シネマ日記

超映画オタクによるオタク的になり過ぎないシネマ日記。基本的にネタバレありですのでご注意ください。

ラ・ラ・ランド

2017-02-27 | シネマ ら行

いままさにアカデミー賞の発表が行われているところですが、おそらく取るでしょう。今年は「ラ・ラ・ランド」の年と言っても過言ではありませんね。

ライアンゴスリングエマストーンがミュージカルと聞いただけでワクワクしていました。ゴールデングローブ賞も取ったし、期待大と速攻見に行ってきました。

冒頭の高速道路の渋滞からみなが歌いだすシーンから心躍りました。急に誰ともなく歌い始めてみんなが振付を知っていて、息ピッタリに歌い踊る。そして歌が終わったらまるで何事もなかったかのようにそれぞれの世界に戻っていく、というミュージカルの典型のシーンですが、ミュージカルだめな人は多分もうこのシーンでだめでしょうね。ミュージカルだめな人でこの作品を見に行く人もほとんどいないとは思いますが。

オーディションに落ちまくっている売れない女優ミア(ストーン)が今日もまたオーディションに落ちて、ピアノの音色に魅かれてふらっと入ったお店でセブ(ドスリング)と出会いますが、ここでの出会いは予告で見たあのキスシーンとは全然違う最悪の出会いでした。あれ?あのシーンは宣伝のため?と思ったのだけど、それは最後の最後にからくりが。

その後家に帰ったミアとルームメイトたちの4人でのダンスがまた素敵。それぞれ違う色のドレスを着て並んで踊る姿がとても魅力的でした。そしてそのパーティでセブと再会。まだ印象は最悪でしたが、徐々に魅かれていき、、、というまぁよくある恋の始まり。

セブは売れないジャズピアニストで自分の店を持つという夢を持っていますが、仕事はなかなかうまくはいっていないよう。ライアンゴスリングが特訓してピアノを弾いているらしいのですが、音色も全部彼のものなのかな?それなら本当にすごいと思います。3か月の特訓であそこまで弾けるようになるものなの?音楽もやっていた人だからもともと素養があったのかな。

ただライアンとエマの歌とダンスは正直びっくりするほどうまいというほどではなくて、まぁ普通にうまいという感じでした。なので、「レ・ミゼラブル」のようなスケールのミュージカルを期待していた人はがっかりしてしまったかもしれません。

映画の始まり方を見ても分かるように往年のハリウッドの雰囲気を湛えたまま舞台を現代に置き換えているので、そもそも舞台劇としてのミュージカルではなくて往年のハリウッド映画のライトな雰囲気を持ったミュージカルの再来として楽しむほうがいいのかもしれません。

物語としては上に書いた予告編で使われていたキスシーンが登場するのが、なんとセブの妄想ハッピーエンドの中というなんとも切ないお話。あの最後の妄想が実は現実で、パリで成功して結婚して子供もいるエマのほうが実は「if」だったというオチを切実に願いながらあの妄想シーンを見ていたのですが、やっぱりそうは問屋が卸しませんでした。あまり単純に「男」「女」と二極化して語るのは嫌いですが、過去にすがり生きる「男」と未来を見て生きる「女」の違いが描かれたラストでした。

ワタクシは必ずしもハッピーエンドの映画が好きなわけではありませんが、この作品にはハッピーエンドで終わって欲しかったなぁ。2人とも夢を叶えてその分にはハッピーエンドと言えるのかもしれないけど、やっぱり恋人同士としてハッピーエンドを迎えて欲しかったです。そう思えるのも主人公が魅力的な物語だからかもしれませんね。

追記この記事をアップした直後に作品賞の発表がありまして、取りませんでしたねー。今年はガチガチやと思ってたんですが。しかもあんな世紀のハプニングというか大失態があるとは。「ムーンライト」も楽しみです。


ナイスガイズ

2017-02-24 | シネマ な行

なんか全然宣伝されてない作品ですが、ラッセルクロウライアンゴスリングが好きなので見に行きました。70年代が舞台っていうのも好きなカテゴリーです。

腕っ節の強い示談屋ヒーリー(クロウ)はアメリアマーガレットクアリーという少女に雇われ、彼女を探し回っているという男と示談しに行く。その男というのが私立探偵のホランドマーチ(ゴスリング)。ヒーリーの示談というのは実際にはボコボコにして言うことをきかせるというもの。ヒーリーはマーチをボコってアメリアにつきまとうなと言う。

家に帰ったヒーリーは2人組の男に襲われ、アメリアの居場所を教えろと脅される。なんとか2人を追っ払ったヒーリーはアメリアの命が狙われていると知り、今度はマーチにアメリアを探すよう依頼する。マーチはアメリアの居場所を知っているとヒーリーを大気汚染に反対するデモに連れて行く。その団体を率いているのがアメリアだと言うマーチだったが、そこにアメリアはおらず、ボーイフレンドが火事で死んだからだと聞かされる。

