シネマ日記

超映画オタクによるオタク的になり過ぎないシネマ日記。基本的にネタバレありですのでご注意ください。

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ミレニアム2~火と戯れる女

2012-10-31 | シネマ ま行

前作から1年後。リスベットノオミラパスは前回で得た大金で世界中を旅してそろそろスウェーデンに戻って来ようかというころ。ミカエルミカエルニクヴィストの所属する雑誌「ミレニアム」には東欧やロシアなどからの人身売買にからむ少女買春の実態とそれに絡む大物政治家や権力者の名前を暴くという企画が持ち込まれていた。本格的にこの記事に力を入れようとしていたとき、それを持ち込んだフリーの記者ダグハンスクリスティアントゥーリンとパートナーのミアイェニーシルフヴェルヘルムが自宅で殺害された。その仕事の件でダグの自宅を訪問したミカエルはその第一発見者となってしまう。

リスベットはスウェーデンに戻ってきて、後見人ビュルマンペーターアンデションのPCをハッキングして彼がタトゥーを消そうとしていることを知り、彼の家に脅しに行きます。彼が机の引き出しに入れていた銃を彼に向け「そのタトゥーを消したら殺す」と脅します。

殺されたダグとミアはなぜかそのリスベットが握った銃で殺されており、リスベットの指紋が出たことからリスベットが第一容疑者となってしまう。リスベットの無実を信じるミカエルはこれが何かの陰謀だと思い、売春組織の裏を探りつつリスベットの無実を証明しようと奔走する。

この売春組織を牛耳っているザラゲオルギーステイコフという男が一連の事件の鍵を握っているらしいということをミカエルもリスベットもそれぞれ別々の捜査で突き止める。

前回ちらっと見せられたリスベットの過去の出来事がこの回で明らかになります。リスベットが12歳の時母親に暴力をふるい障害者にしてしまった父親に火をつけたこと。父親は生き延びたがリスベットは精神病院に無理やり入れられ、その病院でもひどい目に遭ったこと。

リスベットは警察から追われますが、冒頭から謎の金髪の巨人ミカエルスプレイツが執拗にリスベットを追っています。リスベットの居場所を探るためにリスベットのアパートにいた(リスベットとはレズ関係の)友人ミリアムヤスミンガルビを拉致して拷問したりする謎の大男。こいつはビュルマンともつながっていたんだよなー。一体何者?

ミカエルとリスベットはまったく別々に行動していますが、同じ結論に達します。このザラという人物が元KGBでスウェーデンに亡命してきたスパイであること。そして、闇組織の重鎮であること、そして、そして、なんとリスベットが火をつけたあの父親だということ。ザラはあの時からリスベットを憎み、実の娘でありながら金髪の大男に銘じてリスベットを殺そうとしています。そして、この金髪の大男はニーダーマンといい、リスベットの異母兄弟というではないですか。

なんかね、前作の感じからするとミカエルとリスベットの二人でまた協力して売春組織を暴いていくのかと思ったらまったく違った展開でびっくりしました。最初にダグたちが調べていた話は一体どこへいったの?と途中から思ってしまったんですが、それもこれも全部リスベットの秘密につなげるためのものだったんですね。そして、リスベットとミカエルはまったく一緒に行動しないし、なんか変な感じでした。別にこの二人の名コンビものというお話ではなかったわけですね。そこがなんか期待していたのと違ってちょっとがっかりしてしまいました。リスベットの調査能力とかにかなり期待していたので。

最後にリスベットとザラ、ニーダーマンとの対決はかなりエグいものがありました。あそこまで撃たれて穴に埋められても這い上がってくるリスベットってほんともうちょっと笑っちゃうくらいすごいですね。ザラにも一矢報いるわけですが。ここで、瀕死のリスベットをミカエルが発見してやっと二人の再会。アンド、ジ・エンド。ってわけで、え?と思いました。これって「2」と「3」は2部作だったんですね。知らんかった。どうりで、なんかいろいろ宙ぶらりんで終わったわけだ。なので、評価としてはちょっと落ちるのは仕方ないかなと思います。すべては「3」の前振りという感じがありますからね。いまから、見ようという方には「2」「3」はぜひ連続でご覧になることをオススメします。

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ミレニアム~ドラゴンタトゥーの女

2012-10-30 | シネマ ま行

ケーブルテレビで1~3まで連続放映があったのを録りだめしていました。先日一気に鑑賞しましたので「ミレニアム祭り」を始めたいと思います。

まず、ハリウッド版の「ドラゴンタトゥーの女」を先に見てしまっているので、感想がなんだかあべこべな感じになってしまうかもしれませんが、ご容赦ください。

ストーリー的にはそんなに大きな違いはなかったんですけど、ハリウッド版でもミカエルミカエルニクヴィストって失踪したハリエットの一族と知り合いでしたっけ?小さいときにミカエルのお父さんがこのヴァンゲル一族に雇われていてミカエルは失踪直前のハリエットに一緒に遊んでもらったりしていたって言ってたんだけど、そんな設定あったっけなぁ?ワタクシが忘れているだけですか?

