電脳筆写『 心超臨界 』

真の発見の旅は新しい景色を求めることではなく
新しい視野を持つことにある
( マルセル・プルースト )

こころのチキンスープ 《 もう花はいらない――ある老婦人 》

2024-07-21 | 06-愛・家族・幸福
電脳筆写『心超臨界』へようこそ!
日本の歴史、伝統、文化を正しく学び次世代へつなぎたいと願っています。
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東京裁判史観の虚妄を打ち砕き誇りある日本を取り戻そう!
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  痛みと苦しみを経験することは避けられない。
  だが、みじめさを経験するかどうかはその人次第である。
          アート・クラニン


◆もう花はいらない

「こころのチキンスープ 8」
( ジャック・キャンフィールド他、ダイヤモンド社、p138 )

ここは、人里離れた静かな墓地。この墓地を守る年配の管理人の元には、毎月ある人から小切手が届いていた。近くの町の病院に長く入院している女性が、息子の墓に花を供えてほしいと送ってくるのである。息子は、数年前に自動車事故でなくなっていた。

ある日、この墓地に1台の車が入ってきて、ツタの絡まる管理事務所の前に止まった。男が運転する車の後部座席には、老婦人が乗っていた。老婦人はまるで死人のような顔色をし、目を半分閉じている。

「こちらの女性は、お加減が悪くて歩くことができません」と運転していた男が管理人に言った。

「息子さんのお墓まで一緒に来てもらえませんか。お願いがあるそうです。ごらんのとおり、この方はもう長くないのです。ですから、息子の墓をひと目見に連れていってほしいと、昔から家族ぐるみの友人である私に頼まれたのです」

「もしやウィルソン夫人では?」と管理人は尋ねた。

男はうなずいた。

「そうでしたか。毎月小切手を送ってこられるのは、この方だったのですね」

管理人は男と一緒に車の所へ行き、老婦人の横に乗り込んだ。彼女は弱々しく、明らかに死期が迫っている様子だった。しかしその表情には、何か別のものがあることに管理人は気づいた。暗く陰鬱なその目は、長い年月の深い痛手を隠しているように見えた。

「私はウィルソンです」と老婦人はか細い声で言った。「この2年間、毎月……」

「ええ、存じております。私は言われたとおり、お花を供えてきました」

「私が今日来たのは」と老婦人は続けた。「あと数週間の命だとお医者様に言われたからなんです。いえ、死ぬのはべつに何ともありません。この世には、もう何の楽しみもないんですから。でも死ぬ前に息子のお墓をひと目見て、あなたにお願いしたいことがあったんです。私が死んだ後もずっと、息子のお墓にお花を供えていただけないでしょうか?」

言い終わると、老婦人はぐったりとした。口をきくのも骨が折れるようだった。

車は、狭い砂利道をお墓に向かって走った。墓の前まで来ると、老婦人は大儀そうにちょっと体を起こし、窓越しに息子の墓をじっと見つめた。あたりは静寂に包まれていた。小鳥のさえずりだけがときおり、背の高い古木のあいだからもれてくる。

ついに、管理人が口を開いた。

「じつは、奥様。私は前々からあなたが花のお金を送っていらっしゃるのを残念に思っていたんですよ」

最初、老婦人は何も聞こえないふりをしていたが、やがてゆっくりと管理人の方に向き直った。

「残念ですって?」と彼女はつぶやいた。

「ご自分の言ってることがわかってるんでしょうね、ええ?」

「はい、そのつもりです」と管理人は穏やかに答えた。「私は教会の奉仕活動で、毎週病院や刑務所を訪問していますが、そこには、励ましを必要としながら生きている人々がいます。ほとんどの人は花が好きで、花を見たり、その香りをかいだりすることができます。でもこの墓には、生きてる人はいません。花の美しさを見て、その香りをかぐ人は、誰もいないのです……」。彼は目をそらし、口をつぐんだ。

老婦人は何も言わず、息子の墓をじっと見つめていた。何時間もたったかと思われる長い沈黙のあと、彼女は片手を上げて合図した。連れの男は、二人を車に乗せ管理事務所に戻った。そこで管理人を降ろすと、ひと言のあいさつもなく車は走り去った。

私はあの女性を怒らせてしまったかもしれない、と管理人は思った。あんなことを言うべきではなかった。

ところが驚いたことに、数か月後に老婦人がふたたび現れたのである。今回は何と一人で車を運転して! 管理人はわが目を疑った。

「お花のことですが、あなたのおっしゃるとおりでしたよ」と彼女は言った。「だから、小切手を送るのをやめたんです。病院に戻ってからも、あなたに言われたことが頭を離れませんでした。そこで、誰からもお花をもらっていない入院患者の人たちにお花を贈ってみたのです。すると、あんまり喜んでくれるものだから、それを見て、私まで嬉しくなりました。そのお花はその人たちを幸せにしてくれ、それ以上に私自身を幸せにしてくれたのです」

「お医者様は首をかしげました」と彼女は続けた。「なぜ私が急に回復したのかわからなかったのです。でも実際、私はこのとおり元気になったのよ!」

              『ビッツ・アンド・ピーセズ』より抜粋
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