シネマ日記

超映画オタクによるオタク的になり過ぎないシネマ日記。基本的にネタバレありですのでご注意ください。

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夜に生きる

2017-05-24 | シネマ や行

最近あまり映画を見る時間がないのでどの作品にするか非常に迷ったのですが、ベンアフレックが好きなのでこれにしました。弟ケイシーの「マンチェスターバイザシー」もかなり気にはなっているのですが、、、

第一次世界大戦で無駄な死を見過ぎたジョーコフリン(ベン)はもう誰の命令にも従うまいと警察幹部の息子でありながら強盗稼業で暮らすようになる。その頃ボストンはアイルランド系とイタリア系のギャングたちがしのぎを削っていたが「誰の命令にも従わない」というポリシーの下、ジョーはどちらのギャング組織にも入らずにいた。

しかし、ジョーが恋に落ちた相手がアイルランド系のボス・ホワイトの愛人エマシエナミラーで、2人の関係がバレてしまいジョーはボコボコにされるが殺される寸前に父親に逮捕され命は助かる。エマもホワイトに殺されジョーは傷心のまま刑務所で3年を過ごす。

出所後、ホワイトへの復讐に燃えるジョーはポリシーを曲げてイタリア系ギャングの仲間となり、密造酒を仕切るためにフロリダのタンパへ向かい心機一転、密造酒の商売を成功させる。ここでジョーは密造酒の原料をキューバから輸入しているグラシエラゾーイサルダナと出会い恋に落ちる。

とまぁとにかくつらつらとジョーの人生が語られるという作品です。これ、ベンアフレックが好きな人じゃなかったらちょっとしんどいかもなぁ。あとはジョーコフリンという人間を好きじゃなかったら辛いでしょうね。ワタクシはベンのファンだし、ジョーコフリンのこともなかなかに好きだったので大丈夫でしたが。法に触れることはしているけど、人を傷つけたりするわけではなく、愛した女性にも誠実なジョーコフリンというキャラクターに朴訥な雰囲気のベンアフレックはとても合っていました。

タンパ警察の本部長フィギスクリスクーパーの娘を演じるエルファニングが唯一と言っていい強い印象を残しましたね。最初、フィギス本部長のオフィスで「娘だよ、ハリウッドに行くんだよ」と紹介されて、そのシーンは一瞬の登場で終わるのですが、それがエルファニングだったので、彼女がこれだけで終わるわけはないけど、どう絡んでくるんだろ?さすがにジョーの恋愛相手としては若すぎるし、と思っていたらとても意外な展開で絡んできたのに驚きました。やはりエルファニングは存在感あるわ。

物語の中に禁酒法、恐慌、カジノ合法化、KKKなどその時代の背景をうまく絡めて描いているのは興味深かったです。

ギャング稼業だけに何度か修羅場をくぐっていくジョーですが、綱渡りながら常に勝利をおさめてきて無事に引退し、妻子と幸せにくらしましたとさ、とそうは問屋が卸しません。最後はまぁいくらむやみに人を傷つけるようなことはしてこなかったとは言え、ジョーのやってきたことを思えば自業自得ですし、奥さんも清廉潔白な人ではなかったわけで、こういう結末も覚悟してジョーと一緒になったのだろうとしか言いようがありません。

ワタクシは嫌いじゃなかったですが、ベンアフレックが監督してきた作品の中では、ちょっとこれは落ちるかなという出来でした。

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汚れたミルク~あるセールスマンの告発

2017-03-24 | シネマ や行

パキスタンで実際にあった事件を「ノーマンズランド」などのダニスタノヴィッチ監督が映画化した作品。

新婚のアヤンイムランハシュミは妻ザイナブギータンジャリの薦めで多国籍企業に面接に行き中途採用される。大卒が条件でアヤンは家庭の事情で大学を中退していたが、これまでのセールスの手腕を上司ビラルアディルフセインに買われて採用された。

アヤンの仕事は粉ミルクを医者に売って患者にたくさん処方してもらうこと。ボスはアヤンにたんまりと接待費を渡し、自社製品はいくらでも医者や看護師にバラまけたし、医者にはいくらでも好きなスポーツのチケットなどをバラまいて、元々のアヤンの手腕もありアヤンはすぐにトップセールスマンに躍り出る。

数年後、息子もでき、妻は2人目を妊娠中。新居も買って順風満帆。そんな時、転職して初めのころに懇意にしていた医師が修学先のカラチが帰ってきて、アヤンに衝撃的な事実を告げる。

カラチでもここでもアヤンの会社の粉ミルクを汚染された水で溶かして飲んでいる貧民街の子どもたちが次々に死んでいると言うのだ。貧困層は十分な粉ミルクが買えず、薄めて飲ませたりもしていると言う。企業側はそれを知った上でとにかく売って売って売りまくれというわけで、その陰で死んでいく赤ん坊のことなど気にかけてもいない。その事実を知ったアヤンはすぐに会社を辞め、告発することにした。この先、苦難が待ち受けているとは最初はまったく思いもせずに。

大企業と国はグルになっていて、アヤンの告発をひねりつぶそうとする。彼らにとってアヤンのような一市民をひねりつぶすことなどたやすいことだった。

映画の演出として、アヤンの物語を映画化しようとするイギリスの映画会社とアヤンの打ち合わせの中でアヤンの物語が語られる。映画化する側は法律的な問題がひとつでもあっては企業側に指摘され訴えられるということで慎重姿勢だ。アヤンは当然会社の名前も実名を出してもらえると思っていたが、制作会社としては仮名でいきたいと考えている。というくだりでたった一度だけアヤンが「ネスレ」と実名を出し、制作会社側が「いや、仮名でいこう」とその後は「ラスタ社」に変更され一度たりとも「ネスレ」の名前は出てこない。映画的にはこのくだりは秀逸なんですが、とにかく、「ネスレ」です。赤ん坊が死のうが知ったこっちゃないと粉ミルクを売りまくったのは「ネスレ」です。何度も書いておきます。「ネスレ」ってたいがいこういう環境系のドキュメンタリー映画には登場するんだよなー。

まぁ確かにネスレは売っただけで使い方が間違ってるほうが悪いんじゃんと言い逃れできる案件な気もするんですよね。でも、もちろん先進国とは国の事情が違うし、水自体が汚いところがあったりとか、育児に対する情報が得られにくい地域もあったりして、お医者さんが言うんだから間違いないだろうって素直に従ってしまう人も多いのかもしれませんね。そして、それを知りながら売りまくったネスレと企業と癒着して自分が接待してもらえるからっていうだけで赤ん坊の命を粗末にした医者たちが許されていいわけがありませんよね。

この事実を知って速攻で会社を辞めたアヤンもすごいと思ったけど、家族を脅されて子どものことを心配するアヤンに「自分の子どもの命も大切だけど、その他大勢の子どもたちの命も同じように大切だ」とアヤンに闘うように説得する奥さんがすごいと思いました。そう考えられるって素晴らしいことだと思います。

アヤンの物語は1997年の出来事ですが、作中に使われている赤ん坊の映像は2013年にパキスタンで撮影されたものだそうです。この問題はまだまだ現在進行形で続いているということでしょう。

国際映画祭以外で劇場公開されているのは世界中で日本だけだそうです。BITTERS ENDという配給会社が頑張ってくれています。

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ヤクザと憲法

2017-03-14 | シネマ や行

「ヤクザと憲法」ものすごい題名だ。題材もものすごい。こんなドキュメンタリー発表してるの、やっぱり東海テレビ。

大阪府にある指定暴力団に密着取材をしたドキュメンタリー。

暴力団対策法のきっかけともなったと言われる殺人事件で15年の服役から出所してきた会長を迎える組員たち。誤解を恐れずに言うが、この会長さんがすこぶるカッコいい。見た目が男前で若々しくて実際すぐにでもヤクザ映画の主役を張れそうなほど。このドキュメンタリーを撮らせることに何かしらのメリットを感じて応じたのだとは思うが、その面を考えてもきっと頭も良い人なのだろう。

