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孤帆の遠影碧空に尽き

年に3回ほどアジアの国を中心に旅行、それが時間の流れに刻む印となっています。そんな私の思うこといろいろ。

中国  貧困脱却のための大規模移住計画への不安 チベット遊牧民定住化の影

2016-05-11 22:49:41 | アフリカ

(中国山西省で昨年3月、ブランコで遊ぶ子ども。両親はゴミ拾いで生計を立てている。【5月10日 ロイター】)

内陸農村貧困層200万人超を移住させて、貧困からの脱却を
急速な経済成長を実現した中国ですが、爆買いに走るような富裕層の一方で大きな格差も存在し、特に内陸農村部には膨大な貧困層を抱えていることは周知のところです。

そうした貧困対策として、中国政府は200万人超の大規模な移住を計画してると報じられています。

****中国は年内に200万人超の移住促す、貧困撲滅の一環で****
貧困撲滅を目指す中国は年内に、内陸部の辺ぴな地域に住む貧困層の住民200万人超を比較的発展した地域に移住させる方針だ。国務院(内閣に相当)当局者が10日に明らかにした。

国営新華社がこれまでに報じたところによると、大規模な移住計画は2020年までに1000万人を貧困から脱却させるとする目標の達成に向けた戦略の1つ。

国務院扶貧開発領導小組弁公室の劉永富主任は記者会見で、農村の住民の一部は学校や病院といったより良い公共サービスを受けられる地域に移住し、辺ぴな地域の住民の一部はより良い道路や水資源がある地域に移住すると述べた。

政府や政府系メディアによると、中国の人口約14億人のうち約5%が貧困層に当たる。大半が農村部に住んでおり、年収は2300元(362ドル)未満となっている。【5月11日 ロイター】
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この計画自体は昨年末段階ですでに報じられていたものですが(http://peoplechina.xyz/migration-for-poverty-reduction/ 【2015年12月16日 「人民のつぶやき」】)、計画実行に向けて動きだした・・・ということでしょうか。

なお、【12月16日 人民のつぶやき】によれば、この移住計画にあたっては、“新しい融資メカニズムを通じて、五年で6000億人民元(約11兆2970億円)を投入”とも。

「新しい融資メカニズム」が何を指しているのかは知りません。

必要とされる住民意思の尊重と移住後の生活保障
広い国土に分散したインフラも未整備で就業機会ない貧困層居住地区を整備・底上げしていくよりは、“より良い公共サービスを受けられる地域に移住”するというのは、ひとつの選択でしょう。

問題は、移住に関する住民の意思が尊重されて、移住後の生活が保障された形で行われるのかどうかという点です。

中国では、地方政府が事実上強制的に住民を立ち退かせ、接収した土地を開発・売却するなどして巨額の利益を得るといったことが横行し、そうした地方役人の横暴に対する住民の暴動が全国各地で起きているとも聞きます。

今回の移住計画が、そうした発想の延長線上で行われると、膨大な悲劇と混乱を招くことにもなります。

中国では大規模公共事業でも“公益優先”の住民立ち退きがしばしば問題になります。
世界最大級の「三峡ダム」建設の事例がよく話題にされますが、今年に入っても、世界最大級の電波望遠鏡の建設に係る立ち退きが報じられています。

****宇宙人探索!?世界最大級・電波望遠鏡の建設進む 中国貴州省 周辺住民1万人立ち退き****
中国内陸部の貴州省で、世界最大級の電波望遠鏡の建設が進んでいる。地球外生命体の探索などが目的。今年9月の完成を控え、周辺住民約1万人が立ち退きを迫られることになったという。国営通信新華社が伝えた。

望遠鏡建設は、1995年にスタートした国家プロジェクト。貴州省黔南プイ族ミャオ族自治州にある山中のくぼ地に建設されており、口径は500メートル。「宇宙の起源の謎」に迫る観測が期待されている。

電磁波の影響なども考慮し、移住が決まったのは周辺約5キロ圏内の住民。補償金として1人当たり1万2千元(約20万円)が支払われる。困窮する少数民族には、金額の上乗せもあるという。
 
中国では、長江(揚子江)流域の世界最大級の「三峡ダム」建設の際も、100万人以上が強制的に移住させられた。【2月29日 西日本】
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最近は中国でも物価が上昇しており、20万円の補償金というのは桁違いに少なすぎる、その後の生活はどうするのか・・・とも思われます。

前出【2015年12月16日 「人民のつぶやき」】では、国務院の大規模移住計画の情報と併せて、同時期に明らかにされた、農民工の市民化による不動産需要の拡大に関する政治局会議の方針も紹介されています。

****政治局会議:不動産の在庫解消のため、農民工の市民化を加速する****
新市民の満足をもって、住居制度改革、有効な需要の拡大、不動産市場の安定の出発点と為すことを推進する。有効な供給を拡大し、有効な投資力を保持し、発展が不足しているところを補うことに注力する。

農民工の市民化を推進するために、戸籍人口の都市化比率の引き上げを加速する。都市の居住の利便性を増強する。都市の規模の調整・制御を導く。」(財経ネット)【2015年12月16日 「人民のつぶやき」】
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両方の計画・方針をつなぎ合わせると、農村部貧困層を都市部に移住させ、それによって供給過剰状態にある都市部不動産への需要を喚起する・・・・という意図ではないかという話にもなりますが、先述のように、あくまでも移住計画は住民の意思、移住後の生活保障を最重点に行われるべきものです。

アイデンティティーと尊厳を破壊したチベット遊牧民定住化
冒頭の内陸貧困農民の都市移住計画と同じような発想で、チベット遊牧民の都市定住化も行われていますが、チベットの場合、中央政府との軋轢が絶えないチベット民族対策という微妙な側面も加わります。

こうした、少数民族をある地域に移住させ、一定に金銭的給付は行うという施策は、アメリカ先住民でも同様のものが見られますが、生きがいの持てる新たな生活の構築、更には、アイデンティティーと尊厳の基盤となる伝統文化の維持という面で、住民の側からすればあまり成功しているようには見えません。

もっとはっきり言えば、飼い殺しのような結果にもなります。(政府側としては、それで“成功”なのかもしれませんが)

****都市移住を強いられた元チベット遊牧民らの苦悩、中国****
まだ午前中だというのに、ロブサンさんの革のカウボーイハットはくたびれ、黒いガウンは乱れ、吐く息からは酒の臭いがする。かつてチベットの高原を遊牧していた彼は今、薄いコンクリート造りの家の周りで足をふらつかせている。
 
ロブサンさんと妻のタシさんは数十年間、ヤクやヒツジを放牧してきた。何世紀も前から、ほとんど変わらない生活だった。──3年前、中国政府の要請を渋々受け入れ、ヤクの毛のテントから再定住先の家へ移り住むまでは。
 
現在夫妻は、中国四川省南西部のアバ・チベット族チャン族自治州アバ県から、曲がりくねった山道を車で1時間の場所にある再定住村に住んでいる。そこには青い屋根に灰色の壁の同じ家が、何列も立ち並んでいる。

「この町に移ってきて、何もかも変わった」と、タシさん。彼女も夫と同じ40代だが、正確な年齢は分からない。「まずお金がなくなった。そして夫は自分に見合う仕事を見つけられず、酒量がどんどん増えていった」
 
中国当局は、チベット自治区を都市化していけば、工業化と経済発展が促され、遊牧をしていた人たちの生活水準が上がり、環境保護にも役立つとしている。
 
移住に応じた人々には、中国語で「戸口」と呼ばれるいわゆる戸籍のうちでも、「城市戸口」(都市戸籍)が与えられる。これは中国国内における厳しく管理された居住許可で、これによって社会福祉サービスを利用できるようになる。政府は完全に無料か、あるいは多額の助成金を出して家や医療保険を提供し、教育も無償化する。
 
しかし、この政策はお仕着せの措置で、多くの元遊牧民が約束されたような豊かな生活は送っていないと、批判の声が上がっている。
 
オランダにあるエラスムス大学ロッテルダム社会科学大学院大学(ISS)のアンドリュー・フィッシャー准教授は、「社会が急に混乱した生まれた場合に陥りがちな、失業やアルコール依存症といったさまざまな問題が起きている」と指摘する。

■「戻りたいが手遅れ」
再定住施設でAFPの取材に応じた多くの元遊牧民は、仕事も職業訓練も不十分だと不満を漏らした。
 
ドルカーさん(42)は2年前に、最後まで飼っていたヤク13頭を8万5000元(現在の為替レートで約140万円)で売却したが、今になってその決断を後悔している。まだ安定した職に就けていないのだ。
 
ドルカーさんは「政府の職員が来て、移住しろと言われた」と当時を振り返る。「この町の物価がこんなに高いとは知らなかった」「戻りたい、だがもう手遅れだ」
 
都市部ですぐ手に入るのは建設作業員や清掃員の職で、賃金は低い。かつてチベット自治区で貴重な家畜を所有して裕福な暮らしを送っていた元遊牧民らの中には、こういった仕事を敬遠する人も少なくない。

■分離独立派を抑制
都市移住政策に批判的な人たちの間では、中国政府が1951年から統治しているチベットの居住者に対する監督を強化する目的もあるとの指摘もある。
 
AFPが取材に訪れた再定住村は、中国侵攻前のチベット東部のカム地方に当たる地域にある。ここでは地元の戦士たちが、時に米中央情報局(CIA)の支援を受けながら、1960年代後半まで中国共産党の軍事部隊と戦っていた。
 
チベット自治区での都市移住政策は共産党支部を各地に作ることを目的として5年前に始まった。政府の統計によると、2000年以降、チベット自治区の都市居住者は約60%も増えた。
 
中国共産党チベット自治区委員会のトップ、陳全国書記は、全ての再定住村は「チベット分離主義勢力の侵入を防ぎ、これと戦う」ための「とりで」にならなくてはならないと発言している。
 
国際人権団体ヒューマン・ライツ・ウオッチ(HRW)のソフィー・リチャードソン(Sophie Richardson)中国代表は、遊牧民を都市部へ移住させる政策によって、「より監視しやすく、生活していくために国の助成への依存度がより高まる場所、つまりさらにコントロールしやすくなる地域に人々を集めている」とみている。

■環境にも悪影響
一方、環境専門家らは、この政策によって山間部の草原が保護されるどころか、雑草が増えて土壌の性質が変わってしまうと指摘する。
 
水道が使えるといった利便性を得る代わりに、チベットの遊牧民というアイデンティティーを喪失する。子どもたちの教育が、ほぼ全て中国語で行われていることに対する不満も多く聞かれる。

「子どもたちがチベットの歴史を知ることはないだろう、われわれチベットの伝統を理解できないだろう」と嘆くのは、6年前に再定住村に移ってきたドルジェさん。彼は今、雑用のような仕事を散発的に請け負っている。

「孫たちは、私がかつて尊敬され富裕な男だったと知ることはないだろう。彼らは貧困しか知らずに育つのだ」
【5月10日 AFP】
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移住によって新しい住居・生活を手にして喜んでいる者も多くいることでしょうから、総合的な判断が必要になりますが。

なお、日本でも超高齢化社会の進行とともに増加する「限界集落」への対応として、移住・再定住という選択が検討されることも多くなろうかと思われますので、他人事でもありません。
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台湾  「現状維持」の蔡英文新政権発足にあたり、「一つの中国」を認めるよう強まる中国の圧力

2016-05-10 20:04:03 | 東アジア

(議場で手を振る「時代力量」の委員たち。右から2人目が黄国昌主席=台北市で1日、毎日新聞助手・曽彦晏撮影【2月2日 毎日】
2014年3月、中国とのサービス貿易協定に反発した学生らが立法院を占拠した「ヒマワリ学生運動」の関係者が中心となり結党した「時代力量」は、総統選挙では蔡英文氏を推しつつ、立法院において5議席を獲得しました。
「一つの中国」原則への態度を敢えて曖昧にしている蔡英文氏に対し、時代力量は「一つの中国、一つの台湾」の立場を鮮明にしており、また、より急進的な改革を求めており、蔡氏の政権運営に影響を与える可能性があると注目されています。)

【「私は(中国人ではなく)台湾人だ」】
1月16日に行われた台湾総統選挙において、台湾の「現状維持」を訴える民主進歩党の蔡英文氏が、馬英九政権が進めてきた中台協調の継続を掲げる国民党・朱氏を圧倒して勝利しました。

蔡氏圧勝の背景には、自分たちを「中国人」ではなく「台湾人」として認識する民意の変化があると指摘されています。

****台湾で「私は中国人」と思う人、低下し続け11%に=台湾メディア・聯合新聞調べ****
台湾メディアの聯合新聞によると、2016年になってから実施した実施した民意調査で、「私は中国人」と考える台湾人は、過去最低の11%だったことが分かった。「私は(中国人ではなく)台湾人だ」と回答した人は73%で、過去最高だった。

聯合新聞は、20年前の1996年と10年前の2006年の調査結果とあわせて紹介した。

「私は中国人」と考える人は96年調査では31%、06年調査では20%と減り続け、今回の調査では11%にまで低下した。

「私は(中国人ではなく)台湾人だ」は96年には44%、06年には55%と増え続け、今回の調査では73%に達した。

「台湾人でもあり中国人でもある」は96年調査では15%程度で、今回の調査では10%程度に減少した。「台湾人なのだから中国人だ」は過去2回の調査でも10%に達したことはなく、今回調査では1%程度だった。

世代別では若い世代ほど「自分は中国人ではない」と考える人の割合が大きくなり、20−29歳の世代では「私は(中国人ではなく)台湾人だ」と回答した人は85%に達した。

台湾では、戦後になり大陸から来た人とその子や孫を「外省人」と呼ぶ。戦前からの台湾住民は「本省人」だ。

「外省人」は自分を中国人と認識する場合が多かったが、若い世代では意識が大きく変化しているという。

まず、自分自身が中国から移ってきた第1世代の「外省人」は、自分を中国人と考えるのは当然だ。台湾生まれの「第2世代・外省人」は、父母の考えに強い影響を受けるが、中国大陸で生活したことはないので、「自分は中国人」との信念を揺らぎやすくなる。

第3世代になると祖父母から中国大陸での暮らしなどの話を聞いても「別の国のこと」に感じられ、自分については「台湾で生まれ育った。だから台湾人」との感覚になるという。

「中国大陸との統一」を目指す国民党支持者でも、若い世代では「私は台湾人」と考える人が増えているとされる。馬英九総統は第2世代の外省人に属するので、台湾が達成した価値を強調したり、中国に歩み寄ったり、同じカテゴリーに属さない人から見た場合、理解が難しい言動を示すとの指摘もある。

中国大陸メディアの参考時報網は、聯合新聞の調査結果について、陳水扁時代の「脱中国教育」が大きく影響した主張した。【3月16日 Searchina】
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中国 「一つの中国」容認を求めて外交戦を再開
ただ、台湾にとって中国は経済関係においても、安全保障上も極めて重要な相手であることは動かしがたい事実でもありますので、蔡英文氏も総統選勝利直後、中台関係について「挑発せず、予想外のことをせず、対等な交流の道を探る」と述べ、「現状維持」を改めて強調しています。

しかし、中台の統一を最大の「核心的利益」と考える中国からすると、「一つの中国」を認めておらず、独立志向の強い民主進歩党の蔡英文政権成立は看過できない事態であり、5月20日に蔡政権が発足するのを前に、「一つの中国」を認めるように台湾への圧力を強めています。

国民党政権時代には“休戦”していた外交戦を再開する方針です。

****中国、台湾と外交関係の奪い合い再開へ、民進党次期政権に圧力、「独立志向」を警戒****
中国国務院(政府)台湾事務弁公室は16日、「(国民党の馬英九政権が誕生した)2008年から『台湾独立』への反対と『92年コンセンサス』の堅持を政治的な基礎に両岸(中台)は平和的発展の新局面を切り開いた」との声明を発表した。民進党への強硬姿勢は避けながらも「一つの中国」を改めて認めるよう迫った形だ。
 