リスベットノオミラパスのキャラもハリウッド版で見てしまっているので、そんなに衝撃っていうのはなくてノオミラパスになんだか申し訳ないような気がしたんですけど、ハリウッド版のリスベットはちょっと思っていたよりも乙女チック過ぎるところがあったので、こちらのバージョンのリスベットのほうが原作には近いのかなぁと思ったりしました。と言っても原作を読んでいないので勝手な想像です。ごめんなさい。リスベットのレイプシーンはハリウッド版に比べるとまだ少しマイルド(ってか、あれでマイルドと言わせるほどハリウッド版がすご過ぎるってことですが)だったので、まだちょっと安心しました。このオリジナル版を見ると、ハリウッド版であそこまでやる必要があったのかと改めて思いましたね。リスベットの復讐シーンはハリウッド版同様スッキリしました。あとは、こちらのほうがリスベットの過去をちらっと見せていますね。

ミカエルもダニエルクレイグに比べると随分野暮ったい感じなんですが、これも原作に近いのはこちらというウワサですね。キャストだけではなくて、全体的な雰囲気もやはりこちらはなんとなく野暮ったい感じに見えてしまいました。なんせデイヴィッドフィンチャー版を先に見ているので…すみません。

失踪したハリエットを探す過程で、数件の未解決の殺人事件が連続殺人事件へとつながっていくという面白さがあります。それはもう知っているストーリーなんですが、不思議と見ていく中で退屈になるということはありませんでした。この辺りはやはり原作がうまくできているからなんでしょうね。ただ、未解決の猟奇殺人の写真とかをジャーナリストと得体の知れん女が見せてくれと言って警察が簡単に見せてくれるのはちょっと不思議でした。あーいう類の殺人ならなおさら一般には非公開なんじゃないかと思うんですが。

犯人と対峙するときのミカエルが、やたらと強かったりしないところがリアルでいいですね。たいがいハリウッド映画なんかだと、全然強くないはずの人が急に悪者を退治しちゃったりしますけど、このミカエルはリスベットに助けられるというところがいいです。

犯人を助けはしなかったリスベットをミカエルは少し責めているような感じでしたが、あれはどうなんでしょうね。リスベットの気持ちも分かる気はするし。でも、まだまだ公になっていない犠牲者がいたわけですから、きちんと犯人を生かして証言させなければいけないことが山ほどあった気はします。

完全にネタバレですが、生きていたハリエットにたどり着いたのは、なんだか唐突感がありました。ハリウッド版ではそれを少し修正していた感がありますね。

ミカエルとリスベットの関係は、どちらが原作に近いのか知りませんが、こちらではリスベットよりもミカエルのほうが気にかけている感じで、ハリウッド版ではリスベットがミカエルに恋しちゃった感じに描かれていましたね。「2」「3」を見たから言えるのですが、「2」「3」の展開のことを考えるとミカエルのほうがリスベットを気にかけているというほうが自然かもしれません。

冒頭でミカエルをハメた実業家から最後に大金を手にしたリスベット。「1」の最後としてはリスベットが幸せになってくれたらいいなぁと思って終わりになりますが、続きを見るとそう簡単には幸せになれない星の下に生まれているようです。

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最終目的地

2012-10-29 | シネマ さ行

ひさびさのジェームズアイヴォリー監督の作品だったので、これは見に行かなくちゃと思って行きました。

コロラド大学の教員オマーラザギオマーメトワリーは1冊の著書を残して自殺した作家ユルスグントの伝記を書くために遺族に公認を求めていたが、ことわりの手紙が来てしまう。彼は恋人ディアドラアレクサンドラマリアララにたきつけられて作家の故郷であるウルグアイまで遺族に公認をもらいに訪ねて行くことになる。

人里離れた屋敷で未亡人のキャロラインローラリニー、作家の愛人だったアーデンシャルロットゲンズブール、作家と愛人の間の幼い娘、作家の兄アダムアンソニーホプキンス、その恋人ピート真田広之が世界から隔離されているのかのように暮らしていた。

そこへ突然現れた見知らぬ青年。一切の時が止まったかのようなこの屋敷に新たな風が吹き込むことになる。

頑なに伝記の公認を拒むキャロライン、公認には賛成でキャロラインを説得する代わりに母親が残した宝石をアメリカに密輸してさばいてほしいとオマーに頼むアダム。公認には反対していたが、オマーに惹かれ意見を変えるアーデン。

亡くなった作家を中心に結びついていた人間関係が不自然でありながら、奇妙な調和を保っているのだが、それぞれがオマーと語り合うことによって、心の奥底に潜んでいたもやもやが少しずつ晴れていくようでもある。

なんというか、全編にただただあまり意味をなさないような会話が繰り広げられていくのだけど、それが全然退屈じゃないのが不思議。それがジェームズアイヴォリーマジックというものか。その監督の演出にしっかりと応える役者たちのスタイルはそれぞれ違うのだけど確立された演技がそこにある。まるで、上質な文学のページをめくるような芳醇な時間を監督とともに過ごしているような気持ちになる作品である。

アンソニーホプキンスの素晴らしさは相変わらずでもう余裕しゃくしゃくといった感じ。ローラリニーは夫の死後も夫が家に連れ込んだ愛人と暮らす未亡人という複雑な役どころを説得力をもって演じきっている。愛人アーデンを演じたシャルロットゲンズブールはいままで一度も可愛いと思ったことがなかったんだけど、この役で初めて可愛いと感じた。彼女を愛人にしたユルスの気持ちも分かるが、それ以上に彼女を受け入れてしまった妻キャロラインの気持ちが分かると思えるようなか弱い可愛さを持った女性アーデンをこれまたリアルに演じている。彼女の不思議な可愛さがなければ、最終的に成り立たなかった作品だと思うので、これはキャスティングした人の勝利だと思います。あ、28歳という設定はいくらなんでも無理があるとは思いましたが。

25年前の日本から身寄りもなくアダムに連れ出されたというのは不自然だなぁと思っていたら、もともとはタイ人の役だったところを真田広之を使いたいために設定を変更したということらしい。真田広之もその起用に応える仕事をしたと思う。拠点をアメリカに移して日本の映画やドラマで彼を見られないのはとても残念だけど、世界のこんな素晴らしい共演者と仕事をしている彼を見るのはとても嬉しいことでもある。

ジェームズアイヴォリーという監督は何度もプロフィールを見ているのに、そのたびに「あ、そうだそうだ、実はこの人アメリカ人だった」と毎回驚いてしまうほどヨーロッパテイストな感覚の人でとても不思議です。今年で85歳になるそうですが、また公開待ちの作品があるようなので楽しみです。

