シネマ日記

超映画オタクによるオタク的になり過ぎないシネマ日記。基本的にネタバレありですのでご注意ください。

X-MEN~アポカリプス

2016-08-23 | シネマ あ行

今回、前2作を復習せずに行ったのは失敗だったなぁ。「ファーストジェネレーション」に登場したCIAのモイラローズバーンの存在をすっかり忘れてた。あと、サイクロプスタイシェリダンのお兄ちゃんアレックスルーカスティルの存在も。出てきてプロフェッサーXジェームズマカヴォイとのやりとりを見るうちになんとなぁくぼんやり思いだしたけど、ちゃんと見直してから行けば良かったな。それにしてもプロフェッサーXともあろう人がモイラに会ったら超デレデレしてたね。意外な一面を見た気がしました。

前作をはっきり覚えていなくても十分に楽しむことはできました。基本的なキャラクターの存在は頭に入っているし、後の三部作に登場するメンバーの若いときというのが見られる楽しいシリーズです。とか言いながら、ワタクシ最後の最後までアポカリプスオスカーアイザックに拾われた女の子アレクサンドラシップが将来ハルベリーが演じるストームになるんだっていうのが分かりませんでした。本当に最後らへんまで来て、あ、この子ストームかぁ!って思ったんですが、おそらくほとんどのみなさんが最初から分かっていたんでしょう。

それにしてもいつもマグニートーマイケルファスベンダーは切ない運命だよね…今回もせっかくポーランドでひっそりと暮らしていたのに、勝手に人間から追い詰められて。娘も奥さんも殺されちゃって。娘ちゃんは動物と心を通わせる素敵な能力を持っていたのにね。

今回もクイックシルバーエヴァンピーターズがユーリズミックスの「Sweet Dreams(Are Made of This)」に乗せてマッハのスピードで余裕でみんなを助けてくれます。助ける過程でまたまた色々と面白いことをしてくれていました。彼にこの見せ場を作ってくれるというのがブライアンシンガー監督の粋な計らい。そして、ミスティークジェニファーローレンスを連れてマッハで移動するときに彼がきちんとミスティークの首を支えてあげているのを見逃しませんでしたよ。

爪のあの人ヒュージャックマンもおいしいところでゲスト出演してくれていましたね。ワタクシは特にウルバリンファンではないのですが、ウルバリンはおそらく一番人気のキャラなので嬉しい人も多かったのではないでしょうか。でも、あそこでジーンソフィーターナーとサイクロプスと初対面を済ましちゃって良かったのかな?後の三部作で彼らが初めて会うっていうシーンはなかったっけなぁ。もうワタクシはすっかり忘れちゃいましたけど…

ビーストは演じているニコラスホルトも含めて好きなキャラなので何か書いておきたいんですが、今回特に特筆すべき点はなかったです。残念。

プロフェッサーXってあれでハゲたんですねー。これでハゲの謎が解けた。原作を知らないワタクシにとって彼がいつどういう状況でハゲるの?ってずっと疑問でした。

X-MENの特徴として強大な敵にみんながそれぞれの能力を最大限に生かして戦うというのがあると思うんだけど、今回のアポカリプスは史上最強の敵ってことだったみたいだけど、どういう能力を持っていてどう強いのかいまいち分からんかったなぁ。なんか昔の日本の大魔神みたいな風貌でちょっと笑えました。

マーベルの作品を見る時はやはりスタンリーを探すのですが、今回は奥さんのジョアンリーも一緒に登場してましたね。最後のクレジット見て、あ、あれ奥さんやったんやーって思いました。他の作品でも奥さんも出てたりするのかな。

デッドプールも言ってたけど、もう時間軸とかつながりとかはっきり言って分からなくなってしまっているのですが、ワタクシはそのへん、ま、いっか、で楽しんで見ることはできました。