この会長さんが大阪の西成区から飛田を抜けて新世界の居酒屋へ向かう。新世界というと最近では随分観光地化しているようでよくテレビの取材なんかも入っているが、会長さんが行く居酒屋辺りはおそらくそんな場所じゃないもっと本物の新世界。居酒屋のおばちゃんに撮影スタッフが聞く。「この人がヤクザの会長さんって知ってるんですか?」「知ってるよ」「怖くないですか?」「なんも怖いことなんかあるかいな。よう面倒みてくれるよ。あんた、警察が私らに何してくれる思う?」本物だ。おばちゃんも会長さんも。

会長さんは言う。暴力団対策法や暴力団排除条例で全国のヤクザが銀行口座を作れない、自動車保険に入れない。これわしら人権ないんとちゃうの?ヤクザが人権とは何を言うか。そんなものを守らない自分たち、そんなものを放棄したのがヤクザじゃないのか?という意見もあるだろう。ワタクシも正直どう考えたらいいか分からない。ただ犯罪者相手だからこっちも人権なんか守らなくていいというのは違う気はするんだよね。。。途中でガザ入れに来た警察の姿も映されるが、あれを見ているとどちらがヤクザだか…という感じもした。(まぁそれくらいじゃないと対抗できないのだろうけど)

山口組の顧問弁護士である山之内幸夫さんも登場する。自分も貧しい商売人の家に生まれ、ヤクザの組員たちの境遇に共感するという山之内さん。彼はとても正直に、ヤクザの世界への好奇心を語る。それがあったから彼らの顧問弁護士になったのだと。彼自身、山口組の顧問弁護士であるという立場のせいで、いちゃもんまがいの罪を検察にかぶせられて有罪判決を受け弁護士資格をはく奪されているし、それ以前に家族にも疎遠にされているけれど、それでも元をたどるとやはり自分の好奇心に勝てなかったというわけだろう。

西成区とその傘下にある堺市にあるヤクザの事務所が登場し、現役の本物のヤクザが何人も登場するのだが、なんかやたらと人当りは良くて少し拍子抜けしたりもする。しかし、その一方で「しのぎ」について行けば当然何をやったかは教えてもらえない。そりゃそうだ。一人の組員がお墓をピッカピカに掃除するシーンがあるのだけど、学校時代からこういうこと全部サボりたい人だったからヤクザになったようなもんなのになぁ、ヤクザになったら下っ端が掃除とか隅から隅までピッカピカにするんだから不思議だよね。

部屋住みと呼ばれる一番下っ端の男の子が登場するのだけど、およそヤクザのイメージからはほど遠い学校でいじめられていた青年だったのが印象的だった。戸塚ヨットスクールが昔は不良の集まりだったのがいまはひきこもりの子の受け入れ施設のようになっているのをなぜだか思い出した。普通じゃなくてつまはじきにされてきた彼はどこかでヤクザに共鳴したのだろう。

ワタクシはこの作品に登場する地域がまさにどこか分かる場所の出身なので、ヤクザの事務所の前の道を小学生が普通に通っていく光景もあまり違和感なく見ていたし、登場する組員たちの人当りの良さに少し拍子抜けすると書いたが、やはりこの映像にあるあのめちゃくちゃ重そうな鉄の扉の玄関を見ると、あぁやはりここはヤクザの事務所なんだなと実感させられる。

ヤクザの勝手な主張ばかり宣伝するプロパガンダ映画だと感じる人もいるだろうけど、ワタクシは山之内さんのように好奇心から見て、色々と考えさせらた作品でした。

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約束~名張毒ぶどう酒事件 死刑囚の生涯

2016-10-12 | シネマ や行

このブログでも取り上げた「平成ジレンマ」「死刑弁護人」を製作した齊藤潤一(監督・脚本)、阿武野勝彦(プロデューサー)が手掛けた東海テレビのドキュメンタリー。彼らは非常に質の高いドキュメンタリーを製作していてこの作品も公開の時に見たかったのだけど、見逃してしまい、ケーブルテレビで放映されたのでついに見ることができました。

昭和36年「名張毒ぶどう酒事件」は起きた。三重県名張の小さな村の寄合でぶどう酒を飲んだ女性たちが苦しみだし、そのうち5人が死亡した。逮捕された奥西勝氏は自らの妻もこの事件で亡くしたが、妻とその中にいた愛人との関係を清算するためにぶどう酒に毒を仕込んだとし逮捕・起訴された。当時は自白し、テレビのインタビューで反省の念まで口にしていた奥西氏だったが、のちに自白は強制されたものとして無実を訴えるが、1審の無罪判決が2審でひっくり返り死刑判決。昭和47年最高裁で死刑が確定する。その後7回以上もの再審請求も却下され続けたまま、2015年奥西氏は獄中で亡くなってしまった。

ドキュメンタリー部分とドラマ部分の構成でできた作品。ドラマ部分は当時の奥西氏を山本太郎が、現代の奥西氏を仲代達矢が演じ、奥西氏の年老いた母を樹木希林が演じている。ドラマ部分の母と子の手紙のやりとりは涙なしでは見られない。年老いた母が見えづらくなった目で一所懸命に獄中の息子に手紙を書き、弱くなった足腰で拘置所に面会に来る。息子は息子で拘置所内の作業で得る貴重なお金を少額ながら母に送る。引き裂かれた親子は二度と青空の下手を取り合うことはなく今はもう2人とも亡くなってしまった。

日本の実際にあった冤罪についての作品は、見るようにしているのでいままで何本か見てきました。結局結論はどれも同じ。警察による自白の強制に始まり、証拠の捏造、捏造とまではいかなくとも証拠の都合の良い解釈、証拠の紛失、そして、再審請求に関しては裁判所のシステム上先輩裁判官が出した結論に反対すれば地方に飛ばされてしまうため、前の結論をひっくり返そうとはしない裁判官たち…という日本の腐りきった司法システムのせいで無実の人が犠牲になっているのです。

ドキュメンタリー部分では、当時関わった人権団体の方、弁護士団の方たちの取材に加え、村人へのインタビューも交えて構成されている。弁護士たちが調べていくにつれ奥西氏を犯人に仕立て上げるために村人の証言までもが、最初の証言から一変していることが明らかになる。すべての証拠が奥西氏犯人説にベクトルが向くように変節しているのだ。それについて村人にはっきりと質問して切り込んで行っているところがすごい。しかし、村人たちは「嘘の証言をしました」などと言うわけはなく、「時間的なことははっきり覚えていない」とか曖昧なことを言うばかりだ。人間の集まりの中では1人を悪者に決めつけて、あとは何事もなかったかのようにやり過ごすほうを選んでしまうものなのだろう。自分も犯人を知っているわけではない中でこれ以上波風を立てるのはイヤだという心理ほうが真犯人を突き止めるということや無罪の人を犠牲にしているということよりも重きを置かれてしまうという恐ろしい心理状態を検察はとことん利用する。

「徳島ラジオ商事件」という別の冤罪事件で再審開始の決定を下した当時の裁判官秋山賢三氏へのインタビューが非常に印象的だった。「冤罪の判決を受け再審請求を繰り返す人はどんなに栽培所に裏切られても裏切られても最後まで裁判所を信じ続けるんです」と涙ながらに語られました。どの権力からも独立し公正な判断を下すはずの裁判所が実はエリートコースを歩みたい裁判官たちの出世レースの場となっていて、昼ご飯もエレベーターに乗るのも序列順という彼らが先輩の出した結論を翻すことができるはずがないということを堂々と指摘してみせる秋山氏が冤罪をかけられた人たちの身になって涙を流す姿に心が震えました。現に秋山氏は民事に回されたあと裁判官を辞めておられるし、奥西氏の再審の決定をした裁判官は辞職され、その再審決定を覆した裁判官は東京に栄転しているという恐ろしい現実があるのです。はっきり言えば良心のある人は裁判所の中で出世はできないということになるだろう。

