アインシュタインにも匹敵する頭脳と言われたインド人数学者シュリニヴァーサラマヌジャンデヴパテルのお話。
1941年ケンブリッジ大学の数学者G・H・ハーディジェレミーアイアンズはインドから手紙を受け取る。そこには驚くべき数式の発見が示されており、ハーディ教授はラマヌジャンを呼び寄せる。
母親の反対を受けたラマヌジャンだったが、イギリスに渡ることを決意し、新婚の妻を後で呼び寄せる約束をして船に乗った。
数式は女神が舌の上に置いていくという神秘的なことを言うラマヌジャンと無神論者で数字は得意だが人とのコミュニケーションは苦手なハーディ。西洋式に数式は証明してこそ意味があるということをラマヌジャンに説くが、ひらめきだけで数学を理解してきたラマヌジャンにはそれがなかなか通じない。
インドからイギリスにやって来たラマヌジャンが文化の違いに戸惑うところや、堅物のハーディがなんとかラマヌジャンとコミュニケーションを取ろうとする姿がなんだか可愛らしい。
ただハーディとラマヌジャンの世界の外では、可愛らしいでは済まない現実があり、ラマヌジャンはイギリス人から差別を受けるし、戦時下でベジタリアンの彼が食べるものがろくになく栄養失調から病気になってしまう。ハーディはハーディで彼の味方は友人のリトルウッドトビージョーンズだけだったのに、彼は従軍しなければならなくなってしまう。
そんな中でも2人、不器用な者同士ラマヌジャンの数式の証明に取り組み、ハーディは学者連中を説得し、一度は却下された特別研究員の地位をラマヌジャンに与えることを認めさせる。
数式などひとつも理解できなくとも、この物語に登場する人々の友情とその人生には胸の熱くなるものがあり、マシューブラウン監督は随所に適度な笑いを入れつつ、真面目にストーリーを語ってくれて好感が持てた。
ジェレミーアイアンズの作品は久しぶりに見た気がするのだけど、昔から神経質そうないでたちで今回の人の目をちゃんと見て話せないようなコミュニケーション下手な教授がとてもよく似合っていた。そして、いまやインド人の役はすべて彼に一度はオファーが行くであろうデヴパテル。人気だけではなく実力が伴っているので安心して見ることができる役者さんだ。
お話に登場する数式などはさっぱり分からないのだけど、数学が芸術に通じるという概念だけはなんとなく理解することはできる。ラマヌジャンを見ているとこの世の中にある真理を見つけ出すというのはある意味神の領域であり、それは神秘的な体験なのかもしれないと思える。まったく数学が分からない人でも楽しめる心温まる作品です。
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