この作品のDVDが出たらまた「X-MEN」前3部作祭りをしようと思います。


終の信託

2016-08-17 | シネマ た行

尊厳死をテーマに周防正行監督が自身の過去の作品「Shall we ダンス?」と同じ主演2人役所広司草刈民代を迎えて描く。

江木(役所)はぜんそく発作で何度も入退院を繰り返している。主治医の折井(草刈)は彼に重度のぜんそくに移行しつつあることを告げる。

折井は同僚の医師・高井浅野忠信と不倫している。2人はあろうことか病院内のベッドで密会をしている。2人は周囲にはうまく隠しているつもりのようだが、周囲にはしっかりばれているようだ。折井は独身で高井がいつか自分と結婚してくれると勝手に思っているようだが、高井はそんな気はさらさらないし、折井の他にも愛人がいる。そんな高井の気持ちを知った折井は落ち込み、病院の当直室で酒と睡眠薬を飲んで自殺未遂を起こす。

自殺未遂から回復した折井は普段の診察に戻ったが、江木は依然として入退院を繰り返していた。この病院の周辺は工業地帯であり、折井は江木に空気の良いところへの転居を薦めるも妻中村久美への負担を考え江木はイエスとは言わず、息子の態度も今更転居など面倒だといったふうだった。

折井は自分自身の精神的なよりどころを江木に求めているようなところがあり、江木も主治医としてかそれ以上か、折井に絶対的な信頼を寄せるようになっていた。江木はもしもの時には延命処置をせず逝かせてほしいと折井に話す。妻は弱い女だからこんな話はできないと。そして、最後まで聴覚はあると思うから子供の時に聞いた子守唄を歌って欲しいと。

この折井という医師の描き方に賛否が分かれるところではないだろうか。不倫のあげく自殺未遂、その後1人の患者にやたらと肩入れし、自分の精神的支柱にしてしまい、その患者から死ぬ間際には子守唄を歌って欲しいと頼まれそれを実行する女医。ちょっと設定が甘過ぎる気がした。ただ、社会派な作品を正面から撮る周防監督がこの設定にしたのであればそこに何らかの意図があるはずだろうと考えた。医者も1人の人間である。私生活は医者としての資質と関係がないだろうし、人間なのだから患者とは言え肩入れしてしまう人だっているはずだ。尊厳死を語るこの作品でこの医者を完璧な医師像として描かなかったのは、「正義」のあり方や立ち位置を曖昧にするという意図があったのではないかと思う。

江木が心肺停止状態で救急搬送して来られ、心臓マッサージで鼓動は戻り、自発呼吸はあるとはいえ人工呼吸器を外せない状態に陥ってしまったとき、折井は江木に頼まれていたように、家族に人工呼吸器を外すことを提案する。家族もそれを受け入れたのだったが、折井はその後告訴されてしまう。

折井を追及する塚原検事大沢たかおの尋問ぶりは、周防監督が「それでもボクはやってない」で日本の司法制度に投げかけた疑問の続きを見ているようだった。折井の反論は一切聞かず、決めつけばかりの塚原の尋問。最後に自分で勝手に作り上げたストーリーを調書に書き、詳しいことは後でまた聞くからとごまかしサインをさせる。追い詰められた被疑者はその言葉を信じ、とりあげずサインしてしまう。始めから有罪ありきで薬が致死量だったかどうかなど当事者の記憶が食い違っていようとおかまいなしだ。

恐らくこの女医に嫌悪感を抱いていた観客にとっては塚原はまさに「正義」であり、細かい事実などどうでも良い、この女医を罰することができればそれで、という心境だろう。しかし、どちらに味方するかなど関係なく事実をきちんと精査するのが本来の裁判の役割のはずなのだが、、、ワタクシはどちらの味方とか言うより、尊厳死や安楽死を支持する側なので、塚原の物言いには腹が立ったが、それでもやはりこの折井という女医の詰めの甘さには呆れてしまった。自分だけに最期の時を任されたことに少し優越感でも覚えていたのだろうか?江木にそんな話をされた時点できちんと法的に対処できるよう文書などを残させておくべきだったし、江木にしても「あいつは弱い女だから」などと奥さんを差し置いて女医だけにそんなことを頼むなんて、はっきり言ってダメな男だ。奥さんでなくとも息子でも良かったんだし、でも息子とは関係が悪そうだったんだよね。それも含めてやっぱりダメな男だと思う。もう少し家族側の物語も描いて欲しかったな。