ハリウッド映画のように無罪の証拠や証人が新たに登場し、公正な裁判官が再審を決定し、裁判で逆転無罪を勝ち取るなんてことはこの国では起こりえないような気がする。もし起こったとしても最後まで行くには何十年もの年月がかかり、その間ずっと拘置所や刑務所で人生を過ごすことになる。裁判所はまるで冤罪で捕らえた人たちが死ぬのを待っているかのようだ。「疑わしきは被告人の利益に」そんな言葉はこの国では空虚な絵空事だ。このシステムが続く限り小さなものから大きなものまでこの国の冤罪事件はこれからも果てしなく続くことになりそうだ。

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やわらかい手

2014-03-13 | シネマ や行

これも公開当時興味があったのでレンタルしました。

夫を亡くした平凡な主婦マギーマリアンヌフェイスフルの孫は病気で入院している。外国で手術できるという話が持ち上がるが息子夫婦にも自分にもお金がない。そこでマギーは仕事を探すことに。偶然見つけた風俗店の「接客係募集」の張り紙を見てマギーは勇気を出して風俗店に入る。

接客係とは何かも知らずに面接を受けるマギー。オーナーのミキミキマノイロヴィッチは、マギーの手を握り採用を決める。先輩“接客係”から仕事を教えてもらうマギー。彼らの言う接客とは「手でイカせる」という仕事だった。

オーナーが東京で見て真似をしたという小さなブースには、イスが置いてあり、壁にひとつ穴が開いている。マギーはそのブースで待機し、その部屋の向こう側に客室があって、、、とまぁこれ以上説明はなくとも分かっていただけると思います。これ東京の真似したって言ってたけど、こういうのあるんですね・・・

初めはこんな仕事できないと逃げようとするマギーだったが、やはり孫のことを考えると背に腹は代えられない。しかも、孫の渡航費はすぐに必要とあって、ミキに前借を頼み仕事をすることになる。

ミキが見込んだだけあってマギーの手の評判は上々でなんと客が行列を作る売れっ子となり、別の店からスカウトが来るほどに。母親が大金を渡してきたのを不審に思った息子トムケヴィンビショップに後をつけられ風俗店での接客業がバレ、息子は大激怒。こんな金受け取れるか!と突き返すのだが。。。

マギーはどこか少しぼけっとした雰囲気のこれまでのほほんと主婦やってきましたーみたいな普通のおばさん。そんなマギーが、風俗店なんかで働き始める。孫のためっていうのがもちろん一番にあるんだけど、チンピラ風のオーナー・ミキに自分の主張を言える芯の強さも持っている。演じるマリアンヌフェイスフルがとても素敵です。マギーの戸惑いとか腹のくくり具合とかをとても自然体で見せてくれます。

息子が激怒したのには、分かるけど腹が立ったな。お前の子供のためにイヤなことも率先してやったんやろうがー!って。自分は嘆くばかりで何もしなかったくせにねぇ。でもやはり母・マギーとしては息子が怒る気持ちも分かったんでしょうね。ここで息子の妻サラシヴォーンヒューレットが「子供のためなら何でもできるって言うけれど…」と私たちにはできなかったことをお義母さんはしてくれたのよ、と夫を諭すシーンが良かったです。もともと嫁と姑の間はうまくいっているって感じではなかったけど、どちらも子供、孫のためならというところでなら団結できるんでしょうね。

ストーリーを書くと孫を助けるために風俗で働くおばあちゃんっていうことになるのですが、本質はそこではなく、平凡な主婦マギーが(一風変わったシチュエーションではあるけど)社会に出て、自分と向き合う話っていう要素があると思います。いままでヒマだから付き合ってた友人たちとの関係を見直す結果にもなったし、新しい恋まで見つけちゃって。正直マギーがミキとくっつくっていうのはビックリの展開ではありましたけど、2人とも良い人そうなので好感が持てました。

静かな展開のイギリス映画ですが、くすっと笑えるシーンも結構あって風俗が舞台とは思えないほどの落ち着き感があります。下ネタも当然たくさん出てきますが、不思議と平穏な気持ちで見られる作品です。

マリアンヌフェイスフルという女優さんのことを全然知らなかったのでググってみると、60~70年代には相当ブイブイいわせてた方みたいですね~。このマギーという役が穏やかなイメージだったので、びっくりしました。ミックジャガーの恋人だったんだー。

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ゆれる

2014-02-26 | シネマ や行

母親の法事にやってきた弟・猛オダギリジョー。愛想良く法事に来たみんなを接待する兄・稔香川照之。父・勇伊武雅刀の話からすると猛は東京に出てカメラマンになったが、好き勝手に生きてきて母親の葬式にすら出なかったらしい。兄は実家のガソリンスタンドを継いでまだ結婚していないが、従業員の智恵子真木よう子に少し気があり周囲も2人はゆくゆくは結婚すると考えているらしい。

オープニングから少しずつこの兄弟のそれぞれの性格や過去、関係性が観客にスムーズに示されていく。兄の稔なんてあまりにも腰が低いので、最初はこの家のお婿さん?と思ったくらいだったが、それも兄の性格や生活を非常によく表していると思う。そして、この智恵子という女性と猛が過去に付き合っていたんだなってこともだんだん分かってくる。

法事の翌日、兄弟と智恵子は渓谷に出かける。猛は前日の夜、智恵子のマンションに上り込んでセックスしたが、朝を待たずに実家に帰っていた。兄には智恵子と久しぶりに飲んでいたことにして。昨夜のこともあり、渓谷ではなんとなく気まずい猛だったが、智恵子はなんとなく猛との復縁を望んでいるふうだった。そんな智恵子から逃げるように吊り橋を渡り一人で渓谷の奥へと写真を撮りに行く猛。智恵子は猛を追って吊り橋を渡ろうとするが、高所恐怖症の稔は危ないからやめようよと言う。稔を振り切って吊り橋に向かった智恵子。その後を稔も追った。「危ないから引き返そうよ」と智恵子にしがみつく稔。「触らないでよ!」とキツイ言葉で振りほどかれ驚いた稔。その瞬間バランスを崩して智恵子は吊り橋からはるか下の川へ転落して死んでしまう。

いったんは事故として処理されたが、稔が「自分がやった」と警察に行ったため捕まってしまう。稔を助けるため東京で弁護士をしている伯父・修蟹江敬三に助けを求める猛。猛は稔を無罪にするため奔走し、稔もそんな猛の気持ちに応え「自分がやった」というのは直接智恵子を押したという意味ではなく、自分のせいで智恵子は死んだという意味だという証言に変えるのだが、、、

レビューなどを見ると世間的にはこの実家を継いだ“良い人”の兄に感情移入して見ていた人が多いようなんですが、ワタクシはこの稔という人が気持ち悪くて仕方なかった。(多分)不本意ながら実家を継いで、弟の元恋人をひそかに想い、父親の面倒を見て、背中を丸めて生きている兄。周囲のために色々我慢して生きているこういう人って世間ではえらいねなんて言われがちだけど、ワタクシはあまり好きではない。なんか自分さえ我慢すれば、みたいなのってなんかイライラしてしまうんですよねー。香川照之がうまいからってのもあるんだけど、吊り橋で智恵子にしがみついてる姿なんてマジで気持ち悪いし、そりゃ恋人でもない人にあんなしがみつき方されれば誰だって怖い顔して振りほどくでしょうよって思った。