こうして2人とマーチの13歳の娘ホリーアンガーリーライスも行きがかり上加わって、ひとつの手掛かりから次の手掛かりへと探っていくうちに、自動車メーカーの大気汚染問題、ポルノ問題、司法省長官キムベイジンガーまで続く大きな社会問題につながる事件だということが分かってくる。

この社会問題なんかもとても70年代的。ラジオで光化学スモッグ汚染の注意報なんかが流れていて、懐かしい気がした。日本でもワタクシが小さいころはよく光化学スモッグの注意報が出ていました。

もちろん舞台が70年代なんだから当たり前なんだけど、登場する人たちのファッションや家の内装なんかがすごくいい感じ。マーチが娘のホリーに"and stuff"って言うのをやめなさいって何度か言っていて字幕では「~とか」となっていたけど、当時の若者言葉で大人が聞いたらちょっとイラッとする感じだったんでしょうね。

ライアンゴスリングという人はハリウッド男前ランキング上位に常にランクインしている人なんだけど、こういうコメディもいけちゃうというのはすでに証明済み。だいたい変な役の時は変なヒゲでちょっと男前を崩して現れる。このドンくさいけど、実は頭は切れるというマーチを男前が演じるっていうのが絶妙ですね。

ラッセルクロウも腕っ節は強いけど、子供たちには優しい男っていうのがぴったりで。頼りがいありまくり。彼といたら絶対大丈夫って無条件に思わせてくれる。

そして、マーチの娘を演じたアンガーリーライスちゃんが良かった。よく見ると顔も可愛いんだけど、キャラのせいで見た目の可愛さが隠れていたかも。13歳でパパに生意気言ったりもするけど、全然憎らしくなくて可愛い。パパがダメ男だから彼女の良さが引き立つというか、彼女のツッコミにダメなパパは救われてる。

現代のようにネットでちょちょっと調べれば何でも分かるっていう時代じゃないから、泥臭く聞き込みとかして回る姿がかえって若い人たちには新鮮かも。ワタクシはこの時代を生きてきたわけじゃないけど、昔のドラマの雰囲気があってやっぱりどこか懐かしい。

ライアンゴスリングのコメディセンスがめちゃくちゃ光って、ラッセルクロウもなかなかにその間(マ)にうまくハマっていて、意外な顔合わせがまさにナイスはケミストリーを生み出していた。これはぜひ続編作って欲しい。


マリアンヌ

2017-02-23 | シネマ ま行

公開前からブラッドピットの離婚騒ぎで有名になってしまった作品でした。見に行こうか迷ったのですが、ネットでのレビューが良かったので行って来ました。

ワタクシ的には、んーーーいま一歩。という感想です。

お話は超超超オーソドックス。戦時下で出会ったスパイ同士が恋に落ち、結婚し子供ももうけたが妻マリオンコティアールに二重スパイ容疑がかかり、暗殺命令が出て夫が苦悩する。もうこんな脚本何回映画になってきた?っていう印象。

ロバートゼメキス監督は往年の1940年代のモノクロ作品のようなロマンスを撮りたかったのかな。ハンフリボガードやグレゴリーペック、キャサリンヘップバーンやイングリッドバーグマンが登場するような。そんなスターの再来としてブラッドピットとマリオンコティヤールを選んだのは正解だと思います。往年の銀幕のスターの風格を現代でも持っている2人と言っていいでしょう。

冒頭、砂漠にパラシュートで1人降り立つブラピ。ハンドラーの車に乗り込み用意されたカバンを開ける。この時のブラピの前髪が風にゆらゆら揺れるのですが、それすらもうカッコいいです。役柄が実年齢より若いのでしわ取りメイクをほどこされているようで本当に少し前の若い時のブラピのよう。なんですが、このブラピ演じるマックスという男、随分寡黙な役のよう。ブラピの演じてきた役はこれまでほとんど見てきていますが、ここまでつまらなそうな顔した彼を初めて見ました。なんだろうなぁ。単純に寡黙だから、が原因じゃないような…それが何かは分からないのですが。

映画の筋は悪くないんですけどねぇ。妻に二重スパイ疑惑がかかってからの展開がいまいちスリリングさに欠けたような気がします。もう少しブラピの疑心暗鬼状態と妻の行動をうまく見せてほしかったような。

それとこれは二重スパイ疑惑とは関係ないのですが、マックスが軍の仕事にいつも急にかり出されていくことに、あからさまに不満を表していたマリアンヌがなんだか不自然な気がしました。フランスのレジスタンスで活躍してきた女性が、ナチスと戦っている夫に「家にいない、休暇がない」ってぶーぶー文句言うかなぁ?自分も参加したいくらいの気持ちでいるんじゃないの?と思いました。結果彼女はレジスタンスではなかったわけですが。

