シネマ日記

超映画オタクによるオタク的になり過ぎないシネマ日記。基本的にネタバレありですのでご注意ください。

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オリエント急行殺人事件

2017-12-18 | シネマ あ行

1974年のシドニールメット版はテレビで大昔に見た記憶があるのですが、内容は完全に忘れていました。超がつくほどの有名な小説なのに、その内容も全然知らず、ケネスブラナー監督・主演作品はわりと好きなものが多いというのと、ペネロペクルスジュディディンチウィレムデフォーその他豪華キャスト目当てで行きました。

ミステリーなので、内容は書かずにおきますが、結論から言うとワタクシはとても楽しむことができました。まずこのメインの事件に入る前の導入部でエルキュールポアロ(ブラナー)が世界的に有名な探偵で、非常に優秀な人だということを端的に示していて、その後のメインの事件に入る部分もとてもスムーズ。

登場人物が多い作品なので、ぼーっとしていると誰が誰だか分からなくなってしまいそうですが、その辺りも少しずつ説明しながら観客に紹介していく手法はさすが。

立ち往生した豪華列車という所謂密室の中で殺人が起こり、一人一人の常客の正体をポアロが暴いていくわけですが、どうしてあんな限られたソースしかない場所でそこまで全部分かるの?と疑問に思う部分もありつつ、ポアロが指し示す事件の真相へ向かっていく疾走感と真相が明らかになったときのカタルシスが心地よい。

ケネスブラナーは古典作品に新しい解釈を加えて映画化するのが得意ですが、今回のポアロはやたらとアグレッシブな気がしました。杖をついている初老の男という感じなのに、被疑者と追いかけっこしてみせたり取り押さえたりするんですから。原作のポアロがどんな人だか知らないので、これが新解釈なのかどうかワタクシははっきりとは知らないのですが。

導入部でポアロは世の中には正義か悪かしかないと言っていましたが、この事件はポアロの人生観を変える出来事として大きな転機になったかもしれません。最後のポアロとハバート夫人ミシェルファイファーの熱演にふと涙が出そうになるとは驚きのミステリーでした。

シドニールメット版ももう一度見たくなりました。

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アトミックブロンド

2017-10-30 | シネマ あ行

予告を初めて見たときから見に行きたいと思っていた作品です。なんせシャーリーズセロンがカッコ良過ぎるんですもの。

壁が崩壊する直前の東西ベルリン。世界中に暗躍するスパイたちのリストを取り返すべくMI6の腕利きスパイローレンブロートン(セロン)がかり出される。現地にいるMI6のデヴィッドパーシヴァルジェームズマカヴォイと協力してというはずなのだが、このパーシヴァルがどうも信用できない男。リストを巡りMI6(イギリス)、KGB(ソ連)、CIA(アメリカ)、DGSE(フランス)が入り乱れる。あ、シュタージ(東ドイツ)のおっちゃんエディマーサンも出てたな。

正直言って途中からもうストーリーを追うのがしんどくなりました。結局みんな何やってんの?みたいな気になってきて。でもいいんです。シャーリーズセロンのプロモーションビデオを見に行っただけですから。

シャーリーズ演じるローレンブロートンが何から何までカッコいい。タバコを吸う姿、ウォッカを飲む姿、フランスのスパイ・デルフィーヌソフィアブテラとのベッドシーン、闘う姿。この闘う姿っていうのがね、たいがい女性が殴られたりするのって見るのが辛いんですけど、シャーリーズって体がでかいし、とにかくこのローレンが強いからっていうのが一番なんだけど、大の男たちとボコボコにやりやってても爽快感あるんです。何十人相手にしたんだろ。かなり肉弾戦を繰り広げてくれます。ここまでのアクションができるのはシャーリーズの他にはアンジェリーナジョリーかミラジョヴォヴィッチくらいかなぁ。

そして、衣装ももちろんカッコいいし、プラチナブロンドもブルネットもなんでも似合ってしまって惚れ惚れ。

彼らスパイが出入りするホテルやバーなどもベルリンのデカダンスを非常にうまく表現しているし、当時の音楽がガンガンの大音量で流れて最高です。サントラも良さそうだな。

ストーリーはいまいち分かりにくいというか、ストーリーテリングはあまり上手じゃないなと思ったけど、ラストシーンで冷戦が終わったあと、ローレンがどうなったのか続編を見せてくれてもいいなぁと思いました。

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怒り

2017-10-16 | シネマ あ行

八王子でとある夫婦が殺害される。現場は血の海で、壁に犯人が血文字で書いた「怒」という文字が残されていた。犯人は整形して逃亡中。

千葉。家出して風俗で働いていた愛子宮崎あおいは父・洋平渡辺謙に見つけられ家に連れ戻される。愛子が家出した間に父の職場である港で働き始めた寡黙な男・田代松山ケンイチと愛子は魅かれあうようになる。

東京。ゲイで遊び人の優馬妻夫木聡は、ある日サウナで直人綾野剛という大人しい男に出会い、なんとなく一緒に暮らすようになるが、そのうちお互いが大切な存在となっていく。

沖縄。母親の都合で沖縄に引っ越してきた泉広瀬すずは友達の辰哉佐久本宝に無人島に連れて行ってもらい、そこで野宿生活をしている田中森山未来と出会う。

3人の素性の知れない男性。ニュース映像で流れる八王子事件の犯人と全員どこか似ている。この3人のうちの誰かが犯人ということか。と、思いながら見ていたんですが、途中から実は時系列がいじってあって、この3人は同一人物で犯人が転々と居場所を変えて逃走していっているということなのか?と勘ぐってしまったのだけど、「この3人のうちの誰かが犯人」ということで合っていたらしい。結局誰も犯人じゃないっていうのもアリなのかなぁと思いながら見ていたのですが、、、