一方、自分の好きなように生きてきた弟は、勝手な人間に見えるだろうけど、自分の人生で好きなことをやって生きることの何が悪いかワタクシには分からない。まぁ、女グセは悪そうだったし、どんな事情があったか知らないけど普通に母親の葬儀に出ないとか考えられないけどな。よっぽど悪い親でもない限り。そこんとこの設定はちょっと無理があると思った。

この兄弟の関係性が2転3転して、裁判の行方もそれと並行して2転3転することになるんだけど、結局真実がどこにあるのかはワタクシは分からなかった。猛は本当は吊り橋での出来事は見てなかったのに、稔に挑発されたことで稔が突き落としたのを見たことにしたの?智恵子が自分のものにならないからって「お前の荷物を消してやったのさ」みたいなこと言ってたのは稔のウソだったのかどうかもワタクシには分からなかった。稔という人間ってなんかどっかでそういう黒い感情をずっと心の奥に持っていそうだもの。

猛が吊り橋のところで稔の腕についたみみず腫れをとっさに隠すシーンがありますよね。あれってワタクシは古い傷に見えてしまって、稔に自傷癖があったのかと思ってしまったんですけど、あれはあの時についた傷でやっぱり最後の映像は本物だということなのかなぁ。

猛が智恵子とセックスして戻ってきた夜、「智恵子ちゃん、飲みだすとしつこいだろう」って稔はカマをかけた。猛は「あ、あぁ」と適当に話を合わせたが実は智恵子はお酒は一滴も飲めないことを稔は知っていた。だから、前夜猛と智恵子が何をしていたか渓谷の時点で稔は知っていたはずで。結局いつもいつも猛ばかりが欲しい物を欲しいままに手に入れることへの猛烈な嫉妬が稔にはあって、それが智恵子を突き落すという行動になったとしても不思議はない。

兄弟の会話がリアルでうまいなと思いました。役者も脚本も。兄を褒めようとして「俺なんか逃げてばっかだよ」と言う弟に「退屈な人生からだろ?」と言った兄。うまい!と思わず膝を打つようなセリフだったな。確かにその通り。退屈な人生から逃げられなかった兄は刑務所で何を思っただろう。実はそこが一番の逃げ場所になったのか。

セリフがリアルと言えば、この兄弟が両親のことを「お母さん、お父さん」弟が兄のことを「兄さん」と呼んでいるのもリアルだなぁと感じました。よくドラマや映画で「おふくろ」「おやじ」「あにき」とかって言ってますけど、第三者に言うことはあっても面と向かって「おふくろ」なんて呼んでる人リアルであの年代で見たことないし。そういうところに西川美和監督のリアルさを感じました。

最後に刑期を終えて出てきた稔が地元を離れるバスに乗ろうとしているところに猛が行くが、稔があのバスに乗ったのか猛の元へ行ったのかは描かれていなかった。ご自由に解釈くださいということなのだろうけど、ワタクシは稔にとってはもう地元からも猛からも離れた方が稔の人生にとっては良いんじゃないかと思った。

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容疑者

2014-01-17 | シネマ や行

これも公開してたっけかな~?という作品。ロバートデニーロジェームズフランコフランシスマクドーマンドと渋いキャストなので見てみました。

ニューヨーク市警殺人課の敏腕刑事ビンセント(デニーロ)。離婚した妻との間にジョーイ(フランコ)という息子がいるが疎遠。アパートの上の階の女性ミシェル(マクドーマンド)とは交際1年目だが、完全に心を開いているわけではなかった。

彼の管轄のロングアイランドで麻薬の売人が殺されるという事件が起き、自分の息子ジョーイが容疑者として浮かび上がる。ジョーイは麻薬中毒で苦しんでいたがなかなか立ち直れず、麻薬のトラブルで行きがかり上売人を殺してしまった。

息子が本当に犯人ならば、きちんと償わせなければいけない。そう考えて息子を探すビンセントだったが、事件からは当然外されてしまう。相棒レッジジョージズンザが彼の代わりにジョーイ探しをしてくれていた。

ジョーイは自首するつもりはなくなんとかお金を作って、恋人ジーナエリザトゥシュックと赤ん坊と一緒にフロリダへ逃げようとする。

刑事ものですが、特にサスペンスとかアクションとかそういうものではなく、あくまでもビンセントとジョーイ、ビンセントとその父親、ビンセントとミシェル、ジョーイと恋人、その赤ん坊など人と人の絆を見せる作品です。

ビンセントはずっと疎遠だった父親としてジョーイに何をしてやれるかと考えるのですが、その大前提としてきちんとジョーイに償わせることというのがあるので、見ているこちらとしても安心してビンセントを応援できる。これがビンセントがなんとかジョーイを逃がそうとするような筋書だったら、オイオイと思わずにいられないから。

こういう人間ドラマなので、やはり大切なのは役者たちの演技ということになってくる。ロバートデニーロってこういう地味な演技のときでさえ、やっぱりうまいなぁと思わせるところがあるからすごいんですよね。彼は何度となく刑事という役柄をやっていると思うのですが、そのひとつひとつがそのキャラクターによって違うのだから本当に感服してしまいます。父親が貧しさから子供を誘拐してその子供を死なせてしまい、死刑になったというトラウマを抱えた役なのですが、それを彼女に話すときの演技が大げさになり過ぎずとても良いです。

ジェームズフランコはこういうフラフラした役が妙に似合いますね。普段からちょっと何を考えているか分からないような雰囲気があるから余計かもしれませんが。父親の愛情に飢えたジャンキーを自然に演じています。

この作品でもったいなかったのはフランシスマクドーマンドですね。デニーロ相手にはっきりと物を言える女性ということで、良いシーンもありますが、彼女を使うならもう少し関わりがあっても良かったかなぁと思います。ただの主人公の恋人ではもったいない女優さんです。市警での相棒くらいやってても良かったかも。

ロングアイランドの凋落というのを背景にしているのですが、そのあたりはニューヨーカーじゃないとピンと来ないかも。それ自体は分からなくてもストーリーには問題ありません。最後に犯人がバン!ってやられて終わりっていう作品が多い中、そうじゃないところもリアリティがあって良いと思いました。

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欲望のバージニア

2013-07-05 | シネマ や行

ここ最近注目しまくってるジェシカチャスティンが出演しているということで興味があり、予告編を見てますます興味が湧いたので見に来ました。大阪では一館だけでしか上映していません。なぜ?

禁酒法時代のバージニア州。密造酒ビジネスを手掛けていたボンデュラント三兄弟という実在した人たちの物語。
長男のハワードジェイソンクラークは大酒飲みでいつも酔っ払い、怪力の暴走野郎。
次男のフォレストトムハーディが事実上のリーダー。無口で佇まいに凄みがある。
三男のジャックシャイアラブーフは上の二人からいつもヘタレ呼ばわりされているが頭を使ってのし上がろうとしている。
彼らは「不死身」だといういわば生きる伝説と化していた。

彼らの表向きの商売として経営する食堂に都会から一人の女が職を求めてやってくる。都会の生活に疲れ田舎暮らしがしたいというマギー(チャスティン)を雇い入れるフォレスト。一方ジャックはお堅い牧師の娘バーサミアワシコウスカに恋していたが、彼女はお堅い牧師の娘で彼との交際など許されるはずもなかった。

彼らは地元の警察に賄賂を渡し、ビジネスはうまく行っていたが時折入るチンピラなどの邪魔者は容赦なく倒していた。そんな折新しく赴任した特別補佐官レイクスガイピアースがこの地域一体の密造酒業者に法外な賄賂を要求してきた。それをフォレストが突っぱねたときからレイクスにより執拗な脅迫が始まる。

その間にもジャックは幼馴染のクリケットデーンデハーンとともに上質の酒を造り、マフィアの大物フロイドバナーゲーリーオールドマンに認められビジネスを行うようになる。堅実にビジネスをしたがるフォレストの反対をよそにジャックは大金を手にし、新車を買い服を新調し舞い上がっていた。

