シネマ日記

超映画オタクによるオタク的になり過ぎないシネマ日記。基本的にネタバレありですのでご注意ください。

約束の葡萄畑~あるワイン醸造家の物語

2010-11-29 | シネマ や行
予告編を見たときから、神秘的な大河ドラマ風で、ワタクシの好きなヴェラファーミガが出演しているとあって、楽しみにしていた作品だった。

19世紀のフランス、ブルゴーニュ地方のワイン醸造家ソブランジョドージェレミーレニエの前に天使ギャスパーウリエルが現れ、ソブランは彼にインスパイアされる。天使はソブランに年に1度同じ場所で会うことを約束する。

このソブランと天使との対話からワイン作りのヒントを得たりもするんだけど、なんかそれだけでもない感じで、この天使の存在が妙に中途半端なんですよねー。ソブランは特別だから来るんだって言ってたけど、ソブランのワインに対する情熱って最初はすごくイイ感じだけど、天使とケンカしてツキに見放されたとか言ってからは、すごくふて腐れちゃってさー、なんか強い情熱を持った人って感じもしなかったのが残念だったなぁ。もちろん、19世紀のフランスの人だから、この天使が実は堕天使だって知っちゃったときには寝込むほどショックを受けるっていうのも分からなくはないんですけどね。天使は優しい存在というだけではなく、こういう残酷な存在というのもワタクシ的には結構アリだとは思いましたが。

天使というのには性別ははっきりないのかもしれないけど、あの天使はソブランのことが好きだったのか?ソブランもまんざらでもない感じだったけど…あの辺のくだりがいまいちよく分からんかった。堕天使は人間になりたかったんだね。でも、なんか人間になってからもただ黙々と働いてソブランのそばにいるだけで、それ以上の関わりがいまいち見えず、ちょっと残念な展開でした。

ソブランを演じるジェレミーレニエは29歳なんですね。老けメイクをし始めたときのほうがすごく自然に感じて、この人って実年齢がもう40代か50代で若いときがメイクなのか?って思ったくらいだった。これはただのワタクシ個人の好みの問題ですが、もうちょっと主役の彼に魅力があれば評価も上がったという気がします。彼の妻役のケイシャキャッスルヒューズはまだ20歳くらいで、夫がどんどん老けていくのに、彼女は全然年を取っていかないのがなんだかおかしかったです。彼女は途中でちょっと気が触れてしまう役だから、いつまでも純真な若々しさを持っているっていうことなのかなぁと考えたりしました。

ギャスパーウリエルは天使を演じるのにピッタリですね。すごく美しい顔をしていますからね。そのせいか、ソブランとのラブシーン(?)も違和感はなかったけど…

ヴェラファーミガはやはり演技のしっかりした人で、この女地主のオーロラの芯の強さと女性の寂しさを掛け合わせた雰囲気をうまく演じていたし、乳がんの手術を乗り切ったことも、ソブランと体の関係になったことも彼女が演じていると説得力がありました。ソブランとの関係については不倫なわけだから、諸手を挙げて賛成というわけにはいかないけど、奥さんがあんなふうになってしまったことから、まぁ許されてもいいかなと思ったり。

監督がニュージーランド出身のニキカーロなので、英語の作品になったのは仕方ないんですが、やっぱり19世紀のフランスということでフランス語で撮ってくれたほうがもっと雰囲気が出たのになぁ。

武士の家計簿

2010-11-26 | シネマ は行

試写会に行ってきました。

ここ何年か流行りの(?)貧乏侍シリーズかと思ったら、違ったけど、やっぱり貧乏な侍の話だった。

代々加賀藩の御算用者として仕えてきた下級武家猪山家を3代に渡って描く。
八代目の直之堺雅人は、父中村雅俊と母松坂慶子が作った借金を返済するため、すべての家財を売り払い、毎日家計簿をつけ、妻仲間由起恵とともに倹約生活を実行する。

日常のこまごまとしたエピソードが語られる中で、くすっと笑えるシーンがあったりして、前半は結構いい感じで進んでいくのだけど、直之が幼い息子の教育のために、日々厳しくそろばん、習字、論語などを教え、息子自身に家計簿を付けさせ始めたあたりから、ちょっと雲行きが怪しくなってくる。