3人全員がそれぞれの土地で知り合う人たちと交流して、その知り合う人たちはやがてそれぞれが八王子の犯人なのではないかと疑いを持ち始める。全員が知り合ったのが事件後で、その前に何をしていたのかはっきりしていないということから疑いが生じるのはしょうがない気もする。ニュースで公開される犯人の人相をうまく3人の役者に似せてあった。

すべての話がよくできているので、まったく飽きることなく見ることはできたのですが、最終的に犯人が分かる部分はちょっと納得がいかなかったな。犯人が誰だったかはここでは書かないでおきますが、なんかそれまで普通に良い人って感じだったのに後半に急変するのがついて行けませんでした。犯罪を犯す人でも一見良い人に思えるっていうのはあるかとは思うのですが、犯人を知っている人物が後半に現れて犯人の性格とかを語り始めるのですが、それと彼が全然一致しなくてどうも唐突感が否めない。始めのほうで警察が犯人のアパートを家宅捜査するシーンがありますが、その犯人像と彼を後半で急に合わせてきたという感じがしてしまいました。

そうそうたるメンバーが出演していますが、その中でも宮崎あおいの演技は群を抜いて上手いですね。彼女にはいつも感心させられますが、今回のちょっと普通とはずれていて(少し障害があるのかな)風俗で働くような女性ってさすがにミスキャストでは?と思っていたら、全然違和感がなくて本当にビックリしました。

そして、広瀬すずちゃんも光っていました。彼女は立ち姿だけですでに妙な風格が伴っていて、テレビサイズの女優ではなくて銀幕サイズの女優だなと感じました。すでに大物感が漂っていてこれからがめちゃくちゃ楽しみです。

誰が犯人かというサスペンスよりもそれぞれの人生のドラマを中心に見たほうが面白いかもしれません。

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AMY エイミー

2017-09-26 | シネマ あ行

2011年に27歳で亡くなった歌手エイミーワインハウスの生涯を描くドキュメンタリー。

小さいころから歌が好きでジャズシンガーになったエイミーは、離婚家庭で母親に育てられ、たまにしか会わない父親の愛情に飢え、過食症になり、酒に溺れ、クズみたいな男に出会い、ドラッグに溺れ、27歳の若さで死んでしまった。

こうして並べて書いてみると、なんと典型的な事柄に溢れていることか。波乱万丈の人生と言われているけど、若くして世界的な人気に押し潰されたスターたち、まさに27クラブの典型のようだ。

彼女はただ歌いたかっただけだった。それもジャズを。劇中でも言われるが、ジャズは大きな会場で歌うのに向いていない。小さな舞台でやるセッションが本来なのだろう。しかし、「Rehab」の世界的ヒットは彼女にそれを許さなかった。

常々思っていることなのだけど、ただ歌いたい、ただ演じたいという人たちがどうしてそれをしたいなら私生活の暴露と引き換えだよ。という悪魔の交換条件を出されなくてはいけないのだろう。日本の芸能界も同じだが、欧米のパパラッチはそれ以上にスターのプライバシーの侵害がひどい。あそこまでされたら暴言を吐きたくもなるし、暴れたくもなるだろうと思う。

たらればを言ってもしょうがないけど、昔からの親友や元マネージャーが最初に彼女をアルコールのリハビリ施設に入れようとしたとき、現マネージャーとあの父親が止めなければ。もしかしたら何かが変わっていたかもしれない。彼女を金ズルとしか見なかった人たちのせいで彼女はどんどん追い詰められていった。

そして、もうひとつのたらればは、やはりブレイクフィールダーというダメ男を好きにならなければ。ですね。こいつがエイミーにドラッグを教え、2人でハイになっていたみたいですね。

まぁでもそれもこれも全部彼女の選んだ道、なんですけどね。もう少し周りに彼女をサポートしてやってブレインになってやれる人がいたら何かが違っていたのかな、という気はしました。

この作品で散々悪者にされたお父さんはこの映画は嘘っぱちだーと言っているらしいのですが、本当のとこはどうなんでしょうねぇ。

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アーロと少年

2017-06-14 | シネマ あ行

公開時、字幕版でやっている劇場を見つけられず、泣く泣くあきらめました。今回WOWOWで字幕版を見ました。

もし隕石が地球にぶつからず恐竜たちが絶滅せずにそのまま進化を続け高度な文明を築いていたら。という壮大な「IF」から始まるこの作品。

大型草食恐竜アパトサウルスの家族の末っ子アーロレイモンドオチョアは体が小さく弱虫でいつも兄や姉にバカにされていた。そんなアーロを強く育てようとお父さんジェフリーライトはサイロの穀物を盗む奴を捕まえろと言う。

サイロに忍び込んでいたのは人間の子どもジャックブライトだったが、アーロは怖くて取り逃がしてしまう。父さんは一緒に捕まえに行こうとアーロを連れ出すがその帰りに嵐に遭い、お父さんは濁流に飲み込まれて死んでしまう。

別の日少年を見かけたアーロは追いかけていく途中、川に落ちて流されてしまう。そこで助けてくれたのはあの人間の少年だった。

この人間の少年がまさしく「犬」そのもの。恐竜が人間のように進化を遂げている世界では人間はまだ犬のような存在だということらしい。のちにアーロが「スポット」と名付けるこの少年とアーロの交流がまさに人間と犬のように語られていくのだが、これはなんか人間様を犬のように描きやがってと怒る人も出そうだなぁと思いながら見ていました。「スポット」っていうのもまた超犬っぽい。