ある日初めての商売相手がマギーに銃をつきつけて嫌がらせをしてきたことから諍いが起こり、フォレストが相手をボコボコにして退散させたかと思いきや後から相手のワナにはまり喉を掻っ切られてしまう。

フォレストが喉を掻っ切られたのが多分映画の真ん中くらいのときなんです。「え?不死身って言うてたんちゃうん?ここで死ぬん?ウソやろ?」と思っていると、なんと喉を掻っ切られたにも関わらず自分で30キロ先の病院まで歩いて行って助かったって言うやないですか!ウソーん!って思いましたけど、フォレストには死んでほしくなかったんで生きていてくれて嬉しかったです。いや、ほんまに不死身でした。

レイクスは他の密造酒業者をどんどん摘発していき、ついに残るはボンデュラント兄弟のところだけとなってしまう。その間にも大きな蒸留所を作っていた兄弟だったが、ジャックがバーサとのデートに成功し嬉しがって彼女に秘密の場所の蒸留所を見せようとしたことでレイクスたちにつけられてついに蒸留所を爆破されてしまう。しかもその時逃げ遅れたクリケットをレイクスは非道にも殺害してしまう。

そのことでキレた兄弟はついにレイクスと一戦交えることに。群境の橋で密造酒業者対汚職警官たちの血みどろの戦いが待っていた。

いやーーーーもうなんでしょうねー、これ。ボンデュラント兄弟ってただの無法者なんですよ。密造酒業者やし、暴力的やし。でも、それなのに、なぜかめちゃくちゃカッコいい。決して見た目とかじゃないんです。見た目はもの凄い田舎もんやし、むっさ苦しい。それなのに。特に次男のフォレストのカッコ良さったらハンパないです。無口でねー。なんか言うと思ったらすぐ"mmmm..."って低音ヴォイスで。そのくせ女にはめちゃくちゃ奥手で。マギーのことずっと好きなくせに全然手ぇ出さない。ついにはマギーのほうがしびれを切らせて素っ裸で部屋に入って行って「永遠に見てるだけのつもり?」とか言われちゃう。それくらい奥手。そこがまた可愛いっていうかフォレストらしさを表してました。無口で不器用な男って普段嫌いなタイプのキャラクターなんですけど、フォレストはめっちゃくちゃカッコ良かったです。トムハーディって「ダークナイトライジング」のときもいいなぁって思ったけど、今回で一気にファンになってしまいました。

そしてそのマギー演じるジェシカチャスティンがまた今回最高です。都会から来たマギーは明らかに服装とか全然違ってて、徐々に田舎に染まっていくのかなぁと思っていたけど全然そんな気配はなくて終始キレイな格好してました。フォレストに惚れるくらいですから、マギーも一筋縄ではいかない女なんですが、はすっぱなわけでも威勢がいいわけでもなく一本スッと筋の通った雰囲気で、とびきりの美人でもないしお色気満開でもないのにそこはかとないイイ女の魅力を醸し出していて初対面でボンデュラント三兄弟が全員帽子を取ったまま押し黙ってしまったのがすごくよく分かります。実はこのマギーが喉を掻っ切られたフォレストを病院まで車で運んだんですけど、ここぞと言う時まで何も言わないんですよねー。そして自分がフォレストの喉を掻っ切った悪党どもに何をされたかもクライマックスまで自分の心の中に留めてきていました。このマギーのねぇ、なんて言うんでしょうね、プライドっていうかね、彼女の気質が魅力的過ぎ。出演時間はそんなに多くないんですけど、むさ苦しい画面に一輪の花という感じでした。

他のキャストも全員がものすごくハマリ役ですね。シャイアラブーフのあどけない顔は末っ子ジャックにピッタリだったし、ゲーリーオールドマンのマフィアも板についてるし。ガイピアースのちょっと変質的な捜査官にはビックリしました。超変な髪型だし。。。何アレ?まゆ毛まで剃ってちょっと笑っちゃった。

そして、つい先日「プレイスビヨンドザパインズ」でこれから注目株と思ったデーンデハーンが出ているじゃないですかー。クリケットはちょっとひ弱な感じで「ギルバートグレイプ」のときのディカプリオみたいでした。

男三兄弟の話なんですけど、三人とも性格とかバラバラで絆って言っても全然べたべたしてなくて、最終的にはもちろん助け合うんだけど普段は結構バラバラな感じがなんかリアルだなぁと思いました。一番上の兄貴は頼んないし、次男はリーダーだけど"mmmm.."だし、末っ子が一人で頑張ってた感じで、その辺がワタクシはなぜか好きでした。それでもやっぱりずっと最後まで一緒に過ごして切っても切り離せない仲だったんだろうなぁと思います。バージニア州には彼らの博物館まであるっていうじゃないですか。行ってみたいなぁ。

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善き人

2012-02-09 | シネマ や行

題材がナチスということと主演がヴィゴモーテンセンということで見に行きました。

大学教授のジョンハルダー(ヴィゴ)はある日ヒトラー官邸に呼び出され、不治の病の妻を夫が殺すという小説がヒトラーの評価を受け、それをテーマに論文を書いてほしいと依頼される。最初は入党を断るジョンだったが、出世と引き換えに入党することになる。家では認知症の入った母親ジェマジョーンズの面倒を見、母の介護から逃れるためかピアノに夢中の妻アナスタシアヒルの代わりに料理を作り、2人の子供に振り回されるジョン。親友はユダヤ人のモーリスジェイソンアイザックだったが、それも彼がナチに入党する妨げにはならなかった。

言い寄ってきた学生のアンジョディウィテカーと不倫関係に陥り、そのまま離婚、再婚という道をたどるジョン。ナチ入党の件といい、愛人との件といい、なにかと流されるだけのような主人公。心の葛藤はもちろん見られるが、それを行動に移す勇気がない。言わば一般民衆の見本みたいな主人公と言えるかもしれない。不治の病の者に「恩寵の死」を与えるという論文を書く一方で、認知症と結核の母親の自殺志願は許せない。そういう部分も一般的な行動様式を取る主人公と言えるだろう。

親友のユダヤ人のことも一度は助けようとするけれどうまくいかず、結局ギリギリまで放置してしまう。最後の最後にもう一度助けようとするがこれも失敗。自分の過ちに気付いた時にはもう時すでに遅し。最後に収容所の本当の姿を目にして愕然とするジョンだが、これこそが彼がしてきたことの結果のうちだった。

ナチスが政権を握ってからジョンは時々妄想を見始める。町の中の見知らぬ人が時々美しい歌を歌っている姿を見るようになる。これがだんだんとひどくなり、最後の収容所の場面での「現実か…」というセリフにつながっていくのだが、彼の見ている収容者たちが美しい音楽を奏でている姿は当然現実ではない。ジョンは感情をあまり表には出さなかったが、この様子で彼の精神が壊れていっているのが分かる。最後に「現実か…」とつぶやいたときでさえ、彼には収容所の現実が実は見えていなかった。すべてに目をつぶり流れに流されてきたジョンのたどり着いた場所があそこだった。

宣伝コピーでは「理想と現実の狭間で葛藤しながらも、信念を貫こうとした男の物語」となっているが、実際には「どこが???」という感じ。そもそもジョンに確固たる信念なんてあったの?ぐらいにしか感じない話だった。

彼の書いた論文がナチスが障害者なども収容所に送った根拠となっていたというシークエンスがもう少し有効に使われれば、話に膨らみも出て良かったと思うのだけど。ナチスがアーリア人を産めよ増やせよと努力していたこととかもちらちら出てくるのだけど、それも少し触れられるだけでもっとやりようがあったような…

