電脳筆写『 心超臨界 』

想像することがすべてであり
知ることは何の価値もない
( アナトール・フランセ )

人間学 《 トップの条件=スピーチ上手――伊藤肇 》

2024-06-30 | 03-自己・信念・努力
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そう願う心が臨界質量を超えるとき、思いは実現する
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ありていにいえば、あれほどの演説が岩田にできるとは思っていなかったので、率直にこの秘訣をきいたら、これまた意外な答が返ってきた。「アメリカの歴代大統領のうちでも、最も説得力があったウィルソンが、演説の心得をきかれた時、こういっている。『1時間の演説ならば即座にやれる。20分でまとめろといわれると、2時間の準備が必要だ。だが、5分のスピーチだったら、一晩、構想を練らなくちゃ』とネ」


『人間学』
( 伊藤肇、PHP研究所 (1986/05)、p77 )
第3章 応待辞令の人間学

◆トップの条件――スピーチ上手

アメリカにおける社長の資格は第一に「胃の腑が丈夫なこと」。第二に「魅力的なスピーチがやれること」。第三に「フォートフェイスつまり写真うつりがいいこと」の三つだが、まん中の「上手な講演」は「応待辞令」の重要な一項目である。

新入社員への訓示は、社長自らがそれぞれに心魂を傾けてやる。それだけにトップの人生観や人間学が強く滲み出ていて、分析して組み立て直すと、一篇の密度の濃い人物論ができあがる。

東芝社長・岩田弐夫(かずお)の訓示がその典型である。

もともと、講演というのは、最初の3分間は、「いったい、何を喋るのだろう?」と聴衆は期待に燃える。そんな時、ダ、ダ、ダ、ダッと機関銃みたいに喋ったのでは落第である。

そのコツは聞こえるか、聞こえぬ程度の声で喋りだすのがコツである。極端にいえば声を発しないで、口だけ動かすのも一つの方法である。

岩田は「私が社長の岩田です。大変むずかしい字ですが、発音はやさしい。カズオ〈弐夫〉とよみます」と、かなり低めの声ではじめ、新入社員たちが、「社長は何をいい出すんだろう」ときき耳をたてたとみるや、ズバリと本題へ入っていった。

「東芝は従業員とその家族を入れると、25万人の世帯で、ちょうど、青森市や秋田市の人口に匹敵します。青森、秋田の市長はその25万人の市民に行政をするのであります。しかし、東芝の私ならびにボードの人々は25万人の社員とともに働き、生活費を供給するのであり、行政者とは根本的に違います。すなわち、東芝25万人の生活を守るのは、われわれにとっては至上命令であります。何処かの大学の卒業式に総長が演説しようとしたら、30人ぐらいのヘルメットをかぶったのがやってきて、『やめろ、やめろ』と喚くと、トラブルを恐れて、『ハイ、やめます』といって卒業式が終わってしまう。というようなことは、われわれの企業においては絶対にあり得ないのです。われわれの基本理念をゆさぶる者に対しては、断固として、命をかけても排除するということを諸君は忘れないでもらいたい。とにかく、甘い世の中ではありません。これから諸君が船出する人生は厳しいものであることを第一番に告げて置きたいのです」

岩田自身、東芝争議の十字砲火をくぐりぬけてきているだけに、静かな一言一句ではあったがすごい迫力がこもっていた。

ここで岩田はパッと話題を転じた。

「わたしが40年前に大学を出る時、総長の祝辞の中にこういうのがあった。『諸君は実社会へでてからも、長年、学校でやった外国語に10分でいいから接してもらいたい。それを続けてもらえば、やがて諸君の人生にどれだけ裨益(ひえき)することになるか、はかりしれないものがある』。それをきいた時、私は〈何だ。たいしたことではないじゃないか、朝の10分ぐらいはジャパン・タイムスを読むよ〉と思ったのですが、とうとう実行できなかった。結局、わたしは60をすぎて、やっとその習慣がもてるようになったのですが、このように平凡で誰にでも実行できそうなことは、実はなかなかやれない。そこで、今、ここでお願いしたいのは『平凡に徹せよ』ということです。当り前のことを当り前にやる。そして、その積み重ねがホンモノとなった時、それは非凡に通ずるのです」

「当り前のことを当り前にやる」……表現はやさしいが内容は深く、むつかしい。

アメリカの大学紛争に際して、アーサー・ターナー教授が下した見事な「断」がある。

「私は信ずる。教授があるのは教えるため。管理者があるのは管理するため。学生があるのは学ぶためだ」

全く、その通りだが、これがなかなかやれない。こんな話はどうか。

詩聖といわれた白楽天が鳥窠(ちょうか)和尚をとらまえて、「善の真髄(しんずい)は如何?」と問うと、「諸悪莫作(しょあくまくさ)、衆善奉行(しゅぜんぶぎょう)」と答えた。

「悪いことはやりなさんな。いいことはやりなされ」。あまりあたり前のことなので、〈子供あつかいされた〉と思った白楽天は、些か、むっとした表情で「そんなことは百も承知だ」と口をとんがらせると、和尚に一喝された。

「三歳ノ童子モコレヲ識ルトイエドモ、八十ノ老翁ナオ行(ぎょう)ジ難(がた)シ」

大詩人はいたく赤面した。

ありていにいえば、あれほどの演説が岩田にできるとは思っていなかったので、率直にこの秘訣をきいたら、これまた意外な答が返ってきた。

「アメリカの歴代大統領のうちでも、最も説得力があったウィルソンが、演説の心得をきかれた時、こういっている。『1時間の演説ならば即座にやれる。20分でまとめろといわれると、2時間の準備が必要だ。だが、5分のスピーチだったら、一晩、構想を練らなくちゃ』とネ」
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