ワタクシは別にそんな気持ちはなくただただアーロとスポットが可愛いかった。弱ったアーロを助けようとお肉とか持ってきてあげるスポット。でもアーロは草食恐竜だからお肉食べられないんだよねぇ。最後に木の実を持ってきてくれて2人で食べるんだけど、一度腐った木の実を食べてしまって2人ともゴキゲンにトリップしちゃうシーンはかなり大人向けな笑い。

広大な大地で出会うカウボーイのような肉食恐竜たちの描き方がいかにもアメリカって感じで好きだったな。そのカウボーイ家族がブッチサムエリオット、ラムジーアンナパキン、ナッシュA.J.バックリーってまたいかにもな名前で。ブッチを演じるのがサムエリオットという通を唸らせるキャスティング。

いつスポットが喋るんだろう?と思って見ていたのですが、完全に実際とは違う進化を遂げた世界らしく、スポットは人間の言葉を最後まで話しませんでした。それでも、きちんとアーロとスポットの会話が分かるように描けているところがさすがピクサーだなぁと思います。

そして、一作品ごとに進化していくピクサーの映像の美しさがまたまたすごいです。大自然の情景がまるで「これって実写?」と目をこすりたくなる出来栄えです。

ピクサー作品の中では子供向け感が一番強いかなと思います。笑いあり涙ありでいつもピクサーっぽい作品に仕上がっていてワタクシは大好きです。

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オデッセイ

2017-02-16 | シネマ あ行

公開当時見に行こうかどうか迷っていた作品です。リドリースコット監督は好きなんだけど、彼のここ数作とは相性が良くなかったので、少し敬遠してしまいました。wowowで放映があったので見たのですが、見に行っても良かったなぁと思いました。

火星探索途中に嵐に遭い、ケガをして倒れてしまったマークワトニーマットデイモン、船長のメリッサルイスジェシカチャステインはなんとか助けようとするが、最終的に彼は死んだと判断し、隊員たちは宇宙ステーションに向かう。しかしワトニーは生きていた。他の隊員が去ってしまってから目覚めたワトニーは1人火星に取り残されたことを知る。

ワトニーは植物学者なので、残された食糧を計算し、じゃがいもを種として栽培することにする。不毛の地火星でどのように植物を栽培してサバイヴするか。ワトニーが植物学者というのがうまい設定だ。ワトニーが自分の置かれた状況をただ悲観するのではなく、どこか開き直ったような感じがするのが面白い。マットデイモンのどこか子供っぽい風貌もワトニーのキャラクターにとても合っていた。この作品の魅力は色々あるけど、やっぱりこのワトニーの性格や技量によるところがとても大きいと思うので、これだけの作品を背負えるマットデイモンを選んだことは大正解だと思います。

一方NASAもワトニーが火星で1人生き残っていることを突き止め、なんとか彼を助けようとする。地上の面子もジェフダニエルズキウェテルイジョフォークリステンウィグショーンビーンと結構豪華。「アポロ13」などでもあったけど、現地に存在する同じ道具や設備を用意して、まったく別の物を作り出す方法を考えたりするシーンはやはり見ていて楽しい。

こういう作品はいつも登場人物たちが発している技術的なセリフがなんのことを言っているのかさっぱり分からないくて困るんだけど、それでも宇宙ものの傑作はそれが理由でつまらなくはなったりしない。それこそ技術的なことを知っている人が見れば、そんなわけねーみたいなシーンが沢山あるのかもしれないな。分からないほうがある意味幸せか。

ワトニーとクルーたちの関係性があまり見えないのでちょっと感情移入しにくいのだけど、初めてワトニーが生きていることを知らされ、彼との通信が許されるシーンでもしめっぽいことは言わずユーモアに溢れた皮肉を言えるところがまたニクい。隊長が残していった音楽の趣味とかね。ワタクシはディスコ音楽好きだけど。

先にも書きましたが「アポロ13」と「ゼログラヴィティー」と足して2で割ったような感じかな。「プロメテウス」「悪の法則」「エクソダス」とリドリーと合わない作品が続いていたので、これは面白くてホッとしました。

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アイインザスカイ~世界一安全な戦場

2017-01-19 | シネマ あ行

ロンドンでテロ組織掃討作戦の指揮を執るキャサリンパウエル大佐ヘレンミレン。大佐の上司フランクベンソン中将アランリックマンはイギリス政府の人たちに作戦の承認を取る役目をしている。
アメリカ・ネヴァダ州にはドローンの操縦士・スティーブワッツアーロンポールとキャリーガーションフィービーフォックス
アメリカ・ハワイ州には顔認証をするための兵士。
この作戦の現地であるナイロビには現地スタッフジャマファラバーカッドアブディ他数人がいて、鳥や虫の形の超小型ドローンを操縦。

ナイロビのとある家にイギリス軍が追っているテロ組織が集まっていた。その中にはイギリスやアメリカからテロ組織に参加したメンバーもいる。ずっとこの組織を追ってきたパウエル大佐だが、ここまで敵に近づけたのは初めてのことだった。この千載一遇のチャンス、しかも組織は今まさに自爆テロの準備を進め、アメリカからやってきた若者に自爆ベストを着せている。

