シネマ日記

超映画オタクによるオタク的になり過ぎないシネマ日記。基本的にネタバレありですのでご注意ください。

かもめ食堂

2007-10-30 | シネマ か行
近くの映画館でワンコイン上映があったので、行って参りました。

ガッチャマンの歌、ちゃんと続きを歌ってくれて良かった~
あのまま「誰だっ、誰だっ、誰だぁ~」ってほっとかれてしまったら、映画の間じゅう続きが気になって気になって仕方なかったもんねぇ。メロディは覚えてても思い出せないもんですよねー。それこそ、あんな日本人が周りにいない状況で思い出せなくなったら悲惨よな~。そりゃサチエさん小林聡美のようにその辺にいる日本人片桐はいりに衝動的に聞きたくなる気持ちもよく分かる。

この作品。随所で結構笑えました。狙ってないような狙ってるようなっていう微妙な感じの笑いでした。そして、大多数の方にはまーーーったくなじみがないと思うのですが、フィンランド映画の「過去のない男」という作品に出演しているマルックペルトラ(あの泥棒さんね)が出ていて、映画ファンはちょっとピピッと嬉しくなっちゃいます。

小林聡美といえば、ワタクシ、数年前に少し入院したとき、病院の図書に彼女のエッセーが何冊かありまして、一冊手に取ったら、面白くて全部読んじゃったんですけど、手術後で笑うとお腹が痛かったので、笑いをこらえつつ、それでも読むのをやめられなかった記憶があります。彼女は三谷幸喜と結婚しているだけあって、ちょっと普通の人とは違う感性を持った女性ですね。どこがどうって言葉では説明できないんですけど。なんとなく、とらえどころがないと言うか。このサチエという役も、ワタクシはイケナイイケナイと思いつつどうも小林聡美と重ねてしまいました。サチエもどこかつかみどころがない人だなぁって感じたんですよね。彼女がどうしてフィンランドで食堂をやろうと思ったか、っていうようなことは物語として伏せられていても全然構わないんだけど、もう少し彼女の内面に触れるような描写が欲しかったな~。家族の話とか昔の話とかしてるんですけどね、どこかあっさり。まぁそれが彼女だったのかもしれない。彼女の執着のなさは観客としては少し寂しくもあったけれど、それが彼女の良さなのかもしれませんね。

こういうのんびり~っていいなぁって感じがウケるというのは、日本人ってやっぱちょっと疲れすぎてるんじゃないのかなーって思う。いいなぁって思いながら、自分はのんびりできない、みたいなね。もっとのんびりしようよ、日本人。心の底から罪悪感なんか持たないでさっ。って言ってもそういうふうに育ってきてない人にとっては難しいのかな。。。「コピ ルアック」っておまじないを言ってゆっくりコーヒーでも飲んでみるといいかもしれませんね。

オマケ1ワタクシも日本のソウルフードはおにぎりだと思う遠足や運動会のときにお母ちゃんが握ってくれたおにぎり。思い出すなぁ。ほんとにおにぎりだけは人に作ってもらうほうがおいしい。ずっと前ににゃおの料理で何が好きか聞かれて「おにぎり」と言ったらちょっと傷ついたみたいだったけど、おにぎりをおいしく握れるって素晴らしいことだと思うんですよねー。ワタクシにしてみればおにぎりを選んだのは最高の褒め言葉なのですよ

オマケ2いままで、何人もの外国人におにぎりを作ったけど、ほとんど評判悪かった。海苔が気持ち悪いのは仕方ないにしても、他の理由はなんだろう?あんなご飯の塊を食べるのがしんどいのかな?まぁ、「日本の」ソウルフードだからね、外国人には分からなくてもいいよ~って思いますけどね。

オマケ3書き忘れてしまったので、つけたしされていただくと、本当にサチエさんの「いらっしゃい」は完璧だったな

グッドシェパード

2007-10-25 | シネマ か行
ロバートデニーロの監督第2作目の作品。デニーロってまだこれが2作目なんだー。なんかもっとしてたような気がしてたけど。1作目の「ブロンクス物語」は地味だけど、とても丁寧に作られた作品だった。今回もデニーロが監督というだけあってキャストが豪華でとても楽しみにしていたのだ。

