シネマ日記

超映画オタクによるオタク的になり過ぎないシネマ日記。基本的にネタバレありですのでご注意ください。

マネーボール

2011-11-30 | シネマ ま行

貧乏球団のオークランドアスレッチクスをセイバーメトリクスというデータ分析を使って立ち直らせたゼネラルマネージャー、ビリービーンブラッドピットのお話。

これねー、野球を知らないでただブラピが見たいからっていう人が見たらワケ分からないんじゃないかなーと思いました。ワタクシは野球が好きですので、ビリービーンと彼がインディアンズから引き抜いたデータ分析係のピーターブラントジョナヒルの会話を理解することができたし、この理論を使って集めたチームがきちんとチームとして機能し、なんと20連勝してしまうところなんかは非常に楽しかった。

これ、野球界の裏側を描いた作品ですから、スポーツ映画の中では非常に地味かも。だから、スポーツ映画独特のダイナミックさを期待した人はいまいちだったかもしれませんね。

本当の話ですから、あの年のオークランドの活躍を知っている人には何も目新しいことはないんでしょうけど、20連勝目の試合が11対0から11対11に追いつかれて、最後に味方のホームランで12対11で勝つなんて、これこそ本当の話じゃなかったら、「おいおい」と突っ込みたくなるような試合展開ですよね。でも、本当なんだから仕方ない。ワタクシはこの試合展開を知らなかったので本当にドキドキしながら見てしまいました。

このセイバーメトリクスっていうのが、野球を好きな人間にとっては非常に興味深いです。長打力より出塁率を重視し、アウトを相手に献上することになるバントや盗塁は一切しない。守備力はほとんど重視しない。とにかく、塁をひとつずつ取って得点することを重視するっていう感じでしょうか。あ、これはワタクシがちゃんとセイバーメトリクスを勉強して言ってるんではなくて、この映画から得ただいたいの感じです。

メジャーリーグはほとんど見ないけど、日本の野球界を知っているとビリーたちが長年野球界にいるスカウトたちに疎ましがられたことは容易に想像がつきますね。やっぱり重鎮たちは長年の勘とかってやつに頼りたいもんではないでしょうか。自分たちはそれでずっとメシを食ってきたんだっていう自負もあるでしょうし。スカウトもそうですし、監督フィリップシーモアホフマンとも対立していましたね。

それでも、データ分析が正しければそれで絶対に勝てるほどスポーツは甘くない。というか、その時の運とかもそうだし、色んな要素が作用するのがスポーツの面白いところですよね。だからこそ、オークランドは優勝できなかった。でも、同じ理論を実践したボストンレッドソックスのワールドシリーズの優勝には、メジャーリーグを普段は見ていないワタクシにとっても心躍るものだったという記憶がある。

ビリーがチームのために選手を次々とトレードしていくシーンについては、賛否あるかなぁと思いました。選手をまるで物のように扱っていると感じる人にとっては不快だったかも。ワタクシはチームが勝つために必要な選手を取ったり、必要でなくなった選手を放出したりするというのはプロのリーグとしては当たり前だと思うほうなので、あまり不快には感じなかった。ビリー自身もメジャーリーガーで、そういう苦い経験をしているという背景もあるし、選手を切る通知をピーターにさせるとき、「ストレートに言え。彼らはメジャーリーガーなんだぞ」と言うシーンがありますが、あそこでメジャーリーグというものの厳しさと選手にもそれだけの気概があるし、それを尊重しろと教えているような気がしました。

ビリービーンはいまでもオークランドのゼネラルマネージャーとして奮闘中と映画の最後に出ていた。近年は低迷しているみたいだけど、映画を見てちょっと親近感が湧いたのでがんばってほしいところ。

オマケビリービーンがトレードの交渉にインディアンズに行ったとき「ミスタービーン」と呼ばれているのを聞いて、当たり前なのにやっぱりちょっとウケてしまいました。


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スパルタの海

2011-11-24 | シネマ さ行

1983年に製作されたものの、題材である戸塚ヨットスクールの死亡者を出した事件で逮捕者が出たために上映中止になっていた作品。「平成ジレンマ」を見たときにこういう作品があるというのを知って一度は見ておきたいと思っていた作品だった。今回どういう経緯で公開に至ったのか知らないけど、劇場公開になったので見に行きました。

映画を製作していた時点ですでに死亡者は出ていたということだったのだけど、逮捕には至っていなかったし、制作側としては世間の誤解を解きたいという思いで作られたものだったのかな。この作品を見たあとにちょっとリサーチしてみて、このスクールが最初は「情緒障害児を直す施設」ということでマスコミには好意的に紹介されていたという事実を知って驚いた。その後死亡者が出て一気に袋叩きっていうのはマスコミのいつものパターンってやつでスクールのことは擁護しないけど、このマスコミのやり方にもちょっとうんざりはする。

映画そのものはまぁスクールの暴力的な面は一切隠さず、それを知ってもらうためのものという感じはした。彼らはこれが正しいと心の底から信じているわけだから隠す必要なんて全然ないってわけだろう。物語の軸としては冒頭で家庭内暴力を振るっている俊平辻野幸一という子を家から無理やり連れだしてから、スクールに連れてきてボコボコにして坊主にして従わせる。というシークエンスから彼がスクールで立ち直っていく様子を爽やかに(!)描く青春物語にできあがっていた。1983年製作だから演技の臭さとか、BGMのわざとらしさとかにはかなり目をつぶって見ないといけない。