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アルゴ

2012-10-26 | シネマ あ行

試写会に行ってきました。

1979年にイランで起きたアメリカ大使館占拠事件。そこから抜け出しカナダ大使の自宅へと逃げ込んだ6人の職員。過激派に見つけられて処刑されるのは時間の問題だ。彼らを救出すべくCIAの救出作戦のエキスパート・トニーメンデスベンアフレックは6人を映画製作のクルーということにしてイラン国外から脱出させるという奇策を思いつく。

宣伝では人質を助けるために架空の映画を作ったということになっているので、ちょっと意味が分からなかったのですが、実際に映画を作ったとかそういうことではなくて映画を作るふりをしてイランにロケハンに行ったカナダ人クルーたちが帰国するという体(てい)でトニーメンデスが6人を救い出すという作戦。

しかし、その「ふり」というのがかなり大がかり。きちんとハリウッドのプロデューサーアランアーキンとスタッフジョングッドマンを雇い、スタジオを借り、制作発表をしてマスコミに記事を書かせ、絵コンテやら衣装やらも本当に作ってしまう。それはすべてイランで疑いをかけられたときに見せるためのフェイクなのだけど、なんせ人質とエージェントの命が懸っているものだから、すべて本物と同じに作らなければならない。

きちんと冒頭でなぜこんな事件が起こったのかということを説明してくれるシーンがあるので、この事件のことを全然知らないという人でも安心して見ることができます。それでも国際政治のことなのでちょっと心配という方は少しリサーチしてから見に行くとより分かりやすいと思います。

CIAの救出作戦と言っても、「ミッションインポッシブル」などとは違い、ド派手にぶちかまして人質を奪い返すというのではありません。こちらは正真正銘実際に行われた、ある意味では地味な作戦です。しかし、その地味な中での緊迫感というものがすごいです。CIAエージェントのトニーは映画製作者のふりをして一人でイランに乗り込んでいき、カナダ大使宅に潜む6人に作戦を告げ、それぞれのニセのIDを説明します。職員たちはただの素人ですから、偽装をうまくこなせるか分からない。しかし、それができなければ結果は死です。無謀な作戦だと反対する職員もいましたが、トニーの必死の説得に最終的には応じてくれました。

しかし、最後の最後で作戦は中止と本部から告げられます。武力行使で救出に向かうことになった、と。それでも人質のために本部の命令に逆らって強硬しようとするトニー。これまでのトニーの努力を知っている上司たちもクビを覚悟でアメリカから手助けをしてくれるのです。

いよいよ空港での出国。カナダ人のロケハンのクルーたちの帰国という偽装を信じてもらえるのか?過激派に顔が割れ、「そのアメリカ人たちを通すな」という命令が下る中、その命令の伝達と出国のどちらが早いか。これまで持っていた緊張感が一気に高まっていくクライマックス。

いやー、面白かった。被害者の方たちのことを思うと「面白かった」と言うのははばかられる気もするんですが、映画というエンターテイメントとして非常によくできた作品です。政治的な話ですが、堅苦しくなりすぎず、ハリウッドの協力者を演じるジョングッドマンとアランアーキンがちょっとしたクッション役としてうまく配分されているし、先にも書いたように政治的背景もきちんと説明されているし、当時の衣装や文化の再現も素晴らしいです。

ベンアフレック監督作品、3作目ですね。前回の「ザ・タウン」もなかなかな作品でしたが、この「アルゴ」はかなり優秀な作品だと言えると思います。役者としての彼もいままで好きでしたが、カッコいいと思ったことはなかったんですけど、この作品の彼はとても渋くてカッコ良かったです。今年で40歳ですから、とっくに「青年」ではなかったんですけど、この作品で完全に青年期を抜け出して大人の男になった彼を見た気がしました。

エンドクレジットで、人質の6人を演じたそれぞれの役者と実際の人物が並べて映されます。みんなそれぞれに非常によく特徴をとらえていて、衣装やメイクのおかげもありますが、役者たちのそんな努力をきちんと見せたかったのかなと思いました。

「フェアゲーム」もそうですが、ドンパチじゃない本物のスパイの世界って、本当にシビれますね。

オマケ1ジョングッドマンが演じたハリウッドのCIAの協力者ジョンチェンバースは「猿の惑星」のメイクでアカデミー賞も受賞した人だそうです。そんな人が当時CIAに協力していて、それをずっと秘密にしていたなんて本当に映画のような話ですね。

オマケ2カナダ人の偽IDの練習をしているときにトロント出身という設定の人に「“トロント”ではなく“トロノ”と発音しろ」と指導するシーンがあります。実際にカナダでもトロント出身の人だけが“トロント”のことを“トロノ”(に近いような発音)と発音します。このシーンを見て演出が細かくてすごいなぁと思いました。

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のぼうの城

2012-10-23 | シネマ な行

試写会に行ってきました。予告編を見て面白そうな作品だと思っていたのでラッキーでした。

決して悪くはないんですけど、ワタクシの期待が大きかったせいか全体的にはいま一歩といったところでした。

豊臣秀吉市村正親陣営の石田三成上地雄輔率いる2万の軍勢と相手にたった500の兵力で戦った成田長親野村萬斎のお話。忍城・城主成田氏長西村雅彦は豊臣側に寝返りに行き、敵陣営に黙って城を明け渡すように指示されていた城代長親は土壇場で「そんなのヤだ!」と戦う選択をする。城主が寝返ることにもともと反対だった家来たち丹波佐藤浩市、和泉守山口智充、酒巻成宮寛貴らは長親に賛成する。

長親は城主氏長のいとこで、領民たちからは「でくのぼう」から取って「のぼう様」と呼ばれている。農民の暮らしの中にちょくちょく顔を出し、田植えを手伝ったり、子供あやしたりして人気はあるがちっとも武士らしくなく、のんべんだらりと日々を過ごしている。しかし、三成軍が彼らを舐めきった態度で開城の交渉に来たのが気に入らず「戦いまする!」と宣言してしまう。武士以外にも農民まで全員総動員で戦うことになり、長親は農民を集めて「こんなことになっちゃってごめ~ん」とか言ったりするまさに「でくのぼう」。しかし、彼ら500の兵が2万の兵を翻弄することになる。

