シネマ日記

超映画オタクによるオタク的になり過ぎないシネマ日記。基本的にネタバレありですのでご注意ください。

パイレーツロック

2009-10-28 | シネマ は行

10月も終わりに差し掛かったところで、今年1番の作品に出会えたかも!

60年代です。ラジオです。ロックです。イギリスです。

そこんとこのキーワードに引っかからない人には、つまらない作品かもしれません。ワタクシはやっぱり好き。音楽に関してはオタク的に詳しいってことはないけど、やっぱり好き。そして、あの時代の雰囲気も、好きです。

とにかく、この海賊ラジオ局RADIO ROCKのDJたちがみんなカッコイイ。いや、見た目は全然カッコよくないエロじじいがほとんどなんだけど、それでもやっぱりカッコイイんですよ~。一番カッコイイのはどんな役をさせてもハマってしまう、完全メタボなヒゲおやじのザ・カウント(伯爵)フィリップシーモアホフマンですねー。なんで、あの顔で!あの体型で!あんなにカッコイイんだろうかぁ???すごく謎。いや、でもしびれるくらいカッコイイ。「イギリスです!」なんて高らかに宣言しておいて、一番カッコイイDJがアメリカ人ってどうよ?って思うけど。ごめん。

船長のクエンティンを演じるビルナイは今回キレた役じゃなかったですね。でも、この人が船長なんてもうそれだけでワクワクしちゃうじゃないですか。
ニックフロストもねぇ、あんなにデブでカッコよくもないのになんであんなにモテちゃうの?って普通なら思うところだけど、この作品の中だとまったく違和感ない。
伝説のDJギャビンを演じたリスエヴァンス。なんかこの人はイカレた役のイメージしかなかったんですけど、今回はめずらしくカッコよかったですね。いや、イカレてはいたけど。女にだらしなくてサイテーのヤツなんですけど、それでもなぜか仲間は結局許しちゃう。それほどにDJとして魅力があったということなんでしょうけど。
オバカなシック(thick)トムブルックも超クールなマークトムウィズダムもひきこもり系ロックな(?)ボブラルフブラウンも、他にも書ききれないけど、みんなみんなイイんだよな~。
そして、クエンティンの友人である母親シャーロットエマトンプソンに更生のため(無理やろ?)この船に放り込まれた18歳のカールトムスターリッジの顔立ちがとっても60年代してて良かったな。

ここで語られるエピソードのほとんどが下ネタ系でして、それが苦手な人は辟易してしまうかもしれません。ワタクシはめちゃくちゃウケました。下ネタ系だけじゃなくて他のシーンもかなりウケたシーンが多かったです。ワタクシは「ラブアクチュアリー」を生涯最高の映画のひとつと思っているので(なんせ「ラブアクチュアリー」だけで5つも記事書いちゃってますからね)リチャードカーティス監督とは感覚が合うのかもしれません。

彼らを取り締まろうとするケネスブラナーを中心とする政府側との対決はそんなに直接的ではないですが、どんなふうになってもロックを愛し、反骨精神で乗り越えていく彼らの姿がとても痛快でした。見ている観客もまるでRADIO ROCKのリスナーになったような気分になれました。

そして、さんざん笑ったあと、最後の放送でザ・カウントが言う「世の中を変えるのは政治家じゃない。夢を持った若者たちがその夢をロックに乗せる。たとえ、自分たちがこの世から姿を消しても書き継がれていくロックンロールが世の中を変えるんだ」というセリフには思わず涙してしまいました。彼らの熱い思いが伝わって自然に涙してしまったシーンでした。

クライマックスのタイタニックぶりはちょっと時間取りすぎかな~という気がしたけど、どうせ助かるに決まってるやろと思っていたザ・カウントが浮上してきたときには「おおおおおーーー!」って嬉しくなっちゃいました。

60年代ロックがテーマの映画ですからね。音楽が素晴らしいことは言うまでもないですね。冒頭から自然に体が動いてしまいます。映画館で黙りこくって座って見てる場合じゃないよってね。いやー、楽しかった!