あまり褒めているレビューではないのですが、やはりとても考えさせられる話で、こういう作品を真っ向から撮れる監督っていまの日本のメインストリームではあんまりいないように感じます。だからこそチェックしておいて損はない作品だと思います。


トランボ~ハリウッドに最も嫌われた男

2016-08-05 | シネマ た行

ハリウッドの赤狩り時代を描いた作品。当時売れっ子脚本家だったダルトントランボブライアンクランストンは共産党員であることを理由にハリウッドから追放される。下院非米活動委員会の召喚に対して非協力的だったために投獄までされた彼は偽名を使って脚本を書き続け、正体を明かさないまま「ローマの休日」や「黒い牡牛」などでアカデミー賞を受賞した。

米ソ冷戦のまっただ中、アメリカには赤狩りという思想弾圧があった。ワタクシはこの歴史を1991年の映画「真実の瞬間」というロバートデニーロ主演の作品で知り、チャップリンも赤狩りに遭ってハリウッドを追い出された人の1人だったということに非常に驚いた覚えがある。

ダルトントランボは共産党員であり、それを隠す気などさらさらなかった。彼は同じような思想を持った仲間たちの中でも急進的で、彼らを弾圧しようとする団体に対しても堂々と自らの理論をぶつけた。彼はどこにいても自分の意見をはっきりと言う。「空気を読む」なんて絶対にしない。そんな彼がめちゃくちゃカッコ良かった。(特に当時のスーパースター・ジョンウェインデヴィッドジェイムズエリオットに君がいつどの戦争で勝ったんだ?と迫るシーンが良かった)

しかし、現実にはカッコいいでは済まされないことばかり。投獄され、出所しても近所からは嫌がらせを受け、ハリウッドでは誰も雇ってくれない。家族も酷い目に遭う。それでもトランボは負けなかった。自分の名前さえ出さなければ、安いギャラしかもらわなければ雇ってくれるところはある。三流映画ばかり撮っているフランクキングジョングッドマンのところへ売り込みに行き書いて書いて書きまくった。一緒に追放された仲間たちの分まで仕事をもらって書きまくるトランボ。そのかたわらでビッグスタジオ用の脚本(「ローマの休日」など)も書き別の人が書いたことにして売り込んでもらった。家族のことをかえりみる時間などない。彼はイヤなお父さんに成り下がってしまうほどに書きまくったが、それもこれもすべて家族の生活を守るためだった。

この作品のすべてがいま現在の時代とリンクしているように思えた。自分たちと違う考えは許さない政府。自分たちと異なる意見を否定するというその言論の自由の否定そのものがいつか自分たちを否定することになるかもしれないということに気付かない。人々が疑心暗鬼に陥り、お互いを監視し合う世の中。世界で日本でまた同じことを繰り返そうとしているように思えてならない。

映画の作りとしては非常にテンポが良く、トランボを演じるブライアンクランストンが非常にうまく最初から最後までとても引き込まれる。実際の当時の映像と現在製作した映像をうまく融合させてあり、どこからがいま別に作ったものかもう一度じっくり見たい気になった。ヘビーなテーマながらところどころに笑いの要素もあって娯楽としても楽しめるようになっているところが優秀な作品だと思う。

カークダグラスを演じたディーンオゴーマンが似てるような似てないような…だったけど、とにかくカッコ良かった。今ではマイケルダグラスのお父さんと説明したほうが分かる人も多いかもしれないけど、カークダグラスってこんな骨のある人だったんだなぁと改めて知ることができて嬉しかったです。

トランボはあの時代を振り返り、自分たちを傷つけあったあの時代を許そうと話した。やはり大切なのはその寛容さである。密告した隣人を憐みこそすれ恨みはしない。と、ひとくちに言うのは簡単だが、トランボとてその心情に至るまでには多くの時間が必要だったことと思う。振り返って許す以前にこんな時代が二度と来ないようにすることが何より重要なのだと感じた。いまの時代空気を読みまくっているマスコミの方々にこの作品を見てもらいたい。