00年から08年までの前回の民進党政権時代に台頭した「台湾独立」志向の再燃を警戒する中国は、中台それぞれが「一つの中国」を認め合う「92年コンセンサス」で台湾を縛り続けたい考え。しかし、民進党がこれを受け入れる可能性が低いことを念頭に、今後は外交圧力を強める方針に転換する。
 
関係筋によると、蔡英文次期政権の政策や台湾の世論を見極めながらも、中国は「馬政権時代に封印してきた台湾との“外交戦”を再開する」という。台湾が外交関係をもつ中米・太平洋・アフリカ諸国など20カ国以上に、チャイナマネーをチラつかせて台湾と断交させ、中国と国交樹立するよう求める外交圧力だ。
 
かつて中台は、それぞれが「中国を代表する唯一の政権」を主張して、外交関係を結ぶ国の奪い合いを繰り広げた経緯があるが、対中融和策に転じた馬政権時代に入ってから、中国は取引材料として台湾との外交戦を“休戦”していた。
 
さらに、台湾との貿易や観光客の訪台、中台間の直行便で新たな規制を設けるなど、経済面からも圧力をかけるものとみられる。【1月16日 産経】
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00年から08年までの前回の民進党政権時代に比べ、現在は中台の“体力差”は遥かに大きなものとなっており、中国はもはや台湾がまともに争って勝てる相手ではありません。

****一つの中国」、台湾へ圧力 中国、ガンビアと国交 外交で切り崩し****
中国の習近平(シーチンピン)指導部が、5月に台湾総統に就く蔡英文(ツァイインウェン)・民進党主席に対し、中台がともに中国に属するという「一つの中国」原則を受け入れるよう圧力を強め始めた。

3年前まで台湾と外交関係のあったガンビアとの国交を回復。蔡氏が応じなければ、台湾と外交関係を結ぶ国々の切り崩しを再開する構えを示した。
 
中国とガンビアは17日に国交回復に関する共同コミュニケに署名。中国外務省は「我々は『一つの中国』原則のもとで台湾の対外交流問題を処理し、(中国と台湾は別々だとする)いかなる活動にも反対してきた」との談話を出した。
 
中国は、前回の民進党政権期(2000~08年)には、台湾と外交関係を持つ国に中国への国交切り替えを迫ったが、対中融和路線の国民党の馬英九(マーインチウ)政権の間はこうした動きを封印。ガンビアは13年に台湾と断交していたが、中国は国交回復に応じていなかった。
 
ここに来て国交回復に踏み切った背景には、民進党の独立志向への中国の強い警戒がある。蔡氏が中国の要求をのまなければ「台湾の対外関係を巡る中国の対応も変わるとの警告」(北京の外交筋)というわけだ。

台湾は中南米やアフリカなどの22カ国と外交関係を持つが、ほかにも中国との国交を希望する国があるとされる。
 
中米歴訪中の馬氏は中国に「強烈な不満」を表明。蔡氏は18日、「両岸(中台)関係の健全な発展は両岸共同の責任だ。国際社会で角を突き合わせる必要はない」との談話を出した。【3月19日 朝日】
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中国とガンビアの共同声明には「ガンビア政府は、世界に中国はただ一つしかなく、中国政府がすべての中国を代表する唯一の合法的な政府であり、台湾は分割できない中国の領土の一部分と認める」との文言が盛り込まれており、中国の主張を丸呑みした形になっています。

ガンビア(西アフリカにあって、セネガルに取り囲まれたような小さな国です)の場合はすでに台湾と断交していましたが、中国がその気になれば、台湾が現在外交関係を持っている国を引きはがすことも可能でしょう。

4月には、中国との外交関係があるケニアが台湾籍の容疑者を、これまでの慣例に反して、中国へ送致した件が問題となりました。これも中国による外交戦のひとつと考えられています。

****中国に送致、台湾反発 ケニア、台湾人45人を逮捕****
ケニアが振り込め詐欺にかかわったと見られる台湾人45人を中国に送致し、台湾で猛反発が起きている。中国が台湾を自国の一部とする「一つの中国」原則を押しつけたとの受け止めが出ているためだ。一方、中国人が詐欺の標的になったことから、中国側は司法管轄権を主張している。
 
台湾側によると、ケニア警察は2014年11月、ナイロビ近郊を拠点に、電話などで中国人相手に振り込め詐欺を働いていたと見られる台湾人や中国人のグループ77人を逮捕。このうち台湾人23人と、別の詐欺事件で逮捕された台湾人22人が今月、中国へ送られた。台湾当局は中国に送致しないよう求めたが、ケニア警察は無視したという。
 
中国外務省は「ケニアが『一つの中国』原則を長期にわたって堅持していることを高く評価する」としたが、台湾当局は台湾人容疑者に対する管轄権は台湾にあると主張。対中政策を担う大陸委員会の夏立言(シアリーイエン)主任委員は12日、中国の張志軍(チャンチーチュン)台湾事務弁公室主任に電話で「積み上げてきた相互信頼を傷つけるものだ」と抗議し、45人を迅速に台湾に送還するよう申し入れた。
 
中台間では11年、フィリピンで捕まった台湾人容疑者が中国に送られ、問題になった。それ以来、中台のグループによる外国での犯罪は中台の当局が共同で調べ、逮捕した容疑者はそれぞれに送還されていた。
 
中国側には台湾人を首謀者とする詐欺事件頻発へのいらだちがある。台湾事務弁公室の報道官は13日の会見で、詐欺により毎年100億元(約1700億円)以上が中国から台湾に流れていると明かした。【4月14日 朝日】
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中国が進めるアジアインフラ投資銀行(AIIB)についても、参加を希望していた台湾ですが、高いハードルを課される形で、結局参加見送りを余儀なくされています。

****台湾、AIIB参加見送り 中国主導に「尊厳保てない****
台湾の馬英九(マーインチウ)政権は、中国主導で設立されたアジアインフラ投資銀行(AIIB)への参加見送りを決めた。張盛和・財政部長(財政相)が12日、中央通信に語った。台湾を自国の一部と考える中国を通しての加盟申請を求められ、尊厳が保てないと判断した。
 
馬政権はAIIBの創立メンバー入りを目指して加盟の意向を表明したが、中国が認めなかった。その後も尊厳と対等性の確保を前提に加盟を求めていたが、中国政府出身の金立群AIIB総裁が今月7日、「加盟には大陸(中国)財政部を通じた申請が必要」と明言していた。
 
AIIBは「主権を持たない申請者は、国際関係上の責任を持つメンバー国による申請か同意で加盟できる」と取り決めている。金氏の発言はこの規定を台湾にも適用する考えを示したもので、台湾側は「受け入れられない」とした。【4月13日 朝日】
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WHO総会参加で“踏み絵”を迫る
アジアインフラ投資銀行(AIIB)に関しては“参加見送り”でも済みますが、国民の健康に直結する世界保健機関(WHO)となるとそういう訳にはいきません。

中国の圧力でWHO総会への招請状が遅れていましたが、やっと届いた招聘状には「一つの中国」に関する“踏み絵”が含まれていました。

台湾としては、参加しても「一つの中国」を認めたことにはならないとの判断で参加を決定しています。

****WHO総会参加、「一つの中国」受け入れを 台湾新政権に中国が警告****
ジュネーブで今月開かれる世界保健機関(WHO)総会への台湾の参加をめぐり、中国が20日に発足する台湾の民進党政権に「一つの中国」原則を受け入れるよう警告した。新政権側は8日、「参加は受け入れを意味しない」とした上で、「健康は基本的人権」として総会参加を決めた。
 
総会は新政権発足直後の23日に開会する。台湾は1971年、中国の国連加盟に伴いWHOを含めた国連機関から脱退。総会にも参加できなくなったが、2008年に対中関係改善を掲げた国民党・馬英九(マーインチウ)政権が発足して中国が対応を軟化させ、09年からオブザーバー参加が認められていた。
 
ところが、今年はWHO事務局からの総会への招請状が台湾になかなか届かなかった。蔡英文(ツァイインウェン)次期総統が率いる民進党は、大陸中国と台湾がともに「中国」に属するという「一つの中国」を認めない立場で、中国が圧力をかけていると見られていた。
 
6日に台湾の招請が確認されたが、招請状には、「中華人民共和国」が中国を代表する政府だと認められた国連決議や「一つの中国」原則に沿った招請だと明記されており、新政権に踏み絵を迫っていると受け止められた。

中国の国務院台湾事務弁公室の報道官は同日、招請は中台が「一つの中国」を確認したと中国側が位置づける「92年コンセンサス」に基づく手配だと強調。こうした政治的基礎が失われれば来年以降の参加継続は難しいとした。
 
ただ、台湾では、この国連決議は国連における中国の代表権を定めたもので、台湾の地位とは関係ないとの解釈もある。このため、新政権側は参加しても「一つの中国」を認めたことにはならないと判断。中国に「WHO参加に対する政治的干渉で、全く受け入れられない」と抗議を表明した。【5月10日 朝日】
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ガンビアやケニア、あるいは中国がつくったAIIBならともかく、代表的な国際機関でもあるWHOにあっても中台関係という極めて微妙な政治問題が中国の意思で左右されるというのは不思議な感もあります。日米などの中国への牽制はないのでしょうか。まあ、それが現実の力関係なのでしょう。

****一つの中国」認めなければ・・・台湾新総統に警告****
中国共産党機関紙・人民日報は5日付1面で、20日に台湾新総統に就任する民進党の 蔡英文 ( ツァイインウェン )氏に対し、「(中台が『一つの中国』原則を認めるとした)『1992年合意』を認めなければ、中台の平和発展の政治的土台は破壊される」と警告し、圧力を強める姿勢を鮮明にした。
 
同紙は、蔡氏が主張する中台関係の現状維持は「空手形」だと非難。「『一つの中国』を堅持するのか、あいまいな態度で台湾独立の主張を放棄せず、中台関係を再び動揺させるのか、新指導者は必ず答えねばならない」と強調した。【5月8日 読売】
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圧倒的な“体力”をもとに圧力を強める中国に対し、その圧力をかわしながらの「現状維持」というのは極めて高度な政治力を要する政治選択です。
蔡英文新政権はスタートから、中台関係という最も基本的な、かつ最も困難な問題に直面することになります。
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トルコ  首相辞任でエルドアン大統領の強権姿勢が更に強化される懸念 親族の不正蓄財疑惑も

2016-05-09 22:50:25 | 中東情勢

(息子のBilal氏(中央)、娘のSumeyye氏(右)と共にAKP支持者に応えるエルドアン大統領 【5月8日 RT】)

大統領に忠実な人物だとみなされてきたダウトオール首相の辞任 EUとの難民問題合意は?】
トルコのエルドアン大統領が“極めて自己主張の強い”人物であることは今更の話ではありますが、彼が大統領に就任するにあたって“エルドアン氏の政策方針に忠実な人物”ということで首相に起用されたダウトオール氏をもってしても、エルドアン大統領の権力欲を満足させることは難しかったのでしょうか?

****トルコ首相が退任表明 ダウトオール氏、エルドアン大統領と確執か****
トルコのダウトオール首相は5日、首相とイスラム系与党「公正発展党」(AKP)党首の座から退く考えを示した。AKPは22日に臨時党大会を開いて後任党首を選出し、新党首はその後、国会で首相指名を受ける見通しだ。

退任理由は不明だが、AKPの実質的な指導者であるエルドアン大統領と確執があったためとの見方も浮上。新党首指名にはエルドアン氏の意向が強く反映されるとみられ、これにより同氏の権威がいっそう高まる可能性がある。
 
AKP幹事会後に会見したダウトオール氏は「大統領に対して批判的な意見を口にしたことはないし、今後もしない」と述べ、エルドアン氏との対立が退任の原因だとの見方を否定した。ダウトオール氏は、首相退陣後も国会議員としてAKPにとどまるとも述べた。
 
ダウトオール氏は、首相職にあったエルドアン氏が2014年に大統領に就任したのに伴い、後継の首相に就任。憲法上は名目的な元首で強い行政権限は持たないエルドアン氏の政策方針に忠実な人物だとみなされてきた。
 
野党勢力からは、ダウトオール氏の突然の退任は、よりエルドアン氏が影響力を行使しやすい人物を首相に据えるためのものだとして、「ダウトオール氏は退任すべきではない」との批判が噴出している。
 
エルドアン氏は、最初に首相に就任した2003年以降、一貫してAKP政権のトップに君臨し、大統領就任後は現在の議院内閣制から大統領中心制への憲法改正を目指している。
 
都市部などを中心に、エルドアン氏への権力集中への批判も根強いが、政府は近年、エルドアン氏に批判的なメディアへの締め付けを強めるなど、強権色を強めている。【5月6日 産経】
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ダウトオール首相は、欧州難民問題に関し、ドイツ・メルケル首相との間で難民のトルコへの送還等に関する合意を取りまとめた主導者であり、エルドアン大統領はこの合意に不満を抱いているとも報じられています。

ドイツは、ダウトオール首相辞任で合意が白紙に戻るような事態を憂慮しています。

****トルコ、首相辞任でも難民流入抑制めぐる合意順守を=独報道官****
ドイツ政府のストライター報道官はトルコに対し、欧州連合(EU)への難民・移民の流入抑制について双方が合意した内容を守るよう期待していると述べた。

トルコではエルドアン大統領と対立していたダウトオール首相が5日、辞任を表明。EUとの合意はダウトオール首相の下で決定したもので、その継続性に対する懸念が広がっている。

報道官は「メルケル首相とダウトオール首相との協力は非常に上手くいっていた。この良好で建設的な協力関係がトルコの新首相との間でも維持されることを期待している」と言明。

「トルコ側がコミットメントを履行するよう求める。この合意はEUとダウトオール首相の間のものではなく、EUとトルコの間の合意だ」と強調した。【5月6日 ロイター】
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もっとも、今回合意のような重要案件で、ダウトオール首相がエルドアン大統領の了承なしに話を進めたというのは、ちょっと考えにくいことではありますが・・・・。

もし、ダウトオール首相がエルドアン大統領の不満を押し切って合意したということであるのなら、ダウトオール首相も相当にしたたかな政治家だったということでしょうか。それが命取りにはなりましたが。

その程度はよくわかりませんが、エルドアン大統領とダウトオール首相の間で、合意に関する温度差があったのは事実でしょう。

エルドアン大統領のEU批判
エルドアン大統領は、難民問題やシリア問題でのEU側の“欺瞞に満ちた無責任で利己的”姿勢を痛烈に批判しています。下記は、トルコメディアTRT(トルコ・ラジオ・テレビ協会)の記事です。

****エルドアン大統領 「トルコはテロとの戦いで孤立している****
レジェプ・ターイプ・エルドアン大統領は、シリアでテロ組織DEASH(ISIL)と戦っているという者たちが、まったくトルコほど死傷者を出していないとし、組織との戦いでトルコが孤立化していると話した。

エルドアン大統領は、イスタンブールチェキメキョイ市役所で行なわれた「正義と慈悲」のタイトルで行なわれた国際短編映画コンテストの授賞式に出席し、映画愛好家の若者たちを称賛し、入賞した作品の制作者たちを祝福した。

エルドアン大統領はここで行なったスピーチで、世界のある地で罪なき人々が虐殺される中、世界のその他の地では何十億もの人々が心を痛める無関心さの中、自身の快適さを高めることを追求していると指摘し、「残虐な独裁者や残忍なテロ組織の脅威から逃れた無力な子供や女性たちは、思いやりを持って開かれた腕ではなく、閉ざされたゲートや壁で覆われた国境を目の当たりにしている。」と評価した。

シリアで6年にわたる動向に対し、人類は悪い点数を取ったとしたエルドアン大統領は、「トルコが心と国境を抑圧されたり被害を受けたりした人々に開く中、三猿の振りをする者たちは、問題が自分たちに降りかかるとまず国境ゲートを閉鎖した。だから彼らには慈悲はなく、正義もない。彼らには独裁があり、残忍さがある。我々が問題を根源から解決し、シリアで安全地帯を構築し、人々が移住を余儀なくされている原因を排除しようと提案したにもかかわらず、問題を執拗にその他の方向へ向かわせようとした。」と述べた。

