電脳筆写『 心超臨界 』

あなたが他人を責めるとき
あなたは成長し変化する自分の力を放棄したことになる
( ロバート・アンソニー )

不都合な真実 《 ショック・ドクトリン――中野剛志 》

2024-05-08 | 05-真相・背景・経緯
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コロナ・パンデミックの下、ショック・ドクトリンが勢いを増して全世界に展開しています。日本も例外ではありません。日本は、外国資本とくに中国資本による草刈り場と化しています。土地の買い占め、倒産企業の買収……。移民の大量受け入れも進行中です。菅政権はショック・ドクトリンの道先案内人になり下がってしまいました。

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◆ショック・ドクトリン――中野剛志

『危機の思想』
( 西部邁・佐伯啓思【編】、NTT出版 (2011/7/29)、p211 )

2007年、カナダの著名なジャーナリストであるナオミ・クラインが著した『ショック・ドクトリン――災害資本主義の成立』という本が、世界的なベスト・セラーとなった。

この本は、新自由主義(市場原理主義)に則った政策――小さな政府、民営化、規制緩和、貿易自由化、緊縮財政など――が、戦争、経済危機、恐怖政治そして自然災害といったショックが利用されるということを暴露したものである。

新自由主義的な政策は過激なものであるため、通常であれば受け入れられない。しかし、戦争や恐怖政治あるいは自然災害のショックによって恐怖を与えられると、人々は思考停止状態となり、新自由主義者の急進的な改革を受入れるようになる。CIA(中央情報局)は、囚人にショックを与えて記憶を消去して精神を改造するが、新自由主義は、そうしたショック療法による人間改造と同じ発想に立つものである。これがクラインの主張である。本の題名の「ショック・ドクトリン」とは新自由主義のことなのである。

東日本大震災という未曾有の大災害を被った我が国が、復興を考えるにあたっては、この「ショック・ドクトリン」が忍び寄る危険性を十分に警戒しなければならないだろう。そこで、まずは、クラインの議論を追うことから始めたい。

2005年、ハリケーン「カトリーナ」がニューオーリンズを襲って大規模な破壊をもたらした際、新自由主義の最大のイデオローグであるミルトン・フリードマンは、新聞紙上で次のような見解を披露したという。

「ニューオーリンズにおいては、通学していた子供たちの我が家であった学校は、そのほとんどが廃墟と化している。子供たちは、今やアメリカ中に離散している。これは、悲劇である」

フリードマンは、こう述べた上で、次のように続けている。

「そしてまた、教育システムを抜本的に改革する好機でもある」

フリードマンが望んでいた教育システムとは、チャーター・スクールと呼ばれる制度である。公立学校を廃止し、利益目的で運営される私立学校のみとし、政府は各家庭にバウチャーを配り、好きな私立学校を選べることができるようにする。要するに、公立学校の民営化である。

当時のブッシュ政権は、このフリードマンの提案を採用した。その結果、ニューオーリンズの123校の公立学校は4校にまで減らされた。ハリケーンによって破壊されたニューオーリンズは、チャーター・スクールの実験場とされ、私企業の草刈り場とされたのである。

同じようなことは、2004年のスリランカの大津波でも起きた。大津波で廃墟と化したスリランカの沿岸部に、外国資本が乗り出し、住民のパニックを利用して土地を買いあさり、漁民たちを追い出して巨大なリゾート地を建設したのである。

新自由主義的な構造改革の台頭を招き寄せる破壊をもたらすのは、自然災害だけではない。恐怖政治や戦争、経済危機もまた、ショック・ドクトリンに利用される。

そもそも、フリードマンが最初にショック・ドクトリンを施したのは、彼がチリのピノチェ政権のアドバイザーになった時だとクラインは指摘する。ピノチェは暴力的なクーデターによって政権の座につき、恐怖政治をしいた。チリ人たちは、恐怖政治に加え、ハイパーインフレーションという経済危機のショックで、思考が停止し、抵抗力を失っていた。そこで、フリードマンと彼の弟子の経済学者たち(いわゆる「シカゴ学派」である)は、チリに対し、減税、自由化、民営化、社会保障費の削減、規制緩和といったショック療法を処方したのであった。逆に言えば、ピノチェの恐怖政治やハイパーインフレといったショックがなければ、シカゴ学派の教科書通りの構造改革は、不可能だったということである。

この他にも、新自由主義的な構造改革の前には、人々に恐怖を与える何らかのショックがあるという例は数多くある。

イギリスのマーガレット・サッチャー首相は、1982年に起きたフォークランド紛争というショックを利用して国民の支持を獲得し、炭鉱労働者の弾圧や民営化などの新自由主義的な政策を次々と断行した。1993年、ロシアのボリス・エリツィンは、議会を武力制圧して反対派を弾圧した。ロシアで自由化や民営化といった新自由主義的な改革が始まったのは、その後である。中国でも、市場経済に向けた改革が行われ、輸出拠点と化していったのは、1989年の天安門事件以降のことである。1997年から、98年のアジア通貨危機では、国際通貨基金(IMF)が東アジア諸国に乗り込んで、緊縮財政、規制緩和、民営化などの改革を強制した。1999年、NATO(北大西洋条約機構)軍によるベオグラード攻撃の後、旧ユーゴスラヴィアでは急速な自由化が進められた。

2001年9月11日、同時多発テロが起き、アメリカは「テロとの戦い」を開始した。そのおかげで膨張した軍需によって、ベクテル、ブラック・ウォーター、ハリバートンといった関連産業の巨大企業は大きな利益を手にした。そして2003年のイラク戦争後に、占領されたイラクには、民営化、完全な貿易自由化、政府の極端なスリム化などを強制した。

このように、新自由主義的な改革の前には必ずと言っていいほど、自然災害、テロ、恐怖政治、戦争、経済危機といった、人々を恐怖に陥れるようなショックが起きている。抜本的な構造改革は、人々がショックを受けることで可能になる。だから、新自由主義者・構造改革論者は、危機の到来を何よりも好むのである。危機により既存の構造が破壊されれば、新自由主義者らが理想とする市場原理主義の世界を構築することができるからだ。現にフリードマンは、こううそぶいたという。「実際の危機あるいは認識される危機のみが、真の変革をもたらすのだ」と。

新自由主義者たちは、政府の介入を排除し、個人の自由な活動に任せれば、自由と繁栄が可能になると喧伝し、全体主義と対決する自由の闘士を気取ってきた。しかし、実際には、彼らこそ、人間を恐怖によって改造し、社会を新しく作り変えるという野望を抱いた全体主義者であったのだ。それが証拠に、新自由主義者は、クラインが引用する次の言葉が毛沢東のものだと知らなければ、全面的に賛成することだろう。「まっさらな紙の上にこそ、最も新しく、最も美しい字を書くことができるのである」。
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