風が強く吹いている

2009-10-23 | シネマ か行
試写会に行ってまいりました。

ワタクシ、長距離走は何よりも嫌いですし、箱根駅伝もいままでテレビでちらっと見たことがあるくらいで全然興味なかったです。なので、この作品も試写会が当たらなければ見ることはなかったかもという感じの作品でしたが、内容は面白かったです。

高校のとき足をケガしていらい第一線から外れていた寛政大学4年生のハイジ小出恵介が1年生のカケル林遣都をスカウトし、やっとの思いで弱小(というか実体の全くなかった)陸上部10名で箱根駅伝を目指そうと言う。ハイジとカケル以外の8名はいままで長距離の経験のないものがほとんどだったが、青竹という陸上部の寮に住み、ずっとハイジが作るバランスの取れた食事を摂り、まかないつきで月3万という格安の寮の「毎朝5キロ走る」という条件だけは守りながら生活していた。ハイジはその基礎体力があれば、これから1年間練習をすればこのメンバーなら充分に箱根を狙えると言うのだ。

漫画オタクでもっとも体力のない王子中村優一
ニコチン中毒で留年しているニコちゃん先輩川村陽介
海外留学生のムサダンテカーヴァー
田舎では“神童”と呼ばれていた凡人の神童橋本淳
すでに司法試験に合格しているユキ森廉
クイズ王のキング中野謙太
双子のジョータ斉藤慶太とジョージ斉藤祥太

10人いて、覚えるのが大変なんだけど、それぞれが個性的で少しずつ全員の背景とかが分かる仕組みになっていて、双子の見分けだけはつかなかったけど、一人一人に感情移入ができるように作られていたところが良かった。

熱血スポ根ものなんだけど、それだけではなくってところどころに笑いがあったのも良かったな。くすっとなる笑いとほろっと感動するところが両方あって、いい感じでした。ほろっとするエピソードがいくつも挿入されるけど、やっぱり一番は神童のエピソードだろうな。彼のシーンでは劇場でも鼻をすする音がそこここで聞こえていました。

真剣に箱根駅伝を目指している人からすれば、そんな簡単に箱根に出られるわけがない!って怒られるかもしれないけど、その辺はまぁ許してちょーだいなってとこでしょう。

とは言え、この作品に出演している役者さんたちは結構真剣にトレーニングを積んでから撮影にのぞんだらしく、特にカケル役の林遣都くんの体はすっかり本物の長距離選手のようで、走っている姿もすごくリアルだった。実際にトレーナーに長距離走の選手にスカウトされたとかっていうウワサは本当かどうか分かりませんが。

小出恵介くんは、「のだめ」の真澄ちゃんの演技しか見たことがないんですが、真澄ちゃんの演技とこのハイジの演技ができるということはこの2作品を見ただけで十分に演技の幅の広い人だということが分かりますね。ちょっとクサめになってしまいがちな役どころで難しかったと思うんですが、まだセーフな感じでした。

原作が直木賞受賞作品でもありますし、最近、マラソンブームなことも手伝って見に行く方も多いかもしれませんね。

私の中のあなた

2009-10-15 | シネマ わ行
キャメロンディアスが初の母親役ということで、早くから楽しみにしていた作品でした。ニックカサベテス監督はBプラスからAマイナス的な作品が多いなぁという印象ですが、映画作りに真面目に取り組んでいる感じがワタクシは好きです。子役も「リトルミスサンシャイン」のアビゲイルブレスリンちゃんということで楽しみでした。

白血病の姉ケイトソフィアヴァシリーヴァのドナーとなるべく、遺伝子操作によって誕生した11歳のアナ(アビゲイル)は、もうこれ以上姉のために自分の体を犠牲のするのはイヤだと、両親を訴えることにする。

この作品の説明はだいたい上に書いた感じのことがどこを見ても書いてあると思う。この説明文を読んでワタクシは、とってもアメリカ的な裁判ものなのかと思っていたのだけど、実際にはそういうところにスポットがあてられているのではなく、きちんと病気の娘のいる家族というものに焦点があてられていてホッとした。