驚いたのはスタッフの中に看護師山本みどりがいたことだった。どこまで殴っても大丈夫かを知るためか?と思ったけどまぁそういうわけでもないらしいが。彼女は看護師でありながら、戸塚校長伊東四朗の暴力を肯定しているところがすごく妙な感じがした。彼女も当然自分たちは正しいことをしていると信じているわけで、どこか戸塚氏の信者みたいな雰囲気を漂わせていた。スクール内で体調の悪い子が出て車で高速を飛ばして料金所もぶっちぎって走るシーンがあるんだけど、なんで救急車呼ばんのかね?なんか救急車呼んだら都合悪い事でもあるんかい?という気がしたけど真相は分からない。

「映画」そのもののレビューとしては昔の大映テレビの青春ものみたいであんまり書くことがないんですけど、世の中には色んな親がいるし、色んな子供がいる。死人が出ていてもここに頼りたいという親もいれば、どうしようもないほど暴力的な子供もいる。ワタクシはこのスクールを肯定しないけど、結局やっぱり子供を入れたいという人はいるんだよなぁ。なんか宗教っぽいし、信仰の自由という感じで考えればいいのか…ここのやり方が合っている子もいるにはいるでしょう。だからこそ、ここに来て良かったと思う人もいるのでしょう。でも、一人一人の適性は考えずに全部このやり方でいいんだというところも宗教と似ているなぁと思います。

この作品の広告のコピーが「暴力か!体罰か!学級崩壊、ひきこもり、無差別殺人、現代日本がこの映画に見出すものは何だ!!」なんですが、まぁいかにも「イマドキの若者は…」とか簡単に発言しそうな人が考えたコピーって感じで。学級崩壊とひきこもりと無差別殺人をいっしょくたにして問題視している点がいかにも安易な感じがします。無差別殺人って別に急増してもいませんし、若者の犯罪だって増えていない。ひきこもりとひとくちに言っても原因は個々で違うだろうし。恐ろしい社会問題を並べ立てて恐怖を煽りそこにスクールの存在を救世主的にぽんと持って来ようという意図が見え透いているような気がして鼻についた。

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ラビットホール

2011-11-22 | シネマ ら行

4歳の息子を事故で亡くして8か月。毎日息子の動画を見て思い出に浸る夫ハウイーアーロンエッカートと、息子の影がずっとつきまとうのに耐えられず家にある息子の物をしまいこんで忘れようとする妻ベッカニコールキッドマン。息子が亡くなったことに対するアプローチが違い過ぎてぎこちなくなっていく夫婦関係。彼らが少しずつ立ち直っていくプロセスを描く作品。

まずこの8か月という時期というのが物語の設定としてかなり絶妙だと思いました。もちろん、亡くなった息子のことを忘れることなどできるわけがないとは分かっているものの、周囲もそろそろ立ち直り始める時期かなと感じだすし、本人たちもただただ悲しみに浸っている場合ではないんじゃないかと感じだすころなのかも。それでも簡単に立ち直ることはできない。そこから来る焦りやさらなる悲しみで混乱することになる。

夫ハウイーは遺族の会のグループセラピーでは、まずまずうまくやっていた。同じような境遇の人たちの中で救われることがあると信じているようだ。でも妻は違う。同じ境遇の人たちと一緒にいても自分の悲しみは癒えない。ましてや、自分の子供が死んだことを「神様は天使が欲しくなったんだ」なんて言って納得しようとしているなんて耐えられない。「天使が欲しければ作ればいいじゃない。神なんでしょ?どうして私の息子を盗らないといけないの!」と言い放ってしまう。あのシーンのベッカは確かにひどいことを言っていると思うけど、実際のところワタクシはベッカに共感する。ワタクシは神を信じない人間だからなんだけど、あの発言はアメリカではかんりひんしゅくもんだろうなぁ。まぁもちろんアメリカじゃなくても人が悲しみを癒そうとして発言していることに対してわざわざ言うのはひどいけどね。ベッカのあのときの精神状態ならそれも仕方ないと思う。

ベッカとハウイーの夫婦関係と並行して描かれるのがベッカの家族関係だ。妹タミーブランチャードは素行が悪く昔からベッカに迷惑をかけてばかり。いまは友達から寝取った彼氏ジャンカルロエスポジートの子どもを妊娠中だ。妹が妊娠したことで彼女たち姉妹の間にも今までとは違う緊張が走る。「気にしてない」というベッカだけど、態度はやはりどこか刺々しくなってしまう。ベッカの母親ダイアンウィーストは自分も息子を亡くした経験からベッカにアドバイスしようとするが、ベッカに言わせれば30歳で麻薬中毒で死んだ兄と4歳で事故で死んだ息子を一緒にされるのはたまらない。

ベッカをニコールキッドマンが演じているせいもあるのかもしれないけど、麻薬中毒で死んだ兄と放蕩な妹となんかちょっとピントのズレた母親。そして、いなくなった父親という家族像とこのベッカという女性がいまいち結びつかない。ベッカは自分の生まれ育った環境を抜け出そうと努力してきた女性に思えた。そこにもまた彼女の苦悩が見え隠れする。

