行

ネタバレ注意

「ライラの冒険」???また子供が主役の冒険物かー。「ハリーポッター」「ロードオブザリング」も大好きやけどさー、もうええんちゃうん???って最初は思ってたんですよねー。でも、ちらっと雑誌を見ているとこのライラの世界では「ダイモン」と呼ばれる人間の魂が動物の姿をして人間一人に一匹ずつくっついてるっていうではありませんか。んー、それはなんか面白そう。しかも、悪役はニコールキッドマンかー。んー、それもなんか面白そう。しかもまたまた3部作っていうじゃないですか。んー、これはいっちょ見に行ってみるかというわけで行って参りました。

なんと言っても、ライラダコタブルーリチャーズが強いそして、賢い、というかズル賢い。うん、でもそのズル賢さは冒険には絶対必要。現にすごく役に立ってるし。ワタクシ、ポタリアンを自称するほどのハリーポッターファンですが、あのハリーのウジウジ加減にはたまにイヤ気が差すんですよね。しかし、ライラは一切ウジウジしないコールター夫人(ニコール)が母親だと分かっても一切動揺しない。あれ、ハリーだったら絶対素直に羅針盤渡しちゃってたよ。

よろいグマのイオレクバーニソンイアンマッケランを仲間に引き入れるときも、ラグナー王イアンマクシェーンとの戦いのときも得意の話術で巧みに相手の心理を利用して動かし、口だけじゃなくてダイモンと子供たちを引き離す機械をぶっこわすという行動力も持ち合わせ、まさに勇気凛々、才色兼備の女の子。顔の表情に彼女の意志の強さと頭の良さが表れてるもんね。しかも、美人さんだしなー。将来が楽しみだ。

そんな強い強いライラのダイモンはちょっぴり弱虫のパンタライモンフレディハイモア。強すぎるライラの代わりに可愛いパートを担当してくれます。ライラはまだ子供だからダイモンの形が決まってなくて、蝶、小鳥、イタチ、ヤマネコって具合にころころ変身するんだよね。それがまた可愛いなー。でも、時間的にはイタチが一番長かったから最終的にはイタチに定まるのかなー。ライラと引き離されそうになったときのパンタライモンの表情なんて切なくて涙が出そうだったな。

前述のよろいグマのイオレクバーニソンはめっちゃくちゃカッコ良かったラグナ王との戦いのときは勝つだろうとは思ってたけど、本気でドキドキしたし、その後の橋のくだりではまさかここで死んじゃうんじゃないかとこれまたドキドキ。でも、これからもライラと一緒に旅をしてくれることになって本当に良かった。最後のシーンで子供たちと一緒に寝てあくびをしている姿を見てホッとしたよ。

ライラを助けてくれる人間たちもみんなカッコ良いしねー。アスリエル卿ダニエルクレイグは次回もっと活躍してくれることを期待ですね。

それぞれのダイモンの声の担当もすでに書いたフレディハイモア、クリスティンスコットトーマスキャシーベイツと豪華。特にアスリエル卿のダイモンである雪豹のステルマリア(クリスティンスコットトーマス)は最高にクールですね。

ストーリー的には魔女の王女さまセラフィナペカーラエヴァグリーンの登場なんかがちょっと唐突な感じがして、原作では詳しく書かれてるんかなぁと思わせるところも少々あったり、展開はやっ!って感じもしますが、112分にまとめたということでヨシとしようかって感じでした。122分なら子供たちも楽しめるしね。

完全に続き物ということで今回は中途半端に終わってますので、早く続きが見たい作品です。「ナルニア国物語」も第2部が公開になるし、さて、「エラゴン」はどうなったかなー???