ちょっと悪いことばかり書き過ぎましたね。マリオンコティアールって決して美人だとは思わないけど、やはり魅力的な役者さんだと思います。ブラピと彼女のツーショットはやはり美しかった。良いこと書いていないですが、見ている最中飽きることはありません。作戦のシーンも彼らのロマンティックなシーンも良かったと思います。どちらかのファンなら見て損はないと思います。


チャッピー

2017-02-17 | シネマ た行

ギャングに拉致されたロボット研究者ディオンデヴパテルは、ギャングに脅され廃棄されるはずだった警官ロボットに自分が開発した人工知能を搭載させて起動させる。こうして誕生したチャッピーシャールトコプリーはギャングのカップルをニンジャニンジャとヨーランディヨ=ランディヴィッサーをパパ、ママと慕って成長していく。

予告編を見ていたときはよくあるAI系の話かと思ったんですが、さすがはニールブロムカンプ監督。やっぱり独特の世界観を持っています。今回のロボットはなんとギャングに育てられ、うまく口車に乗せられて窃盗したりしてしまいます。犯罪的なことをしでかすだけではなくて、ギャングっぽい歩き方とか挨拶の仕方とかそういうのを覚えていきがっているチャッピーがやけに可愛かったりします。

チャッピーはまるで反抗期を迎えた子供のように作り手であるディオンが自分のバッテリーが5日しか持たないことを黙っていたと、ディオンに怒ってしまうけど、途中でニンジャはパパなんかじゃなく自分を犯罪に利用していただけだったと知り、最後には結局ディオンを助けてくれました。

ヨーランディはニンジャの恋人で彼女もろくでもない人間なんでしょうけど、チャッピーへの母親的な愛情を見ていると、自然に彼女を応援したくなってしまいました。

このお話って善vs悪ではなくて、それどころが「善」にあたる人が誰も出てこないというところが独特で面白いです。ディオンは会社に逆らって勝手にAIを搭載したロボットを作り、アップデートするためのマスターキーを取っちゃうし、ギャングはギャングだし、ディオンの上司でライバルのヴィンセントヒュージャックマンは自分が開発した戦闘ロボが優秀だということを証明するためになんだってやる。(後ろ髪を伸ばして変な髪型のジャックマン)

結局のところ、善でも悪でもなくチャッピーはただ「生きたい」という本能的な欲求にただまっすぐに突き進んでいきます。自分のバッテリーが切れてしまう前に代わりのボディを探す。または別の生き残る方法を探す。それが結果自分の意識をコンピュータに移すということだったわけだけど、それでギャングの抗争やらヴィンセントの攻撃やらで最終的にディオンもヨーランディもロボットの体を得て3人(3体?)で生きていくことになります。

このラストの脚本のひねりがとてもブロムガンプ監督らしいです。主人公たちがロボットとして生きていくなんて昔の日本の漫画ならありそうな感じがしますが、ハリウッドのメインストリームでやれる人はかなり少ないだろうなぁと思います。そういう死生観に抵抗のある人は拒否反応を起こしそう。

まぁとにかくチャッピーが可愛いのと、ニンジャやヨーランディの武器が黄色やピンクだったりして映像的にも独特で楽しいです。ブロムカンプ監督は「第9区」「エリジウム」、本作とかなり似た雰囲気の作品を撮っていますが、これからは少しここから変化して行かないと苦しいのではないかなーと思います。


オデッセイ

2017-02-16 | シネマ あ行

公開当時見に行こうかどうか迷っていた作品です。リドリースコット監督は好きなんだけど、彼のここ数作とは相性が良くなかったので、少し敬遠してしまいました。wowowで放映があったので見たのですが、見に行っても良かったなぁと思いました。

火星探索途中に嵐に遭い、ケガをして倒れてしまったマークワトニーマットデイモン、船長のメリッサルイスジェシカチャステインはなんとか助けようとするが、最終的に彼は死んだと判断し、隊員たちは宇宙ステーションに向かう。しかしワトニーは生きていた。他の隊員が去ってしまってから目覚めたワトニーは1人火星に取り残されたことを知る。

ワトニーは植物学者なので、残された食糧を計算し、じゃがいもを種として栽培することにする。不毛の地火星でどのように植物を栽培してサバイヴするか。ワトニーが植物学者というのがうまい設定だ。ワトニーが自分の置かれた状況をただ悲観するのではなく、どこか開き直ったような感じがするのが面白い。マットデイモンのどこか子供っぽい風貌もワトニーのキャラクターにとても合っていた。この作品の魅力は色々あるけど、やっぱりこのワトニーの性格や技量によるところがとても大きいと思うので、これだけの作品を背負えるマットデイモンを選んだことは大正解だと思います。