ベッカはある日、スクールバスの中に息子を車でひいた少年ジェイソンマイルズテラーを見つけて、後をつけ二人は話をするようになる。どうやら息子は道路に急に飛び出していったらしく、運転していた少年には非はなかったらしい。遺族の会にも行かなくなったベッカはなぜかこの少年と仲良くなっていくことに癒しを感じているようだった。この少年を許すことが彼女にとっては必要な儀式のようなものだったのかな。それとも、亡くなった息子の思春期をジェイソンを見ることによって想像しているのかなとも感じました。ベッカの本意は分からなかったんですけどね。ジェイソンも辛い思いをしていると知ることが救いにもなったのかな。ここでベッカは少年が描いた漫画の中の「パラレルユニバース」という考え方に触れます。今の自分の人生は悲しいバージョンの世界。どこか別のパラレルユニバースでは楽しいバージョンの自分が良い人生を送っているという考え方です。ベッカはこの考え方に救われる。

そんなベッカを当然ハウイーは理解するはずもなく。ハウイーは遺族の会のメンバー、ギャビーサンドラオーと親しくなっていくが…
もしあのときハウイーがギャビーと不倫関係になっていたら、さすがにこの夫婦も終わっていただろうなぁ。いくらベッカが夫婦関係を拒否していたといってもそれは許されることではなかったと思う。でも、ハウイーはやはりベッカを愛していた。彼らはすれ違いながらもお互いに愛し合ってはいたんだろうなと思う。ただ立ち直りのプロセスが違っただけで。二人で支え合って立ち直って行ったというのとはちょっと違ったけど、二人ともきちんと自分で立てるようになってまた二人で歩き出すことができるようになるんだろうなというラストに希望が持てました。ベッカの母親が言ったように、心にのしかかる巨大な岩が小さな石ころになってポケットに持ち運ぶようになれるまで二人で歩いていくハウイーとベッカの姿を最後に想像することができました。

ジョンキャメロンミッチェル監督の優しく繊細な演出とニコールキッドマン始め役者陣の演技が光るしみじみとした作品で自然と涙が溢れました。

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マーガレットと素敵な何か

2011-11-17 | シネマ ま行

予告編を見て面白そうだったので行きました。

ソフィーマルソーと言えば、ワタクシが映画好きになったころにはすでにトップアイドルからちょっと下降気味で過去の人って感じだったんだけど、その後歳を重ねて素敵な大人になった女優さん。45歳になる彼女だけど、あいかわらず可愛らしく歳相応に美しく目じりの鳥の足じわがとっても素敵だった。

物語はバリバリのキャリアウーマン、マーガレットの40歳の誕生日に7歳の自分ジュリエットシャペイからの手紙を携えて公証人ミシェルデュショーソワがやって来る。7歳のときの自分が40歳の自分に向けて手紙を書いたことなどすっかり忘れていたマーガレット。最初は放っておこうと思うがやはり気になって開けてしまう。

最初の手紙から次々とマーガレットに手紙が届き、少しずつマーガレットの過去、そしてなぜ彼女が現在こういう人間になったのかが明かされていき、手紙に影響されて少しずつマーガレットは変わっていく。

ヤンサミュエル監督がアートグラフィックがお得意ということで、映像はとってもポップでマーガレットが子供時代を過ごした70年代の色彩が可愛らしい。マーガレットの子供時代は貧乏で悲惨なものではあったけれども、母親デボラマリクは愛情溢れる人だったし、弟マチュージャロッドルグランと幼馴染のフィリベールロメオルボーと子供ならではの想像力を生かして楽しく遊んでいた。

それでもやはりお金がないということは幼いマーガレットにとっても非常に苦しいことであり、彼女は冷徹にお金を稼ぐということを決意した。それが原因でマーガレットはキャリアウーマンになったのだった。

マーガレットが少しずつ手紙に影響を受けていく過程が楽しい映画なんだけど、ちょっとその過程がまどろっこしいのはフランス映画っぽいところと言えばそうなのか。最初の戸惑いから吹っ切れたあとは一気に影響されて変わっていくのかと思えば、進んだり戻ったりでなんかちょっと面倒くさいところもあったな。マーガレットの夫マルコムマートンソーカスがワタクシには魅力的に見えなかったのもちょっとイヤなところだったかも。

マーガレットの子供時代にもうちょっと強烈な何かがあったのかなーと思ったけど、それはそうでもなかったですね。本当の自分にフタをして生きていたマーガレットが自分自身に戻るお話で、ストレスフルな社会に生きている大人への応援歌的な物語でした。

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ブレイブワン

2011-11-15 | シネマ は行

結婚式を間近に控えたラジオのパーソナリティエリカベインジョディフォスターは婚約者ナヴィーンアンドリュースとセントラルパークを散歩中暴漢に襲われ、意識不明の重体に陥る。彼女が目を覚ましたころには婚約者は死亡しすでに葬式も終わっていた。

愛する人を失い失意のどん底にあったエリカは、町で違法に拳銃を手に入れた。ここで、エリカは自殺のために拳銃を買ったのかと感じたんだけど、立ち寄ったコンビニで店員である女性が夫に撃ち殺されるのを目撃してしまい、自分も殺されそうになり拳銃を発砲し男を殺して逃げてしまう。数日後、地下鉄でチンピラに乗客がからまれ、みんなが次の駅で降りてしまってもエリカだけは降りずわざとチンピラにからまれたようになり、今度は二人のチンピラを銃殺する。エリカは変わってしまった自分に戸惑いながらもいわれなき暴力の被害者である自分を守ることのできない法律に愛想を尽かしたかのように私刑を始めた。