ドローンの映像を見ながら、アメリカ軍兵士のキャリーガーションは何かを発見する。一人の現地の少女がこの組織が集まっている家のすぐ外でパンを売っているのだ。すぐにパンを全部買い占めて少女を家に帰してしまおうという作戦が取られるが現地の兵士にスタッフが見とがめられてあえなく失敗。テロ組織が自爆テロに向かう時間が刻々と迫る。たった1人の少女を救い、自爆テロを起こすのをみすみす見逃すのか、それとも多少の巻き添えは仕方がないとあきらめるのか。あ~アメリカのテレビシリーズ「NCIS:LA」あたりなら、最後の最後に少女は助けられるんだろうけど、この作品ではそう簡単にはいかない。

はっきり言ってストーリーとしてはテロ組織を爆撃するのに邪魔な一般人少女をどうするか?というそれだけのお話。たったこのワンイシューで、ここまで緊迫感を持って物語を引っ張れるってすごいなぁと感心してしまいました。ロンドンの基地、政府の会議室、ネヴァダ、ハワイ、ナイロビと通信ですべて繋がっていて、そこにいるすべての人がただ一点に集中している。それぞれの思惑や信念、立場などが入り乱れて一秒たりとも画面から目が離せない構造になっている。一緒にいないけど、ヘレンミレン、アランリックマン、アーロンポールなど役者陣の演技合戦とも言える。

そこに持ってきて、この可憐な少女の家庭の環境もさりげなく挿入してきているのが、非常にうまい。それはこの少女に感情移入させて観客の同情を買おうというものではなく、この子の父親が自由な考えを持っていること、少女はその自由な考えに基づいて幸せに暮らしていること、でもそれがこの国の体制に反していることを端的に説明してみせているのが見事。

こんな決断誰だって下したくない。どっちに転んだってベストな結果というものはない。所謂キャッチ22的な状況とも言える。政府の人間は決断をたらい回しにし、軍の人間は爆撃できるように被害予想に手を加える。何が正しいのか誰にも分からない。

結論をばらしてしまいますが、最終的に大けがを追った少女を病院に運んでくれたのは、現地の組織だったわけで、結局は少女は命を落としてしまい、この自由な考えを持った父親も復讐に燃えるあまり、反米、英組織に入ってしまったりしないだろうかと暗澹たる気持ちで映画館を出ることになった。

オマケ亡くなったアランリックマンが大画面に映ったときなんだかドキドキしてしまいました。もっとずっと彼の演技を見ていたかったな。

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栄光のランナー~1936ベルリン

2016-09-26 | シネマ あ行

正直なところ「コロニア」を見に行くついでに見た作品だったのですが、なかなかに良い作品でした。

1936年ベルリン五輪。ユダヤ人を始めとする人種差別政策を行っているナチスドイツが先導する五輪に参加すべきかどうかアメリカは揺れていた。そんな中黒人の陸上短距離選手のジェシーオーエンスステファンジェームズはラリースナイダーコーチジェイソンサダイキスと二人三脚でトレーニングに励んでいた。

純粋にスポーツものとしても楽しむことができるし、政治的な駆け引きや社会的な問題提起としても見ることのできる作品でした。

ユダヤ人差別を行っているナチスの大会に選手を出すべきでないと主張するアマチュアスポーツ委員会のエミリアマホニーウィリアムハートの言い分も分かるし、それで選手の努力を無駄にしてしまっていいのかと考えるアベリーブランテージ委員長ジェレミーアイアンズの気持ちも分かる。結局、ブランテージはナチスから賄賂的なもの(本業の建築の仕事を請け負った)を受け取って参加を押すんだけど、描き方のせいかもしれないけど彼の人柄的にそんなに悪い人には思えなかったな。

ナチスのユダヤ人政策に反対するアメリカ国内でも黒人差別の嵐は吹き荒れていてオーエンスでも大学では数多くの嫌がらせを受けている。その辺がなんとも皮肉なことだなぁと思わせる。

アメリカの短距離走選手団の中にはユダヤ人が2人いて、彼らはドイツまで行くことはできたのに競技の直前に選手から外すようにドイツ側から要請される。ドイツから賄賂を受け取っていたブランテージ委員長は結局ここで強く出ることはできなかった。アメリカだけがユダヤ人選手を連れてきていたのかどうかはっきりと知らないのですが、国は参加しても個人的にボイコットしたユダヤ人選手はいたようですね。しかし、現地まで行ってオリンピックに出ることができなかった彼らの気持ちを考えるといたたまれません。

オーエンスとコーチのスポーツドラマとしての側面は、オーエンスがアメリカで有名になってちやほやされて地元に残してきた恋人ルースジャニースバンタン(彼女との間に子供もいる)を裏切ってセクシー金持ち美女によろめいてしまったことまで描かれていて、ちょっとびっくりしました。最終的にはルースに戻っていくのだけどね。オーエンスのコーチを演じていたジェイソンサダイキスはコメディアンとしてアメリカで有名な人ですが、日本では一般的にはそんなに有名ではないですね。映画もコメディタッチのものがやはり多かったのですが、今回のようなシリアスものでも存在感があってすごくいい役者さんだなぁと感じました。

ナチスの記録映画「オリンピア」を撮っていたレニリーフェンシュタールカリスファンハウテンがゲッペルス宣伝相バーナビーメッチュラートの命令に背いてオーエンスの記録を撮り続けたシーンがあり、ナチスのプロパガンダ映画を撮り続けた親ナチとして有名な彼女を少し弁護したい意図があったのかと感じました。このねー、ゲッペルスを演じていたバーナービーメッチュラートがもうなんかものすごいネトーーーーっとした感じがゲッペルスのイメージにぴったりで怖くてぞくぞくしました。他にもドイツ人の中でも国の状態を憂いている選手も登場しました。公平にそういう部分も描きたかったのかな。