CIAの誕生と、それに関わった男たち。それに翻弄された一人の男エドワードウィルソンマットデイモンの物語。お話は「キューバ危機」から振り返って第二次世界大戦~冷戦時代を描いている。時系列がバラバラに進む上に、時代ごとのセットとかの全体的な雰囲気はほとんど変わらないし、なんせスパイの話だけに、敵味方入り乱れてるし、政治的な背景も分かってないといけないしで、頭がこんがらがってしまった人はもう最後まで絡まった糸をほどくことができないかも、という危険は孕んでいるものの、演出はとても丁寧で淡々と進む中にもスパイ映画独特の緊張感があってワタクシはとても気に入りました。

スパイ映画としての緊迫感プラス、このエドワードウィルソンという一人の男の人生をたどっていく面白味があります。この役を演じるマットデイモン。ワタクシはあんまり好きな俳優さんじゃなかったんですけどねー。この作品を見てちょっと好きになりそうです。デニーロがどうして彼を選んだのか、見る前は少し謎だったんですが、見てみるととてもこの役にはまっていました。頭脳明晰で真面目なエドワード。でも、どこか他人の期待に応えようとするというか、他人が自分に期待していることが彼にとって重要という印象を受けました。秘密結社スカル&ボーンズで放尿されるという洗礼を受けて怒ってやめると言ったときも仲間だろと止められあっさり戻ったし、ドイツでハンナマルティナゲデックに誘われたときも「僕にそうしてほしい?」と聞き、息子エディレッドメインに合唱を見に来て欲しいと言われたときもまったく同じセリフを言ったエドワード。他人に望まれればそうしてしまう。それでいて、実直で勤勉。それは彼の長所でもあり、弱点でもあったんじゃないかな。だからこそ、初恋の人ローラタミーブランチャードと結ばれることなくマーガレットアンジェリーナジョリーと結婚することになったんだろうし。したことは不誠実だったけど、もともと真面目で純情すぎたからこそあんなことになっちゃったんだもんな。そして、彼がそういう人間だったからこそ、CIAという組織にがっぷりはまって、汚い仕事も引き受けてやってきた。彼はCIAの立役者であり、祖国の被害者だったのかもしれない。そんな彼の真面目さともろさ、そして20代から40代までを幅広く演じられる俳優。それがマットデイモンだったのだろう。派手なアクションのまったくない完全なる静のスパイを演じるマットにしびれました。

マットデイモンと同じく彼の妻マーガレットを演じるアンジェリーナジョリーのキャスティングも実はワタクシには謎でした。アンジーは大好きな女優さんだけど、40年代の良家のお嬢さんなんて似合わないよーってね。フタを開けてみると、良家の「奔放な」お嬢さんでした。あ、だからアンジーなのね。って最初は思ったんですよね。でも次第にそれが「だから」だけではないことが分かります。マーガレットの奔放なふるまいはおそらく良家のしきたりや古い慣習などに若さゆえ目一杯反抗してみせていただけ。中身はそういう反抗児にありがちなガラスのハートを持っていたんじゃないかな。ただの策略だけでエドワードと結婚したとしたら、彼女自身もあんなに苦しまなかったはずだもんね。アンジーほど迫力のある人じゃなくても良かったかもやけど、彼女もマットと同じく20代から40代まで演じ分けないといけなかったですもんね。そこらへんの実力はお墨付きですからね。

デニーロがキャスティングが決まったとき、成功だと思ったと言っていた理由が見てみると分かりました。

その他にもアレックボールドウィンとかマイケルガンボン(ホグワーツの校長先生ね)とかジョンタトゥーロとか(ちょっとしか出ないし、一瞬誰か分からんかったけど)ジョーペシとか映画ファンにはたまらないキャスティングです。そしてデニーロ本人もエドワードをリクルートし、CIAについて皮肉な預言めいたことを言うサリヴァン将軍の役で出演している。

エドワードが初恋の人ローラと結婚していたらどうなっていただろう?とか、彼がお父さんの遺書をもっと早く読んでいたらどんな人生を送っていただろう?とか切ない要素もいっぱいのサスペンスでまさにワタクシ好みでした。苦手な人は多そうな気もするけど、ワタクシは好き。

オマケ1秘密結社「スカル&ボーンズ」っていうのは実際にイェール大学に存在するようです。秘密結社って西洋の映画にはよく登場しますね。なんか金持ち坊ちゃまの欺瞞のかたまりのような気がしなくもないが…

オマケ2パーティでアンジェリーナジョリーとマットデイモンキーが出会うわけですが、テーブルを挟んでアンジーに上目遣いで見つめられるマット。あれって、もうまさに  

ヘビににらまれたカエル    でしたな。

大統領暗殺

2007-10-18 | シネマ た行
2007年10月19日アメリカ第43代大統領ジョージW.ブッシュ、暗殺される。

いくらブッシュが嫌われてるからって、そして、いくらウソだからって本物の現役大統領を暗殺しちゃうんだから、奇抜というか卑劣というか。。。これは見に行かないわけにはいかないなと。