エリカの事件を担当する刑事ショーンマーサーテレンスハワードにラジオの取材という形で近づくエリカ。同じような事件が何度か起き、マーサー刑事はエリカに疑いを持ち始める。マーサー刑事に近づいたエリカはまるで彼に自分を止めてほしいと願っているかのようだった。自分のしていることへの葛藤があるのは当然だが、エリカ自身ではもうやめることはできないようだ。

エリカは自分で「復讐してやる」と強く決意して一連の行動を始めたわけではなく、自分が被害者になったときに自分の中の何かが自分でも知らないうちに変わってしまい、それが暴走した結果こうなったという感じで、暴力が人間に与える影響というものがエリカを通して語られる。ただやられたからやり返すといった単純なことではなく、もっと複雑な影響がエリカから感じられ、そのあたりはやはりジョディフォスターだけに説得力がある。

エリカの行動とラストのマーサー刑事の選択を「許せない」と考える人にとっては、ありえない展開の物語だと思う。ワタクシはエリカという女性の行動を非難することはしない。マーサー刑事のやったこともしかりだ。復讐が正しいとは思ってはいないけど、この世には法律でさばけないことも、さばいても納得できないこともたくさんある。そして、それ相応の罰を受けるべき悪人がいるものだとも思っている。だから、映画の中だけでもこんなことがあってもワタクシは良いと思うタイプの人間なのだ。

監督がニールジョーダンなので、絶対にエリカにとって悲しすぎる結末にはならないと思っていた。マーサー刑事の選択もニールジョーダン監督ならそうしてくれるに決まっていると。だから、ワタクシは彼の作品が好きなのだ。

ニューヨークの街独特の雰囲気を背景にエリカが語るラジオの番組も非常にこの物語にフィットしている。全体的に流れる切ない雰囲気がいかにもジョーダン監督という感じで、ジョディフォスターもこの物語にとても合っていると思う。

少し暗い作品だし、復讐劇と聞いて派手なドンパチを期待して見た人はがっかりするかもしれませんが、ワタクシは結構好きな作品でした。

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ラッキーナンバー7

2011-11-14 | シネマ ら行

劇場公開のときに見たかったけど、見逃してしまった作品です。ケーブルテレビで見ました。

会社をクビになり、彼女には浮気され、友人をたよってニューヨークにやってきた早々強盗に殴られ財布を盗られた不運な男スレヴンジョッシュハートネット。友人は不在で友人のアパートで待っていると、彼を友人だと勘違いしたギャングに拉致られてしまう。そこでギャングのボスモーガンフリーマンから借金の代わりに敵対する組織のボス“ラビ”ベンキングスレーの息子を殺すように命令される。スレヴンはボスから解放されてすぐにまたラビの組織にも拉致され、借金を返すよう迫られる。

スレヴンは警察に行っても無駄だとギャングから脅され仕方なく殺しを引き受けるハメに。最初は自分は友人とは別人だと説明しようとするスレヴンだが、途中から完全に説明する意欲を失ってギャングの言いなりになるようになる。この辺の展開がちょっと無理がありすぎないか?ということと、スレヴンのシークエンスの前に2、3の別の物語のシーンがあって、そこでは殺し屋ブルースウィリスが無関係の青年に昔の八百長競馬の話をひとしきりしたあと殺していたり、おっさんが撃たれたりしたのに、その話は急に一切登場せず、スレヴンの話に終始するところに疑問を感じながら見続けないといけない。

え?あの最初の話はどうなったの?と思っているとやっと中盤くらいから殺し屋ブルースウィリスも登場するようになる。どうやら、スレヴンは人違いされたまま、人殺しを実行するしかなさそうだ。しかも、その後この殺し屋に殺されるというシナリオらしい。

間違えられた青年スレヴン、彼と知り合ったばかりだが恋に落ちた女性リンジールーシーリュウ、殺し屋、ボス、ラビ、そこに彼らを追う刑事ブリコウスキースタンリートゥッチも混じって、先の展開が一切見えない。

なんか中途半端に終わるんちゃうやろなー?と疑い始めたころに、バラバラバラーと今までの展開を紐解いて説明してくれることになっている。最初に殺された青年も、八百長競馬の話も、殺されたおっさんもすべてきれいにつながりがあったことが分かる。謎解き話というよりも向こうが親切丁寧に解説をしてくれるので謎解きが苦手なワタクシとしては非常に嬉しい展開でした。そこがイヤという人もいるかもしれません。

後半、人の良さそうなちょっと気の弱そうなスレヴンの目つきが変わる。ここのジョッシュハートネットが良い。どこか飄々とした表情からキリリとした表情へ一瞬にして変わる。八百長競馬が原因で家族を皆殺しにされたスレヴンは、ボスとラビと刑事にそのときの復讐をするために育ってきた。いよいよその時が来て彼は躊躇なく3人を殺す。物語としては単純な復讐劇なんだけど、そこにひねりを利かせた脚本がいい。唯一の計算外だったリンジーの登場もラストで見せたような展開にしてあるところが清々しい。寡黙な殺し屋ブルースウィリスが光っている。(頭ではなくて…)

残念なのは、「ラッキーナンバー7」という邦題でした。原題は「Lucky Number Slevin」で馬の名前にかけてあるもので、もちろん響き的にLucky Number 7ともかかっているんだろうけど、それをそのまま邦題にしちゃったらダメでしょ。これじゃあ、ラスベガスかどっかのカジノの話と思ってしまわない?