オーエンスが金メダルをとってからブランテージ委員長がヒトラーと会わせようとして黒人だからとそでにされるシーンがありますが、ヒトラーなんかに祝福されたとして嬉しかったでしょうか?逆に握手しているツーショット写真なんか残らないで良かったなと思いました。

政治とスポーツは引き離して考えるべきとは思うのですが、エミリアマホニーの考えも分からなくはないなぁと思ってしまって複雑な気持ちになりました。でもやはり国が五輪をプロパガンダに利用するというのは阻止されるべきだと思います。次の東京五輪について堂々と「国威発揚」とか言っちゃってる政治家がいたりして頭が痛いです。最近まで知らなかったのですが、国別のメダル獲得数を発表することも五輪憲章の精神には反しているそうですね。これも日本の政治家が堂々と次は金メダル何個が目標ですとか言っちゃってますからねぇ。開催国としてきちんと五輪憲章を勉強しないといけないのではないかな。。。

原題は「Race」で短距離「レース」と「人種」という意味の「Race」をかけているのかな。邦題はいつもなぁんか安っぽくなる場合が多いのですよね。

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イニシエーションラブ

2016-09-16 | シネマ あ行

ケーブルテレビで見ました。公開当時面白いと言われていましたね。というか、原作がとても面白いと言われていました。

1980年代後半、合コンで出会ったマユ前田敦子とたっくんの恋愛物語。。。。

だったはずが、、、

見ていない人にはいったいぜんたいなんのことだか分からないこの「だったはずが、、、」です。

めちゃネタバレしますのでこれから見る方は読まないほうがいいと思います。この「ネタ」がすべて。という作品なので。

ワタクシはいつものごとく、すっかり騙されてしまいました。ミステリー系では必ず騙されるタイプですし、見破ることよりも騙されることを楽しむタイプです。(と言ってトリックを見破れない言い訳をしておきます)

物語はA面から始まり、恋愛に縁のないブサイクな男たっくんが人数合わせで呼ばれた合コンで純真そうな女の子マユと出会い付き合い始め、マユに言われてダイエットを決意するところまで。

B面は(痩せてカッコ良くなったと観客には思わせている)カッコいいたっくんが東京に赴任することになり、マユとは遠恋となり東京で美弥子木村文乃と二股かけるようになるまで。

というふうに見せていき、同一人物だと思っていたたっくんが実は別の人間でマユとの交際期間も微妙に重なっているということが最後の5分で明かされます。

後から考えると「A面」と「B面」の時系列のトリックについていくつかのシーンできちんと伏線というかヒントがちりばめられていたのですね。A面たっくんとのデートを断ったマユ、ルビーの指輪をしていたマユ、それを失くしたマユ、マユの日焼けのわけ、マユの家にあった本、「男女7人夏物語」「秋物語」が始まった時期。そういうことに鋭く気付く方には簡単なトリックだったのかもしれませんね。

映画的にはA面のたっくん(鈴木夕樹)森田甘路がB面のたっくん(鈴木辰也)松田翔太に比べてあまりにもブサイクなため、いくら痩せたからってあの子が松田翔太になるわけがない、と2人が別人だと見破った人もいたかもしれません。ワタクシは森田甘路という役者を非常にうまく選んだなと思っていました。確かに彼はブサイクだけど、痩せたら松田翔太みたいになる素質の顔をしていると思ったからです。松田翔太って典型的なハンサム顔ではないと思うし。

1人だと思っていたマユの恋愛相手の「たっくん」が別の人物だったことで「なぁんだマユって二股してたんだ」っていう感想に持って行かれそうですが、B面のたっくん(辰也)のマユの扱いは中絶させた上に暴力を振るい東京では別の女性と浮気というひどいもんだったし、東京に慣れてからはマユのことを小馬鹿にしていた感じだったし、マユがA面のたっくんにいってしまっても仕方なかったような気がした。観客はB面のたっくんはA面のたっくんの未来像と思わされているわけだから、あんなに非モテ系の男がダイエットしてカッコ良くなってその態度かよって思わせるためのB面たっくんの非道さだったのかな。

あー、見ていない方にはA面だB面だってワケ分からないですね。。。ワタクシの文章力がないばっかりに、うまくこのお話のトリックを説明できなくてすみません。

ワタクシは見事に騙されてそれはそれで面白かったんですが、ただこのお話が観客や読者を騙すためだけに書かれたものだということがちょっともったいないなと感じました。この物語に登場する人たちは勝手にそれぞれの日常を送っているだけで、別に誰も誰かに騙されたりとかはしていない。(二股や浮気以外は)登場人物の中に読み手と混じって騙されている人物という視点がもうひとつあれば、もっと面白かったような気がするのですが。どうやってそれやるねん?と言われてしまうとワタクシの頭では分からないのですが。

物語の舞台が80年代後半なので、懐かしいカルチャーがばかばか登場してその時代を知っている者としては楽しいです。エンドクレジットで「80年代図鑑」があったのも映画的な面白さとしては良かったと思います。

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遺体~明日への十日間

2016-09-13 | シネマ あ行

ずっとハードディスクの中に入っていたのですが、見る勇気が出ず延ばし延ばしにしていた作品です。

東日本大震災のあと、遺体安置所となった中学校でボランティアとして活動することになった元葬儀関係の相葉常夫西田敏行を中心にあの日何があったのかを描く。

ワタクシは被災していないので、正直この作品が現実にどれほど近いのかということは分かりません。実際に被災した方の中にはあんなもんじゃないとおっしゃる方も多いのかも。

ただ単純にこの作品を見た感想だけを書かせてもらうと本当に胸が痛く涙が止まりませんでした。日本映画でここまで遺体安置所というところを描いた作品はめずらしいと思うし、どうしても有名な役者がそろっているだけにきれい過ぎる感は否めませんが、それでもあの時人々がどんなふうに行動したのかということが描かれていたと思います。