エルドアン大統領は、「シリアでDEASHと戦っているという者たちは、まったくトルコほど犠牲を払っていない。一方では自爆によって、また一方ではキリスに対する攻撃によって我々を苦しませているこの組織に対する戦いで、我々は孤立している。アンカラやイスタンブールで爆発した爆弾に対する反応と、パリやブリュッセルで行なわれた行為に対する反応の違いは、不公平さが具体化した状態以外の何物でもない。」と述べた。

国際連合で、キリスト教徒のみによって構成された理事会があることにも注意を促したエルドアン大統領は、「1700万人のムスリムが暮らすこの世界で、国連でムスリム諸国の裁量権や勇決がない。我々はこれを訴え続けていく。話しながら、対話しながら、説きながら、遅かれ早かれ5大国以外の190か国にも国連での代表を確立する、確立する必要がある。」と話した。

シリアでの戦争解決に関し、常任理事国5か国中1か国が「ノー」と言えば、国連でいかなる取り組みも行なわれないと述べたエルドアン大統領は、「このような正義がありうるだろうか。このような安全保障理事会からどのような正義が期待できるか。なぜ自分たちを欺いているのか。」と反発した。【5月9日 TRT】
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強権姿勢を強めるエルドアン大統領
上記記事にあるエルドアン大統領の欧州批判・国連安保理批判のかなりの部分はもっともな指摘です。

ただ、そのことは、トルコ・エルドアン大統領の行ってきたことが、善意に満ちて博愛的なことだったということを意味するものではありません。

国内でのテロ激化にしても、シリアにおける「安全地帯」構築の主張にしても、トルコはトルコの都合で、クルド系勢力への攻撃などを行ってきていることに関連しているとも言えます。

また、エルドアン大統領が近年、国内において批判的勢力・メディアへの強権的な弾圧を強めていることへの正当化にもなりません。

****左派系紙2人に禁錮刑=国家機密暴露の罪―トルコ****
トルコのアナトリア通信などによると、イスタンブールの裁判所は6日、同国の情報機関によるシリアへの武器輸送疑惑を報じた左派系紙ジュムフリエットのジャン・デュンダル編集長と同紙アンカラ支局のエルデム・ギュル支局長に対し、国家機密を暴露した罪で、それぞれ禁錮5年10月と同5年を言い渡した。政府転覆を図った罪については無罪となった。
 
AFP通信によると、デュンダル編集長は判決後、「私たちを黙らせようと試みても、記者としての仕事を続ける」と宣言した。
 
判決前には、裁判所の外で男がデュンダル編集長に「裏切り者」と叫びながら銃を発砲。編集長にけがはなく、男はその場で取り押さえられた。【5月7日 時事】 
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親族の不正蓄財疑惑も
更に言えば、エルドアン大統領の親族に関して、不正蓄財の疑惑も報じられています。
下記は、ドイツ大衆紙であるBild紙の報道を、トルコと対立関係にあるロシアのメディアが取り上げた記事です。

なお、下記は私が適当に訳したものですから、正確なところを知りたい方は、ロシア・トゥデイhttps://www.rt.com/news/342240-bild-erdogan-children-money/、あるいはBild紙のhttp://www.bild.de/politik/ausland/recep-tayyip-erdogan/wer-gehoert-zu-den-vertrauten-des-tuerkischen-praesidenten-45692482.bild.htmlをあたってください。

****エルドアンの子供の巨額の富はどこから? 独ビルド紙の報道****
彼らの父親が国家元首として1年につき約5万ユーロを得るだけであるのに、レジェプ・タイップ・エルドアン ・トルコ大統領の子供たちがどのように莫大な富(数千万ユーロ の価値がある資産を含む )を蓄えることができたのかということについて、ドイツの新聞Bild紙は問題を提起した。

「彼らの父(エルドアン大統領)は1年につき約5万ユーロ得ているが、彼の子供たちは贅沢三昧に暮らしている。その富はどこから来たのか? その件に関する公式データはない 」と、Bild紙 は述べている。

記事 はトルコの反政府的新聞Cumhuriyetによって発表されたデータ を引用している 。それによれば、エルドアンの家族 (娘を含めて)の皆が化粧品、インスタント食品、海運業や宝石のような分野に関するビジネスを行っているようだ。

Bild紙は、エルドアンの息子の1人であるAhmetの資産が、どうやってそれを得たかに関していろんな噂があるところではあるが、約8000万ドルに達することを指摘している。

「トルコ政府からの支援を得ているのではないか?」という疑問は当然のことであると、Bild紙 は述べている。

Bild紙はまた、大統領の次男Bilalが「不法で犯罪的な取引への関与」といったメディア見出しでしばしば登場すると付け加えている。

実際のところ、Bilal は彼の資産が、トルコ与党AKP党を巻き込んでトルコの既成政治勢力を揺り動かしている2013年に発覚した大規模な政治的な汚職スキャンダルに関係しているのではないかとの訴えで、最近イタリアで審理されている。(中略)

彼には、彼の姉妹とともに、贈収賄の疑いがかけられている。

Bild紙はまた、昨年イギリスのガーディアン紙が公表した件に注目している。ガーディアン紙は、トルコのビジネスマンが、「イスラム国(IS)」との間で、違法な石油密輸のような、いろいろな取引に活発に関与していることを明らかにした。

「ガーディアン紙が明らかにした関係者うちの1人がBilal Erdogan である 」と、Bild 紙は指摘している。

一方、エルドアンの家族の1人が、近々トルコ政府の指導的地位につくことになるかもしれない。(中略)

エルドアンは、まだ辞任したダウトオール首相の後継者を任命していない。
しかし、エルドアン大統領は間違いなく後任首相が大統領により柔順なことを望んでおり、エルドアンの義理の息子であるエネルギー大臣 Berat Albayrakがその条件をみたすのではないかとも目されている。【5月8日 ロシア・トゥデイ】
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記事の最後に指摘されている義理の息子の首相指名については、他の情報は得ていません。
もし、そういうことになれば、エルドアン大統領の独善的な姿勢が更に強化されることが憂慮されます。
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ケニア  ソマリア難民キャンプの閉鎖を改めて表明 居場所を失う難民60万人

2016-05-08 23:21:53 | 難民・移民

(ソマリア難民など約35万人が生活するケニアのダダーブ難民キャンプ “flickr”より By Lola Hierro)

ソマリア国内の拠点を失いながらもテロを続ける「アル・シャバブ」】
アルカイダとも強く連携するアフリカ東部のソマリアで活動するイスラム過激派「アル・シャバブ」は、多くの過激派組織が活動するアフリカにあってもナイジェリアの「ボコ・ハラム」と並んで大きな組織であり、一時は首都モガディシオのアフリカ連合派遣部隊が守備する大統領官邸周辺以外の大部分の国土を支配する勢いでしたが、周辺国ケニア・エチオピアの軍事介入などの国際包囲網、リビア・カダフィ政権崩壊による支援途絶、飢餓対応で住民の支持を失うなど事情もあって、2011年7月から8月にかけて首都モガディシオ市内からの撤退を余儀なくされました。

その後も、2012年9月には拠点キスマユを、2014年10月にはブラバを政府軍に奪還されたことで、都市部からはほぼ追い払われた形にはなっています。

一方、過去の介入失敗からソマリア紛争には及び腰だったアメリカですが、最近では無人機を使った「アル・シャバブ」攻撃を強めているようです。

****ソマリア空爆、150人殺害=「自衛」で過激派施設破壊―米軍****
米政府は7日、ソマリアで米東部時間の5日、有人機、無人機双方による空爆を行い、イスラム過激派アルシャバーブの訓練施設を破壊したと発表した。国防総省のデービス報道部長によると、この攻撃でアルシャバーブの戦闘員150人以上を殺害したという。
 
デービス氏は施設にいた戦闘員について、大規模攻撃のための訓練を終えるところで、ソマリア駐留のアフリカ連合平和維持部隊(AMISOM)や同部隊との連絡役を務める米軍要員に「差し迫った危険」があったと説明。米政府は、空爆は「自衛のためだ」と強調している。【3月8日 時事】 
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****米軍、ソマリア過激派幹部を無人機空爆 米国人への攻撃計画か****
米国防総省は1日、ソマリアの首都モガディシオで米国人を狙った攻撃を計画したとして、国際テロ組織アルカイダ系イスラム過激派組織アルシャバーブの幹部、ハサン・アリ・ドーレ容疑者を標的とした無人機攻撃を行ったと発表した。
 
ピーター・クック国防総省報道官の声明によると、米軍がソマリア政府の協力を得て3月31日に無人機による空爆を実施した。同容疑者の生死については現在、情報を確認中だという。
 
匿名で取材に応じた国防総省の当局者は無人機攻撃について、ドーレ容疑者とアルシャバーブのメンバー2人が同乗した車を標的にしたと説明。「われわれは長い間、彼(ドーレ容疑者)を見張っていた」「今回の攻撃は、ソマリア政府の提供した情報に基づいて実行された」と述べた。(中略)

ドーレ容疑者はまた、モガディシオ在住の米国人を襲撃する計画も練っていたという。
 
米軍は先月5日にもアルシャバーブの訓練施設を空爆し、アルシャバーブ戦闘員150人を殺害した。米国務省は、この施設では「大規模な」攻撃の演習中だったとしている。【4月2日 AFP】
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しかし、依然として「アル・シャバブ」のテロ活動は続いています。

****ソマリア首都で爆弾攻撃、子ども含む3人死亡****
ソマリアの首都モガディシオにあるレストラン前で9日、自動車爆弾による爆発が起き、子どもを含む少なくとも3人が死亡した。

犯行声明は出ていないが、同国では、国際テロ組織アルカイダ系イスラム過激派組織アルシャバーブが、政府を標的とした自動車爆弾による攻撃や暗殺を行っている。

ここ数か月でモガディシオで発生した、レストランや高級ホテルを標的とした攻撃でも、アルシャバーブが犯行声明を出している【4月10日 AFP】
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隣国ケニアでのテロ活動活発化とケニア政府の対応のまずさ
ソマリアの活動拠点を失った「アル・シャバブ」は、軍事介入した隣国ケニアでの報復テロ活動も活発化させており、2013年9月にケニアの首都ナイロビのショッピングモールを襲撃して67人を殺害、2015年4月には東部ガリッサの大学を襲撃し、その死者は148人にものぼっています。

特に、大学襲撃事件はケニア政府の治安対策の不備をあらわにし、国内の安全をアピールして観光や投資の回復を目指していたケニヤッタ大統領にとっては面目を完全につぶされる痛打となりました。

****ケニア大学襲撃、特殊部隊の到着は7時間後 記者らより遅いと批判****
ケニア北東地域ガリッサで大学が襲撃され学生ら148人が殺害された事件で、ケニア当局の特殊部隊が現場に到着したのは事件発生から既に7時間が経過した後だったと、地元各紙が5日報じた。政府は対応に問題はなかったと主張している。

主要紙デーリー・ネーションによると、首都ナイロビにある精鋭治安部隊「レキ中隊」の本部では、2日未明にガリッサ大学が襲撃されたとの一報が入ると同時に警報が鳴っていた。

ところが、主要部隊がガリッサ大学に到着したのは間もなく午後2時になろうとする頃だった。報道によれば、ナイロビからガリッサへ向かう飛行機の第一便には、ジョゼフ・ヌカイセリ内相と警察幹部が搭乗していたという。

一方、事件一報を聞いてナイロビから365キロの道のりを車でガリッサまで移動したジャーナリストたちの中には、空路を使った特殊部隊より先に現地に到着した記者が何人もいた。

「もはや犯罪レベルの怠慢だ」とデーリー・ネーション紙は5日の社説で指摘。「襲撃犯らは、ゆっくり時間をかけて明らかに楽しみながら大勢の学生たちを射殺していた」との生存者たちの証言を紹介した。

また、英字紙スタンダードは、特殊部隊の隊員が任務中に居眠りしている風刺画を掲載した。風刺画では、いびきをかいて寝ている隊員が「テロの脅威」と書かれたヘビに噛みつかれて飛び起き、その傍らで犬が「(助ける努力が)少なすぎるし、遅すぎる」とほえる様子が描かれている。

アミナ・モハメド外相は4日、AFPの取材に「テロとの戦いはゴールキーパーのようなものだ。100回シュートを防いでも誰も覚えていないが、たった1回の失敗は忘れない」と述べ、政府の対応を擁護した。【2015年4月6日 AFP】
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難民キャンプ閉鎖を打ち出したケニア政府と国連の対立
対応のまずさを批判されたケニア政府の苛立ちと、ケニア国内の「アル・シャバブ」批判の声は、約35万人のソマリア難民らを受け入れる世界最大の「ダダーブ難民キャンプ」など、ケニア国内に暮らすソマリア難民に向けられれることにもなっています。

ケニア政府は難民キャンプがテロの温床となっているとして、キャンプを閉鎖する意向を表明しました。
(2015年4月14日ブログ「ケニア 大学襲撃事件後も残る緊張・不安 杜撰な治安態勢 ソマリア難民の本国送還の動きも」http://blog.goo.ne.jp/azianokaze/d/20150414

ケニア政府の難民キャンプ閉鎖方針に対し、国連難民高等弁務官事務所(UNHCR)は「ソマリア国内の多くの地域では大規模な(難民)帰還は依然不可能」として反対してきました。

****<ケニア>「テロ温床で閉鎖」難民キャンプめぐり国連と対立****
ソマリア難民を収容するケニア東部の「ダダーブ難民キャンプ」を巡りケニア政府と国連などが対立している。

約35万人が暮らす世界最大級の難民キャンプだが、ソマリアのイスラム過激派アルシャバブによる大学襲撃事件を受け、ケニア政府がキャンプをテロの温床として閉鎖する意向を表明したからだ。国連はケニア政府に再考を促し、国際人権団体は「難民を(テロリストの)身代わりにするな」と批判している。
 
今月2日、ケニア東部ガリッサで起きた襲撃事件では、キリスト教徒の学生がアルシャバブの戦闘員に標的とされ、計148人が死亡した。
 
「ダダーブ難民キャンプ」は、1991年に勃発したソマリア内戦による難民のために設置された。

ケニアのルト副大統領は11日、声明で国連難民高等弁務官事務所(UNHCR)に対し、3カ月以内にソマリア難民を別の場所に移住させることを要求。国連が応じない場合、ケニア政府が移住させると表明した。
 
ケニア当局が神経質になるのは、キャンプがアルシャバブの潜伏先とみられるからだ。

だが、アルシャバブは既にケニア国内で勢力を拡大。ケニア北東部を中心に約250万人が暮らすソマリ系ケニア人社会やインド洋沿岸のイスラム教徒コミュニティーにも入り込んで活動していると言われている。
 
また、首都ナイロビのスラム地域からも多数の若者がソマリアに渡航し、アルシャバブに参加した可能性も出ている。襲撃事件でも実行犯とされる4人はソマリ系を含むケニア人で構成されていたとみられている。
 
一方、ケニア政府の方針に対しUNHCRは14日、「急なキャンプ閉鎖と強制的な難民の帰還は人道的、実務的に極端な結果を招く」「ソマリア国内の多くの地域では大規模な(難民)帰還は依然不可能」との見方を示し、再考を促した。
 
英BBCなどによると、国際人権団体「ヒューマン・ライツ・ウォッチ」のアフリカ地域幹部は「難民を身代わりにするのでなく、ケニア政府はガリッサ事件の容疑者を特定し訴追すべきだ」と述べた。また、ロイター通信は、キャンプ閉鎖が「絶望し何もすることがない若者を戦闘員としてアルシャバブに差し出すことになる」というケニアの人権グループ関係者の懸念を伝えた。【2015年4月17日 毎日】
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難民キャンプに過激派組織が浸透し、これを拠点とすることは各地でも見られることではありますが、難民らの安全が確保できる移送先などを明らかにしないままに強制送還というのでは、難民保護を放棄したあまりに一方的な措置です。