野村萬斎さんがねー、ものすごく魅力的です。ワタクシは原作を読んでいませんが、読んだ人によると原作のイメージとは少し違うらしいんだけど、でもあの素っ頓狂な雰囲気とか敵味方全員の前で歌って踊るシーンなんかはもう萬斎さんの独壇場。もちろん、あのシーンのためのキャスティングだったんだろうけど、本当に良い声してらっしゃる。

そんな萬斎さんが演じるのぼう様なんだけど、予告編を見ているともっとのぼう様らしい奇策がたくさん飛び出して2万の兵を蹴散らしてスカッとする映画なのかなぁと思っていたら、そんなにたくさんは奇策というようなものは飛び出さないんですね。初回の対戦と例の踊りのところくらいで。そのへんがちょっと期待外れだったなぁ。

あと、原作ではどういうふうになっているのか知らないんですけど、のぼう様を慕う農民たちの中に子役の芦田愛菜ちゃんがいて、生意気な喋り方でのぼう様や丹波に話しかけるんですが、それがなんかもう鼻について仕方ありませんでした。あーいうのを「可愛い」って素直に見られればいいんでしょうけど、ちょっとワタクシは無理だった。なんかウケ狙いのいやらしさが見えてしまって。

上地が石田三成ってー!と最初は思いましたが、彼がアホだということを忘れることができれば演技としてはまぁ悪くはなかったと思います。のぼうに恋心を抱く城主の娘甲斐姫を演じた榮倉奈々ですが、ちょっとどうもなぁ。彼女の場合声があんまり良くないのかどうもセリフ回しが下手に思えます。実際に下手かどうかよく分からないんですが、なんか取って着けたような感じがするんですよねー。他の俳優陣は良かったと思います。

あまり良い事書いてませんが、もう少し短くまとめられたのでは?と思いつつも145分という長い上映時間もそんなに感じられないほど笑えるシーンも結構ありましたし、なかなか魅力的なお話ではありました。最後に今現在の埼玉県行田市に残る忍城の映像が映るところは、地名などに名残りがあって少しジーンとしました。

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ロビイストの陰謀

2012-10-18 | シネマ ら行

久しぶりのケビンスペイシーの主演作で、彼がロビイストを演じるというから面白そうだなと思って見に行きました。

日本ではロビイストという存在に馴染みが薄いせいか、大して報道されなかったらしいのですが、実際の事件を基にしています。

ブッシュ政権下、マケイン候補を蹴落としてブッシュを大統領にしたと言われるロビイスト・ジャックエイブラモフ(スペイシー)は政治に大きな影響力を持っていた。パートナーのマイケルスキャンロンバリーペッパーとともに投資でも儲けていたが、次第にクライアントを騙して法外な手数料を請求し、私腹を肥やしていくようになる。

外国人が海上でカジノを経営できないという海上法を利用して、フロリダにあるカジノ客船を買い取り表向きは大学時代の知り合いアダムキダンジョンロヴィッツに経営を任せていたが、キダンは頭金の送金をごまかし、元経営者と揉めてしまい、ついにはマフィアまでかり出して元経営者を殺害するという事件に発展してしまう。

マイケルスキャンロンの婚約者エミリーラシェルルフェーブルは、スキャンロンが浮気しているのを知り、彼らの悪事をすべてワシントンポストとFBIにばらしてしまう。

さすがのケヴィンスペイシー、常に自分自身を鼓舞しているエイブラモフをセリフを早口で捲し立て精力的に演じている。エイブラモフの妻を演じたケリープレストンのこういうシリアスな演技は初めてみたかも。軽快な作品に出ていることが多いのでちょっと意外だった。

政治ものにしては、全体的な雰囲気が重苦しくなく、時折笑いも入るしスピーディーな展開で見やすい作品に仕上がっていると思う。ただ、これはワタクシ自身の勉強不足のせいだと思うのだけど、結局彼らの行為がどこまでが合法でどこからが違法なのかっていうのがイマイチ分からなかった。エイブラモフもスキャンロンに儲け話を持ちかけられたときは「でも、それ合法か?」とか聞いていたし、カジノを買うときも「違法にならならいようにしろよ」と指示していたことを考えれば、彼が法律を破ってでも儲けてやろうと思ってはいなかったような描き方だったけど、結局それが違法であるってことは重々知っててやってたことなのかな。

エイブラモフは儲けたお金でコーシャ料理のレストランとか作ったり、ユダヤ人の子たちのための学校を設立したりと慈善的なこともやってはいて、その辺が結局エイブラモフってどんな人だったのかっていうのがちょっとよく分からなかったなー。なんか単純に欲にまみれた人ってわけでもなさそうな気がしたけど、事件を追うのに必死でそこまでの掘り下げは映画としてはしていなかったのか、ワタクシがくみ取れなかったのか。

エイブラモフを糾弾した政治家たちも賄賂を受け取っていたわけで、実際エイブラモフが言うように偽善者ではあるけど、政治家なんてやっぱそんなもんかなぁと思ったり。

邦題が「ロビイストの陰謀」となっているけど、「陰謀」というほどのもんでもなかったような気もします。エイブラモフとスキャンロンはたまったもんじゃかなったでしょうけど、スキャンロンの婚約者エミリーがスキャンロンの浮気を知って密告っていう展開がワタクシは好きで、エミリーグッジョブって感じでした。

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アフタースクール

2012-10-17 | シネマ あ行

ケーブルテレビで見ました。

内田けんじ監督の作品も初見で特になんの知識もなく見たのですが、出演の面子を見るとなんとなくタダでは済まないなぁという雰囲気があって、先日見た「悪夢のエレベーター」的な話かなぁと思いながら見始めました。