作品の方向性は悪くないんだけど、色んな所でもうひと押し足りない印象で、ヴィゴの演技はいつも通り素晴らしかったけど、演出がそれについていっていないようで少し残念な作品でした。


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八日目の蝉

2011-04-19 | シネマ や行

試写会が当たったので行ってきました。

不倫相手・秋山丈博田中哲司の子供を身ごもった野々宮希和子永作博美は、丈博に子供は堕ろすように言われ、きちんと妻・恵津子森口瑶子と離婚してからもう一度子供を作ろうと言われるが、実は妻のほうも妊娠していた。堕胎した希和子は秋山夫婦の間に生まれた子を4か月のときに誘拐してしまう。それから各地を転々とする逃亡生活が始まり、子供(薫)が4歳のときに身を寄せていた小豆島のお祭りでの写真が新聞に載ってしまい逮捕される。その後4歳で実の両親のところに返された薫(恵理菜)はずっと希和子を本当の母親だと思って生活していたので、知らないおじさんとおばさんのところに突然連れてこられた状態になり、本当の親子でありながらうまく関係を築けないまま大学生井上真央になっていた。

大学生になり、家を出て自活していた恵理菜の前に事件のことを取材したいという安藤千草小池栄子が現れるが、実は千草は希和子が逃亡中に身を寄せていた宗教団体エンジェルホームで当時の恵理菜(薫)とともに育った子だった。その頃恵理菜は岸田劇団ひとりという男と不倫をして身ごもるという自分を誘拐した女と同じ道を歩んでしまう。

悲しい悲しい女がたくさん登場する物語。
不倫相手の子供を身ごもり、その相手と結婚できると信じていた野々宮希和子。
夫の不倫相手を罵倒し、夫の子供を産むことで自分は勝ったと信じていた妻。
4歳まで母親だと信じていた人は実は誘拐犯で父親の愛人。そのせいで本当の両親ともうまくいかない恵理菜。
女性ばかりのエンジェルホームで育ったせいで男性恐怖症になった千草。

なんか結局ね、一番悪いのはこの夫なわけよ。それは誰でも分かっていることだけど、現実に起こる不倫なんかでも夫との生活を守りたいがために怒りの矛先を愛人に向ける妻の多い事。そんな最低な人間との家庭を守りたい妻ももうその時点で同罪って気がする。この物語はこの妻が愛人を罵倒しに行ったりする時点で愛人に同情票が行くようにできてるよね。もちろん、その後に子供を誘拐されたことに関しては母親としておかしくなっちゃってもしょうがないけどね。大学生になった恵理菜に「恵理菜ちゃんに好かれたいの。そのためにはどうすればいいの?」なんて聞く母親になっちゃうわけだ。子供に好かれるためにどうすればいいか?なんて考えている母親とは、まともな関係が築けるわけなんかないよね。父親も父親で「親らしいことしなくていいよ。がらでもない」と娘に言われて「そうだな」なんて弱々しく笑ってんだもんな。「何言ってんだ!親じゃないか!」って言えないんだもん。それもこれも誘拐犯野々宮希和子のせいってことにして生きてるけどさ、そもそもは夫が一番悪いわぁな。

野々宮希和子が薫(恵理菜)に寄せていた愛情というものには、まったくの偽りはなかったということは分かる。赤ん坊のときから育てているんだからね。あんないたいけな少女がママ、ママ、と言って慕っていたらどうしてもこの二人を引き裂かないであげてと思っちゃう。いや、それはいけないことだって頭では否定するんだけどね。薫(恵理菜)が小学校に通うなんてことになったら戸籍もないし、もうごまかし効かなくなるし。それでもやっぱり希和子が捕まるシーンでは泣けちゃったなぁ。引き離される前に「この子まだご飯を食べていません」って最後まで薫(恵理菜)のことを気にしていたし、1日1日をこの子と過ごせますようにと祈りながら生活していた希和子が痛々しかった。

父親の不倫のせいで振り回されることになった恵理菜の人生はこれまた辛いね。4歳で初めて会った本当の母親は、ちょっと精神的に不安定だし、父親は何の役にも立たないし、あの年ならすべて自分が悪いと思いながら生きることになってしまってもしょうがない。自分を大切にしないで生きてきたからこその不倫だったのかな。それも妊娠しちゃうって。しかも産むっていうのもね。なんか、自分の代わりに子育てを通してまともな子供時代を追体験したいのかなという感じがした。それは前向きな運命の受け入れ方のように描かれてはいたけど、ワタクシはなんか違和感があったな。もう少し恵理菜が自分自身で両親と向き合うなり、両親の抱える問題を消化するなりしてほしかった。新しい命ですべてが解決するというのはちょっと安直な気がしたな。

主要な登場人物が良い意味でも悪い意味でもいわゆる「女」って感じがしました。希和子、妻、恵理菜以外でもエンジェルホームしかり、千草しかり。なんかその自己完結感にもやもやを感じる展開でもありました。

映画としては丁寧に描かれていて好感は持てるんですが、エンジェルホームでのくだりとか香川に逃げてからの様子とかちょっと描写が細かすぎるなと思うシーンがいくつかあった。そういうディティールを描くことで誘拐犯の疑似親子がはぐくんできた愛情を描きたいのは分かるし、それを大学生になった恵理菜が辿る旅として、彼女の中に眠っていた思い出を描くというのも分かるんだけど、ちょっと見ているほうとしては退屈になってしまうシーンが数か所あった。上映時間2時間27分も使うならもう少し両親との葛藤とか、希和子の内面とかを描いてくれたほうが良かった気がするんだけどそれは原作にない部分なのであればしょうがないけどね。

演技の面はみんなうまくて良かったと思います。永作博美は定評がありますしね。小池栄子も普段の印象とは違う役でうまかったと思います。市川実和子は東京出身なのにどうして関西弁の役が多いんだろう?別に関西弁はうまくなくて昔のこってりな関西弁というか、なんかきついんですが。まぁ、それよりなによりとにかく劇団ひとりがキモかったーーー!!!井上真央ちゃん、仕事とは言えカワイソウ。二人のシーンはもうキモすぎて井上真央ちゃんがカワイソ過ぎて、物語に集中できんかった。誰かもっと普通の人いなかったのーー??恵理菜も希和子と父親同様、つまらん男に引っかかってるっていう設定なんかもしれんけど、劇団ひとりはナイ!

原作読んでないんで分からないんですけど、どうして秋山夫妻は4か月の赤ちゃんをほったらかして出かけたの?なんか家の中もごはん食べた直後のままほったらかしやったし。そこにも何かエピソードが隠されていた気がするんですが、原作読んだ方がいたら教えてください。

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約束の葡萄畑~あるワイン醸造家の物語

2010-11-29 | シネマ や行
予告編を見たときから、神秘的な大河ドラマ風で、ワタクシの好きなヴェラファーミガが出演しているとあって、楽しみにしていた作品だった。

19世紀のフランス、ブルゴーニュ地方のワイン醸造家ソブランジョドージェレミーレニエの前に天使ギャスパーウリエルが現れ、ソブランは彼にインスパイアされる。天使はソブランに年に1度同じ場所で会うことを約束する。

このソブランと天使との対話からワイン作りのヒントを得たりもするんだけど、なんかそれだけでもない感じで、この天使の存在が妙に中途半端なんですよねー。ソブランは特別だから来るんだって言ってたけど、ソブランのワインに対する情熱って最初はすごくイイ感じだけど、天使とケンカしてツキに見放されたとか言ってからは、すごくふて腐れちゃってさー、なんか強い情熱を持った人って感じもしなかったのが残念だったなぁ。もちろん、19世紀のフランスの人だから、この天使が実は堕天使だって知っちゃったときには寝込むほどショックを受けるっていうのも分からなくはないんですけどね。天使は優しい存在というだけではなく、こういう残酷な存在というのもワタクシ的には結構アリだとは思いましたが。