ケイトを助けたいあまり、ケイトを最優先事項にすることが家族全員の当然の義務であると考え、アナに訴えられたあとも本気でアナと戦おうとする母親サラ(キャメロン)
サラの気持ちも理解しつつも、アナの訴えをきちんと受け止め話し合おうとする父親ブライアンジェイソンパトリック
自分の病気が自分を蝕んでいくことには耐えられても、家族を蝕んでいくことに耐えられないケイト。
姉のケイトが病気になったことで失読症の自分のことは常に二の次にされてきた弟ジェシーエヴァンエリングソン
もうこれ以上ケイトのために犠牲になるのはイヤだと両親を訴えるアナ。

この作品のいいところはこの家族5人全員にきちっとスポットがあてられているところだと感じました。ケイトの病気ことが中心になっているのはもちろんですが、それをそれぞれがどのように受け止めているのか、それぞれの心の中はどうなっているのかということをきちんと描いているところが素晴らしいと思います。こういうタイプの映画ではおろそかになりがちな、弟ジェシーの立場の役どころもきちんと描かれていて、ワタクシはそこが好きでした。ケイトと同じ病気のテイラートーマスデッカーとの恋愛もひとつのエピソードとしてだけではなく、微妙な心のひだまできちんと描かれていたし。

そして、この5人に加えて、アナが弁護を依頼するキャンベルアレグザンダー弁護士アレックボールドウィン、この裁判の担当判事ジョーンキューザック。この二人が脇でしっかり映画を締めてくれる。この二人がすごくイイ人なんですよねー。それがまた泣ける。この二人それぞれのシチュエーションがうまく物語にもフィットしていて良いです。

ワタクシはもう中盤からずっと号泣状態でした。まーそりゃーお涙頂戴ですよ。そんなこと分かってます。それでもね。だって子供が病気なんだもん。最後まで戦いたいお母さんの勝手ぶりも仕方ない。ないがしろにされる他の兄弟たちのやるせなさも辛い。家族を心配するケイトが痛々しい。そして、この兄弟3人の仲の良さにも泣けるんですよ。ちゃんとそれぞれがそれぞれを想い合ってる。ケイトがそれぞれに申し訳ないと思っている気持ち、自分の病気への苛立ち、悲しみ。やっぱり涙なしでは見られない。あのケイト手作りの本はもう反則ってくらい泣けた。最後はお母さんのほうがケイトに諭されてたりなんかして。子供のためにすべてを投げ打つことができる母親は強いけど、その分その存在がなくなることに対しては当の本人より弱い存在になってしまうっていう部分にも、すごくストレートに感動しました。

結局アナの行動には秘密があって、それが徐々に明らかにされていくんだけど、そこんとこもまぁだいたい想像はつくんですが、それでもやっぱり感動しちゃいました。時間軸をいじってあって、映画的にもうまい作りになっていると思います。

キャメロンは、いつも太陽のように笑っていて欲しい人ではあるけれど、こういう役もちゃんとこなせます。いままでだって、ヘンテコな役や真面目な役もやってきるしね。アビゲイルちゃんは子役の中では群を抜くうまさではないでしょうか。ケイト役のソフィアヴァシリーヴァは実際にスキンヘッドにするという気合の入れよう。ジェシー役のエヴァンエリングソンもテイラー役のトーマスデッカーも二人とも可愛い格好良くてこれから要注目。もしかして、何年かして振り返ると、ものすごい面子の家族ってことになるのかも。

クワイエットルームにようこそ

2009-10-14 | シネマ か行

2007年の作品ですが、ケーブルテレビで放映していたので見てみました。

原作が松尾スズキということで、一筋縄ではいかないだろうなと思ってはいたのですが、意外に分かりやすかったかな。もっと、オサレ映画的なつまらなさがあるんだろうなと思っていたんだけど、わりと真面目に描かれている部分も多くて好感が持てました。

真面目な部分もあるとはいえ、それはもちろん松尾スズキのことですから、ブラックなユーモアがたくさんです。それが行き過ぎにならない絶妙なバランス感覚がやはり芥川賞候補にまでなる才能というやつでしょうか。