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ニセ札

2011-11-11 | シネマ な行

ケーブルテレビで見ました。キム兄こと木村祐一の初監督作品です。

山梨県で実際に起きた事件を基に作られた作品だそうです。紙すき産業がさかんな村でチンピラ大津シンゴ板倉俊之がニセ札つくりを紙すき職人橋本村上淳、カメラ屋花村(キム兄)、元軍人戸浦段田安則、小学校教師かげ子倍賞美津子にもちかける。始めは拒むかげ子だったが、貧しい村人や空っぽの小学校の図書室を見て加担することに同意する。

芸人さんが撮ったわりには、終始真面目なつくりです。特に奇をてらったところもないし、基本に忠実な感じ。でも、ワタクシはなんか好きだな。こういう戦後ものが好きっていうのもあるかもしれないけど、実際にニセ札ができるまでのプロセスとか、なかなか楽しいものがありました。

やっぱりこのシチュエーションが成り立つのってあの戦争の直後だからなんだと思います。軍国主義一色で育てられてきた自分たちの国が負けて、あっさりいままでの自分たちを全否定された人々。国は間違ってたくせに国が作ったお金と私たちが作ったお金の違いは何?って純粋に思っちゃったんですよね。そう、それが間違ってることなんて価値観は完全にぶっ飛んじゃったんですよ。だって、国だって間違ったじゃないって。そう思うことって何もおかしくないとワタクシは思います。捕まってから裁判でかげ子が言ったことはありきたりのようでいて、実は重い言葉なんじゃないかなぁと思いました。

これは山梨県で実際に起きたことだそうですが、それならなぜわざわざ関西弁にしたんだろ?それもなぜ板倉?キム兄だったら関西弁をしゃべれる知り合いならごまんといるはずなのに、どうしてわざわざ関西弁をしゃべれない板倉に変な関西弁をしゃべらせたのか?倍賞美津子は女優さんとして使いたかったのだとしてもそれなら全員標準語で良かったような気がします。

監督が芸人さんということで笑える面白さを求めて見ると失敗する作品です。

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ウィンターズボーン

2011-11-10 | シネマ あ行

サンダンス映画祭グランプリを取った作品ということで興味がありました。主演も演技の面で注目株のジェニファーローレンスでしたし。

んんー、ヘヴィ。というか気が滅入る。

父親は家と土地を担保に入れた保釈金で保釈になった麻薬犯罪者。そのままバックレてしまって家と土地を失いそうな家族。母親は心神喪失状態。17歳のリー(ローレンス)は幼い弟と妹の面倒を見ながら一人でその日暮らしの家族を切り盛りしている。

父親を裁判に出させるため近所の親戚を辿りながら父親を探し始めるリー。そこには排他的なムラの存在が横たわる。

観客は始めは事情がよく分からないまま貧困の底にあるホワイトトラッシュの生活を見せられる。父親の行方を聞きに行った先の父親の兄ティアドロップジョンホークスのところでどうしてあんなに冷たくされないといけないのか観客には分からない。この集落のドンらしき男に会いに行った時も、その妻に冷たく追い返される。ただリーはどうやら事情が分かっているらしい。それでも家族を守るために彼女は危険を犯してでも父親探しを続ける。

ホワイトトラッシュの物語というのはいつも見ていて非常に辛いです。今回の場合主人公が17歳の女の子だから特に。彼女がいつ殴られるか、いつレイプされるか、みたいな気持ちで見続けなければいけないからです。

どうやら父親はこの集落で共同で行われている麻薬製造で捕まり、掟を破り警察に仲間を売ったようで、そのせいでリーはことごとくみんなから冷たくあしらわれているようだということが徐々に分かってくる。それでもしつこく父親の行方を探るリーは、ドンの妻たちからリンチを受けてしまう。

それでも、やはり身内の愛情からか父親の兄のティアドロップは助けてくれた。彼は始めはなるべく関わらないように、リーにも関わらせないようにしていたが、もう引き返すことができない状態になると最終的には助けてくれる人だった。

最終的に彼女をリンチした女連中が彼女を助けるのは、リーは十分に制裁を受けたからということなんでしょうけど、リーの根性へ報いてやりたいという母性もあったのかなという気はします。この共同体での犯罪に女たちも一端を担っているのはやはりすべては貧困からくるものだからなのかもしれません。

これねぇ、、、アメリカの底辺の生活を描いているということなんでしょうね。辛いですがやはりこういう現実があるということなんでしょうか。リー自身、父親の麻薬絡みの犯罪についてはあまり罪悪感というか、嫌悪感を抱いていないようだったので、あの共同体に住む者にとってそういう犯罪に絡むことはサバイブしていく手段であり当然のことという位置づけなんだろうなと思います。

彼女が家族の貧困を救うために軍隊に入ろうとするシーンが印象的でした。高校も行けない17歳にとって手っ取り早くお金を稼ぐには軍隊に入るしかない。それがアメリカの現実なんでしょう。

淡々と進む物語の中でやはりジェニファーローレンスの演技が素晴らしいです。意志は強いし芯はしっかりしているけど、17歳にしてもうすでに目が死んでるんですよね。いままで散々辛酸をなめてきた彼女の瞳の奥に希望なんて一切見られない。唯一の救いは弟と妹を見るまなざしでしょうか。彼らが自分で生活できるようになるまでは絶対に負けられない。彼女の愛情と決意が感じられるまなざしでした。

