電脳筆写『 心超臨界 』

計画に失敗すれば、失敗を計画したことになる
( アラン・ラケイン )

簡素の「簡」は、いらないものを断ち切ってゆく働き――紀野一義

2024-07-15 | 03-自己・信念・努力
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「簡」というのは、「えらぶ」ことである。また、「集中力」という働きのことでもある。草木は水分のあるうちはどんどん伸びる。しかし水がなくなってくると、いらない葉をどんどん枯らしてゆく。そして生命を維持しようとする。これが「簡」である。いらないものをどんどん捨て、断ち切ってゆく働きを「簡」というのである。


◆簡素の「簡」は、いらないものを断ち切ってゆく働き

『生きるのが下手な人たちへ』
( 紀野一義、PHP研究所 (2003/4/1)、p90 )

こういう人であるから、毎田周一師の生活はきわめて簡素であった。ただし、師のいう「簡素」は、簡単・素朴・質素・粗末という印象のものではない、もっと「簡素」の根本にふれたものであった。

師は、「簡素論」という長大な論文を書いている。その執拗・綿密・精緻(せいち)な論述は、おのずから、師のいう「簡素」が簡単素朴なものでないことを証明している。

われわれは「簡素」と一つのことばのようにいっているが、「簡」と「素」とは違うものである。まるきり反対のものである。

「素」は、「素材」であって、すなおにしてあるがままの存在、人間でいえば、むき出しの欲望がそのまま放り出されている状態である。これは女性的なものであって、どこまでもどこまでも伸びてゆこうとするものである。これだけでは始末のつかぬものになってしまうであろう。そこで「簡」が必要となる。

「簡」というのは、「えらぶ」ことである。また、「集中力」という働きのことでもある。草木は水分のあるうちはどんどん伸びる。しかし水がなくなってくると、いらない葉をどんどん枯らしてゆく。そして生命を維持しようとする。これが「簡」である。いらないものをどんどん捨て、断ち切ってゆく働きを「簡」というのである。

観単にいえば、「素」は欲望、「簡」は諦念(たいねん)である。だめだと思ったら、だめなところをばっさり切って捨てるのである。

私は毎月二度、池上本門寺に講義に行くが、その会に宮崎さんという方が来られる。この人は壊疽(えそ)という病気にかかった。医者はすぐに切れ、という。脚を太股の付根から切り落とさねば助からぬと宣言されたのである。

宮崎さんはすぐに私に電話して来た。今晩中に決めろといわれたからである。彼は事情を手短に説明し、切羽つまった声で、「先生ならどうしますか?」と問うた。声がふるえている。それはそうであろう。簡単に決められるものではない。

私は言下に、「おれなら、切る」と言った。「そんな先生、人の脚だと思って・・・・・・」と他の者なら悲鳴のような叫びをあげるだろう。しかし、宮崎さんは黙っている。私はかまわず押し切った。

「おれに相談したのは、どっちか決めてほしいからだろう。そんなら切れ、切らにゃ死ぬぞ、切れ」

しばらく黙っていた宮崎さんは、「そうですか、先生が切れとおっしゃるなら、切ります」と答えて電話を切った。あくる日、思い切りよく切断手術を受けたのである。

予後のために、私の体を診てくださっている漢方の名医佐藤先生に彼を委ねた。佐藤先生は、「紀野先生、いい時に切れと言ってくださった。切らなかったら、間違いなく死んでいたでしょう」と言われた。宮崎さんは今元気で、義足をつけて本門寺に来ている。

これが「簡」である。「素」のほうは、今のままでもなんとかなりそうなものじゃないかと考える考え方で、そのへんのかねあいがなんともむずかしいのである。
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