よくあるアメリカのドキュメンタリーとまったく同じように話は進みます。微妙な斜めの角度から撮影された関係者の証言が次々と語られ、時系列に話が再現されていく。シークレットサービス、大統領補佐官、FBI、容疑者、その家族。そして、その証言プラス(この映画の中での)実際の映像で構成されている。

シカゴに遊説に来る大統領。シカゴ市民は抗議のデモを行っている。そのデモは次第に凶暴性を増していく。デモ隊と警官隊の間の緊張が高まる。そんな中、無事にスピーチを終えた大統領がホテルの玄関で支持者たちと握手を交わす。そこへ、銃弾の音が。倒れ込む大統領。大統領のケガは?犯人は?

大統領が殺されるまでのくだりはかなりうまくできています。映画が始まる前に、これはフェイクドキュメンタリーですと告知されているにもかかわらず、どこかで、本当の出来事のように錯覚しながら見ている自分がいました。(現実世界での)実際の大統領の映像とフィクションの映像の組み合わせが素晴らしくスムーズで、本当にその世界に騙されてしまうのです。あの国葬のシーンなんて、どうやってあんなリアルにできたの?って感心しきりです。(これはレーガン大統領の国葬を加工したものらしいですね)

そして、後半。大統領を殺した犯人の捜査が始まります。この作品の残念なところは大統領が殺される前と後で、映画のテンポがなにもかも同じだったこと。大統領暗殺の瞬間までグワーーーッと盛り上がったテンションはそのまま放っておかれた感じで、その後も淡々と同じように話が進むのです。

もしもブッシュ大統領が暗殺されたら、世界はどうなるか?アメリカはどうなるか?その結果を生み出したのはそれまでのブッシュの政策であり、それを支持したアメリカや日本も含めた同盟国。そこの部分の衝撃を観客に見せたかったんじゃないの?それだったら、一人の罪のないムスリムが捕えられて裁判にかけられるだけじゃなく、そのことが世界情勢にどういう影響をもたらすか、アメリカ軍はそのときどういう行動に出るのか、アメリカ国民はどういう行動を取るのか?それを見せないと意味ないんじゃないかな?一人のイノセントなムスリムが捕まる。それくらい、誰でも想像つくよね?問題はその後でしょう。いまのアメリカの在り方を批難したいなら、後半こそ力を入れて丁寧に作りこまないといけなかったんじゃないかなと。しかも、パトリオット法とか反ムスリムとか、現実にアメリカに起こってることのほうがずっときわどいんじゃないの?とまで思うほどソフトに仕上がっているような。。。

一緒に見ていた映画館にいる観客も全体的に後半ダレ気味の雰囲気が漂っていた気がするなぁ。現役の大統領を暗殺するなんて悪趣味な考えからスタートしていると批難されるような作品をわざわざ作ったのだから、もう少し頑張って欲しかったな。

ヘアースプレー

2007-10-10 | シネマ は行
超ゴッキゲンなミュージカル映画と思っていたら、結構シリアスな問題も含んだ内容だった。

トレイシーニッキーブロンスキー(ブリタニーマーフィーがデブメイクしてるのかと思ったら違う人だった)が冒頭で歌う「グッドモーニングボルチモア」からいきなりゴキゲンな滑り出し。チビでデブな彼女がTVのダンスショーに出られるようになり、スタアになるお話かと思いきや、その番組の黒人差別と闘うことになろうとは。

彼女と同じような体型のママジョントラボルタ(この映画の原作1988年の「ヘアスプレー」でディヴァインというドラッグクイーンがこの役をやって以来、この役は男優が演るのが伝統なんだって)は、体型を気にしてもう何年もひきこもり。ママはトレイシーが体型のことで傷つくのを恐れて、オーディションに反対したり、自分自身が外に出るのも拒否するくせに、いつもミイラ取りがミイラになっちゃう感じで、トレイシーのエージェント役になったり、トレイシーを黒人地区に迎えに行ったはずが、一緒にそこで楽しんじゃったり、デモをするトレイシーを止めに行ったのに、デモに参加しちゃったり。イヤヨイヤヨといいながら結局輪の中心に入っちゃう。ラストだってママが主役みたいな感じだったもんね。もう、トラちゃんノリノリで楽しんでるよねーデブメイクなんだけど、完全にトラボルタ。もともとトラボルタが好きなワタクシはこれでますます彼が好きになっちゃいましたよ。