妊娠中の妻常盤貴子と朝食をとる木村堺雅人。妻の父とおぼしき人物山本圭もいる。一見するとごく普通の光景なんだけど、この夫婦になぜか違和感がある。

会社へと出勤する木村。妊娠中の妻を頼むと中学校時代の同級生で教師の神野大泉洋に言い残し、神野がローンで買ったポルシェで会社へと向かう。

残された神野は夏休み中ということでなにかと木村の妻を気遣っている。

木村の妻が産気づき、神野が病院へ連れて行き、木村に連絡を取ろうとするが一切連絡がつかない。木村が行方不明のまま妻は出産を終える。

そのまま学校へ行った神野を島崎佐々木蔵之介という同級生が木村を探していると尋ねてくる。神野は島崎と一緒に木村を探すことにする。

木村は妻の出産の日に横浜で女性田畑智子と一緒にいるところを目撃されており、島崎を名乗る男は木村の会社の社長北見敏之から依頼されて木村を探している。神野は木村はそんなことをするような人間じゃないと言うが、島崎には「いつまでも中学生のつもりでいるもんじゃないよ。人は変わるんだ」と言われてしまう。

冒頭からこまごまと違和感はありつつも、とりあえずきちんとお話についていこうという気持ちで前半を見ていました。佐々木蔵之介と大泉洋のコンビがなかなかに絶妙でどこへ向かって行くんだろうという緊張感がありつつも、それにしても意味が分からないな~という気持ちが半分半分に交じったような感じでした。

そのよく分からなさがだんだんとトンネルの向こうの明かりが少しずつ大きくなっていくように、視界が開けてくる後半がやはり楽しいです。こちらの思い込みの部分と違和感の部分をきれいに解消してくれるように伏線の回収にかかる後半はとても気持ちよく見られます。

振り返ってみるとたいしたからくりではなかったような気もするんですが、そこに島崎を名乗る北沢というチンピラを挟んできたところが結構ミソです。しかし、結局北沢はなんか変なとばっちり喰らったみたいな感じですかね。

神野、木村、その妻、その愛人、妻の父、木村の会社の社長の関係性がすべて明らかになっていく過程が楽しいのと、この「アフタースクール」という題名がどういう意味を示しているのかというのもきちんと明らかにされるので最後にはとてもスッキリするし、意味不明な謎解き話を見せられていたかと思ったら、最後にはなぜか爽やかな学園ものを見たような気分になるという非常に不思議な作品でありました。

ネタバレしてしまってはまったく面白くない作品なので、ちょっとワケの分からないレビューになってしまいましたが、キャストも魅力的ですし、お話も面白いのでオススメです。

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エクスペンダブルズ2

2012-10-16 | シネマ あ行

試写会に行ってきました。

これ、スタローンは「1」のときからシリーズにしたかったふうなんですけど、まさか本当に続編ができるとは思いませんでした。でも世界中で「1」が27億円興行収入があったらしいですから、そこまで悪くはなかったってことなんですかね。

「1」があんな感じでしたし、アクション以外はまったく期待せずに行きました。もうね、すごいっすよ。全員で一体何万発の銃弾を発砲したんでしょうか?ワタクシ、途中から「豚肉1日7000キロ、卵一日5万個、鶏肉一日3000キロ、餃子一日100万個」っていう王将のなつかしいCMのフレーズが頭をよぎってよぎって仕方なかったんですよ。「火薬一日何万トン、銃弾一日何万発」ってね。

まー、撃つわ撃つわ。まったくもって容赦ない。一応、クリスマスジェイソンステイサムは昔ながらの格闘が好きという設定だし、最後のバーニーロスシルベスタースタローンとヴィランジャンクロードヴァンダムの戦いは「男らしく」ということで素手で戦ってましたけどね。でもあの時、ヴィランに「誇り高く素手で戦え」と言われたバーニーが「そんなもん、気にしねぇ」って言ってバーンって撃って一瞬で終了~!やったらそれはそれで面白かったけどなぁと思ったりもしました。まぁ、それではダメなんでしょうね(笑)

冒頭のシークエンスの終わりに中国に帰ってしまったインヤンジェットリーが途中で帰ってくると思ったら、もう出てきませんでした。ジェットリー、スケジュール合わなかったのかな?「1」に出ていたミッキーロークはギャラが折り合わなかったっていうウワサですけど、どうなんでしょうね。もう一度登場してほしかったな。

ワタクシはスタローンのファンなので、バーニーロスの哀愁漂う雰囲気が好きです。スタローンも65歳だし、しわ伸ばしとかはやっぱしてるんでしょうね~。ジャンクロードヴァンダムは元が美形だけに劣化がつらかった。途中からどうも振付師の真島さんに見えて仕方なかったんだよなぁ。

アーノルドシュワルツェネッガーは知事の任期満了で映画界に戻って来ようとしたところにあのスキャンダルでいまいち戻るタイミングを失ってしまった感じですけど、やっぱり彼に関するパロディが多く、やっぱり大物だけにサイモンウェスト監督も気使ってるのかな。

スタローンやシュワちゃん、ブルースウィリスから現在活躍中のジェイソンステイサムやジェットリーにバトンが渡り、そしてその後継者としてリアムヘムズワースを選んだという形なのかな。やはりアクション映画はハリウッドの大切なジャンルのひとつですし、どんなにテクノロジーが発達しても男臭い、泥臭いアクション映画が廃ってしまうのはやはり悲しいものだというメッセージが込められているような1本です。

特に深く考えることなく、伏線なんてどこにもなく、ただただゴツイおっさんたちが銃をぶっぱなす映画が見たい人はどうぞ。

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バイオハザードV~リトリビューション

2012-10-11 | シネマ は行

このシリーズはもうどうなったって見るしかねーって感じになっちゃっているので、公開が決まった時から見に行くことは決定事項でした。

「IV」の最後のシーンから始まって、ジルシエンナギロリー率いるアンブレラ社にアリスミラジョヴォヴィッチたちが襲われるところからのスタートです。応戦むなしくアンブレラに囚われるアリス。あの真っ白な部屋でヘンテコなふんどしスタイルの囚人服はもうお馴染み。アンブレラの施設からどうやってアリスは逃げ出すのか?というお話。