ケニア政府、改めて閉鎖を表明 居場所を失う難民は?】
この問題は、1年ほど宙に浮いていましたが、ケニア政府は改めて難民キャンプ閉鎖を明らかにしています。

****ケニア、難民キャンプの閉鎖発表 60万人が居場所失う****
アフリカ東部のケニア政府は6日、同国内にある世界最大規模のダダーブ難民キャンプを含む複数の難民収容施設を閉鎖させる方針を明らかにした。

実行に移した場合、大半が隣国ソマリアから流入した60万人以上の難民らが居場所を失うことになる。ソマリアとの国境線近くにあるダダーブ難民キャンプには30万人以上が収容されている。

ケニア内務省高官は声明で、閉鎖措置について経済、治安維持や環境の各方面でケニアが強いられている重い負担が理由と指摘。特に国家安全保障上の利益を考慮したとし、ソマリアに拠点があるイスラム過激派「シャバブ」などの脅威に言及した。ただ、難民の移送先については触れなかった。

ケニア政府は昨年もこれらキャンプ閉鎖を発表していたが、国際社会からの圧力もあり棚上げにしていた経緯がある。同国政府当局者は当時、キャンプから締め出された難民の新たな収容先についてはケニアから出国し、ソマリア内のどこかになるとの判断しか示していなかった。

ケニア政府は今回のキャンプ閉鎖に伴い、国際社会が団結し数十万人規模の難民の人道対策の負担に責任を負うよう要請した。

これに対し国際人権団体アムネスティ・インターナショナルはケニア政府の無謀な決定を非難。アフリカ東部などを担当する同団体責任者は今回の決定は弱者保護の義務の放棄であり、多数の人々の生命を危険にさらすものと弾劾した。また、順守すべき国際法の違反でもあると主張した。【5月7日 CNN】
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キャンプから締め出された難民については、国際社会で面倒を見てくれ・・・という話のようでもあります。

****ダダーブ難民キャンプ****
ダダーブの周辺には国際連合難民高等弁務官事務所(UNHCR)による難民キャンプが5つ設けられている。(中略)それぞれのキャンプと従来の町とはそれぞれ数キロメートル離して設置されている。

1993年に、ハガデラ、イフォ、ダガハレが設けられ、当時の収容人数はそれぞれ4万3千、4万6千、4万5千である。

その後、難民の増加に伴ってイフォ2およびカンビオスが増設され、2011年までに現在の形になった。キャンプはUNHCRを中心とする国連機関と30以上ものNGOを中心に運営されている。町の経済も、難民に関するものが大きい。

難民には、ソマリ族の他、ソマリアに住んでいたバントゥー系民族などの少数民族もいる。移住元は激戦地区のジュバ川流域が多く、上流のゲド州の他、南部の都市キスマヨ、モガディシュ、バルデラなどが含まれる。少数ではあるが、ソマリア以外からの難民も暮らす。

キャンプの合計面積は50平方キロメートルほどであり、ダダーブの町から18キロメートル圏内にある。ダダーブのキャンプは設置当時9万人を想定して作られたが、2009年時点で26万人、2013年時点で45万人に達した。
ケニアが受入制限を始めたため、新たな移民は減っている。

なお、難民キャンプ外への移動にはケニア政府の許可証が必要で、難民は自由にはキャンプに出入りできない。【ウィキペディア】
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創設当時から20年以上が経過し、仮設のキャンプというには長すぎる時間です。
難民キャンプでの生活しか知らない若者・子供も多数存在します。

仕事もなく、キャンプに閉じ込められた状態の若者たちに不満が鬱積し、一部が過激派に流れることは想像できます。

ただ、「いまキャンプを撤去すれば、行き場のない若者たちがシャバブに勧誘されて戦闘員になるだけだ」(ソマリア人難民会議のアブダビ・イブラヒム議長)との主張もよく理解できます。

後先考えずに難民を送還しても、多くの難民若者の恨みを買い、また、約250万人が暮らすソマリ系ケニア人社会における過激派浸透の理由を提供するだけのようにも思えます。

難民キャンプの環境の劣悪さについては、以前から問題も指摘されています。

****大規模難民キャンプでコレラ流行、7人死亡 ケニア****
東アフリカ・ケニアで流行するコレラが、世界最大規模とされる北部ダダアブの難民キャンプに達し、先月以降7人の患者が死亡した。医師らはさらなる感染拡大を懸念している。

国際医療支援団体「国境なき医師団(MSF)」の発表によると、ソマリア国境に近い同キャンプでは過去3週間に300人以上の患者が治療センターに収容された。このうち3割が12歳未満の子どもだという。

国連難民高等弁務官事務所(UNHCR)の報道官は19日、CNNとのインタビューで「感染拡大を抑えるための努力を続けている」と語った。

同報道官によると、キャンプの衛生状態や難民らの知識不足が大きな課題となっている。33万人以上とされる難民の数に対し、トイレは必要な数の5割しか設置できていない。

感染は水や食べ物を通して広がるが、子どもたちが泥や水たまりで遊んでいても注意する大人はいない。

MSFケニア支部の責任者は「キャンプの生活条件がいかに劣悪で、衛生事業への長期的な投資がいかに不足しているかという問題が浮き彫りになった」と指摘する。現地は雨季を迎え、衛生状態がさらに悪化しているという。

同責任者は「当面の対策は取られているものの、難民の生活条件を改善し、将来にわたって流行を防ぐための適切な投資が不可欠だ」と話している。【2015年12月20日 CNN】
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責任の押し付け合いではなく、難民らの生命・生活保護を第一に、ケニア政府及び国連・ソマリアなど関係国の真摯な対応・協調が望まれます。

なお、ケニアにはソマリア難民だけでなく、紛争が続く南スーダンからの難民も多く暮らしています。

“ケニア北西部、南スーダンとの国境沿いに位置するカクマ難民キャンプ。ここでは15を超える国々から集まった185,000人以上の難民が生活をしています。その内の約半数、93,000人は南スーダンから辿り着いた人々です。”【5月3日 ピースウィンズ・ジャパン】

多くの紛争地域に隣接する経済的にも恵まれ、比較的安定したケニアは、難民が集中する地域ともなっています。
その豊かさと安定が難民らによって脅かされるという不安・不満は、欧州などと同じものがあります。
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フィリピン  世界に広がる“選挙民の気まぐれ”の先陣を切って「処刑人」ドゥテルテ氏が大統領へ?

2016-05-07 22:35:58 | 東南アジア

(男性誌「エスクァイア」の表紙を飾る、フィリピン大統領選挙でトップを走るドゥテルテ氏【http://www.purveyr.com/2015/03/how-to-be-man-rody-duterte-for-esquire.html】)

退屈な交渉、不満足な妥協、高次目的のための犠牲を否定する“気まぐれ”な選挙民
アメリカ大統領選挙については、周知のように暴言を繰り返すトランプ氏が共和党候補の指名獲得を確実にしています。

欧州では、移民・難民問題や経済的不調を背景に、反移民・反EUを声高に主張する極右勢力が台頭、イギリスのEU離脱問題も不透明な情勢にあります。

一連の政治動向に共通するのは、問題を極端に単純化し、関係者間の調整や相手との複雑な交渉・妥協に重きを置かず、自らの利益のみをひたすら叫ぶ人間・勢力が有権者の支持を強く獲得していることです。

その背景には、これまでの政治を担ってきた既成政治勢力が国民の利益を代弁してこなかったという強い不信感・不満があり、アウトサイダーによるそうした既成政治を打破するとの訴えが有権者の心をとらえていることがあります。

****選挙民の“気まぐれ”が 西側世界を崩壊へ導く****
トランプ、ルペン、コービンが顔をそろえれば・・・・・

ワシントン・ポスト紙コラムニストのアップルバウムが、3月4日付同紙にて、あと2か3の選挙を経て、西側世界は終焉を迎えるかも知れない、と危機感を表明しています。論旨は次の通りです。

これ程までに劇的な時は今までなかった。NATOの終わり、EUの終わり、そして多分自由主義的な世界秩序の終わりまで、あと2あるいは3の困った選挙結果が出そろうまで、というところに我々はある。

“共通の価値”踏みにじるトランプ
選挙は奇妙で選挙民は気まぐれである。来年1月には、オバマ、ブッシュ、クリントン、レーガンなど歴代大統領が「我々の共通の価値」と呼んだものに全く関心のない人物がホワイトハウスにいるかも知れない。
 
トランプは拷問、大量の国外追放、宗教的差別を唱導する。ウクライナがNATOに加盟を認められるか否かは「どうでも良い」と言う。彼はNATOに関心がない。欧州について、「彼等の紛争はアメリカの人命の犠牲に値しない。欧州から引き揚げることは年間何百万ドルの節約になる」と書く。一方、ロシアについては「彼等とは取り引きができる」と言い、「俺はプーチンとは素晴らしい関係を持てるだろう」と言う。
 
同盟に関心がないばかりか、トランプにはそれを維持する能力がないであろう。軍事的、あるいは経済的な連帯には、「取り引きをする」うさん臭い不動産王の技量ではなく、退屈な交渉、不満足な妥協、時には高次の目的のため自国の好みを犠牲にすることが必要となる。

ほとんどの西側諸国において、外交政策の討論が消滅し、政治的娯楽のためのTV番組にとって代わられた時代にあって、およそ無関心な大衆にこれらを説明し正当化させることは一層難しくなっている。

フランスでは右翼政党が躍進するおそれ
同盟を負担に感じているのはアメリカ人だけではない。1年後にはフランスでも大統領選挙がある。国民戦線のルペンはNATOとEUからの離脱、企業の国有化、外国投資の制限を約束している。
トランプと同様、彼女もロシアとの特別な関係を見据えている。ロシアの銀行が彼女の選挙資金を出している。決戦投票になれば、中道左派と中道右派が結束するとフランスの友人は言うが、選挙は奇妙で選挙民は気まぐれである。
 
その頃までには、英国はドアの外に半分出ているかも知れない。もし、国民投票でEU離脱派が勝てば、何でもありの状況となる。

他のEU諸国でも真似ごとの国民投票が行われるかも知れない。ハンガリー首相のオルバーンはイスタンブールあるいはモスクワとの戦略的関係を時に語ったりしている。
 
欧州から解き放たれた英国は大西洋同盟からも漂流するかも知れない。EU離脱後の経済が苦しくなると、選挙民は労働党政権を選択するかも知れない。

労働党の指導部は過激に反アメリカ的である。コービン党首は軽んじられているが、もし、大衆が変化を望むなら、彼が唯一の選択肢である。選挙は奇妙で選挙民は気まぐれである。
 
そうなると、どうなるか? フランス抜きの単一市場はない。英国抜きのNATOはない。全員が残念に思うわけではない。

トランプが言うように、何百万ドルの節約は長期的な利益よりも判り易い。しかし、西側の結束、核抑止力、常備軍による半世紀におよぶ政治的安定、また、共通の経済圏による繁栄と自由が当然視されてはならない。【4月14日 岡崎研究所】
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欧州・オーストリアで4月24日に行われた大統領選挙では、反移民を掲げる極右政党に所属する候補が首位となって決選投票に進んでいます。長年にわたり政権を保持してきた連立与党にとって歴史的敗北となりました。

****<オーストリア>大統領選、極右候補が首位…決選投票へ****
中東などからの難民や移民問題に揺れるオーストリアで24日、大統領選が投開票された。国営オーストリア放送によると、「移民排斥」を訴える極右・自由党候補のホーファー国民議会(下院)議員(45)が得票率でトップで、2位の左派・緑の党出身候補とともに、5月22日の決選投票に進む見通しになった。
 
連立政権を組む中道左派の社会民主党と中道右派の国民党の候補は敗退するのが確実。両党以外から大統領が選出されれば第二次大戦後、初めてで、難民らの受け入れに対する国民の不満を象徴した結果といえそうだ。
 
オーストリアでは国政の実権は首相にあるが、大統領には首相や内閣の罷免権限がある。ホーファー氏は24日、記者団に「(もし自分が大統領になれば)政府は深刻な困難に直面するだろう」と述べ、大統領権限を行使する可能性を示唆した。
 
大統領選は、社民党出身のフィッシャー大統領(77)の任期満了に伴うもの。
 
オーストリア内務省によると、開票率60%で、ホーファー氏が得票率36.4%でトップ。緑の党のファン・デア・ベレン元党首(72)が20.4%で続き、社民党、国民党からの候補はいずれも11.2%だった。
 
オーストリアは元々、難民受け入れに寛容だったが、昨年は西欧を目指す難民ら約9万人が流入。経済低迷と失業率悪化もあり国民の反難民感情が強まった。
 
政府は昨年12月にスロベニア国境にフェンスを設置し、今月に入り、イタリア国境にもフェンスを設ける方針を示したが、支持率は回復しなかった。
 
一方で、自由党は一貫して「(難民や)移民より貧しいオーストリア人を救うべきだ」と主張しており、難民らへの補助金削減や国境管理強化を訴えて、支持率アップにつなげた。
 
同党はかつて、ナチス擁護発言などで物議をかもしたハイダー党首(2008年に死去)の下で勢力を拡大させたことがある。難民問題が浮上した昨年から支持率が伸び、10月のウィーン市議選でも過去最高の得票で第2党を維持した。【4月25日 毎日】
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厳しいユーロ危機を、国民の痛みを伴う調整策としての緊縮財政で乗り切った「優等生」ともみなされていたスペインとアイルランドでも、政治が行き詰まりを見せています。政府・与党はしわ寄せを受けた国民の支持を得られず、総選挙で大きく後退。

新興勢力が台頭し、新内閣を組織できなかったスペインでは5月3日、議会を解散して選挙をやり直す事態になっています。
やはり大きく議席を減らしたアイルランドの与党は、不安定な少数与党政権を余儀なくされています。

【「犯罪者は殺せ」 処刑人ドゥテルテ・ダバオ市長、大統領へ王手
アメリカのトランプ氏や、欧州の英仏独などの動向ほどには世界への直接影響は大きくありませんが、来週9日に行われるフィリピン大統領選挙は、「暴言市長」ドゥテルテ氏が混戦を抜け出したような状況で、選挙民の“気まぐれ”を象徴するような結果にもなりそうな状況です。

噂(たぶん事実)では、犯罪撲滅に努めるダバオ市長として、大型バイクで犯罪組織に殴りこみショットガンをぶっ放したとか、ヘリで犯罪集団の車を追跡して上空からマシンガンを乱射して車をハチの巣にしたとかで、「処刑人」とも「ダバオのダーティハリー」とも呼ばれるドゥテルテ・ダバオ市長(71)については、4月10日ブログ「フィリピン 大統領選挙でも話題にならないミンダナオ島の和平交渉 忍び寄るイスラム過激派の影」http://blog.goo.ne.jp/azianokaze/d/20160410でも取り上げました。

****暴言市長」ドゥテルテ氏優勢=当選阻止へ候補者一本化の動きも―9日に比大統領選****
アキノ大統領の後任を決めるフィリピン大統領選が9日、行われる。直近の世論調査では「暴言市長」として知られる南部ダバオ市のドゥテルテ市長(71)が支持率で他候補に10ポイント以上の差をつけ優勢。

ただ、大統領ら与党自由党陣営からはドゥテルテ氏当選を阻止しようと候補者一本化を模索する動きも出ており、動静は依然流動的だ。
 
民間調査機関ソーシャル・ウェザー・ステーションズが1〜3日実施した調査結果によると、ドゥテルテ氏が支持率33%でトップ。女性上院議員のポー氏(47)が22%、アキノ大統領の後継候補ロハス前内務・自治相(58)が20%、ビナイ副大統領(73)が13%。
 