一方NASAもワトニーが火星で1人生き残っていることを突き止め、なんとか彼を助けようとする。地上の面子もジェフダニエルズキウェテルイジョフォークリステンウィグショーンビーンと結構豪華。「アポロ13」などでもあったけど、現地に存在する同じ道具や設備を用意して、まったく別の物を作り出す方法を考えたりするシーンはやはり見ていて楽しい。

こういう作品はいつも登場人物たちが発している技術的なセリフがなんのことを言っているのかさっぱり分からないくて困るんだけど、それでも宇宙ものの傑作はそれが理由でつまらなくはなったりしない。それこそ技術的なことを知っている人が見れば、そんなわけねーみたいなシーンが沢山あるのかもしれないな。分からないほうがある意味幸せか。

ワトニーとクルーたちの関係性があまり見えないのでちょっと感情移入しにくいのだけど、初めてワトニーが生きていることを知らされ、彼との通信が許されるシーンでもしめっぽいことは言わずユーモアに溢れた皮肉を言えるところがまたニクい。隊長が残していった音楽の趣味とかね。ワタクシはディスコ音楽好きだけど。

先にも書きましたが「アポロ13」と「ゼログラヴィティー」と足して2で割ったような感じかな。「プロメテウス」「悪の法則」「エクソダス」とリドリーと合わない作品が続いていたので、これは面白くてホッとしました。


ニュートンナイト~自由の旗を掲げた男

2017-02-08 | シネマ な行

南北戦争時代のアメリカ。まだ少年と言えるほどの年齢の甥が徴兵され、目の前で殺されたニュートンナイトマシューマコノヒーは甥の遺体を故郷に届けるべく戦線を離脱。元々金持ちが奴隷制を維持するために奴隷も持たない貧乏人が代理で戦争しているという考えだった彼は、そのまま脱走兵となる。

南軍は軍隊のためと貧乏な農民から農作物や家畜を搾取していく。残された女性と子供たちに銃を持たせ、南軍を追い払ったナイトはお尋ね者となったため、南部の沼に逃げ匿ってもらう。そこでは逃亡した奴隷たちがひっそりと生活をしていた。

そこでナイトは逃亡奴隷たちと、同じく南軍から逃れてきた白人たちを率いて南軍の搾取と戦うことになる。

ナイトは生まれも育ちも南部だが、貧乏な家で奴隷制とは遠いところで育ってきたのだろう。金持ちの白人に搾取される奴隷たちと自分たちに何の違いもないという価値観を持っていた。そして、どこかカリスマ性のある彼は自然とたくさんの人を率いるリーダーとなっていく。こういうカリスマ性のあるリーダーをやらせたら、マシューマコノヒーのカッコいいことカッコいいこと。

南北戦争の陰にこんな人がいたなんてことはもしかしたらアメリカでも知られていなかったことなのかな。彼は南軍から奪取した土地で「Free State of Jones」という名前を掲げて独立宣言までしてみせた。(もちろん、北軍も南軍もそんなものを国とは認めなかっただろうけど)彼の国でのルールは「人はみな人」ということが基本にあった。黒人も白人もみな人。誰も自分が種を蒔いた作物を搾取されてはならない。そんな当たり前のルールがどんなに貴重なものであったか。

南北戦争時代のアメリカの合間合間に時折挟まれる裁判の様子。ナイトの時代から80年以上経ったアメリカ南部。最初はいまいち何のことか分からないのだけど、どうやらナイトと黒人女性レイチェルググ・ンバータ=ローの間に生まれた子の子孫が白人と結婚したかどで裁かれているようだ。いわゆるOne-Drop Ruleというやつで、8分の一黒人が入っている彼は白人の女性と結婚することは法律違反で罪に問われていた。

先祖のナイトが達成したかったことは3世代下の時代になってもまだ達成されていなかった。しかし、ナイトの血を引く彼は裁判に屈せず、結婚を取りやめないと言ったため投獄される。

ナイトの時代では、戦争が終わり奴隷解放宣言がなされたのもつかの間、リンカーン大統領の次のジョンソン大統領になると“年季奉公”と称し実質奴隷制を復活させる。選挙権を与えられた黒人たちもKKKの妨害に遭い、先導する者はリンチで殺されてしまう。

それでもナイトは北部に逃げることはせず故郷の南部に留まり続けた。(それゆえに3世代下の子孫が裁判にかけられるハメになるのだけど、おそらく彼も自分の故郷を離れようとは思わなかったのだろう)

映画としてはちょっと冗長な部分があり、後半少しダレてくるところもある。歴史の勉強としてはとてもいいし、心に残る力強い作品ではあるのだけど、140分の映画にしてしまうよりHBOあたりのミニシリーズにして歴史的な背景なんかもじっくり描いたほうが良かった題材だった気はする。