というお話。ってさー、本当にこれ、それだけだよ?この施設の中で仮想現実があって、アリスがカルロスオデットフェールと夫婦で幸せに暮らしているところにゾンビが襲ってきたりとか、そこをレインミシェルロドリゲスに助けられたりとか。ってみんな死んだはずなのにどうしたのー?って思っているとそれは全部彼らのクローンで、アンブレラが実験のために使っているということが分かる。

その施設を逃げるのに、誰かが協力してくれてそのきっかけができたんだけど、それがあのウェスカーショーンロバーツっていう前作ではラスボス扱いだった奴だったから、もう何が何だか分からなくなった。お前を倒すためにアリスは頑張ってきたんじゃないのか?でもウェスカーもアンブレラを裏切って、アリスと手を組もうっての?その理由が人類の人口が非常に少なくなって来たから?ってよう分からん。

ゲーム版のほうは全然知らないんだけど、なんとなくゲームのCMなどで見たことのあるキャラ、エイダリービンビンとレオンヨハンアーブがいたので、「あー、ゲーム版の人なんだろうなぁ」と思いつつ、それにしても登場が唐突過ぎた。しかも前作に出てたクリスとクレアはどうなったの?彼らもジルのように次回作なんかでまた突然現れたりするのかな?

東京の仮想現実シーンで登場した中島美嘉がメイクのせいかブサイクすぎて、ちょっとビックリしたけど。ゾンビだし、仮想現実だし、また次回作に登場してもおかしくはない。

って、ところでこの話、もうゾンビはどこ行った?っていうくらい敵のキャラが進化しすぎですねー。今回新キャラはいなかったですけど、あのバカでかいマジニって奴が2体も登場しましたね。あ、それからキャラってわけじゃないけど、レインのクローンがプラーガっていう気持ちの悪い寄生虫みたいのを自分に注射してめちゃくちゃ強く変身してましたね。

まー、始まりから終わりまでアクション一色の作品でした。東京でもモスクワでも銃をぶっ放しまくり、ここがキメでっせ!っていうポーズもたっぷり。もうちょっと内容があったら良かったんですが、これは「IV」と「VI」架け橋的な位置づけになるのかしら?

ジルの胸についていたアンブレラの変な洗脳装置が外れて、ジルが元に戻った瞬間から言うぞ、言うぞと思っていた"Good to have you back."というセリフが聞けたので無理やりヨシとしましょう。

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ハンガーゲーム

2012-10-05 | シネマ は行

近未来、パネムという独裁国家になったアメリカ。過去の反乱の歴史を忘れぬよう毎年12の地区から12歳から18歳の男女一人ずつがランダムに選出され、森の中で殺し合い生き残った一人が巨万の富を手にするというゲームが行われていた。このハンガーゲームは毎年テレビ中継され、キャピトルに住む富裕層の一大エンターテイメントと化していた。

初めて設定を聞いた瞬間、「え?バトルロワイヤルのパクリ?」と思ったんだけど、実際そう思った日本人はたくさんいるでしょう。ただ、こういう設定自体は別に珍しいわけではなく「バトルロワイヤル」が今までに絶対に着想されなかったオリジナルなものかと言われると分からないんだけれども。原作者は「“バトルロワイヤル”?そんなの見たことも聞いたこともないわ」って言ってたようだし・・・(真相は分かりませんが。しかも勝手にこんな高慢な言い方したかのように言ってしまいましたが・・・)ま、これは横に置いておくとしましょう。

とにかくこの原作っていうのがアメリカの若者たちの間で絶大な人気を誇ったらしい。どうりでアメリカでは「ハンガーゲーム」が映画になるぜ~って騒がれてたわけだ。ワタクシはこの原作を知らなかったのでなんで向こうの若者がこんなに喜んでるんだろう?って思ってたんだけど、原作が人気ってことで納得した次第です。

原作が3部作なので、映画も3部作になるってことなんだけど、これさ、日本であんまり大々的に宣伝されてないような気がするんだけど。実際ワタクシが見に行ったときにも終わってから「えー、これってまだ続くん?」って言ってる人が周りで結構いたんです。どうしてちゃんと周知徹底しないのかな?3部作ってバレるとめんどくさいと思って見に行かない人が増えるからなのか?とか妙に勘ぐってみたりして。

ワタクシはこれが導入部だと知っていて見ていたので、残されたままの伏線なんかもこれから解決するんだな~と思っていたから良かったけど、これで完結と思っていた人にとってはナンジャコリャーーーー?な映画になってしまったでしょうね。

最初に「バトルロワイヤルのパクリか?」なぁんて書いたけど、こっちは映像的な残虐さはほとんどありません。殺し合いって言っても主人公の第12地区代表カットニスジェニファーローレンスやピータジョッシュハッチャーソンとは関係ないところで勝手に殺し合って半分くらいは減っちゃうし、若者たちだって殺し合いをしているわりにいわゆるFour Letter Wordと呼ばれるような放送禁止用語は一切発しない。原作もそうなのかもしれないけど、この映画、アメリカの中高生に見てもらわないことには興行収入は一切上がらないわけで、PG-13もらえないとシャレにならないんだよねー。PG-13の上になるとRになって17歳以下は保護者同伴じゃないといけなくなっちゃう。となれば、そんな映画はダメって言う保護者もいるだろうし。そういう事情もあってか設定のわりには描写はやたらとマイルドです。