貧乏ながらも、知恵を絞って楽しく人生を過ごした侍の話かと思ったら、なんだか息子にはえらく強硬で、まぁ、教育には悪くないんだろうけど、ちょっと頭が固すぎてついていけない。その根底にある愛情というものがうまく描かれていないために、直之がただの頑固おやじみたいに見えてしまう。

原作を読んでいないので、本当のところどうだったのか分からないけど、「貧乏だけど、楽しい」ではなくて「貧乏でつまらない」父親像って感じになっちゃったのがすごく残念だったな。

直之の親世代を演じる中村雅俊と松坂慶子がノーテンキで、結構いい味出してるんですよねー。おばばさまを演じる草笛光子はやっぱ超カッコいいし。それに比べると堺雅人も仲間由起恵もなんだか面白味に欠ける。これは演出の悪さだと思うんですけど。

わざわざ3世代の話にしないで、直之と妻の時代にもう少しスポットを絞って色んなエピソードを見せてくれたほうが面白かったんじゃないかなーと思います。デキの悪い作品ではありませんが、これで2時間9分は長すぎるので、テレビで編集されて放映されればちょうどいいかもしれません。


ハリーポッターと死の秘宝PART1

2010-11-24 | シネマ は行
以前から、公開を楽しみにしてきた作品ですので、速攻で見てきました。とにかく、3D公開にならなくて良かったぜい。

とうとう最後ですよーーーー。と、は、い、え、前後半に分かれちゃってるので、今回最後から2番目、という中途半端な位置づけですな。

最初、7作目が前後半に分かれると聞いたときは「えーっ」と思ったんですが、この前半を見てみると、ワタクシは分けてくれて良かったなと思いました。とにかく、この原作本は4作目くらいから非常に長いものになってしまって、1作に収めるにはかなり無理があるし、映画にするときに相当はしょっていましたからね。今回ははしょらなくて済むようにということで前後半に分けたということです。そのせいか、進行は相当トロい感じがあるので、退屈になっちゃう人はなっちゃうかも。ワタクシはこの物語が終わることが悲しいので、ゆっくり進んでくれるほうがなんかいいなぁと思ったり。今回、かなり原作に沿っての映画化ですので、前までの展開を忘れちゃったなーと思っている人もゆっくり思い出しながら見られるという利点があると思います。

結末を知っているので、この前半に限って感想を書くというのは結構難しいです。7作目はもうハリーダニエルラドクリフたちが学校に行くシーンがなくて、ちょっと残念。まぁ、ヴォルデモートレイフファインズが復活してしまって、学校なんか行ってる場合じゃないんですが。ハリーとヴォルデモートの戦いも大詰めで、死ぬ人が相次いでいますねー。大好きなマッドアイムーディブレンダングリーソンなんて死ぬシーンすらないしひどすぎるー。あんなにみんなが頼りにしてたマッドアイなんだから、死ぬシーンくらい作ってくれればいいのに。魔法省のスクリムロールビルナイも死ぬシーンないですね。我らがビルナイが、大好きなハリーポッターシリーズに登場したかと思ったら、速攻で死んじゃうんだから悲しすぎるけど、ダンブルドア先生マイケルガンボンからハリー、ロンルパートグリント、ハーマイオニーエマワトソンに残した形見を渡すという重要な役割を演じていました。

前半は、分霊箱であるロケットをつけていた影響でロンがハリーとハーマイオニーの仲を疑って仲たがいするシーンがあります。分霊箱の影響を受けるっていうのは「ロードオブザリング」のフロドみたいですね。ロンがハリーとハーマイオニーの仲を疑うなんて馬鹿だなぁって感じですよね。ハーマイオニーはずっとロンのことが好きなのにあー、早くくっつけ!って感じですが、これはPART2までおあずけですね。ロンが出て行こうとしたとき、ハーマイオニーが「ロナルド!」と言って止めるかと思ったんですが、このときは聞けませんでした。ワタクシ、ハーマイオニーだけがロンのことを怒るときに「ロナルド」と言うのが好きなんです。ロケットが見せた幻覚だったけど、ロンとハーマイオニーのキスシーンより前にハリーとハーマイオニーのキスシーンを見ることになるなんて、なんか妙な感じ。

そのロケットを探し出すシーンで、ポリジュースを飲んで3人が魔法省に潜入するシーンは手に汗握るシーンであると同時にユーモラスな雰囲気もあって、なかなか良かったです。このシリーズはいつも前半はちょっと面白いシーンも多いですね。