地震発生直後何の情報もなく隣町が津波でなくなってしまったことなどにわかに信じられない人々。続々と運ばれてくる死体。消防関係者ですらどのように扱って良いか分からない。医者ですら僧侶ですらただただボー然と立ち尽くしてしまう現実。市役所の若い職員・及川勝地涼が心を閉ざしてしまうことも仕方ないと思える。

誰もが何から手をつけたら良いのか分からない状況の中、元葬儀関係の仕事をしていたという相葉は運ばれてくる死体を「ご遺体」として扱うことをみなに話す。まっすぐ寝かせるために腕を折らなくても少しずつ筋肉をほぐしてやれば腕を下ろしてやることができる。名前が分かった人の遺体には名前で話しかけてあげる。泥だらけの床をできるだけこまめに掃除してやる。警察や医療関係には国から食べ物の支給があるが、ボランティアの相葉にはない。そんな中相葉は懸命に一人一人のご遺体に接していた。

相葉の影響を受け、最初はただ立ち尽くしていた役所の職員・照井志田未来は率先して床掃除を始め、遺体に話しかけるようにもなり、自らみなを弔うための祭壇を作ろうと提案するに至る。あの状況下にあっても人は人に影響し合い、自ら変わって行くことができる。その結果最終的に心を閉ざしていた及川もみなの作業を率先してするようになっていく。

あの渦中にいた人たちは実際の被害がどのようなものかという全体像がまったく分からず、行政に3000ものお棺の手配を依頼された葬儀業者緒方直人が絶句するシーンが印象的でした。その3000にしても行政と2つの葬儀業者が手分けしての一つの業者あたり3000だったのですから。

医師の下泉佐藤浩市は支給されるおにぎりを相葉に譲り、相葉はそれを食べずに妻のために持って帰ると言う。おそらく、こういう状況下では食べ物の奪い合いなども起こるだろうし、それが起こったとしても仕方ないと思える中、譲り合いをする人たちがいるのもまた真実だ。

次々に親族を探しに来る遺族の慰めに少しでもなろうと努力する人たちがいる。自らも被災しながらそれだけ人のためになろうとできる人たち。英雄的な行為とはそういった些細な報道されないところにあるのかもしれない。

現実はあんなもんじゃない、実際の何千、何万分の一も表現できていないという方もいるだろうけど、それでもやはり結構衝撃的な映像もあるので、単純にたくさんの人に見てほしいとは言えません。被災していなくても見るのが辛いほどの作品です。見るか見ないかはそれぞれの判断に任せられるところだと思います。

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X-MEN~アポカリプス

2016-08-23 | シネマ あ行

今回、前2作を復習せずに行ったのは失敗だったなぁ。「ファーストジェネレーション」に登場したCIAのモイラローズバーンの存在をすっかり忘れてた。あと、サイクロプスタイシェリダンのお兄ちゃんアレックスルーカスティルの存在も。出てきてプロフェッサーXジェームズマカヴォイとのやりとりを見るうちになんとなぁくぼんやり思いだしたけど、ちゃんと見直してから行けば良かったな。それにしてもプロフェッサーXともあろう人がモイラに会ったら超デレデレしてたね。意外な一面を見た気がしました。

前作をはっきり覚えていなくても十分に楽しむことはできました。基本的なキャラクターの存在は頭に入っているし、後の三部作に登場するメンバーの若いときというのが見られる楽しいシリーズです。とか言いながら、ワタクシ最後の最後までアポカリプスオスカーアイザックに拾われた女の子アレクサンドラシップが将来ハルベリーが演じるストームになるんだっていうのが分かりませんでした。本当に最後らへんまで来て、あ、この子ストームかぁ!って思ったんですが、おそらくほとんどのみなさんが最初から分かっていたんでしょう。

それにしてもいつもマグニートーマイケルファスベンダーは切ない運命だよね…今回もせっかくポーランドでひっそりと暮らしていたのに、勝手に人間から追い詰められて。娘も奥さんも殺されちゃって。娘ちゃんは動物と心を通わせる素敵な能力を持っていたのにね。

今回もクイックシルバーエヴァンピーターズがユーリズミックスの「Sweet Dreams(Are Made of This)」に乗せてマッハのスピードで余裕でみんなを助けてくれます。助ける過程でまたまた色々と面白いことをしてくれていました。彼にこの見せ場を作ってくれるというのがブライアンシンガー監督の粋な計らい。そして、ミスティークジェニファーローレンスを連れてマッハで移動するときに彼がきちんとミスティークの首を支えてあげているのを見逃しませんでしたよ。

爪のあの人ヒュージャックマンもおいしいところでゲスト出演してくれていましたね。ワタクシは特にウルバリンファンではないのですが、ウルバリンはおそらく一番人気のキャラなので嬉しい人も多かったのではないでしょうか。でも、あそこでジーンソフィーターナーとサイクロプスと初対面を済ましちゃって良かったのかな?後の三部作で彼らが初めて会うっていうシーンはなかったっけなぁ。もうワタクシはすっかり忘れちゃいましたけど…

ビーストは演じているニコラスホルトも含めて好きなキャラなので何か書いておきたいんですが、今回特に特筆すべき点はなかったです。残念。

プロフェッサーXってあれでハゲたんですねー。これでハゲの謎が解けた。原作を知らないワタクシにとって彼がいつどういう状況でハゲるの?ってずっと疑問でした。

X-MENの特徴として強大な敵にみんながそれぞれの能力を最大限に生かして戦うというのがあると思うんだけど、今回のアポカリプスは史上最強の敵ってことだったみたいだけど、どういう能力を持っていてどう強いのかいまいち分からんかったなぁ。なんか昔の日本の大魔神みたいな風貌でちょっと笑えました。