主人公佐倉明日香を演じる内田有紀が頑張ったなぁっていう感じですね。女優としての才能は早くから認められていたと思いますが、今回は顔はゲロまみれだわ、回想場面では終始酔っ払ってるわ、風俗で働いちゃうわ、変なダンス踊っちゃうわ、オマケに宮藤官九朗の生ケツまで触っちゃうんだからね。結婚して、離婚して、復活映画に松尾スズキ選んじゃって大丈夫?と昔からファンのワタクシとしては心配だったんですけど、新たなスタートとしてこの作品を選ぶあたり、ただのアイドルあがりじゃないのよってことを証明したかったのかもしれません。

蒼井優ちゃんの役も切なくて良かったですね。マトモそうでやっぱりマトモじゃないんだろうけど、彼女の考えって実は一番マトモなのかもしれないなんて気になったりして。

シチュエーションだけを聞くと「17歳のカルテ」日本版なのかぁと思って、蒼井優ちゃんがアンジーが演じた役っぽい感じなのかと思ったけど、実際には精神病棟っていうのが同じなだけで、映画の中身としては「17歳のカルテ」よりずっとこっちのほうが良かったと思う。日本人的な感覚が合う部分があるのかもしれないけど、こっちのほうがずっとリアルで等身大な感じがして良かった。明日香が本当は全然問題ないけど、ただ精神病棟に入れられちゃったっていうわけではなくて、やっぱり心のどこかに問題があって、この事件をきっかけにそれと向き合えるようになるっていうところがちゃんと描かれていたのも良かったと思います。


ATOM

2009-10-13 | シネマ あ行

「鉄腕アトム」は実際にテレビで見ていた世代じゃなくても、多くの人が郷愁を感じる作品ではないかと思います。そんなアトムがアメリカ、香港の製作によるCGアニメとなって帰ってきた!と言っても、ポスターを見た瞬間から「へ?」ってなった人が多いんじゃないかな。だって、主人公の顔が全然アトムじゃないんだもの。

もうそれを見ちゃった瞬間から、この作品を鑑賞するためには
「これは別物、これは別物これは別物
って碇シンジの呪文のように唱えなければいけないんだよ、きっと。

と、思いながら試写会へ行ってまいりました。

期待してなかったからなのかな。フタを開けてみると結構良かったんじゃないかなと。「これは別物」と大げさに唱えてみたりしたものの、そんなにたくさんの人がアトムに詳しいわけじゃないんですよね。いまの大人の大半ってそんな感じじゃないですか?ワタクシはわりと手塚治虫が好きなので、ちょっとは知ってたりしますけど、若い世代のほとんどの人がアトムって御茶ノ水博士が作ったロボットだって思ってたりすると思うんですよ。だからまぁ、アメリカの新しいCGアニメとして見れば悪くはないんじゃないのと。

なんでテンマ博士は息子に似せたロボットにあんなに武器をいっぱい搭載したのかすごく謎なんですけどね。あれがないと、アトムは戦えないからそれはスルーしますか。

やっぱりアメリカ映画だから、アトムは死んだりしないんですね。その辺はやっぱり原作に沿うわけにはいかないんでしょうね。アメリカの子供向け映画で主人公が死んだりしたら、「そのせいでうちの子がトラウマになったー!」とか言って訴えられちゃったりしてねぇ。とまぁ冗談はさておき。

犬のロボットがわりと脇役としては目立ったりするところはやっぱりアメリカっぽいなぁと思いました。ロボット革命団はもうちょっとお笑いの役目をちゃんと果たしてほしかった。

ワタクシは吹き替え版を見たんですが、上戸彩ちゃんの吹き替えはなかなか良かったと思います。テンマ博士を演じた役所広司はなんだか一本調子でイマイチだったような。。。

最後に「空を越えて~ラララ星の彼方~」っていう例の主題歌が鳴るんだけど、これって作詞が谷川俊太郎さんなんですね。知らなかったー。3番の歌詞に「人間まもって~」っていうフレーズがあって、なんだかここの部分に来ると妙に目頭が熱くなっちゃうんです。アトムが命がけで守るほど人間に価値があるのか??って真面目に問いかけたくなっちゃうんですよね。そこんとこ、手塚さんも問いかけてるのかもしれないなぁと思います。