ドゥテルテ氏は「就任半年以内の犯罪撲滅」を掲げ、地元南部の他に、治安悪化に不安を抱く高中所得層や首都圏でも支持を伸ばす。

「犯罪者は殺せ」などと過激な発言も多いが、ユーモアを交えた話しぶりから「親しみのある頼れる指導者」とのイメージが多数を占める庶民層にも浸透しつつある。
 
選挙戦終盤の4月には、同氏の女性蔑視発言のほか巨額資産隠し疑惑も浮上したが、これまでの世論調査ではあまり影響が出ていない。数百万の組織票を持つとされるキリスト教系宗教団体「イグレシア・ニ・クリスト」は今月5日、同氏支持を表明しており、さらに勢いがつく可能性もある。【5月7日 時事】 
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その「暴言」から「フィリピンのトランプ」とも言われますが、トランプ氏と比べても遥かに過激です。

トランプ氏の場合、過激な発言(その主張はころころ変わりますが)だけですし、大統領になれば選挙中の発言とは異なるそれなりの施策を行うとも思われますが、ドゥテルテ氏が「犯罪者は殺せ」と言う場合、単なる「暴言」ではなく、実際に殺人部隊によって“処刑”が行われてきました。その結果、犯罪が横行するフィリピンにあって、ダバオは極めて治安の良い都市にもなりました。

「犯罪者は殺せ」というのは非常にわかりやすい、力強いメッセージではあります。
腐敗・犯罪が横行するフィリピン社会にあって、「強い指導者」を求める声も多々あります。

しかし、犯罪者の人権云々は別にしても、「殺せ」という対象者がドゥテルテ氏の一存でどこまでも広がる危険もあります。

ドゥテルテ氏の政治に反対する者、不満を表明する者も、社会に対する「犯罪者」として抹殺される危険もあります。実際にはそこまでいかなくても、社会全体が民主主義とは相いれない強権的な支配下に置かれることも懸念されます。

人格的にも、大統領としての資質が疑われます。さすがのトランプ氏も下記のような下品で粗野なジョークは口にしません。

“4月中旬には、刑務所で起きた婦女暴行殺人事件の被害者となったオーストラリア人女性宣教師性強姦(ごうかん)殺害事件に関連し、「彼女は美しかった。市長(である自分)が最初に強姦すべきだった」とジョーク混じりに述べ、女性団体や他候補が一斉に反発。その後謝罪したものの、豪州や米国の大使が批判に加わると「黙れ。大統領になったら断交してやる」と逆上した。”【5月4日 時事】

ただ、トランプ氏同様に、その暴言は逆に人気を押し上げる結果にもなっています。

****暴言止まらぬトップ候補=人気は維持、ドゥテルテ氏―比大統領選****
・・・・ただ、こうした発言は現時点で人気に影響を与えてはいないようだ。女性蔑視発言後に行われた世論調査結果では支持率は前回よりも1%の低下にとどまった。
 
むしろ地方政治家出身のドゥテルテ氏にとり、暴言が連日メディアで報じられることが全国的な知名度向上につながっている。

フェイスブックでの大統領選候補者に関するやりとりの中で、ドゥテルテ氏を取り上げたものは68%と他候補を圧倒。強権的な姿勢を批判的に論じるメディアも多いが、「報道が逆に人気を盛り上げる結果になっている」(地元紙記者)との声も聞かれる。【同上】 
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“大統領ら与党自由党陣営からはドゥテルテ氏当選を阻止しようと候補者一本化を模索する動き”とは言いますが、投票日は9日です。この時期になって、そんなことができるのでしょうか?

教会の前に置き去りにされていた孤児から伝説的な映画俳優の養子となり、大統領の座を狙うまでに上り詰めた「シンデレラ・ストーリー」のグレース・ポー上院議員は撤退を否定しています。

****フィリピン大統領選、ポー氏が撤退観測否定 支持伸び悩む***
フィリピン大統領選挙の投票を来週9日に迫るなか、有力候補とされてきたグレース・ポー上院議員が5日、会見を開き、撤退観測を否定した。

ポー氏は清廉潔白のイメージで人気を集めてきた。しかし、3日公表の世論調査では、ロドリゴ・ドゥテルテ・ダバオ市長が支持率33%で首位。ポー氏は、10%ポイント強の差をつけられ21%。しかも、アキノ大統領が後継に指名したマヌエル・ロハス前内務自治相(22%)にも僅差ながらも負けている。

このため、ポー氏が選挙戦から撤退し、ロハス支持にまわるとの観測が台頭した。

ポー氏は、会見で、「わたしが撤退すべきと主張する人は、どのような権利をもって候補を2人に絞るべき、と主張するのか」と非難し、「わたしは取引にかかわらない」と述べた。【5月5日 ロイター】
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アキノ路線を継承するポー氏が選挙戦首位にあって、アキノ大統領が後継指名していたロハス氏が低迷していた時期に、アキノ大統領がポー氏支持に鞍替えするのでは・・・との観測もありましたが、ロハス氏が追い上げてきた今となっては、それも難しそうです。

このままドゥテルテ氏が勝利することになれば、アキノ大統領は戦略を誤ったことになります。ここまでドゥテルテ氏が伸びるとは想定していなかったのでしょう。
それとも、本当に“土壇場”での一本化があるのでしょうか?

なお、ドゥテルテ氏は中国と権益を争う南シナ海問題では、国際仲裁裁判所で勝訴すれば、中国が造成した人工島に水上バイクで乗り込み「フィリピン国旗をたてる」と、大衆迎合的なナショナリストとしての言動をつづけていますが、人権・民主主義といった価値観を重視していませんので、目先の利益で話がつけばあっさりと中国と手を結ぶことも厭わないでしょう。そのあたりはトランプ氏と似ています。

「民主主義」の結果として、自らの利益のみをひたすら叫ぶ政治家が世界各地で選択されれば、世界から「協調」は失われ、憎悪と対立のみが際立つことになります。
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パレスチナ  イスラエル・ハマス・エジプトの“あり得ない同盟” 収監されていた12歳少女釈放

2016-05-06 22:08:30 | 中東情勢

【4月25日 AFP】

対ISで利害が一致
中東パレスチナの情勢については、4月22日ブログ“イスラエル 自爆テロで高まる報復空爆の懸念 パレスチナ人の生活を分断する「壁」”http://blog.goo.ne.jp/azianokaze/d/20160422で取り上げたように、エルサレム南部で4月18日、路線バスがハマスメンバーによる自爆テロで爆破され20名以上が負傷するテロ攻撃があって、イスラエルによるガザ地区への報復攻撃が懸念されていましたが、イスラエルも報復は踏みとどまったようで、この件に関する情報はその後目にしていません。

また、4月22日ブログでは、ガザ地区においてハマスより更に過激な攻撃を主張するIS支持勢力が台頭していることも取り上げました。

ハマスとISの関係については、3月13日ブログ“イスラエル ガザ地区ハマスのIS接近を警戒 更なる混乱の可能性も”http://blog.goo.ne.jp/azianokaze/d/20160313では、両者の“接近”をイスラエルが警戒していることを取り上げました。

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パレスチナのイスラム原理主義組織ハマスが、シナイ半島のイスラム国(IS)負傷兵をガザ地区内の病院で治療し、見返りにISから武器や資金を得ていると、イスラエルが告発した。

同地区とエジプトを結ぶ数百の秘密トンネルから運び込まれている模様で、米国はエジプト政府に「トンネル撲滅」を改めて求めている。【選択 3月号】
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ただ、このあたりの関係は微妙で、ガザ地区でIS支持勢力が拡大するということになると、ガザ地区を実効支配してきたハマスにとっては、IS支持勢力はハマス支配を危うくする競合勢力ともなります。

そうした観点から、やはりISを警戒するイスラエルとハマスの利害は一致する、更に、シナイ半島でのIS支持勢力に手を焼くエジプトとも対ISで利害が一致するということにもなり、宿敵イスラエルとハマス、それにエジプトを加えた三者が一致して対ISの共同作戦を行っているそうです。

****ハマスが不倶戴天の敵と同盟を組んだワケ****
パレスチナ自治区ガザのイスラム原理主義組織ハマスが不倶戴天の敵であるイスラエルとの間で、過激派組織「イスラム国」(IS)の浸透を食い止めるため“あり得ない同盟”を組んでいる。エジプトの圧力に応じたものだが、「敵の敵は味方」という中東独特の論理が浮き彫りになった格好だ。

300人以上を配備
ベイルート筋や米有力紙などによると、ハマスは先週、エジプトとの境界沿いに精鋭の治安部隊300人以上を配備した。1部隊は海岸地帯を厳戒、他の2部隊はエジプトとの2カ所の境界検問所一帯に展開している。
 
とりわけ、エジプトとガザの境界下に掘られている無数の密輸トンネルの出入り口はエジプトのIS分派「シナイ州」の工作員の侵入を阻むため、戦闘態勢が取られているという。
 
このハマスの動きは、イスラエルの求めを受けたエジプトのシシ政権からの要求に応じたものだとされる。ハマス、イスラエル、エジプトの3者がたとえ短期間であっても“同盟”を組むなど中東の専門家からすれば、想定できないような事態だ。「何が起きても不思議ではない」中東世界の複雑怪奇な政治ゲームを垣間見る気がする。
 
このハマス治安部隊が配備される数日前、イスラエルのネタニヤフ首相はエジプトとの国境沿いに新たな防護壁を建設するという決定を称賛。「この防護壁がなければ、シナイ半島から数千人に上るIS戦闘員が侵入してきただろう」と述べたが、防護壁とはハマスの治安部隊展開を指したものだ。

イスラエルの生存権を認めない
ヨルダン川西岸のパレスチナ自治政府と一線を画す武闘派のハマスはイスラエルの生存権を認めず、敵対関係を続けてきた。イスラエルは09年と14年にハマス攻撃のためガザに地上侵攻し、パレスチナ人3500人以上を殺害、イスラエル側にも約80人の死者が出た。
 
ハマスはイランの支援を受け、エルサレムなどにも届く長距離のロケット弾を開発、イスラエル側の懸念が深まる大きな要因になっている。特に昨年9月以降、ヨルダン川西岸などでパレスチナ人によるイスラエル人襲撃、それに対するイスラエル治安部隊の攻撃が続発。ハマスとイスラエルの緊張も次第に高まっていた。
 
ハマスとエジプトのシシ政権との関係も悪い。ハマスは元々、シシ大統領が軍事クーデターで倒したモルシ前大統領の出身組織「モスレム同胞団」のガザ支部。

このため親組織を倒したシシ政権とは関係が悪化し、武器や補給物資の外部との唯一の搬入口であるエジプトとの境界検問所も閉鎖されたままだ。密輸トンネルも大半がエジプト軍の管理下に置かれている。

3者の思惑と実利が合致
この3者が“同盟”を組むことになったのは、それぞれの思惑と実利が合致したからに他ならない。3者にとって共通の敵であるIS勢力に対抗する必要に迫られているからだ。
 
ガザ地区やイスラエルに接するシナイ半島はISのエジプト分派組織「シナイ州」の拠点だ。「シナイ州」は2014年11月に反政府過激派がISに忠誠を誓い、設立された。それ以降、シナイ半島の町や村落、エジプト政府軍の陣地、検問所などへの奇襲攻撃を続け、政府軍との戦闘を繰り返してきた。
 
特に昨年10月末、シナイ半島の世界的な保養地シャルムエルシェイクから離陸したロシア旅客機に爆弾を仕掛けて空中爆破、240人を殺害したテロ事件を起こし、政府軍への攻撃をさらに激化させている。
 
クーデターで政権を奪取したエジプトのシシ政権の看板は治安の安定である。ところが「シナイ州」を壊滅できないどころか、首都カイロでもテロが頻発する事態に国民の信頼は低下しつつある。
 
シシ政権はとりわけ、「シナイ州」とガザのIS勢力が合体することを懸念している。「シナイ州」のこれ以上の勢力拡大は治安の悪化に拍車を掛けることになるからだ。治安の回復ができなければ、どん底にある観光産業の復活は期待できない。早急に「シナイ州」の壊滅が必要なのだ。
 
イスラエルにしてもISのテロの矛先がイスラエルに向けられるのは「時間の問題」という脅威に直面している。ガザに「シナイ州」の戦闘員が入ることになれば、イスラエルの安全保障が重大な危険にさらされてしまう。そうした思惑がシシ政権を通じてハマスを動かしたと言えるだろう。

ガザへのIS侵入は容認できない
ISから不信心者の集団とレッテルを張られているハマスにしても「シナイ州」のガザ浸透は容認できない。それでなくてもガザ地区内にISシンパである「イスラム国の支持者たち」という過激組織が急速に台頭、対応を迫られている。エジプトから「シナイ州」が入り込んでくることはハマスの存亡にもかかわってくるからだ。
 
しかも、東京23区の6割という狭い面積に180万人のパレスチナ人が居住するガザはイスラエルとは高い塀によって隔離された“巨大な監獄”。イスラエル側の検問所が閉鎖されている状況では、エジプト側の検問所に物資の補給を依存せざるを得ない。しかしシシ政権が検問所を閉鎖しているため、経済的な困窮に追い込まれているのが実状だ。
 
ハマス側には、ガザの境界の警備強化というシシ政権の要求を受け入れ、その見返りに検問所を再開させたいとの切羽詰まった事情があるのだ。ISの恐怖が生んだあり得ない“同盟”である。【5月6日 WEDGE】
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敵味方入り乱れての戦闘が続く中東らしい話ではありますが、この“あり得ない同盟”によって、イスラエルとハマスの関係がこれまでの“宿敵”“不倶戴天の敵”から変化するのかどうか・・・はわかりません。

両者の緊張関係が和らげば、パレスチナ側のファタハとハマスの統一政府、更には、パレスチナ統一政府とイスラエルの共存体制という道筋も開けてきますが、そうはうまくいかないのでしょう。

収監されたパレスチナ人女性の中で最年少の12歳少女釈放
パレスチナ・イスラエル関係で最近印象に残った記事は、パレスチナ人12歳少女に関するものでした。

****イスラエル刑務所に2か月超 パレスチナ人12歳少女、釈放される****
イスラエルは24日、刃物で襲撃を企てたとして2か月以上にわたり刑務所に収監していたパレスチナ人少女、ディマ・ワウィさん(12)を釈放した。弁護士によると、イスラエルで収監されたパレスチナ人女性の中で最年少という。
 
パレスチナ人自治区ヨルダン川西岸北部のトルカレムの検問所で自治政府側に引き渡されたワウィさんは、車で南部ヘブロン郊外の自宅に帰還。市長や多くの住民らに温かく迎えられた。
 
ワウィさんは2月9日、ヨルダン川西岸にあるユダヤ人入植地の入り口で刃物を所持しているのが見つかり、学校の制服姿のまま逮捕された。その後、イスラエル軍検察との司法取引で殺人未遂と刃物所持の罪を認め、禁錮4月の実刑と執行猶予6週の追加刑の判決を受けた。
 
ワウィさんの弁護団はイスラエルの軍事法廷に早期釈放を求めていたが、このほどイスラエル側が釈放に合意したという。
 
イスラエルの軍事法廷では、未成年でも12歳から起訴できると定めている。国連児童基金(ユニセフ、UNICEF)によると、世界でもこうした例は他にないという。イスラエルは現在約450人の未成年パレスチナ人の身柄を拘束しており、うち100人ほどが16歳未満だ。
 
イスラエルやパレスチナ人自治区のユダヤ人入植地では昨年10月以降、パレスチナ人がナイフや銃、車で突っ込むなどの方法でイスラエル人を襲撃する事件が多発しており、これまでにイスラエル人28人、パレスチナ人201人が死亡している。【4月25日 AFP】
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12歳少女でも、危険と見なせば収監するということで、テロを警戒するイスラエル側の緊張状態が窺える事件ではあります。

写真で見ると、12歳少女のあどけなさとはまた異なった印象も受けますが、いずれにせよ、12歳少女を収監しても、パレスチナ人側の反感を強めるだけで、イスラエルにとって利益にはならないでしょう。
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アフガニスタン 戦乱の中で子供たちは 報復殺害、少年兵、脅迫、自爆犯、難民生活・・・奪われる教育機会