物語のほとんどがハリー、ロン、ハーマイオニーの3人だけで進んでいく感じで、スネイプ先生アランリックマンとかどーしてんの?って、なんか忘れそう。おそらくPART2では登場してくるでしょうけど。PART1のクライマックスはドビーが死んじゃうとこだったんですよねー。ワタクシ、このシリーズが大好きなくせに、原作者のJ.K.ローリングっていまいち好きになれないんですよね。だって、読者が大好きなキャラのほとんどを殺しちゃうから。なんかこの人の底意地の悪さを感じる。ドビーもその一人。ドビーが死ぬシーンは原作を読んだときも泣いたけど、今回映画でもまた泣いちゃいました。他の観客も泣いてる人多かったよー。一途に、いじらしくハリーを守ってきたドビーがベラトリックスヘレナ・ボナム=カーターの手で殺されるなんて考えてみたら、ベラトリックスに相当殺られてるよね。アイツ、ほんま腹立つドビーは「秘密の部屋」で初めて登場しますが、あの頃とCGの技術が違うせいか、ちょっと雰囲気が違って見えました。

分霊箱があと4つも残っているし、ダンブルドア先生の過去の話ももっとあるはずだし、後半もまだまだ盛りだくさんって感じですね。結末は知っていてもやっぱり楽しみです。

リリィ、はちみつ色の秘密(原作本)

2010-11-19 | 

映画を見てから随分と時間が経ってしまったのだけど、先日やっと読むことができた。

この物語を読んでいる間中、このお話に登場するオーガストという女性の優しさに包まれている感じがして、いつまでもその温かさに触れていたいようなそんな気分にさせられた。先に進みたいんだけど、読み終わるのがイヤで先に進みたくないという気持ちになった。

原作を読み終わって感想を書く前に自分の書いた映画の感想をもう一度読み返してみるとそこには、

〉原作をじっくり読んでもう一度この世界に浸りたいなと思わせるような映画だった。

と書かれてあった。
1年以上前に書いた言葉だったので、忘れてしまっていたのだけど、まさにドンピシャなことが書いてあって我ながらビックリした。本当に「まだまだこの世界に浸っていたい」と思いながら読んでいたのだ。

原作を読むと映画はかなり原作に忠実に仕上げられていたということが分かる。そして、キャスティングがやはりドンピシャだったこと。もちろん、ワタクシは先に映画を見ているからキャストが先に頭にいるわけで、その人たちが自分の中で映像となって動くということになるのだけど、たとえ映画を先に見ていてもキャストが合わない場合は、本を読みながら自分で映画のキャストとは違う人物像を動かしているときがあるけど、この物語の場合はそれがまるでない。特にオーガストを演じたクイーンラティファなんて最初から彼女をあてて書かれたのではないかと思うほどだった。




100歳の少年と12通の手紙

2010-11-18 | シネマ は行

白血病で余命いくばくもない10歳の少年オスカーアミール。周囲の人間は両親でさえ彼に気をつかい、そんな周囲の人々にオスカーはイライラを募らせていた。そんなとき、病院にピザの配達に来たローズミシェルラロックは、ぶつかったオスカーに汚い言葉で悪態をついた。そんな彼女を気に入ったオスカーはあの人としか話したくないと言い、医者マックスフォンシドーはローズに毎日ピザを買うことを条件にオスカーの話し相手になってもらうことにした。

余命いくばくもないオスカーに対して、ローズは何事もズケズケと話し、いけないことはいけないときちんと叱ってくれる。そんなローズがオスカーのために考え出したアイデアとは、1日を10年として残りの人生を過ごすことだった。2日目にオスカーは思春期を過ごし、好きな子ペギーに告白し、キスをし、3日目に20代で結婚をする。4日目の30代ではローズを子供にし、5日目の40代で離婚の危機を乗り越え、6日目の50代で両親と和解。60代以降は体調の優れない時間が多かったけれど、両親とローズに囲まれて幸せに暮らす。