暗い暗いお話で、アメリカンドリームを粉々に打ち砕くような作品です。映画好きじゃない人には正直なところあまりオススメはしません。

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ミッション:8ミニッツ

2011-11-09 | シネマ ま行

「月に囚われた男」ダンカンジョーンズ監督の作品。アメリカで公開されたときから気になっていました。

冒頭の8分間。シカゴ行きの列車の中で目が覚めたスティーブンス大尉ジェイクギレンホール。目の前には自分に話しかける女性クリスティーナミシェルモナハン。彼女にはまったく見覚えがない。この列車にも見覚えがないし、クリスティーナは自分のことをショーンと呼ぶが誰のことが分からない。トイレに行って鏡を見ると自分の知らない男が鏡に映っていた。戸惑っているうちに列車はシカゴに着く。そこで起こる爆発事故。

変なカプセルの中で目覚めたスティーブンス大尉。画面を通して話しかけてくるグッドウィン大尉ヴェラファーミガ。この女性にも見覚えがないが、「私の名前を思い出しなさい」と変な暗号めいた文章を読むグッドウィン大尉。それをぼーっと聞いているうち彼女がグッドウィン大尉だということを思い出した。だが、彼にはなぜ自分がカプセルの中にいて何をさせられているのか分からない。グッドウィン大尉に質問をすると後ろでラトレッジ博士ジェフリーライトという男がグッドウィン大尉に指示していた。「爆破犯を探せ」と言われ訳も分からないままさっきの列車に引き戻されるスティーブンス大尉。

2回目の8分間から目が覚めたとき、やっとラトレッジ博士の説明を聞くことができた。死者の脳には最後の8分間の記憶が残されているという。その脳波に入り込んで真相を究明するのがスティーブンス大尉の任務。爆破犯は列車の次にシカゴ市内で爆発を起こすと予告している。列車の乗客の最期の8分間に入り、爆破犯を発見し次の爆破を止めるというのだ。

やっと自分の任務をきちんと理解したスティーブンス大尉。そこから彼の「ミッション:8ミニッツ」が本格的に始まる。

前作の「月に囚われた男」でも組織に利用される人を描いたダンカンジョーンズ。今回もSF的な話で組織に利用される男を描いているが、前作よりずっとアクション的な要素が多く、展開も動きがあってとっつきやすい。

何度もショーンという男性の8分間を繰り返すというのは一見退屈になりそうな気もするが、スティーブンス大尉の行動がそれぞれの8分間で違ってくるし、帰ってくるたびにグッドウィン大尉やラトレッジ博士とのやりとりも進行していくので、少しずつスティーブンス大尉にすら隠された極秘実験の全貌が明らかになっていくという展開もすごくうまい。少しずつスティーブンス大尉とクリスティーナの距離も縮まり、グッドウィン大尉との関係も変わっていく。スティーブンス大尉の置かれた状況や家族との関係なども少しずつ明かされていって心揺さぶられる展開になっていた。

この極秘実験についてなのですが、スティーブンス大尉の8分間の行動を見ていると、彼が自分から進んで実験に参加したのではないというところが物語のキーですね。もしくは、同意していたことを忘れているかですが。彼がただただ忠実にこの任務をこなしていたら、このようなドラマは生まれなかったわけで。

スティーブンス大尉の働きのおかげで現実世界で犯人を逮捕できたあとも彼はグッドウィン大尉にもう一度仮想現実の世界に行かせてくれと懇願します。もう一度行けば乗客を救うことができると。たとえその中で乗客を救ったとしても現実世界ではすでに死んでいる人たちであり、何も変わらないのですが、いまの彼には仮想現実がすべてなわけである。この辺は少し哲学的な感じがしますね。結局“現実ってなんなんだ?”みたいなところで。ここでスティーブンス大尉に同情したグッドウィン大尉の行動にも観客は共感するし、スティーブンス大尉の最後の列車の中での行動に感動します。

「映画通ほどだまされる」と宣伝しているラストなんですが、あれはちょっとワタクシは余計だと感じました。あれはあれで面白いと思うし、好きだと言う人もいると思うんですが、その前のシークエンスで終わった方が良かったような気がするなぁ。あのラストのほうがSF的な面白さとか希望があるのかもしれないんだけど、哲学的なファンタジーとしてというのと、スティーブンス大尉とグッドウィン大尉の友情の結果というところで終わって欲しかったな。そして、スティーブンス大尉からグッドウィン大尉へのメールの内容は感謝の言葉というもので締めくくってくれたら最後の乗客の笑顔とともに感動するSF作品になったと思います。まぁ、でもこの辺りは好みということでこの作品の評価が格段に下がったとかそういうことではありません。

オマケ軍隊は嫌いなのですが、軍服姿のヴェラファーミガはめっちゃセクシーでした。

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幸せのレシピ

2011-11-08 | シネマ さ行

ドイツ映画、「マーサの幸せレシピ」のハリウッド版。「マーサの幸せレシピ」が良かったので、ハリウッドではどう調理されているのかと期待半分、がっかりさせられたくないなぁという気持ち半分で見ました。アメリカでは多分「マーサの幸せレシピ」のほうなんてほとんどだぁれも見ちゃいないだろうから、新鮮な気持ちで見た人も多かったのではないでしょうか。日本ではワタクシ含めちょっとした映画ファンなら知っている作品だと思います。