2016-05-05 22:17:51 | アフガン・パキスタン

(兄がポリ袋で作ってくれたアルゼンチン代表メッシ選手のユニホームを着てサッカーをするアフマディ君でしたが・・・・。1月29日撮影=AFP時事【2月26日 朝日】)

タリバン和平交渉拒否 春季攻勢「オマル作戦」】
アフガニスタンの和平交渉に関しては、もう2か月ほど前に‟タリバンが交渉拒否の声明を発表”というニュースが伝えられて以降、進展が見られていません。

****<アフガン>タリバン和平交渉拒否 条件提示、政府揺さぶり****
アフガニスタンの旧支配勢力タリバンとアフガン政府との和平交渉が暗礁に乗り上げている。政府側は3月第1週にも交渉を再開するとしていたが、タリバンは5日、拒否の声明を発表。タリバン側には、簡単に和平の呼びかけに応じないことで、政府を揺さぶる狙いがあるとみられる。
 
アフガン政府とタリバンの和平交渉は昨年7月以来中断している。政府は交渉再開を目指し、タリバンに影響力を持つとされる隣国パキスタンや米中と協議を重ね、2月の協議後には和平交渉に「全てのタリバンを招待する」と呼びかけていた。
 
タリバンは5日付の声明で、米軍やアフガン軍が各地で空爆や戦闘を続けていると指摘。和平交渉再開には、駐留外国軍の撤退▽国連の制裁対象リストからのタリバン幹部の削除▽拘束された仲間の釈放−−が条件だと改めて主張した。さらに、こうした条件なしの交渉は「どんな結果も生み出さない」として参加を拒否した。
 
タリバンは先月27日に首都カブールの国防省付近で自爆テロを起こすなど攻勢を強めている。一方、交渉参加のハードルを強調することで、政府側との駆け引きで優位に立とうとしている可能性がある。アフガン政府高官は取材に対し「和平以外の解決はあり得ない。引き続き交渉再開に向け努力する」と話したが、開催時期は「遅れることになる」と述べた。
 
一方、パキスタンのアジズ首相顧問(外交担当)は今月1日、米ワシントンで行った講演で、タリバンの指導者らがパキスタンに潜伏していることを初めて公式に認めた。その上で、タリバン幹部の国内移動や医療施設の使用に制限を加えることで、交渉参加に向け「圧力をかけられる」と語った。パキスタンが今後、タリバンにどれだけ影響力を行使できるかがカギとなりそうだ。【3月7日 毎日】
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ケリー米国務長官が4月9日にアフガニスタンを訪問してガニ大統領と会談、今後ともアフガニスタン政府を支援することを表明し、タリバンに和平交渉再開を呼び掛けてはいますが・・・・。

タリバン側は4月12日、恒例の「春季攻勢」を宣言しています。
ちなみに今年の春季攻勢は、昨年死亡を発表した元最高指導者オマル師をたたえて「オマル作戦」と命名されているとか。

4月19日には首都カブールで死者数が64人にものぼる大規模自爆テロが発生。カブールでは2011年、イスラム教シーア派を狙った自爆テロで70人以上が死亡して以来、最悪規模とも言われています。

****アフガン首都の自爆攻撃、死者64人に 内務省発表****
アフガニスタン内務省は20日、同国の首都カブール中心部で19日に起きた旧支配勢力タリバンによる自爆攻撃の死者数が64人になったと発表した。
 
内務省のセディク・サディキ報道官は「64人が死亡し、347人が負傷した」と述べ、「大半は民間人だ」と語った。
 
アフガニスタンのアシュラフ・ガニ大統領はツイッターで「テロ攻撃の犠牲者は皆、誰かの父であり兄弟であり子どもだった」と述べ、「アフガニスタン人から流れた全ての血の滴りに対する報復は、われわれがきっと行う」と宣言した。
 
1週間前にタリバンが「春の攻勢」の開始を宣言して以来、首都での初めての大規模な攻撃となった今回の事件では、市中心部でトラックに積載された強力な爆弾が爆発した後、激しい銃撃戦が交わされた。【4月20日 AFP】
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タリバン相手の戦闘で人気者になった少年、射殺
1978年のアフガニスタン紛争の開始から、ソ連の侵攻、軍閥が割拠しての内戦、タリバン支配、アメリカの介入、タリバンの反攻・・・と戦乱の続くアフガニスタンにあって、子供たちもその混乱の中で生きる、あるいは死ぬことを余儀なくされています。

タリバンに包囲されたなかにあって、民兵を指揮し自宅の屋根の上から機関銃を撃ち続け、「おいは計43日間にわたって指揮を執り、我々は包囲を突破した。こちらはたった75人で数百人のタリバーンと戦った」(おじの話)とのことで有名になった少年(当時11歳)が2月、タリバンによって殺害されました。

****タリバン、元民兵のアフガン人少年を殺害 人権団体が非難****
アフガニスタン南部ウルズガン州で、民兵として旧支配勢力タリバンと戦い、一躍有名になった少年(12)が、タリバンの戦闘員に頭部を銃撃されて死亡した。4日には、子どもを戦闘員として利用することへの非難の声が人権団体から相次いだ。
 
殺害されたのはワシル・アフマド君。不安定情勢が続く州都タリンコートで、アフマド君は学校に向かう途中、バイクに乗ったタリバンの戦闘員に頭を2度銃撃された。参加していた民兵組織を数か月前に離れ、学校に通い始めたばかりだった。
 
愛らしい顔立ちのアフマド君は昨年夏に同州で、おじや民兵らがタリバンの包囲を突破するのを助けたとされ、政府側を支持する武装勢力の間で一躍人気者となっていた。
 
ソーシャルメディア上で拡散されている写真には、大きすぎるサイズの戦闘服とヘルメットを着用し、銃を握るアフマド君の姿が写っていた。【2月5日 AFP】
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【「ひげの生えていない少年」は戦わせないと言いつつも、少年兵や自爆犯
上記はタリバンと戦い、報復で殺害された少年ですが、タリバン側は多くの少年兵を戦闘に投入しているとも報じられています。

****タリバンが6歳の子らに戦闘訓練、13歳で実戦投入 人権団体****
アフガニスタンの旧支配勢力タリバンが、実戦に投入する目的で6歳の子どもたちにも戦闘訓練を受けさせているとの報告書を、国際人権団体ヒューマン・ライツ・ウオッチ(HRW)が17日、発表した。少年戦闘員の数は2015年半ばから急増しているという。
 
タリバンは、参加を認めているのは「心身ともに成熟した」戦闘員のみで、「ひげの生えていない少年」を戦わせることはないと主張している。

だが、HRWの報告書によれば、タリバンは積極的に少年たちを集め、IED(即席爆弾)の使い方をはじめとする軍事訓練を受けさせているという。
 
HRWのアフガニスタン担当調査員、パトリシア・ゴスマン氏は「違法なだけでなく、冷酷かつ残忍だ」と批判した。
 
HRWが特に懸念を示しているのが北部クンドゥズ州だ。同州ではマドラサと呼ばれるイスラム教の神学校が、タリバンによって次々と少年たちの軍事教育の場と化しているという。
 
少年たちに対するタリバンの教官の洗脳教育は6歳くらいから始まり、7年間の軍事訓練を経て、13歳までには戦闘員として実戦に動員されるという。
 
HRWによると、地元住民や専門家は、この1年間に少年兵が増加した大きな理由として、タリバンが昨年4月からアフガニスタン北部で攻勢を強めている点を指摘している。

また、地元住民の話では、クンドゥズ州の中でも特に情勢不安定なチャハルダラ地区では、2015年に100人以上の子どもたちがタリバンに召集され戦闘に動員されたという。【2月18日 AFP】
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戦闘だけでなく、自爆テロの実行者として利用されるケースも。

****すぐに天国に行ける」 自爆犯になったアフガン少年の旅路****
大きな目に、優しいほほ笑み、うっすらと生え始めたひげ、キックボクサーになりたいという男の子らしい夢──モヒブラ君(15)は一見、アフガニスタンでよく見るごく普通の少年に見える。だが彼は、同国の旧支配勢力タリバンによって自爆犯になるようそそのかされ、現在少年刑務所に収監されている。
 
家出していたモヒブラ君は2014年、地区長の庁舎前で自爆する寸前に取り押さえられ、南部カンダハル市の少年刑務所に送られた。
 
殉死すれば、純潔の乙女らとミルクや蜂蜜が湧く湖が待つ楽園へ行けると教えられた──モヒブラ君はこう語ると、目に涙を浮かべた。
 
モヒブラ君は、指導役らに「自爆ベストを爆発させても、痛みは全く感じない。君はすぐに天国に行ける」と教え込まれたと語った。(中略)

■「人間ミサイル
モヒブラ君は、隣国パキスタンにあるイスラム神学校の一つで洗脳を受けたと語った。同国に数千か所あるこうした宗教学校は、当局の規制を受けておらず、多くはサウジアラビアからの資金で運営されている。
 
アフガニスタン当局は、そういった学校がタリバンの勧誘拠点になっていると主張している。

アフガニスタンとパキスタン両国は緊張関係にあり、アフガニスタン側はパキスタンがタリバンを支援していると非難。これに対し何年間も否定していたパキスタン側は、最近になってタリバン指導部がパキスタン国内に安全な潜伏先を持っていると認めた。
 
タリバンは「あごひげのない少年ら」を軍事作戦に起用したことはないと主張しているが、アフガン当局は子どもの自爆犯の拘束を頻繁に報告している。中には6歳の子どももいたとされる。
 
当局によれば、子どもたちは「人間ミサイル」として使われているという。小さな体で警備の網を擦り抜け、爆弾を標的に素早く送り込むことができる。
また影響を受けやすい子どもたちは簡単に洗脳され、生きるよりも死ぬ方が良いのだと思い込む。(後略)【5月5日 AFP】
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【「リトル・メッシ」少年も国外避難
タリバンと戦って有名ななった少年が報復殺害されたように、今のアフガニスタンでは目立つことは大きな危険を伴うようです。

「リトル・メッシ」として話題を呼んだ少年も脅迫を受け、パキスタンに避難することに。

****アフガンの「リトル・メッシ」、脅迫受けパキスタンへ****
サッカー・アルゼンチン代表のメッシ選手にあこがれ、ポリ袋で作ったユニホームを着た姿がフェイスブック上で注目を集め、メッシ選手本人からサイン入りのユニホームを贈られたアフガニスタン人の少年の一家が脅迫を受け、パキスタンに避難した。AP通信が3日伝えた。
 
少年は、ムルタザ・アフマディ君(5)。同通信は父親の話として、インターネット上で「リトル・メッシ」として有名になって以来、脅迫電話がひどくなり、ムルタザ君が誘拐されるのではないかと恐れ、家財道具を売り払って逃れてきたと伝えた。
 
脅迫の内容や目的ははっきりしていない。アフガンでは身代金目当ての誘拐事件が頻発しているほか、少年が住んでいたガズニ州は反政府勢力タリバーンの活動が活発な地域。タリバーンは政権時代、あらゆるスポーツを禁じた。【5月3日 朝日】
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希望を失ったイランで暮らす少女
アフガニスタンの戦乱を逃れて欧州などへ移り住もうという子供を含む難民が多く発生していること、「バルカンルート」では行く手を阻まれ、「地中海ルート」では遭難の危険に曝されていることなどは、しばしば取り上げてきました。

下記は、アフガニスタンを逃れ、イランで暮らす少女の話です。

****街角で会った少女を13年間撮り続けて****
彼女の名はファラシュテ。当時7歳。イランに暮らすアフガン難民だった

2003年冬、イラン東部の都市マシュハド。寒い夜空の下、カフェの前の通りに体重計を置き、街行く人々の体重を量って代金をもらっている少女がいた。客が来ないときは、カフェからもれる光を頼りに勉強している姿が印象的だった。
 
彼女の名はファラシュテ。当時7歳のアフガニスタン難民だった。この子はこれからどう成長していくのだろう。彼女が大きくなっていく姿を写真に収めたい──。それから私は2年に1度のペースでイランを訪れるようになった。

10歳、12歳、14歳。ファラシュテはまだ体重を量っていた。日中は学校に通い、夜になると兄や姉たちと一緒に路上に出る。
 
ファラシュテの両親は80年代に、ソ連に侵攻されたアフガニスタンからイランへ逃れてきた難民だ。当時イラクと戦争をしていたイランは国内の労働力不足を補う目的もあり、アフガン難民を多く受け入れた。ファラシュテはイラン生まれだが、難民の親から生まれた子供も難民の扱いになるという。
 
父親はかつて建設現場で働いていたが、心臓を患ってからは肉体労働ができなくなった。難民が単純労働以外の仕事に就くのは難しい。家計を支えていたのは子供たちだった。
 
ファラシュテには、幼い頃から働いているからか、妙に世間慣れしているのに、子供の無邪気さを失っていない魅力があった。(中略)

ファラシュテは結局、14歳ぐらいまで路上での仕事を続けた。(中略)

ソ連軍侵攻とそれに続く内戦、そして01年のアメリカの攻撃で始まったアフガン戦争──イランはアフガニスタンで紛争が起きるたびに多くの難民を受け入れてきた。

現在、イランで暮らすアフガン難民は90万人以上とされる。難民キャンプに収容されているわけではない。大半が都市部で暮らし、働いたり学校へ通ったりと、表向きは社会に溶け込んでいるように見える。
 
ファラシュテの家族も豊かではないけれど、つつましく幸せな生活を送っているように見えた。だが実際には、イランのアフガン難民には多くの制限が課されている。土地や家、車の所有は禁じられ、働き口は学歴があっても低賃金な単純労働にしか就けない。

さらに近年は、イランの失業率が上昇していることもあり、政府はアフガン難民を母国へ帰そうとする政策を取っている。
 
そんな不安定な立場に、ファラシュテの父親は危機感を抱いていた。昨年夏、ドイツのメルケル首相が難民の大量受け入れを発表すると、彼はファラシュテの兄2人を連れて、トルコ経由で欧州へ渡った。無事にドイツにたどり着いた父親たちは、今度はファラシュテたち残りの家族を呼び寄せようとした。
 
しかし、ファラシュテと母親と姉は、トルコとの国境を越えようとしたところでイランの国境警備隊に捕まり、アフガニスタンへ強制送還された。もう正規のルートではイランに戻れない。ファラシュテたちはパキスタン北西部の危ない部族地帯を経由してイランに再入国した。家族は今、バラバラになっている。

20歳になったファラシュテは今、奨学金を受けながら大学に通い、都市計画を学んでいる。小さい頃の夢は絵描きだったから本当は美術を勉強したかったのかもしれないが、奨学金が出る専攻は限られている。

都市計画なら経済的負担もないし、デザイン画も描けると、彼女なりに賢明な選択をしたのだろう。楽しそうに学ぶ姿は幼い頃から変わっていない。
 
またドイツへ渡ろうとするのだろうか? 欧州が難民への門戸を閉ざし始めた今となっては、前回以上に危険な旅になる。イランで育ったファラシュテ自身、友人も多くいるこの地を離れたいとはあまり思っていないようだ。
 
かといって、大学を卒業しても就職口は限られている。「何か有意義な仕事がしたいけれど......」と、言葉を詰まらせる彼女は現実を前に希望を失っているようだ。ずっとイランで暮らしていけるという保証もない。(後略)【5月2日 Newsweek】
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次世代に問題を持ち越す教育機会喪失
上記少女の場合、苦しい難民生活ながらも、教育を受ける機会を得れたことはまだ救いです。
アフガニスタンでは混乱と危険によって、多くの子供たちの教育の機会が奪われており、そのことは問題を次世代に持ち越すことにもなります。

****<アフガン>14万人教育の機会失う タリバンとの戦闘で****
国連アフガニスタン支援ミッション(UNAMA)などは18日、旧支配勢力タリバンとの戦闘が続くアフガニスタンで、学校や診療所が攻撃や脅迫の対象となるケースが増加しているとの報告書を公表した。