マーベルの作品を見る時はやはりスタンリーを探すのですが、今回は奥さんのジョアンリーも一緒に登場してましたね。最後のクレジット見て、あ、あれ奥さんやったんやーって思いました。他の作品でも奥さんも出てたりするのかな。

デッドプールも言ってたけど、もう時間軸とかつながりとかはっきり言って分からなくなってしまっているのですが、ワタクシはそのへん、ま、いっか、で楽しんで見ることはできました。

この作品のDVDが出たらまた「X-MEN」前3部作祭りをしようと思います。

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アメリカンドリーマー~理想の代償

2016-05-25 | シネマ あ行

1981年のニューヨーク。石油業界で勢力を伸ばそうとするアベルオスカーアイザックとアナジェシカチャスティンの夫婦。事業に必要な広大な土地を購入し、さぁこれからという時に何者かに輸送トラックを襲われ石油を略奪されるという事件が頻発し始める。同じころローレンス検事デヴィッドオイェロウォから不正の嫌疑をかけられ取り調べを受け始める。

アベルに災難が同時に降りかかるのだが、彼は何事も冷静に平和的に解決しようと努める。彼の信念として自分たちが銃で襲われても運転手に銃は持たせないし、自宅の周辺を銃を持った何者かがうろついていても自宅には銃は置かない。検事の嫌疑もきちんと説明すれば晴れるものと考えている。

アベルはハリウッド映画の主人公には珍しく本当に非暴力を貫こうとしている人だった。だだ経営者として成功を手にしたいだけで無用な争いはしたくないと考えている。ワタクシはアベルの気質は素晴らしいと思いました。ただじゃあ、実際問題どうするの?ってことになるといつ銃で襲われるかも分からないで仕事をしている運転手たちにとってはたまらないってことになる。アベルは問題解決のためにライバル会社の経営者を集めて「汚いことはするな」と宣言するが、そんな言葉だけで聞いてくれるような甘い連中ではなかった。

会計のほうも清廉潔白にやってるのかと思いきや奥さんが裏でこそこそしていたみたいだしなぁ。奥さんはやはりギャングの娘だけあって、そういう裏の事情に通じていそうでした。そのお金で結局助けられることになったっていうのはアベルが徐々にずぶずぶと汚い世界に入っていってしまうことを象徴していたのかな。ローレンス検事も最後には経済界で力もこれから持っていきそうなアベルにすり寄ってきていたしな。

従業員エリスガベルが銃で自殺したシーンでは、遺体を目の前にして冷静にその銃弾で穴が開いてしまったオイルタンクにハンカチを詰めていたアベルが、実は腹の底では冷血なところがあるということを表していた。同じ従業員が襲われてケガをしたときには手厚く面倒みていたのにね。

オスカーアイザックが地味ながらもなかなかに渋い良い演技をしていました。ほんっとーに地味ですけどね。そしてジェシカチャスティンもいつもながら良かったです。ギャングの娘でお金持ちで気の強い奥さん。(車で轢いてしまった鹿を殺すのを躊躇している夫の後ろから平気な顔してバーンて撃っちゃうような人)でも彼女なりに夫を立てようとしている側面も見られました。始めはちょっと雰囲気が違うなぁ、ミスキャスト?と思ったのですが、見ているうちにどんどんハマってきて彼女の実力を見せられた感じでした。

オスカーアイザックの演技が地味と書きましたが、それはこの作品全体が地味なためです。こんなにエンターテイメント性がないのに、スターと呼ばれる人たちが出演してきちんとした作品になってしまうハリウッドでやはりすごいなぁと思います。もちろんメインストリームにはブロックバスターものばかりでイヤになるという意見もあるとは思うのですが。

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アイヒマンショー~歴史を映した男たち

2016-04-27 | シネマ あ行

ナチスについての作品はかなりの数見てきましたが、アドルフアイヒマンの裁判をテレビ中継した男たちの話という新しい切り口ということで興味があって見に行きました。

テレビプロデューサーのミルトンフルックマンマーティンフリーマンはアイヒマンの裁判をテレビ中継する許可を得るためにイスラエル政府と交渉。裁判官3人の承認を得られれば認めると言われる。ミルトンはニューヨークから撮影監督のレオフルヴィッツアンソニーラパリアを呼び寄せ、中継の撮影を依頼する。

裁判官たちはテレビカメラが見えると裁判の邪魔になり許可できないと言ってきたので、ミルトンたちは壁の向こうに小部屋を作りカメラをそこに隠して撮影することにして、許可をもらう。

いよいよアイヒマンの裁判が始まり、100人以上のユダヤ人被害者たちが衝撃の証言を始める。

まずミルトンたちが撮影の許可を得るまでの過程の描かれ方が少し淡泊過ぎて分かりづらかった気がします。政府との交渉は実際のシーンはなく、ミルトンのセリフで語られるだけだし、カメラを隠す作業もあとから壁を作り直したシーンが出てくるけど、もう少し時間を割いて大がかりに見せてくれたほうが、実際に撮影許可が下りたときの彼らの感動が伝わってきたんじゃないかなと思う。