ローズはまたオスカーに神様に手紙を書くことを薦める。オスカーは神様に“心の問題”を手紙に書いていく。10歳の少年が1日で10年ずつ歳を取り、少しずつ心をオープンに持って生きることを覚えていく姿に心を打たれる。結婚したペギーの手術のときには、神様に手術の成功を願うのではなく、「手術の結果をペギーが受け入れられますように」と願う。こんなふうに人の痛みが分かる子に育っていくオスカーに涙があふれる。オスカーは晩年、夜明けに神の姿を見、「神はあきらめずに朝を作り、夜を作り続ける。自分たちが毎日新しい一日を過ごすことを両親に教えてあげてほしい。」と願う。そんな神々しい夜明けを経験したことのない大人が多い中、オスカーは貴重な経験をして床に着く。

設定がいつの時代かよく分からないほどレトロな雰囲気があり、ローズがオスカーに話して聞かせる話の映像がファンタジーのように流れ、病院の毎日替えられるシーツの色とローズのマフラーやカットソーの色がいつもリンクしていて、まるでローズが病院に住まう天使のように思えた。

オスカーを毎日訪問する中で、ローズも自分の人生に変化を見るんだというリンクが多少はあったんだけど、いつも冷たくしてしまっていた恋人には、結局何も言わないまま終わってしまったのが残念だった。オスカーと出会ってローズが変わり、恋人にも優しくできるようになるのかなと思っていたら途中で喧嘩別れしたまま放置だった。上映時間105分だからもう少し伸ばしてそこんとこを見せてほしかったな。

ローズがいてくれたおかげでオスカーは死という未知なものにも怖がらずに旅立って行けたし、残されたローズもオスカーに出会えたからこの先の人生を愛に包まれて生きることができると言っていた。小さい子供が病気というお話だから、後半はずっと泣けてしょうがないのだけど、その中にも笑えるシーンなどがあって、ほっと心があたたかくなる作品だった。


星守る犬(原作本)

2010-11-15 | 

普段、ワタクシはほとんどの小説の情報を映画から得ているので、たいがい本を読むのは映画を見てからというパターンが多いのだけど、この本はずっと前に読んでいて、この夏に映画化が決定したものだ。

映画の公開は来年になるみたいだから、これから映画を見る可能性のある方には多少のネタバレになるかもしれない。

家族から見捨てられたお父さんと一緒に旅をする犬ハッピー。お父さんは病気で、財布も途中で盗まれてお金もない。そんな中ハッピーも病気になってしまい、お父さんはハッピーの手術代のために残り少ない持ち物も全部リサイクルに出してしまう。何も持たず、あるのは家替わりの車一台。ついにお父さんも病気で死んでしまう。

これはコミックなんだけどページ数も短いし、話自体も1パラグラフで説明できる程度のものだけど、これ映画にするには結構他にいろいろ付け加えないといけないと思うけどなぁ。でも、この話にいろいろ付け加えてしまうと面白くなくなりそう。このシンプルさが良いんだと思うけどな~。ここんとこ、日本映画界ではやたらと“犬もの”が多いけど、本当に良い映画は少ないなぁ。これも原作が好きなだけにちょっと怖い気がする。

この話、多分賛否両論あると思う。このお父さんは自分が病気だと分かっているのだから、犬がもっと生きられることを考えたら、ハッピーのために里親を探してやるべきだったと考える人もいるだろう。そうすればハッピーだってもっと長く生きられただろう。その考え方ももちろんよく分かるし、どちらが正しいかと言われれば、お父さんの行動よりそのほうが正しいのかもしれない。でもね、ワタクシはお父さんのした選択を責められないな。そして、このハッピーの健気さが泣けるんだよなー。犬はどこまでもまっすぐに飼い主を見ている。だからこそ、お父さんと一緒にいられたハッピーは幸せだったんじゃないか。そう決めつけるのは人間のエゴだけれど、残念なことに野生からペットとなった犬は、もはや人間のエゴの元でしか暮らせない。犬の「本当の幸せ」なんて誰にも分からないけど、この本を読む限り、この物語のハッピーは確実に幸せだったと思う。

実はこのお話は2部構成になっていて、車で亡くなったお父さんの遺体を処理するケースワーカーの話が次に描かれている。彼も実は犬に思い出があって、お父さんとハッピーの死に立ち会うことで、自分が飼っていた犬のことを思い出す。

子供のころおじいさんが連れてきた犬の世話をするのが面倒になって、遊びに誘ってくる犬の鼻っ面にわざとボールをぶつけたとき、犬はほんの少しも怒らずに「ごめんなさい。いまのゲームのルールが分からないんです」という瞳で見つめ返してくる。