そんなデブ母ちゃんを愛しまくっちゃってるパパクリストファーウォーケンもいいしなぁ。クリストファーウォーケンって怖い顔したおじさんなのに、結構ふざけた役も多いんですよね。トラちゃんとのキスシーンは寸止めで、観客には優しい演出だったかな

TVショーのプロデューサーで黒人差別主義者を演じるのはなんとミシェールファイファー。あぁ、なんてキレイなんでしょう。そして、怖い。悪役がピッタリ。「真夏の夜の夢」のときも魔女を演じててちょっと遊びっぽい感じだったけど、今回ほどおちゃらけた役の彼女は初めて見たなぁ。おまけに歌もうまいし。コメディセンスもすごくあるんですね。

TVショーの「ニグロデー」の司会をするのはクイーンラティファ。彼女って年齢不詳なんだけど、1970年生まれなんですね。ってことはまだ37歳?それで、高校生のおかん役やっても全然違和感ないなぁ。老けてるとかじゃないんだけどね。やっぱ貫禄かなぁ。彼女も大好きなんですよー。「Big Blond Beautiful」って歌うとこなんてほんとに彼女そのものですよね。(blondっていうのは黒人のアイデンティティとしてはどうなの?っていう疑問もあったんですが)

とにかく、キャスティングが本当に最高なんですよ。TVショーの司会のコーニーを演じるジェームズマースデンもTVショーのアイドル、リンクを演じるザックエフロンも本当に60年代からやって来た若者のようで素敵だったし。親友役ペニーのアマンダバインズもただの“親友”かと思ったら歌もうまいし、お話にもキーパーソンとなって絡んでくる。(と思ったら、彼女アメリカではかなりの有名人なんですね)

そして、黒人差別と闘うヒロインも、「黒人」とか「白人」とかそういうことじゃなく、「ありのままの自分たちを愛そう」っていう感じで、だからこそ人種差別なんかバカらしいっていうメッセージがストレートに伝わります。それでも、話のテンポなどは決してヘヴィなものではなく、笑いも随所にちりばめられて、それが、アメリカンな笑いじゃなくてワタクシたちもかなり笑えるものだし、とにかく歌とダンスが超超ゴッキゲンで、「シカゴ」「プロデューサーズ」「レント」良かったけど、ミュージカル映画の中ではダントツに好き

キングダム~見えざる敵

2007-10-03 | シネマ か行

ネタバレ注意です。(ここは基本ネタバレありですが、公開前なので一応警告を入れておきます)

よくもまぁ、これだけ対イラク戦争が泥沼化しているときにアメリカ礼賛映画を作れるもんだなぁと思っていたんですが。。。

実際にはアメリカ礼賛映画ではありませんでした。FBIの捜査官が4人で双方の国の許可もなく、サウジアラビアに乗り込んでテロの捜査をするなんて、できっこねぇんじゃねぇの?という疑問はありつつも、、、そして、あれだけ砲弾が行き交う中、よくもアメリカ人だけ死なないもんだなぁという疑問もありつつも、、、

冒頭の自爆テロの様子はかなりリアルで本当に怖かった。ひと昔前までなら、あの映像を見ても映画の演出としての怖さしか感じなかったと思うのですが、今この世の中になって見ると、本当に心底怖いです。いかに9・11事件が、世界の認識をガラリと変えてしまったかが分かりますね。

4人のFBIの中に紅一点ジェニファーガーナーがいるわけですが、現代の映画的に一人は女性を入れとかないとっていう配慮の他に、せっかく彼女を入れるなら、サウジでの女性の扱われ方をもう少し取り上げても良かったんじゃないかなという気もした。バリバリ男の中で働く“職業婦人”がサウジでならもっとひどい扱いを受けたり、直接何か言われたりするんじゃないかなぁと。本題から少し離れてしまうことや、サウジという国そのものを批判することになるのを恐れてあえて避けたのかもしれません。

テロのアジトが簡単に見つかったり、情報提供者がすぐに現れたりと、突っ込むところは多々ありながらも、すべてはあのラストシーンのセリフのためにあったわけですね。テロの被害者側も、テロの首謀者が制裁を受けた時にも双方が同じセリフを言う。


「皆殺しにしてやる」


このセリフを聞いて「ミュンヘン」を見たときの感想を思い出した。“永遠に終わることのない戦い”救いのないラストだったが、「娯楽作品としての映画」ということだけで評価すると、ワタクシは良かったと思う。救いのないラストを娯楽として良かったというのは変なふうに聞こえるかもしれないけど、アメリカ礼賛でないところと、ラストの意外性(ワタクシが予見していなかったという意味で)が良かったと思う。