昨年1年間で少なくとも369の学校が閉校や休校に追い込まれ、約14万人の子供が教育を受ける機会を奪われたという。
 
報告書によると、2015年は学校や教員が攻撃されたり、脅迫を受けたりした事件は132件(前年比61件増)。教育関係者の死傷者数は26人と前年から11人減少したが、反政府勢力などによる誘拐事件の被害者は49人で35人増加した。(中略)
 
アフガンでは軍とタリバンなどとの戦闘が激化しており、UNAMAによると、今年1〜3月だけで1943人の民間人がテロや戦闘に巻き込まれ死傷している。【4月19日 毎日】
*********************

子供たちの教育機会を訴えるマララ・ユスフザイさんの呼びかけは、アフガニスタンにはまだ十分には届いていません。
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ウクライナ  経済危機・汚職体質・政情混乱 東部情勢以上に厄介な国内問題

2016-05-04 23:10:22 | 欧州情勢


(ヤヌコヴィッチ政権崩壊後に釈放されたものの政変には参加できず、「過去の人」になった感もあったティモシェンコ元首相(写真左)ですが、昨年9月の情報では、ウクライナ経済のマイナス成長が続くなか市民の政権批判を吸収し、再びかつての人気を取り戻しつつあるとも。 写真は“flickr”より By  Paul Hofer 欧州評議会議員会議のアン・ブラッセル議長(右)と会談していますので、去年か一昨年の写真ではないでしょうか。)

東部での戦闘は続いているものの、一定に抑制された状態
最近、ウクライナ東部の政府軍と親ロシア派の戦闘に関するニュースは目にしていませんが、先日久しぶりに下記記事が。

****ウクライナ東部で戦闘、5人死亡=「イースター」停戦無視****
ウクライナ東部で政府軍と親ロシア派の戦闘が続き、1日のインタファクス通信によると、4月29、30両日で双方の少なくとも5人が死亡した。内訳は政府軍3人、親ロ派2人で、ドネツク州アウデエフカの戦闘が特に激しい。

東部では、戦闘停止や重火器撤去など停戦合意が順守されない状況が継続。双方は29日、ベラルーシの首都ミンスクで和平協議を行い、5月1日の東方正教の復活大祭(イースター)までに停戦を厳格化することで一致したが、事実上無視した格好だ。【5月2日 時事】
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戦闘が完全に収まっている訳ではありませんが、久しぶりに上記のような記事を目にしたということは、逆に言えば、一定に戦闘状況は抑制されているということでしょう。

ウクライナ政府とロシアの間で問題となっていた、ロシアが拘束中のウクライナのナディア・サフチェンコ空軍中尉の件も、伊勢志摩サミット前の政治解決の可能性が報じられています。

****ウクライナ中尉5月解放か=ロ軍人と交換、サミット前にも****
ロシア経済紙RBK(電子版)は22日、政府関係者の話として、ロシアで拘束中のウクライナのナディア・サフチェンコ空軍中尉=4月5日に禁錮22年確定=が5月中にも解放される見通しだと伝えた。
 
日本など先進7カ国(G7)は、ウクライナ東部の停戦合意や人道上の観点からロシアに解放を要求。プーチン政権は、ロシアに風当たりが強まる5月下旬の主要国首脳会議(伊勢志摩サミット)までに事態収拾を図る可能性がある。
 
ウクライナでは4月18日、東部で拘束されたロシア軍特殊部隊の2人が禁錮14年の実刑判決を受けた。30日後に確定するのを待ってサフチェンコ中尉と交換する仕組みで、ロシア、ウクライナ両政府が基本合意したという。【4月23日 時事】 
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オランダ国民投票はEU・ウクライナの連合協定に「反対」】
戦闘も抑制され、ロシアとの問題にも目途がつきそうで、ウクライナにとって順調に進んでいるのか・・・と言えば、そんなことはなく、オランダで4月6日、EUとウクライナの連合協定の是非を問う国民投票が行われ、反対が賛成を大きく上回る結果となっています。

****<オランダ国民投票>ウクライナ連合協定「反対****
オランダで6日、欧州連合(EU)とウクライナの連合協定の是非を問う国民投票が行われ、即日開票の結果、反対が賛成を大きく上回った。

国民投票はEU懐疑派のブログ運営者らが署名を集めて実施にこぎつけた経緯から、EU統合深化の是非が事実上の争点となり、懐疑派が狙い通りの結果に持ち込んだ形になった。
 
オランダANP通信が報じた開票速報によると、反対が61.1%、賛成38.1%だった。投票率は32.2%で、結果が有効となる30%をわずかに上回った。しかし2012年の総選挙の投票率は75%近く、今回の国民投票が国内で高い関心を呼んだとは言い難い。
 
連合協定は、EUとウクライナの自由貿易協定(FTA)を軸に政治・経済面での関係強化を図る内容だ。EUに加盟する28カ国のうちオランダ以外の27カ国が批准していた。今回の結果に拘束力はないが、オランダのルッテ首相は「このまま批准の手続きを進めることはできない」と述べており、厳しい対応を迫られそうだ。
 
今回の国民投票は、域内の反EU感情を測る目安の一つとしても注目されていた。6月下旬にEU離脱の是非を問う国民投票を控えた英国のメディアでは、今回の結果を自国の国民投票の「リトマス試験紙」とみる論評もある。(後略)【4月7日 毎日】
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記事からすると、ウクライナとの関係が問題とされたというよりは、EU統合深化の是非が問われた性格が強いようです。

丁度来日中だったウクライナのポロシェンコ大統領は「どのような状況でもEUとの手続きを進める」と述べていますが、ウクライナにとって好ましい事態ではありません。

EUとウクライナの連合協定は、一連のウクライナ混乱のきっかけとなった事案でもあり、ロシアからすれば「それみたことか」といったところでしょう。

****ほくそ笑む露、EU分断戦術を加速へ オランダ国民投票 ウクライナは危機深まる恐れも****
欧州連合(EU)とウクライナの連合協定に猛反発したロシアは、オランダの国民投票で反対が多数を占めたことに自信を深めている。

ロシアは2014年春、協定をめぐって政治危機に陥ったウクライナに介入し、欧米の対露経済制裁を招いた。制裁緩和と国際的孤立からの脱却を目指すプーチン露政権は、EU内の隊列を乱す戦術をさらに推し進める公算が大きい。
 
露政界やメディアでは国民投票について、「オランダは、EUが連合協定を急ぎすぎたことを理解した」「国民投票はウクライナに対するEUの態度をよく示している」などと解釈するコメントが相次いだ。
 
EUは14年7月、ロシアの軍事介入したウクライナ東部上空でマレーシア機が撃墜された事件を受け、金融や資源、軍事分野を標的にした対露制裁を発動。EUは、この制裁の期限が切れる今年7月までに延長の是非を決めることになっており、撃墜事件で最大の犠牲者を出したオランダの投票内容にロシアはほくそ笑んでいる形だ。
 
プーチン政権は、シリア問題をめぐる「協力」と引き換えに、欧米の制裁を緩和させようとしてきた。仏極右政党「国民戦線」(FN)など反EU勢力との親密な関係も指摘される。ロシアは、欧州向け天然ガスパイプライン「北ルート2」の計画なども通じ、親露的な国々を取り込んでEU内の分断を図る思惑だ。
 
一方、ウクライナのポロシェンコ大統領は、オランダの国民投票は欧州統合路線の「障害とはならない」と強調する声明を発表した。

ただ、国内では深刻な腐敗や経済低迷への不満が依然として強く、連立与党の形成も難航している。野党が今回の結果に乗じて政権批判を強めれば、いっそうの政治的混乱を招きかねない。【4月7日 産経】
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ロシア側のメディアSPUTNIKは以下のようにも。

****ウクライナについて分かり始めた欧州、日本は****
モスクワ国立国際関係大学国際研究所主任研究員アンドレイ・イワノフ氏の私見-

ウクライナ大統領 日本人の頭を惑わす
はじまりはウクライナにとって気分の良いものだった。ポロシェンコ大統領は日本で非常に丁重に迎えられた。安倍首相は会談終了後に、ポロシェンコ大統領がウクライナにおける迅速な改革の実施を約束したと述べ、ポロシェンコ大統領のこのような固い決意を心強く思っていると語った。

また安倍首相は、ドンバス(ウクライナ南部・東部)情勢解決の問題で、全体としてポロシェンコ大統領率いるウクライナ代表団を支持し、日本がミンスク合意の完全履行を呼びかけていることを強調した。

情勢によく通じている世界の主要大国の首脳である安倍首相が、まさにポロシェンコ大統領がミンスク合意の履行を頓挫させているのを知らないはずはない。

しかし経験豊かで礼儀正しい人物である安倍首相は、これを声に出して述べることができなかったのだ。だが安倍氏が今後、ウクライナの政治家たちの甘い言葉ではなく、現実に基づいてウクライナとの関係を構築しなければならくなるのは明らかだ。

次は不快なものについて触れる。現実は次のようなものだ。例えば、オランダで6日、EUとウクライナの連合協定の是非を問う国民投票が実施され、反対票が多数を占めた。

ウクライナに対するこのようなネガティブな反応は、他の欧州諸国でもさらに顕著になっている。なぜなら欧州の人たちはウクライナについて一般的な日本人よりもはるかに多くの事を知っているからだ。

EU加盟国や米国の政府の管理下にあるメディアの強化にもかかわらず、欧州の人たちは、2014年2月のキエフでのクーデターや、横領、汚職、民主主義侵害の疑いが持たれた当時のヤヌコヴィチ大統領が逃亡した後、ウクライナ政権が今も変わらず腐敗していることを理解し始めた。

ウクライナでは民主主義も高まらなかった。反対に数千人が刑務所に入れられ、ウクライナの新たな「民主的」政権を批判したとして数十人の野党活動家が殺害された。ウクライナ経済は崩壊した。

クリミアの住民は、クミア半島と一緒にロシアへ逃げ込んだ。ウクライナ東部ではポロシェンコ大統領が戦争を開始した。公式情報によると、この戦争では約1万人が殺された。

これらの現実は、果たしてウクライナとEUの連合協定がEUに恩恵をもたらすのだろうか?という疑いを欧州の人たちに抱かせている。

欧州の人々は、新政権によって破壊されたウクライナから、飢えて怒り狂った大勢のフーリガンが欧州へ流れてくるのを恐れている。しかもそれらのフーリガンの多くが、ナチス・ドイツの共謀者たちを崇拝し、ドンバスで殺害の経験を持つウクライナ国家親衛隊のメンバーだ。

さらにウクライナ領内にテロ組織「ダーイシュ(IS、イスラム国)」の戦闘員を訓練するキャンプがあったという最近伝えられたばかりの情報も、欧州の人たちに衝撃を与えた。

ロシアとの関係をさらに悪化させるという懸念も、ウクライナとEUの連合協定の支持を拒否する重要な原因だ。欧州の人々は、「尊厳の民主革命」と呼ばれるウクライナのこの全ての「ごたごた」を、ウクライナとロシアの経済関係を破壊し、かつての兄弟共和国ウクライナをクレムリンに圧力をかける拠点へと様変わりさせるために欧州が利用したことをすでに理解し始めている。

正常な欧州の人たちの中では、これらの汚く、危険なゲームをしたいという気持ちが薄れている。日本の人々が、政治家やマスコミによる「プーチンから身を守る為に欧州の庇護を求める不幸なウクライナ」、「ロシアの侵略」という催眠から解かれるのは、いつのことになるのだろうか?【4月7日 SPUTNIK】
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悪化する経済情勢 議会は膠着し首相交代
上記は、あくまでもロシア側の考えではありますが、ウクライナに政治腐敗という深刻な国内的問題が存在していることは指摘のとおりです。

東部での戦闘、経済危機の深刻化という状況に出口が見いだせず、政争で政情も混乱しています。

****ウクライナ首相が辞任表明 連立政権の運営行き詰まり****
ウクライナのヤツェニュク首相が10日、機能不全に陥った政権の立て直しを図るため、辞任する考えを明らかにした。後任にポロシェンコ大統領に近いグロイスマン議会議長を挙げ、自らの政党と大統領派との連立を維持する考えを示した。親欧州路線に変更はないが、一連の混乱で政権の支持率は大きく低下した。
 
ヤツェニュク氏は、親ロシア路線のヤヌコビッチ前大統領が2014年2月の政変で逃亡した直後に首相に就任。同年6月に大統領に就任したポロシェンコ氏とともに、欧州連合(EU)入りを目指す親欧州路線の政権の車の両輪だった。
 
だが、当初は議会の圧倒的多数を集めた連立政権の運営は与党間の争いで行き詰まり、経済危機が深刻化する一方だった。状況打開を目指すポロシェンコ大統領は2月にヤツェニュク氏に辞任を求めたものの、拒否された上、複数政党の離脱で連立与党が過半数を失う事態に陥っていた。【4月11日 朝日】
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後任首相には親欧米派のボロディミル・グロイスマン議長(38)が指名されています。
連立を離脱したティモシェンコ元首相ら野党勢力は総選挙を視野に動いているとも報じられています。
なお、ポロシェンコ大統領の支持率も17%にまで下落しています。

深刻な汚職体質にEU・IMFからも厳しい視線
新内閣で再出発したウクライナですが、「パナマ文書」問題もあって、ウクライナ政治の汚職体質に向けられる欧州・IMFの視線も厳しくなっています。

****パナマ文書の衝撃】ウクライナ、元来の汚職土壌にダブルパンチ 新財務相、大統領、与党幹部・・・国際社会が不信感、金融支援にも暗雲*****
汚職対策の遅れなどを理由に国際通貨基金(IMF)の支援が中断されているウクライナで、4月に発足した新内閣が閣僚の不祥事で早くもつまずいている。

内閣刷新を受けてIMFは支援再開に前向きな姿勢をみせているが、深刻な汚職体質を改善できなければ、ウクライナが統合を目指す欧州でも、拒否感がさらに広がりかねない。
 
ダニリュク新財務相は4月21日、タックスヘイブン(租税回避地)として知られる英領ケイマン諸島などで、複数の企業の役員を務めていた事実が発覚し、謝罪に追い込まれた。野党は辞任を要求している。ウクライナではポロシェンコ大統領も4月、「パナマ文書」で租税回避地の利用が指摘されたばかりだ。
 
ウクライナでは2月、リトアニア出身で改革派のアブロマビチュス前経済発展・貿易相が、与党幹部らによる改革の妨害工作や、複数の国営企業の乗っ取りの画策を公表するなど、中央政界での深刻な汚職の実態が明るみに出ている。
 
東部紛争やロシアとの対立を背景に、ウクライナは昨年の国内総生産(GDP)が前年比9・9%減、インフレ率が49%となるなど破綻状態にある。

そのためIMFは昨年、総額175億ドル(約1兆9000億円)の金融支援を決定したが、一部を実施した後、汚職対策など改革の遅れを理由に中断した。
 
新内閣の発足を受け、IMFは近く支援協議のためウクライナに代表団を送る見通しだが、一方で5月中旬に予定されていた欧州連合(EU)とウクライナの首脳会議は9月に延期された。欧州側がウクライナの改革の進捗(しんちょく)を見定める狙いとみられ、国際社会の不信感が浮き彫りになった。
 
キエフの政治専門家、フェセンコ氏はウクライナの汚職体質について、「(ソ連崩壊後の)1990年代に深刻化した政治とビジネスの癒着」が原因で、「欧州諸国よりもはるかに改革が困難だ」と指摘した。【5月3日 産経】
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なお、ウクライナ情勢に関して、独・仏・ロシア、そしてウクライナの4か国で11日に外相会談が予定されています。

****4カ国外相、11日に会合=ウクライナ情勢****
4月30日のドイツ紙ウェルト(電子版)によると、同国のシュタインマイヤー外相はウクライナ東部情勢をめぐり、ロシア、ウクライナ、フランスの外相を5月11日にベルリンに招き、会合を開くことを明らかにした。
 