きみがぼくを見つけた日

2009-10-07 | シネマ か行

ヘンリーエリックバナは、自らの意思とは関係なく時空を旅してしまうタイムトラベラー。どんな時、どんな場所に行くかは自分では選べず、どんな瞬間に移動してしまうかも選べない。そして、最悪なことに移動するときにはなんと素っ裸で移動してしまう。いま現在の世界にいる彼は突如として、洋服の中身だけがどこが別の時空へ行ってしまうというのだ。移動した先では、どんな不法な方法を取ってでもまず着るものを確保しなければいけないので、必ず追われる身となり、時には逮捕されたりもするが、その時空からはどうせまた消えてしまうので、彼は逮捕されても気にしない。タイムトラベルは小さいころから起こっており、6歳のころ母親ミシェールノルデンと乗っていた車で事故に遭ったが、そのときタイムトラベルしてしまい、自分だけが助かってしまうという過去を持っていた。

そんな彼が青年になり、ある日クレアレイチェルマクアダムスという女性に出会う。彼女はヘンリーを昔から知っており、こうして同じ時空で出会うのを待っていたと言う。ヘンリーは自分の意思で移動する先は選べないが、なぜか同じ時空に何度も行く傾向があるらしい。幼いクレアの元にたびたび現れていた中年のヘンリー。青年時代のヘンリーにとっては初対面の女性だが、クレアは物心ついたときからずっとヘンリーに恋していたというのだ。

目の前に突然レイチェルマクアダムスみたいな可愛い女の子が、「あなたに恋してるのよ」なんて言って現れたら、ほとんどの男性は簡単に恋に落ちてしまうのではないだろうか。彼女は昔から自分を知っており、出会った瞬間から「あなたに夢中」とばかりに積極的に迫ってくる。ヘンリーの場合においては奇妙な特殊事情があるだけにそれを簡単に受け入れてくれる女性の存在はかなり大きかったと言えるだろう。クレアと付き合い始めた直後に、ヘンリーが過去に移動し、自分が3歳のころの母親と出会い、他人のふりをしながら「恋人ができて、とても幸せなんだ」と伝えるシーンには自然に涙があふれた。

二人は結婚し、子供をもうけるが、胎児がヘンリーと同じ特殊な事情を抱えているのか、いつも流産という結果に終わってしまう。それでもあなたとの子供が欲しいと言い張るクレアの体を心配したヘンリーはクレアに黙ってパイプカットの手術を受けるのだけど、そのことをすぐにクレアに告白してしまったのには、なんだかハテナだった。告白してもどうせクレアを傷つけるだけだし、せっかく黙って手術したなら、そのまま墓に持って行くくらいの気持ちでいなければいけなかったんじゃないのかって気がする。その告白を聞いたクレアは、時空を越えて過去からやってきたヘンリーとセックスして子供をもうけてしまう。これは「賢者の贈り物:精子版」???なんて変なことを考えてしまったけど、ちょっと違うか

そして、生まれた子供アルバもタイムトラベラーだったけど、どうして彼女は無事に生まれてきたのかはよう分からん。まぁヘンリーも無事に生まれているのだから、変なことではないか。

そのアルバのタイムトラベルで、アルバが5歳のときにヘンリーが死んでしまうってことが分かっちゃうんだけど、この辺はタイムトラベルものにはつきものの矛盾っていうのが思い切り顕著に出てきてしまう部分で、若い時代にアルバに会って自分が死んでいることを知っているはずのヘンリーが実際にその歳になって、まるで初めて知ったようなリアクションをしているのが、なんだか不思議。まぁ、いろいろ指摘しちゃうと他にもボロボロと出てきそうだからやめておいたほうがいいかもしれない。