天使というのには性別ははっきりないのかもしれないけど、あの天使はソブランのことが好きだったのか?ソブランもまんざらでもない感じだったけど…あの辺のくだりがいまいちよく分からんかった。堕天使は人間になりたかったんだね。でも、なんか人間になってからもただ黙々と働いてソブランのそばにいるだけで、それ以上の関わりがいまいち見えず、ちょっと残念な展開でした。

ソブランを演じるジェレミーレニエは29歳なんですね。老けメイクをし始めたときのほうがすごく自然に感じて、この人って実年齢がもう40代か50代で若いときがメイクなのか?って思ったくらいだった。これはただのワタクシ個人の好みの問題ですが、もうちょっと主役の彼に魅力があれば評価も上がったという気がします。彼の妻役のケイシャキャッスルヒューズはまだ20歳くらいで、夫がどんどん老けていくのに、彼女は全然年を取っていかないのがなんだかおかしかったです。彼女は途中でちょっと気が触れてしまう役だから、いつまでも純真な若々しさを持っているっていうことなのかなぁと考えたりしました。

ギャスパーウリエルは天使を演じるのにピッタリですね。すごく美しい顔をしていますからね。そのせいか、ソブランとのラブシーン(?)も違和感はなかったけど…

ヴェラファーミガはやはり演技のしっかりした人で、この女地主のオーロラの芯の強さと女性の寂しさを掛け合わせた雰囲気をうまく演じていたし、乳がんの手術を乗り切ったことも、ソブランと体の関係になったことも彼女が演じていると説得力がありました。ソブランとの関係については不倫なわけだから、諸手を挙げて賛成というわけにはいかないけど、奥さんがあんなふうになってしまったことから、まぁ許されてもいいかなと思ったり。

監督がニュージーランド出身のニキカーロなので、英語の作品になったのは仕方ないんですが、やっぱり19世紀のフランスということでフランス語で撮ってくれたほうがもっと雰囲気が出たのになぁ。
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ヤギと男と男と壁と

2010-09-03 | シネマ や行
好きな役者が揃って出演していることと、アメリカの実在した超能力部隊の話っていうんで見に行ってきました。

妻が不倫相手の元へ去ってしまい、傷心の新聞記者ボブウィルトンユアンマクレガーはやけくそでイラク戦争の取材へと向かう。現地で出会ったのはアメリカの超能力部隊に所属していたというリンキャシディージョージクルーニー。彼はベトナム戦争で啓示を受けた小隊長ビルジャンゴジェフブリッジスのもと、“特殊な”訓練を受けていたと言う。

やっぱり、アメリカで平和主義者というとイコールヒッピーになっちゃうのかなぁ。ラヴ&ピース?&ドラッグ?アメリカにマトモな平和主義者はおらんのか?

このビルジャンゴ隊長は、ラヴ&ピースの精神で相手との戦いを避け、平和的に戦争を解決するという手段を模索し、それに本当に軍隊が予算を出して一個部隊まで作ったっていうんだからスゴイ。その部隊が養成するのが平和の戦士ジェダイだっつーんだよ。

ってか、この話、“ほとんど”実話っていうふれ込みなんだけど、マジでどこまで?

キラキラした瞳で相手の目を見て武器を放棄するように説得する「キラキラ眼力作戦」とかさー、それでユアンを見つめるジョージの瞳、全然キラキラしてないし。壁を通り抜けるとか、ヤギを見つめるだけで殺すとか、いろいろとやってくれていますが、うさん臭すぎるぞ。

ラヴ&ピースに基づいていたはずなんだけど、ヤギを殺しちゃうハメになって、すっかりダークサイドに堕ちちゃったんだな。って、「ジェダイジェダイ」ってさー、ユアンあんたがジェダイマスターじゃんかよ!ってこれはもう突っ込まなかった人はいない、というかあまりにもあからさますぎて突っ込むのもアホらしいと思った人のほうが多かっただろうけど、それでもユアンがあまりにも何回も「ジェダイジェダイ」って言うもんだから、根負けして笑ってしまった。

なんか、途中くすくす笑かしてはくれるんですけどねー。なんか全体的にユルイ。んー、ユルイんだか皮肉なんだかユーモアなんだかもう分かんないっていうのが正直なところかなー。どんなスタンスで見ていいやら途中からかなり混乱しました。

それでも最後にユアンが「こんな時代こそ、ジェダイの戦士が必要だ」って言って壁を通り抜けるシーンを見ると、もしかして、この作品って真面目に平和への賛歌だったのかも!って思っちゃいました。そんなことないですか?
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闇の子供たち

2010-06-11 | シネマ や行
公開のときから話題になっていたので興味はあったのですが、見に行くことができず、今回ケーブルテレビで見ました。

タイの人身売買、児童買春についてのお話。取材をする現地記者の南部浩行江口洋介、現地NGOでボランティアをする音羽恵子宮崎あおい

どこから書き始めればいいかなかなか難しい。まず、現地の生きたまま心臓移植をされるということに関してはちょっと現実味が薄い、というかおそらくこれはフィクションだろうと思われる。が、児童買春については完全にノンフィクションなんだろうなと。

映画を見終わってから、少しネットサーフィンをして色んな人の感想なんかも読んじゃったんだけど、宮崎あおい演じる音羽恵子がこれから息子の心臓移植をしようとしている梶川夫婦佐藤浩市鈴木砂羽に会ったときに、「他の子の命を犠牲にするんですか。考え直してください」というシーンについて、キレイ事ばかり言ってむかつくみたいな意見が多かったのですが、確かに“取材”という名目で家にあがったのに、あんなふうに意見をまくしたてたことはフェアではないし、ルール違反だと思うけど、彼女の言ってることって全然間違ってないじゃないって思う。ワタクシは子供がいないから、確かに病気の子を持った親の苦悩っていうのは分からないけど、自分の子供が病気だからってお金を払って他の子を殺して助けてもらうっていう行為に「仕方ない」とは言えない。「親だから」っていう理由でなんでも許されるということじゃない。「その気持ちは分かる」っていうスタンスなら分かるんだけど、「実際にそうする人を支持する」っていう気持ちにはさらさらなれない。恵子のしたことは間違っていたけど、言ったこと自体は全然間違ってないと思うし、恵子の言っていることを「甘い」と言うことなんてワタクシにはできない。

一方で、実際自分の子供を売っぱらっちゃう親もいるわけで。それは貧困という社会の悪がそうさせるということはもちろん分かるんだけど。その親側の苦悩というのは今回描かれてはいなかったけど、どうなんだろう?もちろん、苦悩している人もいると思うけど、子供は親に尽くして当然という考え方の人もいるし、現に日本でだって、昭和初期くらいまで貧困層ではこんなことが普通に行なわれていたりもしたんだし。お金持ちの家では跡取りとして男の子の誕生が喜ばれたけど、貧困層では女の子が生まれたほうが喜ばれたなんて話もある。10年もしないうちかそこらでよそに売ればお金になるからだ。当時はペドファイルのためではなかったんだろうけど。しばらくは下働きをして時が来れば女郎になった。つまり、ここで語られる人身売買の話は異国の遠い遠い話では決してない。

異国の話ではないって書いたけど、買春ツアーとかしてる厚顔無恥な奴らが日本にウヨウヨいるんだよね…相手が子供じゃなくても最悪なのに、子供を買うってどういう神経してんだか。性癖は本人が選べるものではなくて持って生まれたものだろうから、それに関してはどう言えばいいのか分からないけど、やっぱりどういう性癖にしても相手があって、その相手が同意の上ではないならやっぱりダメなんだよっていう基本的なところかな。大人同士の売買春は「同意の上」と言えるからいいじゃんとも言えませんけどね…この作品に登場する子供を買う奴らに日本人が少なかった(実質一人?)のはなんらかの配慮だったのか?なんか欧米人ばっかだったのが気になった。