殺し合い部分に不満もありつつも、それ以外の部分で、参加者の教育係的な役割の人がいたり、スタイリストや世話係などそのあたりの人間模様がこれから2部以降に面白くなっていくのかなぁという予感をさせる部分はあった。12地区の世話係のエフィーを演じるエリザベスバンクスは近未来のヘンテコなメイクで頑張っていたし、教育係で過去のハンガーゲームを勝ち抜いたというヘイミッチウディハレルソンは最初はイヤな奴って感じだったけど、カットニスやピータにとってとても心強い存在になっていった。スタイリストのシナにレニークラヴィッツが扮していて、キレイな顔立ちの人なのでスタイリストにぴったりだった。笑っちゃうような衣装や髪型が流行っている近未来で彼のスタイリングは唯一カッコ良かったし、こんなゲームのスタッフとして働いているわりにマトモで優しい人だった。

最初にカットニスたちを狙う“プロ集団”と呼ばれていた連中は12の地区の中でもお金持ちなほうの地域から来た子たちらしいんだけど、その辺の描写が映画ではいまひとつよく分からない感じになっていた気がする。原作にはもっと詳細に書かれているんだろうなぁといった雰囲気。最後に死んだケイトーアレクサンダールドウィグが「俺たちはハメられたんだ」とかなんとか意味深なことを言って死んでいきますね。これも2部以降で明らかになるのか。

抽選でハンガーゲームへの出場が決まってしまった妹プリムローズウィロウシールズの代わりに自ら志願したカットニスを演じるジェニファーローレンスはやたらとこういう強いお姉さんな役が多い。お父さんは亡くなって母親ポーラマルコムソンも頼りない感じの人だったし。彼女は若手の中でも一、二を争うと言っても過言ではないくらい演技が非常にしっかりした女優さんなので、その点でこのファンタジーがリアルなものになるという大きな役割を果たしていると言えるだろう。ジョッシュハッチャーソンも子役から頑張ってる子だし、演技面では心配ないですね。

この作品単体で考えると評価は落ちると思うのですが、まだ先があるということでまだ完全な評価はペンディングしたいと思います。2部以降はおそらくゲームそのものではなくて市民の反乱的なものが描かれると思うので、完全に市民をバカにし抑圧している大統領ドナルドサザーランドやハンガーゲームを仕切っているセネカウェスベントリーなんかとの直接対決的なものがあるのかなと期待を寄せつつ、原作先に読もうか迷いつつ、この先を楽しみにしたいと思います。

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ソハの地下水道

2012-10-04 | シネマ さ行

公開前からずっと楽しみにしていた作品です。

ナチス支配下のポーランド。水道業者のソハロベルトヴィェンツキェヴィチは、本業の他に空き巣をして盗品を売りさばいていた。ユダヤ人迫害が酷くなってきたこのころ、ゲットーに住むユダヤ人たちが虐殺や収容所への強制連行を逃れるために自宅の床に穴を開け地下水道に降りて避難しようとしていた。地下水道で仕事をしているソハはそれを目撃し、通報しない代わりにユダヤ人から金を取り、知り尽くした地下水道でユダヤ人たちを匿ってやることにした。

地上ではユダヤ人迫害の嵐が吹き荒れ、ソハの古い友人もナチスの協力者となってユダヤ人狩りをしていた。始めは家族には内緒にしていたソハだったが、一緒にユダヤ人を匿って金儲けをしていた部下にばらされてしまう。ユダヤ人には同情的だった妻ヴァンダキンガプライスもソハがナチスに殺されることを心配してユダヤ人を匿うのは反対した。

ソハは最初は金儲けのためとユダヤ人を匿っていたし、匿ってやっているのに対して感謝の気持ちを表しもしないユダヤ人に腹を立ててもいたが、徐々に彼らの境遇に寄り添うようになり、自分や家族の命の危険も顧みずに、お金の尽きた彼らを助けるようになっていく。

これは実話だそうです。ソハは生きるためとはいえ空き巣稼業もしていたような男なのに、結果的にユダヤ人を助けるハメになります。全然善い行いをしようとかいう気持ちのないソハがユダヤ人を助けるようになるまでの描写が素晴らしいです。特に転機となる大きな出来事があるわけではないのですが、徐々に徐々に彼らに寄り添うようになるソハとそんな彼に心を許していくユダヤ人たちの交流がとてもリアルに描かれています。

リアルと言えば、避難生活をしているユダヤ人たちなんですが、ソハが最初腹を立てていたように、彼らはソハに特別の感謝を表すこともなく、不平ばかりを並べたてて、横柄な態度ですらあるように見える。避難場所ですら不倫してる奴とかもいるし。いま現在のワタクシたちからすれば、あんな悲惨な収容所や処刑を免れているのだからもうちょっと感謝しろよという気持ちにもなるんだけど、実際あの時代にはナチスのユダヤ人迫害の全貌は誰にも分かっていなかったし、それに考えてみればそもそも何の根拠もなく突然に迫害を受けることになったユダヤ人たちが、それから救われたからといって感謝をするというのもなんだかおかしな話なんだよなぁというふうにも思った。ナチス以前からヨーロッパでユダヤ人と多民族の確執があったにせよ、だからと言って彼らがあんな扱いを受けるいわれは何もないわけだから。

物語の半分以上が地下水道なので、暗い中懐中電灯やランタンの灯りだけが頼りなんだけど、その中でぼうっと映し出されるソハの顔が最初は狡賢い男の顔をしているんだけど、それがだんだんと柔らかくなって、最後には人懐こそうな顔になる。そこんとこのアグニェシュカホランド監督の演出とロベルトヴィェンツキェヴィチの演技が素晴らしい。これほど地下水道でのシーンが長い映画なんてハリウッドで作る勇気のある人はいないだろうなぁと感じた。

このちょっと狡賢い男ソハがねー、最後のほうではめっちゃカッコいいんだよなぁ。お金が尽きたユダヤ人のヒゲルヘルバートクナウプにさ、自分が前にもらったお金を返して、「みんなの前でこれを渡せ。ただで援助する人間だと思われたくない」なぁんて言っちゃうんだよなー。その後一人でニヤっと笑うソハに“くーーーーっ!!!おっさん、かっこいいぜーーーっ!”と思ったよ。