このエピソードのところは何回読んでも泣けてくる。ここでも、犬はどこまでもまっすぐに飼い主を見ている。彼らにとって飼い主は世界のすべてなのだ。

2話目も決して良い飼い主の話ではないんです。だから、またこれに怒りを覚える読者の方もいるかもしれないな。でもワタクシはやっぱり2話目も好きです。子供のときに犬を飼うって結構そんなもんってとこあるもんな。ダメなんだろうけど、綺麗事だけじゃないところが好き。

ワタクシは3年前から犬を初めて飼い始めた。もし、犬を飼ったことがないままこの話を読んでもあんまり感動はしなかったかもしれない。犬たちが本当に飼い主をまっすぐに見ていて、飼い主がその世界のすべてであるということを身を持って体験したからこそ、何回読んでも涙なくしてはこの物語を読めなくなった。


[リミット]

2010-11-11 | シネマ ら行

スペイン出身の新人監督ロドリゴコルテスの作品。いまをときめくスカーレットヨハンソンの旦那、ライアンレイノルズが主演。
主演つーか画面に登場するのはほぼ彼一人。あとは、ビデオの映像の女性サマンサマシスと電話の向こうの声だけの出演の人が数名。

どうして、そんなことになっているかと言えば、この主役の男性ポールコンロイは目覚めると真っ暗な棺の中に入れられて生き埋めにされていた。原題は「Buried」(埋められた)だ。棺の中にあったジッポライターをつけて辺りを照らし、懸命に状況を把握しようとするポール。そこへ足元にあった携帯電話がバイブする音がけたたましく響いた。

一人の男が棺の中に入れられて、照明は彼のつけるライターの灯りだけ。これはいわゆるソリッドシチュエーションスリラーと呼ばれるジャンルの作品で、新人監督の名前を一躍有名にする場合が多い。シチュエーションが限られていることから低予算で作られやすいため、新人監督が多いのかもしれない。

ポールは焦る。携帯を使って色んな人に電話するのだけど、どれも留守番電話。やっとつながった相手はこっちの状況が把握できず、なんだかのらりくらり。大声を出すポール。焦るな、落ち着け!って落ち着けってほうが無理があるよなー。だって、僕、棺の中に閉じ込められてんですよー!!!ポールが興奮して大声を出せば出すほど相手は、信じてくれなくなるというもどかしさ。あー、ワタクシもこういう夢をよく見るんですよね。警察とか救急に来てもらわなくちゃいけないのに、相手はなんかのほほーんとしてイライラするぅ、みたいな夢。それがポールにとっても夢だったらどんなに良かったかってとこでしょう。

ポールコンロイはイラクの復興支援で民間のトラック会社の運転手として働いていた。そんな彼を誘拐犯が襲う。

と、いうことらしいのだけど、わざわざ携帯電話を一緒に入れて、彼にアメリカ政府に連絡させてお金を奪おうって、なんでそんな回りくどいことする???他にもポールが使えそうなアイテムとか一緒に入れちゃってさ、それをイラクの誘拐犯がする意味がまったく分からん。

ポールが「イラクで誘拐された」って説明したときにへっ!?って思ったんですよねー。こういうことするのは猟奇的知能犯じゃないのか???って。ご丁寧に使えそうなアイテムとか入れて、ポールや警察と知恵比べするっていうなら、このシチュエーションも分かるんですけどねー。イラクの誘拐犯ってのが納得いかない。監督、CNNかなんか見てて思いついたの、この脚本?

ま、実際FBIとかにあんなふうに電話がつながったなら、もうちょっと誠実な対応してくれんじゃね?あのテロ人質対策の担当のおっさんなんてさ、アメリカがイラクにしたことを考えれば仕方ないんだよ、的なこと言っちゃってたけど、あれはやっぱ監督がスペイン人だから言えたセリフだよなー。ライアンレイノルズもカナダ人だし。っていうのは考え過ぎか。

何度かポールが鳴っている携帯をボー然と眺めて電話をとらないシーンがありますよね。あんな状況で、携帯しかすがるものがないのに、どうしてでないの!!!重要な電話かもしれないじゃん!ってかいまアンタには重要な電話しかかかってこんでしょうが!!!と電話に出ないポールにちょっとイライラしました。