オマケ1阿刀田高さんの“知っていますかシリーズ”に「コーランを知っていますか」という本があります。コーランについて説明するのは非常に難しいようなんですが、それをできるだけ易しく解説してくれています。コーランに興味のある方にはアラーとキリスト教でいうところの神様っておんなじなんですね。。。そんな基本的なことも知りませんでした。同じ神様を崇めているんだから仲良くすればいいのに…なんて簡単には済まないんでしょうね。でも、もしアラブ諸国に石油が出なかったら?「聖戦(ジハード)」なんて言われてますが、宗教の争いだけでこんなことにはなっていなかったでしょうね。

オマケ2またまた「シリアナ」のときのようにアラブ系の人たちの顔を見分けるのが大変でした。一緒に見に行った人はジェイミーフォックスと仲良くなる警官とその部下を同一人物だと思っていたようでした。


サウスバウンド

2007-10-02 | シネマ さ行
森田芳光監督の作品ってまだ好きって思ったものがなかったのですが、この作品は結構好きだったな。

最近、「空気読めない」(「KY」って言うらしいですね)っていう言葉がはやってますが、これってどこから来たんでしょうか?お笑い芸人の「空気読めよー」ってやつから?この言葉自体は昔からあるわけですが、最近妙にはやりだして、しかもそれができないとすべてを否定されるみたいな言葉になってませんか。「空気読めない」でその人の評価が下るってすごい怖いことやなぁってワタクシは思ってたんです。なんか、その場にそぐわないこと言うなよ、分かってるやろな?みたいなね。全体主義的な怖さを感じるんですよねー。多数派に意見するなよ、みたいなね。確かにワタクシも日常生活で「空気読めよー」って思うことはあるにはありますが、少数派の有意義な意見までその言葉で一刀両断にされちゃうんじゃないかっていう怖さがあるんです。

なんで、急にこんなことを書いたかと言うとですね、この物語のお父さん豊川悦司がまさにその「空気の読めない」人なワケです。昔、学生運動に身を投じた革命の闘士で、過激派でアナーキスト。今は売れない作家のようなんですが、誰もが「当然」と思って、と言うよりも、特に疑問も持たずに何も考えずに国や公のサービスに支払っているお金なども、きちんと自分が納得しないと支払わない。家庭訪問に来た息子田辺修斗の担任に「徴兵制をどう思うか?」なんて質問をぶつけたりする。あぁ、空気の読めない人だ。。。こんな人、周囲にいたら確かに困るけど、全員が見事に空気読んじゃって、誰も何も言わないよりずっといいな。だから、ワタクシはこのお父さんが子供たちに「俺の真似はするな。俺は極端だからな。でも、おかしいと思ったことにはきちんと声を挙げろ」というところにジンときました。

沖縄の巡査役で登場する松山ケンイチくん。彼は演じる役によって、全然違うふうに見えますね。ここまで、実力派な若手ってそうそういないのでは?「L」のときも度肝を抜かれたけど、今回も違う意味で驚きでした。この先がめちゃくちゃ楽しみな役者さんです。

その他のところでは、子供たちの演技がヒドすぎるのと、西表島の人たちの演技がヒドすぎるので閉口してしまいました。カツアゲした子供が「まだなんかくれんのかい?ベイビー」なんか言うかぁ???(これは演技じゃなくて台本の問題ですが)西表島の人たちは素人なわけで、彼らが悪いわけでは決してありません。素人なんだから下手で当たり前。それを素朴な演出として利用した製作者側にはかなり問題があると思う。地元の人の素朴な演技が映画に味を加えることってもちろんあるけど、今回のはいくらなんでもヒドかったな。。。

どうやら、原作を読んだ人にとっては、ヒドいできばえの映画のようです。森田監督は「模倣犯」のときも原作をめちゃくちゃにしたと言われていましたね。「模倣犯」もワタクシは原作は読んでいなくて、映画だけ見たんですが、「模倣犯」は映画だけ見た人間にとってもヒドい映画でした。今回のは、映画だけの人には、まぁちょっと突っ込みたいところもありながらもなかなかいけるんじゃないでしょうか。

オマケ「パイパティローマ」ってなぁんか聞いたことあるなぁ、でも、なんやっけー?って思ってたら、実際に伝承されている伝説の島なんですね。きっとどこかで小耳に挟んだことがあったんでしょう。