ソハの奥さんも肝っ玉母ちゃんって感じでまたいいんだわ。一度は子供連れて出て行ったりもしたけど、すぐに帰って来てさ、「この人もバカだけど、帰ってくる私もバカね」なんて言ってね。結局危ない橋を渡ってでもユダヤ人を助ける夫を見放すことはできない人なんだよね。

最後に戦争が終わってユダヤ人たちが地下水道から出てきたときに「俺のユダヤ人」って誇らしげに言うソハがなんだか小学生みたいでね。「俺のユダヤ人」って考えてみれば失礼な言い回しなんだけど、それでもあの時の彼の誇らしい気持ちと解放感を思うと納得出来る気がしたな。そして、この直後にポーランドは今度はソ連にひどい目に遭うんだよなぁって複雑な気持ちで見ていたら、最後のテロップでソハはソ連軍の暴走車から娘を守ろうとして死亡したっていうじゃない。あぁ、なんか変な予感が当たってしまったというような気持ちだった。それでも、ソハの映画ができて世界中の人が見てくれていることをソハが知ったら映画で見せたような小学生みたいな笑顔を見せてくれるのかもしれないな、なんてくさいことを思ってしまったりしたのでした。


オマケ少し映画とは完全にズレますが、ユダがキリストを殺したからユダヤ人を憎むというソハに対して奥さんが「キリストだってユダヤ人じゃないの」というシーンがあります。それを聞いてソハもソハの部下も驚きますが、ユダヤ人であるマリアと神の間に生まれたキリストがユダヤ人だという認識がキリスト教徒にないという事実にいつも驚かされます。キリスト自身は神の化身だからユダヤ人じゃないという理屈が成り立つにしてもマリア信仰のあるキリスト教徒たちはユダヤ人を信仰していることになると思うのですが、、、

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テンプルグランディン~自閉症とともに

2012-10-03 | シネマ た行

これはアメリカのケーブルテレビ局HBOが製作したテレビ映画ですので、厳密に“映画”というものではないのですが、HBOは常に上質のテレビ映画を製作していて、クオリティとしてはそんじょそこらの“映画”には負けないところがあります。というわけで、ワタクシは勝手に映画のレビューとして書かせていただきます。

テンプルグランディンという方の名前を聞いたことがある日本人がどれくらいいるのかワタクシには分かりません。多少なりとも高次脳機能障害などに興味のある方ならご存知の名前ではないだろうか。ワタクシは特にその分野に明るいわけではないが、興味はあるほうなので以前からテンプルグランディンという人の存在は知っていた。映画好きとしては純粋にクレアデインズの演技が素晴らしいと聞いていたのでそれにも興味があったし。

テンプルグランディンは高機能自閉症として生まれ他人に触れたり目を合わせたりすることができず、言葉も4歳までは出なかった。母親ジュリアオーモンドの努力の甲斐もあってか、言葉は話せるようになるが、他人の言葉の裏とか行間を読むということはできないので冗談は通じず、学校では変人扱いされていじめられたりもした。しかし、彼女の自閉症のひとつの特徴として視覚的に物事を捉えるので、目で見た教科書のページを瞬時に記憶することができるという特殊な能力も持っていた。高校のとき彼女のそんな才能を伸ばしてくれる科学教師カーロック先生デヴィッドストラザーンに出会い、彼の支援もあって畜産学を学ぶ大学に進学する。

大学進学後、実際の屠殺場などを研修で見学し、彼女の特殊な能力を発揮し、どのようにすれば牛が穏やかなまま消毒漕に誘導することができるか、屠殺の最後の瞬間まで牛が落ち着いたままでいられるかなどの設計を研究し、現在ではアメリカ、カナダの半数の屠殺場で彼女の設計が使用されているという。

彼女は1947年生まれということだから、いまよりも自閉症などに関する研究はなされておらず、いまよりももっと差別的な意識や間違った知識(お母さんの愛情不足などと医者から言われるシーンもある)がはびこっていた時代に、周囲の偏見にも負けず自分の信念を貫き通したテンプルは素晴らしい。それにはお母さんの"She is different. But not less."(彼女は人とは違う。でも劣ってはいない)という信念が大きかったのだろう。

たくさんの偏見もありながらも、中には理解し協力してくれる人々もいて、そんな人々の中でテンプルは自分はイヤだけれども、人は喜ぶんだなということを想像するというような彼女の自閉症の症状からはおそらく困難であろうことも克服するようになってくる。自分はハグは嫌いなのに、母親はしたいのだろうというのをぎこちないながらも受け入れるシーンに涙が出た。

彼女は牛の気持ちや習性を独特の視点で理解しながらも、屠殺場の設計という一見矛盾しているようなことをするが、彼女が何度も言う「自然は残酷。でも人間までそうである必要はない」というセリフに非常に心打たれた。自分たちの生活に必要なため牛を殺すのであればせめて穏やかに死なせてあげたいという彼女の気持ちに感動を覚えた。

これも彼女の自閉症の症状であるが、同じことを何度も繰り返し話したり、TPOをわきまえず自分の言いたいことを大声でとうとうと喋ったりしてしまうテンプルをクレアデインズが驚くほどにうまく演じている。彼女はこの作品でエミー賞やゴールデングローブ賞を受賞しているが、これが劇場公開版の映画作品だったら間違いなくアカデミー賞を受賞しているだろうと思われる演技だ。クレアデインズは少女のころから演技派の女優さんだけど、この作品での演技は彼女の数々の素晴らしい演技の中でも上位に来る作品となるだろう。それを受ける母親役のジュリアオーモンドもまた素晴らしい演技だった。

演出もテンプルの独特の視覚的な世界を映像で表し、彼女の興味のあることに没頭してしまう特徴や、冗談が通じないところなどを時にユーモラスに描き、決して障害者を扱ったお涙ちょうだい系の作品にはならず、非常に力強い作品となっている。

残念ながら日本ではDVDが出ていないみたいなんですよね。。。ケーブルテレビで見る機会のある方はぜひご覧になってください。

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