しかし、アルバもタイムトラベラーってことらしいけど、女の子だし、素っ裸で移動しちゃうって大変だなぁ。

全体的には当然、ありえん!なことだらけなんだけど、クレアとヘンリーの愛情物語としてはやっぱり感動しちゃうし、矛盾だらけだけど、ヘンリーが死んでからもクレアがずっとヘンリーの服を用意して待っているところなんかにはジーンときてしまいました。レイチェルマクアダムスも可愛いし、それでいっかってな感じです。

ヘンリーが義理のお父さんに撃たれて死ぬんじゃなくて自分自身に撃たれて死ぬほうが展開としては面白かったかなぁ。なんて考えてしまったワタクシはむごい人間でしょうか。


ココアヴァンシャネル

2009-10-06 | シネマ か行

先日「ココシャネル」を見に行ってからこちらのバージョンはどんな感じか気になっていたので、見に行ってみました。

あとで知ったのだけど「ココシャネル」のほうはテレビ映画だったということらしいし、こちらのほうがフランスの製作で、シャネルのデザイナーであるカールラガーフェルドが衣装の監修もしたということで、こちらのほうが本格的なお話なんだろうなぁと思いながら行きました。

この作品も「ココシャネル」も彼女のほぼ同時期を切り取って映画にしてるんですよね。それでいて、解釈というか話の筋が全然違う。「ココシャネル」のほうでは情熱的にココを口説いて自分の屋敷に住まわせたエチエンヌバルサンでしたが、こちらのエチエンヌブノワポールヴールドは、酒場でちょっとココオドレイトトゥにちょっとちょっかいをかけただけの人。なんかすごいおっさんだったし。その後ココのほうからエチエンヌの屋敷に押しかけ女房ならぬ、“押しかけ愛人”しちゃう。ココを自分の友達ボーイカペルアレッサンドロニボラにとられそうになってプロポーズはするものの、こちらのエチエンヌは情熱的にココを愛していたとは思えない感じだった。そして、ココが本気で愛するボーイカペラのほうもココと知り合ったときにすでに別の女性との結婚が決まっていて、ボーイカペラが別の女性と結婚したあともずっと愛人関係は続いていて、ココが開いた帽子屋への投資も行っていたというところも「ココシャネル」とは微妙に物事が起こる順番が違ったり。

先に「ココシャネル」を見ていたせいで、「あ、ここも違う。ここも」と思いながら見ていた分イマイチ物語そのものに集中して見れなかった気がする。もちろん、恋愛を描く中にも彼女が既存の女性のコルセットやドレス、無駄な飾りなどを嫌って自分で男性用の服を改造して着ていたさまや、それを周囲がどんなふうに受け止めていたか、シャネルの特徴である、黒、マリンルック、ジャージ素材などとの出会いも描かれてはいる。

ただ、ワタクシとしては彼女の恋愛の部分よりも、彼女のファッションが世界でどのように受け入れられ、評価され、広まっていったかとか、どんなふうに新しい服を創造していったかとか、ファッションショーの裏側はどんな感じだったかといったことのほうに興味があったので、その辺を見たかったなぁと。まぁそれは、ワタクシが勝手に見たいと思っている部分なので、そんな仕事の面より彼女のプライベートとか恋愛とかに興味がいく人のほうが多いのかな。それに原題の「COCO AVANT CHANEL」っていうのは「シャネルより前のココ」って意味らしいから、シャネルがシャネルになる前のココの素顔ってことで、ココシャネルの仕事ぶりを見れることを期待するのは的外れというわけだろう。

もうこうなったら、せっかくだから「シャネル&ストラビンスキー」も見に行ってみようかな。


陽気なギャングが地球を回す

2009-10-05 | シネマ や行

ケーブルテレビで放映していたので見てみました。

他人の嘘がわかってしまう男成瀬大沢たかお
コンマ1秒まで正確に時を刻むことのできる体内時計を持つ女雪子鈴木京香
演説をさせたら右に出る者はいない男響野佐藤浩市
若き天才スリ久遠松田翔太
この4人が偶然に出会い、ロマンあふれる犯罪、銀行強盗をやらかす。
あ、ついでに響野の奥さん役で加藤ローサちゃんも出ています。