さて、こちらのハリウッド版、やはりドイツ版より全体的にとっつきやすいくて明るい感じです。さすがハリウッド。

物語の芯は完全に同じです。一流レストランに務める一流シェフケイトキャサリンゼタジョーンズ。彼女の仕事は申し分ないが、人間関係がちょっと苦手。そのせいでレストランのオーナーパトリシアクラークソンから精神科のカウンセラーのところに通うよう命令されている。ケイトの料理に賭ける想いが頑固で自信に満ち溢れすぎて、料理に文句をつけるお客さんをやり込めて追い出してしまったりするのだ。これはもちろんレストランのオーナーからしたら困ったシェフって感じなんだけど、見ているこっちとしてはスッキリしてしまったりもした。

そんな彼女の姉が彼女に会いに来る途中で事故に遭い亡くなってしまう。そこで彼女は姪のゾーイアビゲイルブレスリンを引き取ることに。

同じころ、厨房では一人が産休を取ることになり、イタリアで修業した陽気なコック、ニックアーロンエッカートが雇われる。何かとルールを作って仕事や生活をしているケイトとは正反対のニック。明るく陽気ですぐに厨房のみんなを虜にしてしまう。当然ケイトは面白くない。

しかし、母親を亡くしたショックで食事をとらなくなってしまったゾーイを厨房に連れて行ったとき、子供の心理をうまく利用してパスタを食べさせたのはニックだった。

ゾーイを通して徐々に距離を縮めるケイトとニック。ケイトはいままで頑なに守ってきたルールを破り、ゾーイとの関係も次第に良くなっていくのだが…

終盤にこういうラブコメお約束のちょっとした小競り合いがあって、最後にすべて丸く収まって大団円となります。オリジナルのドイツ版にあったゾーイの父親がどうのこうのっていうちょっとまどろっこしい部分はすべて省かれて、こちらのほうがケイトとニックの恋愛ものに重点が置かれている感じになっています。

キャサリンゼタジョーンズも美しくて凛とした感じがケイトに合っていたと思うし、姪っ子役のアビゲイルちゃんはやっぱすごく可愛らしかった。いま15歳ということでそろそろ青年期に入る女優としては難しいお年頃ですね。ダコタちゃんのように上手に変遷期を越えてくれるといいのですが。

ラストのケイトとニックとゾーイのレストランっていうのもハリウッド的な終わり方でワタクシはとても好きでした。オリジナルの良さを崩さずに上手にハリウッド風にアレンジできた作品だと思います。

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コンテイジョン

2011-11-04 | シネマ か行

試写会に行ってきました。普通の公開で見るつもりの作品だったのでラッキーでした。

スティーブンソダーバーグは特に好きな監督というわけではないのですが、いつも興味深い作品を作っていることは間違いないし、彼が撮るとなるといつも豪華キャストになるのでそれも楽しみのひとつであります。

香港出張の帰り経由したシカゴの空港でどうやら密会した男性からの電話を受けるベスエムホフグイネスパルトローは咳をしていて体調が悪い様子。その後夫マットデイモンと息子の元へ帰るが、その後様態が急変。救急車で運ばれるが間もなく死亡。そのころベスの息子も家で発病しそのまま亡くなってしまう。(グイネスの迫真の演技に冒頭からとても恐ろしい。彼女は解剖で頭の皮まではがされるシーンもある)

同じころ、香港、東京、ロンドンでも似たような症状で亡くなる人が続出し、You Tubeには東京のバスで亡くなった男性の動画がアップされる。フリージャーナリストのアランジュードロウはいち早く伝染病の可能性を疑う。

アメリカのCDC(疾病予防管理センター)やスイスに本部のあるWHO(世界保健機構)なども調査に乗り出す。CDCの医師ドクターミアーズケイトウィンスレットは調査中に発病し、WHOのドクターオランテスマリオンコティアールは香港のある村で拉致される。薬が発明されたときに一番に手に入るように人質に取られたのだ。

パンデミックものと言えば「アウトブレイク」を思い出す人が多いと思う。1995年の作品でダスティンホフマンの主演作だ。あの作品に比べるとこちらの作品はかなり静かな進行。伝染病がものすごい勢いで世界中に広がるのと反比例するかのように映画の進行そのものはとても静かだ。「アウトブレイク」のスピーディさとスリリングな展開はこちらにはない。CDCやWHOの職員の活動も地道な感じで描かれる。CDCのドクターミアーズが亡くなる直前まで自分の隣に寝ている患者のことを気遣っていたのが印象的だったし、WHOのドクターオランテスも拉致はされたけど、村人のことを心の底から心配していたし、薬の開発に当たる女医も自ら実験台となったりと医師たちの真摯が姿が描かれる。

その進行の地味さが返ってじわじわとこちらの恐怖をあおるような構成になっている。「アウトブレイク」のときには大きな存在ではなかったインターネットもこちらでは大きくものを言う。フリージャーナリストのアランがブログを通じて送るメッセージが余計な混乱を招く。CDCの責任者ローレンスフィッシュバーンが個人的に恋人に極秘情報を流したり、ベスの不倫が伝染病が相手に移ったことによって彼女が亡くなってから夫にバレてしまったり、個人的なドラマにもスポットがあたっている。

