そして、もうひとつたまげたのが、(これはのちになのだけど)これを監督したのがあの「ロードオブザリング」のピータージャクソンということだ。彼はこのニュージーランドで起こったスキャンダラスな事件をとてもユニークな方法で映画化している。作品の雰囲気や主役の二人のイマジネーションの世界がいかにもピータージャクソンしているのだ。
私立の高校に通う女子高生二人ジーナメラニーリンスキーとジュリエット(ケイト)。フランス語の授業で自分にフランス語の名前をつけるとき「アントワネット」と付けるジュリエット。このあたりからも彼女の自信満々な性格が垣間見える。自信満々で聡明で反抗心旺盛で好奇心、想像力も豊かなジュリエットにどんどん魅かれていくジーナ。二人は子供の頃長い間入院していたなどの共通点があり、長い時間を過ごすうち、自分たちの世界を作り上げていく。そして、自分たちの世界ほど崇高なものはないと信じ、周りの人間は愚鈍で何も理解しないと思い始める。そんな二人に同性愛の疑いを抱き、引き裂こうとする親たち。二人にとって邪魔なものは生きている価値さえない。そんな勝手な価値観が事件へとつながる。
思春期の女の子二人が作り上げた自分たちだけの世界。自分たちのことはお互いにしか分からない。大人は誰もかれも分かってくれない。それが「愛」なのか「恋」なのか、それともただの「思い込み」なのか。そういう時期には陥りやすい状態なのかもしれない。その「情熱」が「狂気」へと変わるとき、もう誰も止めることはできない。その「狂気」に完全に浸ることができた二人はある意味において幸せだったのかもしれない。
事件の顛末やその時の状況よりも「二人の世界」にフォーカスしたこの作品。あの想像・創造の世界を表現するにはピータージャクソンはぴったりだったと言える。彼が作ったからこそ、実際の事件を基にした平凡な映画にならずに、一風変わってはいるが、素晴らしい出来と言える作品になったと思う。
「もう二度と会わない」という条件で二人は刑務所から保釈されたらしいが、その後どんな人生を歩んだのか気になる。