この作品には原作があるので、原作を読んだ人にとっては映画は面白くないできばえだったようなのですが、ワタクシは原作を読んでいないので、普通に楽しめました。

鈴木京香と大沢たかおが好きなので、公開当時から興味はありました。内容もおもしろそうだったし。始まってみると、この嘘を見抜ける男と正確な体内時計を持つ女の設定よりも佐藤浩市が演じた演説をさせたら右に出る者はいない響野という男が一番面白かったな。佐藤浩市って渋い役も似合うけど、こういうちょっとおちゃらけた役やるときがワタクシは好きです。本人も結構楽しそうだし。成瀬と久遠が現金を詰めている間に人質たちにとうとうと語る響野の「時間の話」とか「夢と現実の話」とかが面白くてついつい聞き入っちゃう。実際にはどっかで聞いたような話をつらつらとつなげて喋ってるだけのようにも思えるんだけど、響野の話術についつい聞きほれてしまいました。そこんところは全然物語の中軸ではないんですが。

この4人がまんまと銀行強盗に成功して逃亡中に、突然現れた別の強盗にあっさり現金を盗まれたからさぁ大変ってわけで物語が進むのですが、この逃亡とかになんだか安っぽいCGが使われていて、物語の前半で「あぁ、残念」と思ったんだけど、こういう軽いタッチのお話だからその辺もわざとなのかなと。そして、この安っぽいCGを入れて、いかにも架空のお話とすることで、日本では簡単にはありえない銃の発砲とか盗難車での逃走とかメキシコへの高飛びなんかを一気に許せる出来事にできるのかもしれないなということで納得することにしました。

ワタクシが好きな鈴木京香と大沢たかおが想いあう仲で最後にはちゃんとくっついてくれちゃうというだけでもう結構満足してしまったので、話の中身はなんか中途半端やけど、ま、いっか~っていう気になっちゃいました。最後の展開はかなり読めちゃったけど、日本にはこういうロマンのある犯罪映画が少ないので、これくらいで及第点あげちゃおうかなと。


あの日、欲望の大地で

2009-10-02 | シネマ あ行
ヘヴィな物語です。「21グラム」「バベル」の脚本を手がけたギジェルモアリアガの監督作品ですから、多分へヴィなものになるだろうことは予想はできると思います。作品全体の雰囲気も前2作品とかなり似たような感じだと思いました。前2作品は脚本だけで、監督はどちらもアレハンドロゴンザレスイニャリトゥ(いつもながらすごい名前だ!)なんですよね。2作品ともコンビを組んでいて、どちらもメキシコ人ですから、きっと仲良しなんでしょうね。それで、ある種の世界観を共有しているということでしょうか。

ひさしぶりに登場のキムベイジンガー。歳は取りましたが、相変わらず美しかったです。彼女って純粋に美人ではないと思うんですが、かもし出す雰囲気が良いんですよね。まさに女優って感じ。今回の役どころは、母親、妻、女という顔を見せ、彼女の繊細な部分がうまく投影されていたと思います。

シャーリーズセロン「モンスター」で、美人なだけじゃなくてどんな演技もできちゃうってことはすでに証明済みですから、今回のヌードに驚くこともないんですが、彼女のヌードを目当てに行く人もいるかな?でも、ワタクシ思うんですが、シャーリーズセロンって顔は非常に美人さんですが、脱ぐとそんなにきれいな体しているわけではないなぁと。いや、あれだけの美人さんですから、もうそれで充分なんですけどね。

母親(キムベイジンガー)の不倫現場を見てしまう娘マリアーナジェニファーローレンス、のちシャーリーズセロン。多感な思春期の娘が母親の不倫現場を目撃してしまうとは、どんなに辛い経験でしょうか。不幸な事故によって母親と不倫相手ヨアキムデアルメイダを亡くし、その不倫相手の息子サンティアゴJ.Dパルド、のちダニーピノと恋に落ちてしまうマリアーナ。それが父親にバレてしまい、二人は荷物をまとめて駆け落ちをする。