ライアンレイノルズが出演している「ウルヴァリン」や「あなたは私の婿になる」は未見なので、今回ワタクシにとっての初お目見えだったのですが、照明がジッポやら、ケミカルライトやら、懐中電灯やらの光の下でしか見れなかったのでなんだかよく分かりませんでしたな。彼って身長188センチらしいんですが、デカい図体で閉じ込められて撮影もさぞかし大変だったでしょうね。

ラストの展開は賛否両論あるでしょうけど、ワタクシは読めたけど、(読めた人が多かったでしょうけど)まぁあれで良かったかなって感じでした。暗闇でのポールと電話の向こうの人とのやりとりがほとんどということから、真っ暗な部屋でヘッドホンをつけて体感するアトラクションを思い出しました。あれ、めっちゃ怖いんですよねー。ワタクシの斜め前に座ってた人がオノで殺されたんですから!ほんとですよ!最後のポールと救出班とのやりとりは特にそんな感じでした。ゲームならあそこで絶対救出されるんですけどねぇ…


自由への扉

2010-11-10 | シネマ さ行
ケーブルテレビで放映されていたのだけど、この作品についての資料がネット上でもすごく少ない。日本では公開しなかったのかな?南アフリカでアパルトヘイト時代に政治犯としてロベン島に収監されていた囚人たちが看守たちに交渉して刑務所内でサッカーができるようになったという話なんだけど、この内容ならば、今年の南アフリカでのサッカーワールドカップ前にミニシアター系で公開していそうなもんなんだけどな。

物語は、当時の実際の囚人たちへのインタビューと彼らの証言に基づいた再現ドラマを織り交ぜて進行していく。当時の実際の出来事を分かりやすく説明するために、この方法はとても効果的だと思う。

最初は房での憂さ晴らしに丸めた紙や、布でサッカーをしていた囚人たちだったが、週末に外でみんなでサッカーをさせてもらえるよう、看守長に文書で要望を提出し始める。それが認められるまでに実に4年を要しているというから驚きだ。その間、囚人たちはめげることなく看守長に文書を提出し続ける。看守側はまさに根負けした形となった。

さらに驚いたことに、彼らはFIFAのようにきちんとサッカー協会を作り、マカナサッカー協会と名付け、理事会やリーグを組織していた。ここは、荒くれ者たちが収監された刑務所ではなく、政治犯たちが収監された刑務所だったからということもあったのかもしれない。

ただでさえ、アパルトヘイト政策で黒人は虐げられているのに、刑務所に入れられ、強制労働をさせられ、白人の看守に人間以下の扱いを受けていた彼らにとって、週末の1時間足らずのサッカーの時間はどれほど生きる喜びを感じられる時間だったことか。

そのうち看守の中にもファンが現れ始め、ユニフォームまで調達してくれるようになる。サッカーは囚人と看守の関係までも少しずつ変えていった。

この作品の原題は「More Than Just a Game」
まさに、囚人たちにとってはサッカーはただのゲームやスポーツというものを越えて、彼らの虐げられ続けた人生において生きる希望となったのであった。

2007年FIFAはマカナサッカー協会に対して名誉会員の資格を与え、今年(2010年)には、(犯罪などの問題は残ったままではあったものの)サッカーワールドカップ南アフリカ大会は成功に終わり、ロベン島の元囚人たちだけではなく南アフリカの人々にとって、サッカーはまさに「More Than Just A Game」になった年だった。

マイアミバイス

2010-11-09 | シネマ ま行

TV版の「マイアミバイス」と言えばドンジョンソンを一躍有名にした人気シリーズで、それのリメイク映画化っていうからてっきり、軽い感じの刑事ものコメディだと思っていた。面子もコリンファレルジェイミーフォックスなら、軽い感じもお手の物だろうし。。。

と思ってフタを開けてみてビックリ。なんだ、このシリアス一辺倒の刑事ドラマは?でも、マイケルマン監督ってオリジナル版のエクゼクティブプロデューサーだったんだねー。それで、今回はシリアスバージョンを作りたかったのかな。とか言っちゃってますが、ワタクシもオリジナルバージョンのことを詳しく知っているわけでもないし、特に思い入れもないので、あんまりこだわりなく見れました。