始めにベスが発病した日が「Day2」となっていて、「あれ?Day1は?」と思っていたけど、最後の最後に忘れたころに「Day1」の描写があって、ソダーバーグのうまさを見せつけられた感じがした。

豪華キャストの中で光っていたのはやっぱりケイトウィンスレットかな。全体的に地味なので豪華キャストじゃなかったらちょっと見るのが辛い作品かもしれません。

これを見ている最中に会場で咳をされるとゾッとしますよ。

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フェアゲーム

2011-11-02 | シネマ は行

実話の映画化です。9・11事件のあとのアメリカ。CIAはイラクに大量破壊兵器があるかどうかの探りを入れていた。CIAの諜報員ヴァレリープライムナオミワッツはその調査チームの一員で、CIAは彼女の夫で元ニジェール大使のジョーウィルソンショーンペンにも協力を求めていた。

ジョーはCIAからの依頼でニジェールに出向き、イラクがニジェールから核兵器の原料を大量に輸入したかどうかを探る。ジョーの結果報告は「シロ」ニジェールからイラクが核の原料を輸入した痕跡は一切なかった。

一方ヴァレリーのチームもアメリカに亡命している科学者の妹を使い、彼らを救うという条件でイラクに入国させ科学者への探りを入れる。この答えも「シロ」アメリカ自身が数年前にイラクの核施設を破壊し、現在のイラクでは核兵器を作成する能力はないと言う。

別のところからイラクが核爆弾に使用するアルミ管を大量に輸入したという情報が入るが、それも強硬にこれが核兵器の材料だと主張する一人の諜報員をのぞいて、核兵器に使用されるものではないという結論に達した。

たくさんの諜報員が命を懸けて調べた結果が「シロ」だったというのに、ホワイトハウスはジョーの報告を捻じ曲げ、アルミ管が核兵器の材料だと主張するたった一人の諜報員の報告を取り上げ、「イラクには大量破壊兵器が存在する」と主張し、イラクに侵攻した。ホワイトハウスは戦争を避ける理由など探してはいなかった。彼らは戦争をする理由だけを血眼になって探していたのだ。それがないと分かると捏造してしまうほどに。

それに激怒したジョーはニューヨークタイムズ紙に自分の結果報告を掲載する。政府のウソを暴くために。

そのことがホワイトハウスの怒りを買い、報復としてジョーの妻ヴァレリーがCIAの諜報員であることを世界中に公表されてしまう。

CIAの諜報員を潰そうと思えば、彼らの顔と本名を公表してしまえばいい。こんな簡単なことはないのだ。いままでヤバい橋をいくつも渡ってきたヴァレリーにとって、身元が明かされてしまうことほどヤバいことはない。

国家が自分たちの犯罪を隠すために小市民一人をつぶすことなど赤子の手をひねるようなもの。CIAもヴァレリーの味方はしてくれず、ヴァレリー自身も子供たちや自分の身を守るためにこれ以上ホワイトハウスを敵に回すことはできない。たった一人ジョーだけが立ち上がり巨大な国家権力と戦った。

ジョーの孤独な戦いは愛国心が大きくものを言う国で、国家に盾つくことがいかに難しいかを物語る。国はどんな汚いことをしてでも彼らを潰しにかかる。このあたりのシークエンスは考えてみたらもうものすごく恐ろしいことだ。このやりとりを見ている国民も、簡単にジョーの味方はしてくれない。誰も国家が国民に大嘘をついて他国に戦争をしかけているとは思いたくない。9・11事件の後でイラクへの憎しみも増している中、ジョーは非常に不利な戦いを強いられる。

そのせいで夫婦の絆も壊れかけてしまうが、孤独な戦いを続ける夫に愛想を尽かすのか、同じ立場に立って反撃するのか。ヴァレリーに選択するときがくる。国家のために働いてきたヴァレリーが国家に裏切られたとき、彼女にとって本当に大切なのは何なのか?それを証明するときがくる。

ナオミワッツとショーンペンの共演はこれで3回目?かな?スクリーンでの相性が非常に良い。二人ともめっちゃくちゃ渋くてかっこいいんだよねー。この二人は演技派なので安心して見ていられます。ショーンペンって悪役も似合うけど、こういうインテリの役も最近増えてきましたね。彼が「大使」っていうイメージは全然ないけど、国家と戦うインテリ反逆児って感じでカッコ良かった。そして、ナオミワッツの諜報員はイーサンハントよりもジェイソンボーンよりもずっとずっとカッコいい。諜報員って実際には武闘系よりもこの作品であるような駆け引きの部分がすごく大きいんだろうなと思います。それでいて、どんな拷問にも耐えうる精神力と体力を持ち合わせているというんだからシビれます。

アメリカという国の恐ろしい犯罪を暴きつつ、夫婦の絆の物語でもあり、これが本当の話っていうんだから驚いちゃいますけど、ハードボイルドな仕上がりになっていてダグリーマン監督を見直しちゃいました。ヴァレリーがボーンよりカッコいいって書いちゃいましたが、ボーンシリーズはダグリーマン監督ですね。

オマケナオミワッツみたいな人が諜報員なんてリアリティないと思う方もいらっしゃるかもしれませんが、実際のヴァレリープライムウィルソンさんはナオミワッツくらいキレイな方です。念のため…


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映画」もいいけど「犬」も好き。という方はこちらもヨロシクです。我が家の犬日記「トラが3びき。+ぶち。」