物語は、過去と現在を行ったり来たり、いつものギジェルモアリアガのやり方で進んでいきます。現在のマリアーナはなぜかシルヴィアと名前を変え、一人で生活をしている。彼女にはどうやら恋人ジョンコーベットがいるらしいが、彼は既婚者で、シルヴィアは次々と手当たり次第に男を自室に招き入れるというすさんだ生活をしているらしい。高級レストランの店主として働いてはいるものの、心にキズを持ち、自殺願望さえ持ちながら生活していることが分かる。彼女がここに至るまでに一体何があったのか。過去と現在を行ったり来たりする中でその秘密が徐々に暴かれていきます。

このギジェルモアリアガのやり方に慣れていない人は少し戸惑うかもしれませんね。それから、マリアーナがシルヴィアと名前を変えていることから、二人が同一人物だとすぐに分からなかった人にはもっと分かりにくかったかも。ワタクシは予告編を見ていたので、その辺は分かって見ていたから問題はありませんでした。それにしてもいつも言っているんですが、予告編は見せすぎですね。どちらにしても映画鑑賞初心者には少し難しいかもですが。

マリアーナを演じたジェニファーローレンスとシャーリーズセロンは顔は似てるってわけじゃないんですが、彼女が家からコンビにまで歩いて行くシーンで、その歩き方がもの凄くシャーリーズセロンに似ていたので、ビックリしてしまいました。わざとやっていたのか、偶然か、それともワタクシが意識して見すぎていたせいか分からないんですが。キムベイジンガーもシャーリーズセロンも良かったんですが、この作品中で一番良い演技をしていたのはこのジェニファーローレンスじゃないかなと思います。

さて、心にキズを負ったまま生活を続けるシルヴィアの前にカルロスホセマリアヤスピクという見知らぬ男が12歳の子をつれて現れます。それが、シルヴィアが12年前に産み捨てた娘だと言って。父親サンティアゴが事故に遭い、カルロスに娘をシルヴィアの元へ連れて行き、シルヴィアを自分の元へ連れて帰るように頼んだと言うのです。最初は逃げ出したシルヴィアでしたが、やはり考え直し娘マリアに会って許しを請います。自分のようになってほしくなくて逃げ出したのだと。それはもちろん自分勝手で無責任な言い訳でしょう。彼女のしたことが許されるわけはありません。しかし、見ているほうとしては彼女の母親のことを知っているだけに、思春期の彼女がしてしまったことを責めるだけの気持ちにはなれませんでした。

この物語の中にはたくさんの“罪”が存在します。母親の不倫に始まり、事故、その息子と娘の恋、娘が赤ちゃんを産み捨てたこと、その後の彼女の生き方。しかし、監督はそのいずれにおいても、それを犯した者たちがすべて悪いというようには描いていません。母親の不倫に関してもおそらく乳癌で乳房を切除したことにより、夫婦仲がぎくしゃくしていたように解釈できるし、あの事故に関しても、招いた結果は大きかったけれど、それが“悪”から生まれたものではないことを描いています。これらの罪を観客がどこまで許すかによって、この作品の評価は大きく分かれるかもしれませんね。すべてが自分勝手でムカつくと感じる方もいるでしょう。ワタクシは、すべてにそうならざるを得なかった理由があると感じたけど、それはただの言い訳に過ぎないのかもしれませんね。キムベイジンガーとシャーリーズセロンをひいき目に見ているせいもあるかも。。。

言葉で説明するとひとパラグラフで簡単に終わってしまいそうなこの物語をこれだけ重厚な物語に仕上げてしまう監督の演出力に脱帽しました。そして、この罪だらけの物語の中で、ようやく“贖罪”が始まる最後のシーン。そのシャーリーセロンのなんとも言えない表情が心に焼きついた作品でした。

オマケ原題の「THE BURNING PLAIN」というのは、シルヴィアの“秘密”を端的にうまく表現した題名だと思いますが、邦題の「あの日、欲望の大地で」というのもなかなかセンスがありますね。