そういうのを取り締まる警察も汚染されてるんだろうね。買春ツアーの日本人なんて全部まとめて検挙してくれって思うけど。大した罪にもならないのかな。そういうのが普通に会社行って真面目に働いてるとか言ってると思うとヘドが出るね。

映画に登場するマフィアの下で働き、子供を売り買いする仲介をしている男も実は子どもの頃母親に売られた過去を持っているというのが興味深かった。自分がそんな目に遭っていたのに、どうして子供たちに同じ目を遭わせるんだっていうのもあるけど、やっぱそんなふうにしか生きていけない境遇になってしまったんだよね。彼が生きたまま心臓移植をされて殺される女の子を最後にキレイにシャンプーをしてあげて、可愛い服を着させて、「今日は可愛いよ」と言って送り出すのは彼なりの懺悔の気持ちがあるのかもしれない。彼のような境遇なら、これから辛いだけの人生を歩むならここで麻酔にかかったまま死ぬほうがよっぽどマシだという考えもあったのかもしれない。劣悪な状況におかれ続けてきた人間は、すべての運命に無気力にならざるをえないのだろう。それに抗う気力などきっとどこにも残らないのだろう。

この作品は衝撃のラストっていうもののひとつになるのかな。こういう作品だからこそ、なんかそんな商業主義的な「衝撃のラスト」になんかして欲しくなかったなぁと見終わった直後にはそう感じました。

でも、何日か経つとあれはあれで良かったのかなという気にもなってきました。よく分からないけど、映画を見終わってからも色々と考え続けることになったから。南部は本当に臓器売買される子供たちを救いたいという気持ちはあったんだろな。でもそれと自分の性癖とは最初は結びつけていなかったのかな。彼にとってタイが天国だったのは、簡単に自分の性癖が満たされるからだったのか。

確かにペドファイルの人の中には自分の性癖について悩んでいる人もいるだろう。相手の子供も喜んでいるんだなんて考えてる奴らもいるようだけど、南部はそうではなかったんだろう。だからこそ、鏡の周りにペドファイルで捕まった奴らの記事を貼り付けて自分の顔を見つめていたんだろうね。だからって南部が許されるわけではないと思うけど。彼は過去に子供を買ったという事実を悔やんでいたわけではなく、その性癖そのものに関して苦悩していたのだろうから、彼が最後に取った選択は不幸だけど、そうするしかなかったのかもと思った。連続殺人犯が「早く僕を捕まえてくれ」と思うのと同じような心境だったのかな。もっと言えば、彼のせいで不幸になる子供が増えるなら、彼が死んでくれたほうが良かったとワタクシは思う。自分でも酷い考え方なのかもとは思うけど、そう思わずにいられない。

んー、なんかまとまりのないレビューになってしまいました。というかこれはレビューではないですね。思ったことをただただ書いた感じですね。どうしてこんなふうになってしまうのかは映画を見ていただければ分かると思います。映画のデキとしての賛否は分かれるところだとは思いますが、見る価値はある作品だと思います。
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やさしい嘘と贈り物

2010-05-11 | シネマ や行
GW中に見た作品が結構たまっていますので、アップしていきます。

この作品、製作者側の意図とはかけ離れたコピーになってます。この構成の作品で「私を忘れてしまった夫、もう一度あなたに恋をする」っていうコピーつけたらダメじゃない?一応、それオチなんですけど~?みたいな。いや、そりゃ映画見てればすぐに分かるけどさ、それでもよ。

この痴呆症の、あ、そう、もうどうせバレバレなんで言っちゃいますけどね、この痴呆症の旦那さんマーティンランドーは独りで住んでいて、毎朝決まった時間に起きて歯を磨いて髪をとかして、薬飲んでネクタイしめて勤め先のスーパーに行くっていうことができちゃうんですよね。ここんとこがちょっと都合が良いなぁ。痴呆症ってもっと普段の生活に支障が出るもんじゃない?こんなふうに生活だけはちゃんとできるなら家族もそんなに苦労しないよね。

その彼に近づくご近所の同年代のおばあさんがエレンバースティン。彼女はちょっとホラーなイメージがつきまとって怖いんだけど、今回は素敵な女性だった。いや、女優歴が長いですから、色んな役があるんですけど、やっぱりホラー的なイメージが強いなぁ。あと「レクイエムフォードリーム」の印象が強烈だし。

まぁ、お涙ちょうだい系なんですけど、こんなこと言いながらしっかり泣いちゃいましたよ。娘エリザベスバンクスも息子アダムスコットも良い子だしね。母親が傷つくのを恐れて反対する娘のことも理解できたし、父親の恋を応援する息子の姿も良かった。それにやっぱりどうなっても夫を愛し続ける妻の姿には感動したな。

オチが分かっているだけに、オチの発表をここまで後半にせずにもう少し中盤に持って来て、そこからまた家族の絆的なものを見せてくれると良かったかなぁと思います。オチからがあっと言う間に終わってしまってちょっと残念なんですよね。それまでの家族の苦悩とか、息子や娘の思いなんかももうちょっと深くまで見せて欲しかった。

痴呆症を題材にしたファンタジーと思えば良い話だと思います。実際に痴呆症の患者と接している人からすればもしかしたら笑止なのかも。
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陽気なギャングが地球を回す

2009-10-05 | シネマ や行

ケーブルテレビで放映していたので見てみました。

他人の嘘がわかってしまう男成瀬大沢たかお
コンマ1秒まで正確に時を刻むことのできる体内時計を持つ女雪子鈴木京香
演説をさせたら右に出る者はいない男響野佐藤浩市
若き天才スリ久遠松田翔太
この4人が偶然に出会い、ロマンあふれる犯罪、銀行強盗をやらかす。
あ、ついでに響野の奥さん役で加藤ローサちゃんも出ています。

この作品には原作があるので、原作を読んだ人にとっては映画は面白くないできばえだったようなのですが、ワタクシは原作を読んでいないので、普通に楽しめました。

鈴木京香と大沢たかおが好きなので、公開当時から興味はありました。内容もおもしろそうだったし。始まってみると、この嘘を見抜ける男と正確な体内時計を持つ女の設定よりも佐藤浩市が演じた演説をさせたら右に出る者はいない響野という男が一番面白かったな。佐藤浩市って渋い役も似合うけど、こういうちょっとおちゃらけた役やるときがワタクシは好きです。本人も結構楽しそうだし。成瀬と久遠が現金を詰めている間に人質たちにとうとうと語る響野の「時間の話」とか「夢と現実の話」とかが面白くてついつい聞き入っちゃう。実際にはどっかで聞いたような話をつらつらとつなげて喋ってるだけのようにも思えるんだけど、響野の話術についつい聞きほれてしまいました。そこんところは全然物語の中軸ではないんですが。

この4人がまんまと銀行強盗に成功して逃亡中に、突然現れた別の強盗にあっさり現金を盗まれたからさぁ大変ってわけで物語が進むのですが、この逃亡とかになんだか安っぽいCGが使われていて、物語の前半で「あぁ、残念」と思ったんだけど、こういう軽いタッチのお話だからその辺もわざとなのかなと。そして、この安っぽいCGを入れて、いかにも架空のお話とすることで、日本では簡単にはありえない銃の発砲とか盗難車での逃走とかメキシコへの高飛びなんかを一気に許せる出来事にできるのかもしれないなということで納得することにしました。

ワタクシが好きな鈴木京香と大沢たかおが想いあう仲で最後にはちゃんとくっついてくれちゃうというだけでもう結構満足してしまったので、話の中身はなんか中途半端やけど、ま、いっか~っていう気になっちゃいました。最後の展開はかなり読めちゃったけど、日本にはこういうロマンのある犯罪映画が少ないので、これくらいで及第点あげちゃおうかなと。

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