巷ではあんまり評判良くないみたいですね。でも、ワタクシは結構面白かったな。マイケルマン監督ってあまり好きではないんですが。

コリンファレル演じるソニーと恋に落ちる(?)悪役のイザベルにコンリーを起用したのが、斬新だと感じました。ここへきてマイアミでなぜ中国系?という不思議はあるものの、ありふれた南米系よりも興味深いし、なんかミステリアスでしたね。結局この二人の関係に何か裏があるのかと思いきや、あったようななかったような、、、やっぱりイザベルはソニーに恋しちゃってたのかな。ソニーの素性がバレるラストでもジタバタしないイザベルが、さすがワルの女って感じでカッコ良かった。辛いけど、二人は未来なんて共に描ける間柄ではないものね。

この刑事二人の腕が本当に良くって、チームも素晴らしく優秀で、悪者との対決のところでイライラされられることがなかったのが、ワタクシは好きでした。銃撃戦も弾がほとんど的に命中ってあんまりないような…(苦笑)

リカルドの恋人のトゥルーディナオミハリスも助かったみたいだったし、めでたしめでたし、でした。


パンズラビリンス

2010-11-08 | シネマ は行



公開当時、評論家などからの評価が高かった作品なのだけれど、ちょっとテリーギリアム的な不条理な世界を勝手に想像して敬遠していた。ケーブルテレビの放映を撮っておいたのがあったので、今回見ることにした。

ギレルモデルトロ監督の作品は「ヘルボーイ」の「1」は見ていて、彼の想像するクリーチャーの感じだけは分かっていたので、映像的になんだか恐ろしいものになりそうだなと思いつつ見始めた。

1944年の内戦下のスペイン、オフィリアイバナバケロは独裁政権の軍のヴィダル大尉セルジロペスと再婚した母に連れられて軍の施設がある森にやってくる。大尉はレジスタンスを冷酷に惨殺するような人間で、再婚した妻(オフィリアの母)から生まれてくる息子だけに興味があり、母のこともオフィリアのことも疎ましい存在のように扱っていた。そんな悲しい現実から逃れるように本の好きなオフィリアはおとぎ話の世界に魅かれていく。

この現実とも、ただの空想ともつかないおとぎ話の世界がまたなんだかおどろおどろしい。普通ならこんな子供が考える世界はお花畑の素敵な世界だと思うのだけど、ギレルモデルトロ監督の世界は、そんな世界とは正反対。おとぎ話の国の番人であるパンダグジョーンズは見た目が非常に恐ろしい牧羊神。こんなものが目の前に現れたらたいがいの子供は悲鳴を挙げて逃げ出すと思うけどなぁ。オフィリアはそれほどに現実から逃げたいと思っていたということか。しっかし、あんな怖い牧羊神から言われたことを守らないってどんだけ怖いもん知らずよ?「何も食べるな」って言われたのに、なんで「ブドウ2個なら大丈夫と思って」って食べちゃうのよ?しかも、牧羊神より見かけが恐ろしいクリーチャーがいる部屋でわざわざブドウ食べるか?まったくもう。あの掌に目ん玉埋め込んであるクリーチャーは、大人でも夢に見そうなくらい怖いよ。掌をおでこのところでぱっと広げる仕草が変に滑稽なんだけど、それがまた薄気味悪さを増長させている。でもさ、最初から目が手についてたなら、どうして人間の目があるところに手を持っていくんだろ?もともとはそこに目があったけど、何かの事情で掌につけさせられたのかな?

こんなの↓(さぁ、あなたも夢に見なさい)


オフィリアが見るおとぎ話の世界と、継父、母、レジスタンスを取り巻く現実世界の2つがうまく融合されていて、どちらの話もちゃんと同時進行で理路整然と進んでいくところはとても気に入った。犠牲者は出たものの、最後にヴィダル大尉が報復を受けるところはスカッとしてしまったな。

全体的な雰囲気がスペイン映画の「永遠のこどもたち」になんとなく似ているなぁと思いながら見ていたら「永遠のこどもたち」のプロデューサーはギレルモデルトロだった。まぁ、関係があるかどうか分かんないけど。

最後はハッピーエンドと言うわけにはいかないかもしれないけど、オフィリアにはまだ救いがあって良かったと思わせてくれるラストで、子供が主役なだけにまだ救いがあって良かった。