電脳筆写『 心超臨界 』

ひらめきを与えるのは解答ではなく質問である
( ウジェーヌ・イヨネスコ )

戦略的思考の本質 《 古代ギリシャの予言――山内昌之 》

2024-05-26 | 04-歴史・文化・社会
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東京裁判史観の虚妄を打ち砕き誇りある日本を取り戻そう!
そう願う心が臨界質量を超えるとき、思いは実現する
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■超拡散『世界政治の崩壊過程に蘇れ日本政治の根幹とは』
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■超拡散『移民受入れを推進した安倍晋三総理の妄言』
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 歴史に学ぶ「戦略的思考の本質」
 東京大学教授・山内昌之

  [1] 平和のリーダーシップ
  [2] 古代ギリシャの予言
  [3] ローマ人の勇気と臆病
  [4] 政略に敗れた義経
  [5] 裏切られたサラディン
  [6] リンカーンの決断
  [7] 『戦争論』とビスマルク
  [8] 石原の東亜連盟構想
  [9] 毛沢東の凄み
  [10] 過去は知の宝庫


トゥキディデスは「もっとも真なる原因と、世に伝えひろめられた原因」という巧みな表現によって歴史的事件をもたらす要因を分析した。確かに戦争の直接原因は小さなポリス間の紛争ぼっ発にあった。しかし真の原因はアテネの勢力拡大を恐れたスパルタが戦争によってアテネの覇権確立の阻止に動いた点にあるというのだ。こうした冷静な分析こそ、米国の国際政治学者ジョセフ・ナイがトゥキディデスをリアリズムの父と呼んだゆえんである。別の米国人は、20世紀の国際政治学者の知識でトゥキディデスの知らなかったことはないとまで語っている。


歴史に学ぶ「戦略的思考の本質」――[2] 古代ギリシャの予言
([やさしい経済学]10.01.05日経新聞(朝刊))

古代ギリシャのトゥキディデスは、前5世紀にアテネとスパルタとの間にペロポンネソス戦争が生じた時、この争いが長期に及ぶ史上最大の「大戦」になると予測した。そして「やがて今後展開する歴史も、人間性の導くところ再びかつての如(ごと)き、つまりそれと相似た課程を辿(たど)るのではないか」と、『戦史』を著した動機を説明した。確かに、1914年に第1次世界大戦が起こると、大学でトゥキディデスを教えていた英国の歴史家アーノルド・トインビーは、自分たちの目撃している戦争が2300年前のペロポンネソス戦争にそっくりだという霊感に襲われた。トゥキディデスがすでに経験ずみの歴史と「相似た過程」を現代人も辿っているという閃(ひらめ)きから着想を得ながら、大著『歴史の研究』の執筆に向かったのである。

トゥキディデスは「もっとも真なる原因と、世に伝えひろめられた原因」という巧みな表現によって歴史的事件をもたらす要因を分析した。確かに戦争の直接原因は小さなポリス間の紛争ぼっ発にあった。しかし真の原因はアテネの勢力拡大を恐れたスパルタが戦争によってアテネの覇権確立の阻止に動いた点にあるというのだ。こうした冷静な分析こそ、米国の国際政治学者ジョセフ・ナイがトゥキディデスをリアリズムの父と呼んだゆえんである。別の米国人は、20世紀の国際政治学者の知識でトゥキディデスの知らなかったことはないとまで語っている。

現代の国際政治が前5世紀のトゥキディデスの世界と同じだという指摘には異論があるかもしれない。しかし、トゥキディデスの議論は、戦争不可避という確信が戦争を引き起こす主要な原因だったと説く点でも示唆に富む。同時に学ぶべきは、ナイも強調するように、人間の判断のもつ自由度によって、最悪の事態を防ぐこともできるという点である。そこで発揮されたリーダーシップによって国際政治の協調行動が戦争を回避してきた事実もあるのだ。しかし、市民が政策決定に参加する政体では世論の動きが大きな影響力をもつので、市民の熱狂や敵への憎悪が国益を基礎とした合理的な判断力を曇らせてしまう場合が多い(『戦略の形成』所収、ケーガン「ペロポンネソス戦争におけるアテネの戦略」)。

いちばん適切なタイミングを見落とすと、平和の機会は奪われてしまう。歴史の狭い類推だけに頼らず、歴史の誤解という罠(わな)にはまらないためには、歴史を多く読むことで戦略的思考力を鍛える以外にないのだ。
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