監督のレオはアメリカで高い評価を得ていたのに、ハリウッドの赤狩りに遭い干されていたらしいことは、会話の中で何度か語られる。彼は優れたドキュメンタリーをたくさん撮っていて「悪」とされるものへの考えも深いらしく、アイヒマンのことをモンスターではなく思考が欠如した普通の人は誰でも同じ状況下に置かれれば彼と同じことをしてしまうものだ。と捉えている。これはいまでこそある程度浸透した考え方だけど、数年前に公開された「ハンナアーレント」で語られた「悪の凡庸さ」にもあったように、当時は驚きを持って迎えられた考え方だった。それをハンナアーレントが発表する前にレオが話していたのには少し驚いた。

しかし、ホロコーストのサバイバーである撮影助手の人は「俺はどんな状況にいてもあんなモンスターのようにはならない」と言う。あの狂った収容所で被害者としてそこにいた人にとって、アイヒマン以下ナチスはただのモンスターにしか見えず自分だってあんなふうになるよ、なんて絶対に思えないのは当然だっただろう。彼は裁判中に収容所の映像を見て失神してしまった。

サバイバーたちの証言やアイヒマンに見せられる収容所のむごたらしい映像の数々は、あの時世界に初めて発信されたものであり、それがテレビ中継されたということは世界中のリビングに衝撃を与えたことだっただろう。もし、この作品を見て収容所の映像を初めて見たという人がいたら、その時世界中のリビングで人々が受けた衝撃を同じように感じるのかもしれない。

レオは徹底的にアイヒマンの人間的な部分を映しだそうと躍起になる。そのことによってミルトンと対立したりもするが、彼は自分の信念を貫き、最後にはアイヒマンのほんの少しの表情の変化を捉えてみせる。

全体的に緊迫感はあるが、その雰囲気が一本調子になってしまったかなという印象でした。題材と役者の演技は良かったので少し残念だったかも。

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エリジウム

2016-02-23 | シネマ あ行

ほとんどニールブロムカンプ監督の前作「第9地区」と似たような映像の雰囲気だなぁと思いつつ、「第9地区」は好きだったのでこちらもケーブルテレビで見てみることにしました。

2154年荒廃した地球。富裕層は宇宙空間にエリジウムという楽園を作って生活し、地球にいる貧困層を支配していた。元強盗だがいまは工場で働いているマックスマットデイモンは工場の作業中に大量の放射線を浴びてしまう。余命数日となったマックスはエリジウムにある治療カプセルに入るべく偽のIDを手に入れエリジウムに侵入しようとするが、エリジウムの指導者デラコート高官ジョディフォスターは地球にいる傭兵クルーガーシャールトコプリーにマックスを消すよう命じる。

放射線を大量に浴びたマックスは偽IDを頼みに行ったスパイダーワグナーモーラのところで半分機械の体みたいに改造される。マックスを改造したスパイダーはマックスにエリジウムで治療を受けさせるだけではなく、エリジウムを制御するコンピュータの記録を書き換えさせることで富裕層と貧困層に分かれた世界をひっくり返そうとしていた。

富裕層vs貧困層だとか、その世界に革命を起こすだとかっていうのは特に目新しい設定でもなく、正直「またか」という感じは否めない。ただいつも好青年的な役が多いマットデイモンがアウトロー的な役で、死にかけているっていうのがなかなか面白いなぁと思った。ほんとにあんな機械人間みたいになっちゃって頭もスキンヘッドでいつものイメージとはがらっと違う彼を見られて良かった。

ジョディフォスターをあっけなく殺しちゃって、シャールトコプリー扮するクルーガーの執拗で異常にねちっこいマックスへの攻撃を延々見せるというのが多分ブロムカンプ監督の面白さなんだろうな。

物語は目新しいところはありませんが、全体的な世界観とか好みに合う方にはオススメします。ただSF映画のわりに血なまぐさいシーンも結構あるのでそういうのが苦手な方は気を付けてください。

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アンノウン

2015-12-15 | シネマ あ行

アップしていなかった間にケーブルテレビで見た作品を挙げたいと思います。ちょっとショートバージョンのレビューで。

学会のために行ったドイツのベルリンで交通事故に遭ったマーティンハリス博士リーアムニースンが意識を取り戻すと妻ジャニュアリージョーンズが自分のことを知らないと言い、妻の横には自分がマーティンハリス博士だと名乗る見知らぬ男エイダンクインが。自分が本物のマーティンハリスだと証明するために奔走することに。

誰かの陰謀?と思いはするんだけど、妻まで彼のことを知らないって言ってるってもしかしてこれSF的な映画?と思っていると、終盤に種明かしがあって、あ~そういうことか!と納得。どうりでアメリカ人のくせにミッションの車もスイスイ運転できたはずだ。でもさぁ、そんな簡単にあの組織から逃げられるもんなの?しかもなんかあの組織が悪者みたいな扱いで自分は正義っぽくなってたけど、自分もこれまであの組織の中で暗殺とかしてきてたんだよねー。なのに最後は都合良く逃げちゃうってどうなん?身元証明を手伝ってくれた美女ジーナダイアンクルーガーまで連れ立って。

と、ちょっと最後の展開には納得はいかなかったんですけど、確かにあの筋書ならこういうオチにするしかないし仕方ないかなと思います。主人公が本当の自分を思い出すまでの展開は面白かったし、リーアムニースンとダイアンクルーガーのアクションも良かったです。

リーアムニースンって演技派だったのに、50代半ばを過ぎていきなりアクションに開眼したという珍しいパターンの人ですよね。だからアクションをしていても演技もちゃんとできるから安心して見ていられます。

見ている間十分楽しめたので良いのですが、なんかでもこういう自分のアイデンティティーを忘れた系の作品がやたらと増えましたね。

ブルーノガンツフランクランジェラが脇役で登場していてなかなかに豪華。

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