シュタインマイヤー外相はウェルト日曜版の取材に、ウクライナ東部の地方選準備が議題になると述べ、「具体的な提案がある」と説明した。停戦の徹底策に関しても、監視に当たる欧州安保協力機構(OSCE)の「興味深い案」が議論されるという。ドイツは現在OSCE議長国。【5月1日 時事】 
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「興味深い案」・・・・なんでしょうか?情勢の安定化を実現できるものであるといいのですが。
ただ、東部情勢以上に、ウクライナ国内の汚職体質改善は困難なようにも思われ、そのことがウクライナの将来の足かせになりそうです。
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タイ  新家法草案の国民投票 軍政は、政党などによる組織的反対運動を禁止

2016-05-03 21:34:22 | 東南アジア

(新憲法草案をフェイスブックで批判したことで、21日、軍政当局者らに促されバンコクの軍事裁判所に出廷するタイのワタナ元商業相(中央)(EPA=時事)【4月21日 時事】)

民主化に逆行する新憲法草案
今日5月3日は憲法記念日・・・・という訳でもありませんが、タイの新憲法制定関係の話。

****タイ暫定首相に民政復帰への期待示す・・・・岸田外相****
岸田外相は2日、タイ軍事政権のプラユット暫定首相とバンコクの首相府で会談した。

プラユット氏は8月の憲法草案に対する国民投票など民政復帰に向けて着実に前進していると説明、岸田氏は早期に復帰プロセスが進むことに期待を示した。
 
2014年5月に起きた軍事クーデター後、欧米諸国を中心にタイの軍政には厳しい視線が向けられている。先進7か国(G7)の外相がタイを訪問するのは岸田氏が初めてで、タイ側は、国際社会に正統性をアピールする「良い機会」(政府関係者)と位置づけていた。

民政復帰に関しては、憲法草案には上院議員を任命制とするなど軍政の意向が色濃く反映されており、国内では批判にさらされている。
 
会談では、プラユット氏が、タイに進出する日本企業を重視し投資環境の整備をさらに進める考えを示した。中国が参画を模索している日本とタイ、ミャンマーの共同事業「ダウェイ経済特区」の開発について、岸田氏が当初計画通り3か国で進める考えを主張した。【5月2日 読売】
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2日にはタイ軍事政権と会談し、翌3日にはミャンマーを訪問し、かつて軍事政権と関係を維持していたことで日本への不快感を持っているとも言われるスー・チー氏と会談・・・・という岸田外相です。
日本外交も、中国に似て、内政不干渉の傾向がややあるようです。強い経済関係を有するアジア諸国との現実的外交というべきでしょうか。


それはともかく、現在の軍事政権から民政へ移管するにあたって、その基礎となるべき新憲法草案が8月7日に国民投票にかけられる運びとなっていますが、これまでもしばしば取り上げてきたようにその内容については大きな問題が指摘されています。

“(1)議員でない人物が首相になれる(2)上院議員を20の職能分野ごとに間接選挙で選ぶ(3)選挙によらない憲法裁判所などの機関に強い政府監視権限を与える――といった民主化に逆行する制度のほか、選挙に強いタクシン元首相派の封じ込めを狙ったとみられる、単独政党が過半数をとりにくい小選挙区比例代表併用制の導入などが柱だ。”【3月30日 朝日】

選挙に強いタクシン派を封じ込め、軍、王室側近、司法などが強い影響力を保った形の国王を頂点とした秩序ある社会を構築していくことを狙ったものに思えます。
結果的に、政党・選挙をとおした民意の反映という民主化の面では制約を課した内容にもなっています。
(4月11日ブログ「タイ 軍政の新憲法案、二大政党がともに反対、国民投票で否決の可能性も タイ民主主義の現状」http://blog.goo.ne.jp/azianokaze/d/20160411

軍政が目の敵にしているタクシン派だけでなく、反タクシン派・民主党のアピシット元首相も憲法草案を「プラス面よりマイナス面の方が多い」「われわれにとって良い憲法とは、民主主義の原則に基づいて汚職を防止する憲法だ」と批判していることに関しては、“民主党は2014年のクーデター前、タクシン氏の妹のインラック首相(当時)退陣を求めるなど軍と歩調を合わせてきただけに、元陸軍司令官のプラユット首相は記者会見で「顔面にパンチを浴びせられた」と不満をあらわにした。”【4月26日 産経ニュース】とも。

なお、タクシン派インラック政権への抗議行動を扇動し、社会混乱を惹起することで軍部の介入を呼び込もうと画策していたステープ元民主党幹事長は新憲法草案支持の立場を明確にしています。

【「(賛成、反対両派による)いかなる種類の広報活動も許さない」】
とにもかくにも、この憲法草案を国民投票にかけるということではありますが、軍事政権は「混乱防止」を理由に、草案に関する組織的な批判を一切許さない姿勢を強めています。

****組織的反対運動認めず=憲法草案の国民投票―タイ軍政****
タイ軍事政権は、憲法起草委員会がまとめた新憲法草案の賛否を問う8月7日の国民投票を前に、草案否決を訴える組織的な反対運動を認めない方針を示し、国内外で懸念が広がっている。
 
軍政が上院議員を任命する権限を持つなど、軍の政治的影響力を温存する内容の憲法草案に対して、タクシン元首相派を中心に反対の声が上がる中、プラウィット副首相兼国防相は25日、混乱防止を理由に「(賛成、反対両派による)いかなる種類の広報活動も許さない」と記者団に強調した。
 
選挙管理委員会も、多額の費用をかけた大掛かりな運動は禁止されると説明。

個人がフェイスブックなどソーシャルメディアで意見を表明したり、賛否を表す小さな看板を自宅に掲げたりするのは可能だが、政党など政治団体が公開討論会を開くことはできず、参加できるのは学術団体やメディア、国家機関が組織したものに限られるとの見解を示している。【4月26日 時事】
********************

実際に、憲法草案を批判した団体は告発されています。

****憲法案批判の団体を初告発=国民投票法違反容疑でタイ選管****
タイ選挙管理委員会は27日、フェイスブックに新憲法草案を批判するメッセージを投稿した東北部コンケン県の団体を国民投票法違反容疑で警察に告発した。同法が22日に施行されて以来、告発された初めてのケースとなった。
 
選管のソムチャイ委員は記者団に、問題のメッセージは有権者を扇動する「激しく攻撃的」な内容で、国民投票法に抵触すると主張した。同法の最高刑は禁錮10年。
 
国民投票法をめぐっては、反対派の動きを封じ込めるため恣意(しい)的に使われる恐れがあるとして、国内外で懸念する声が上がっている。新憲法草案の賛否を問う国民投票は8月7日の予定。【4月27日 時事】
*****************

タクシン派はこうした議論を封じる動きの是正を求めています。

****タクシン派政党、国民投票関連法の改正要求 ****
タイのタクシン元首相派プアタイ党(タイ貢献党)は28日付の声明で、国家平和秩序評議会(NCPO)に対し、憲法草案の是非を問う国民投票に関する法律の改正を要求した。

憲法草案を批判するコメントをフェイスブックに投稿した10人が、前日にコンピューター犯罪法違反の容疑で軍に身柄を拘束されたことを受けた動きとみられる。バンコクポスト(電子版)が28日伝えた。【4月29日 NNA.ASIA】
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もっとも、軍政側はこうした批判に耳をかす気はさらさらないようです。
選挙管理委員会は、フェイスブックで違法な投稿に「いいね!」をクリックした場合も刑事罰の対象になると警告しています。

****いいね!」で刑事罰も=憲法案の国民投票めぐり―タイ****
軍事政権下にあるタイの選挙管理委員会は、新憲法草案の賛否を問う8月の国民投票に関し、国民投票法違反で刑事責任を問われる恐れのある禁止行為に関する指針をまとめ、29日に公表した。

フェイスブックで違法な投稿に「いいね!」をクリックした場合も、刑事罰の対象になると警告している。
 
国民投票法は、有権者に特定の投票行動を取らせる目的で事実をねじ曲げたり攻撃的な言葉を用いたりして情報を流布した場合、最高で10年の禁錮刑を科すと規定している。
 
選管が同法に基づいて作成した指針では、個人が事実に基づいてソーシャルメディアなどで草案への意見を表明することはできるが、他の有権者に賛成や反対を訴える運動は禁じられる。
 
インターネットに虚偽情報を投稿することや、フェイスブックに投稿された虚偽情報に「いいね!」ボタンを押して共感を示すことは、国民投票法に抵触すると見なされる。

特定の意見を表すシャツやリボンの着用を他者に働き掛けたり配布したりするのも、禁止行為とされている。【4月30日 時事】
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何をもって“虚偽情報”“違法”とするかは、軍事政権の判断次第です。

また、新憲法草案をフェイスブックで批判したタクシン元首相派のワタナ元商業相は4月18日から軍事政権に身柄を拘束され、政治活動を禁止する軍政の命令に違反したとして4月21日、訴追されています。
反対者を引っ張る方法には事欠かないようです。

****新憲法草案の否決狙う反政府勢力にはさらに厳しい対応****
一昨年5月にクーデターでタクシン派・インラック政権を倒した軍部の主導するプラユット政権下で民政移管に向けて新憲法を制定すべく新憲法草案の是非を問う国民投票が8月7日に予定されているが、ティラチャイ陸軍司令官はこのほど、タクシン支持団体「反独裁民主戦線(UDD)」のリーダーであるチャトゥポン氏やソムバット氏といったクーデター批判組にこれまで以上に厳しく対応する意向を明らかにした。

新憲法草案を否決に持ち込もうと同案を批判するタクシン支持者などに対し、当局はこれまで説得によって態度を改めさせようとしてきたが、同司令官によれば、話し合いではらちがあかないため、厳しい措置をとることが必要になっているとのことだ。【5月3日 バンコク週報】
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国民投票で民意を問うと言いながら、その実態は批判を一切許さず、軍政案支持を強要するような動きです。

こうした軍事政権の姿勢は“一事が万事”とも言えるでしょう。仮に民政移管されたとしても、強い影響力を有する軍部の意向に背くような議論は許されない社会となるようにも思えます。

タクシン派・反タクシン派の抗争で混乱したタイ社会を安定させるためには、軍事政権のような強い指導力が必要だという議論もありますが、憲法素案をめぐる一連の動きを見ていると、やはり軍政は軍政でしかありえず、軍政に民主的価値観を求めることは無理なように思えます。

もし否決されたら・・・・?】
国民の多くはこうした新憲法問題には無関心ともされており、政党が組織的批判を封じ込められ、政権側のキャンペーンだけが垂れ流されるたなかで行われる国民投票の結果がどうなるかはわかりません。

もし、否決されたらどうなるのか・・・ということに関しては、前回ブログでも触れたように、プラユット暫定首相は国民投票で新憲法草案が否決された場合でも予定通り来年総選挙を実施する考えを示していますが、その場合、憲法はどうするのか非常に不透明です。

否決の場合は、現行の軍部権限を大幅に認める暫定憲法を適用するのでは・・・との推測もあります。またタクシン派・反タクシン派はそれぞれ自派が好む過去の憲法を復活させることを求めています。

これに対し、プラユット暫定首相は「新たに新憲法を作成する」との考えを示しています。
ただし、例によって暫定首相の頭の中にあるだけで、詳細は示されていません。

****プラユット首相「新憲法草案が否決されたら新たに新憲法を作成****
憲法起草委員会(CDC)が先にまとめた新憲法草案を受け入れるか否かを問う国民投票が8月7日に実施される予定だが、プラユット首相はこのほど、「草案が国民投票で否決されたら新たに新憲法を作成する」と述べ、否決の際には過去の憲法を新憲法として制定する考えのないことを明らかにした。

現行の新憲法草案が否決された場合については、2大政党のうちタクシン派・タイ貢献党が1997年憲法を、反タクシン派・民主党が2007年憲法を新憲法として復活させることを要求している。

だが、プラユット首相は、「過去の憲法は使わずに新たに憲法を作成する。これについてはすでに思い描いているプランがある」としている。【4月14日 バンコク週報】
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ベネズエラ  経済悪化でいよいよ追い詰められたマドゥロ大統領 罷免を求める動きも

2016-05-02 22:36:30 | ラテンアメリカ

【4月28日 AFP】

昨年末総選挙で大敗 野党が3分の2獲得
南米ベネズエラ経済については、内的要因としてのチャベス前大統領時代からの低所得層を対象としたバラマキ政策や外国資本排除・国有化政策など市場経済を無視した経済政策と、近年の原油価格低迷という外的要因の両方で、物価上昇・商品不足に苦しむ行き詰まり状態にあり、デフォルトも近いのでは・・・という話は以前からとりあげてきました。

2014年12月5日ブログ「ベネズエラ 原油価格下落で経済悪化が加速 迫るデフォルト・社会不安の危機」http://blog.goo.ne.jp/azianokaze/d/20141205など

その後も状況は改善せず、経済状況悪化を糊塗するために、従来からの対米批判を強めたり、国内批判勢力への弾圧を強化したりしてきました。

2015年3月17日ブログ「ベネズエラ 対アメリカ関係悪化 国民の不満を国外に向け、支持者の結束強化を図る思惑も」http://blog.goo.ne.jp/azianokaze/d/20150317
2015年9月11日ブログ「ベネズエラ  迫るデフォルトの足音 野党指導者逮捕で政府批判を圧殺 国内コロンビア人の難民化」http://blog.goo.ne.jp/azianokaze/d/20150911

しかし、経済状況の悪化・市民生活の困窮は隠しようもなく、昨年末総選挙では与党は大敗を喫しました。

****野党、議席3分の2獲得=大統領に打撃―ベネズエラ総選挙****
ベネズエラ選管は8日、総選挙(定数167、一院制)の最終結果を発表し、野党連合が112議席を確保した。与党は55議席だった。野党が議席の3分の2を占めたことで、マドゥロ大統領は苦しい立場に追い込まれた。
 
ベネズエラ議会は、3分の2の賛成で改憲に向けた制憲議会を招集できる。与党の影響力が強いとされてきた裁判官や選管委員の任命・罷免も可能になる。
 
野党指導者カプリレス氏は「この国を変える」と宣言。与党打倒を目標に掲げてきた野党連合は今後、具体的な政策協議を本格化する。
 
投票は6日に行われ、故チャベス前大統領が政権を発足させた1999年以来、与党は初めて過半数を失った。深刻な経済危機を背景に、日用品の不足、物価上昇、南米最悪レベルの治安悪化が進み、与党への不満が高まっていた。【2015年12月9日】 
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この結果、マドゥロ大統領罷免の是非を問う国民投票実施も現実味を帯びてきました。
なお、与党大敗を受けて、国会議事堂に多数飾られていた故チャベス前大統領の写真や肖像画がすべて撤去されたそうです。

今年のインフレ率は世界で一番高い700%に
上記のようにベネスエラの経済苦境は昨日・今日の話ではありませんので、ある意味、政権が未だに持ちこたえているのが不思議なくらいです。(制度的に、大統領罷免は任期前半はできないことになっています。マドゥロ大統領を罷免する国民投票が可能となるのは今年4月以降です)

ベネズエラの中央銀行は2015年のインフレ率が180.9%だったと発表していますが(実際はもっと高いのではないでしょうか)、今年は700%に達するとも予測されています。もはや経済崩壊の瀬戸際です。

****停電で真っ暗、食料や薬も払底、インフレ率「世界一」ベネズエラ 経済危機が反米政権を直撃****
南米ベネズエラの経済危機が深刻化している。輸出の大半を原油に依存してきたが、原油価格の下落で外貨収入は大幅に減った。経済はリセッション(景気後退)に陥り、食料や医療品が不足するなど市民生活を直撃している。

マドゥロ大統領は経済担当の副大統領を交代させる方針を固め難局をしのぎたいところだが、先行きは見通せない。
 
米紙ウォールストリート・ジャーナルによると、首都カラカスでは停電が慢性化し、ショッピングセンターやスーパーは真っ暗だという。電気の使用時間が政府によって制限されているためだ。
 
停電は日常生活だけでなく、病院や医療施設の運営にも支障をきたす。医療品や人工呼吸器の不足が追い打ちをかけ、同国西部の病院では乳児6人が死亡したニュースが報じられた。
 
スーパーでは食料品が不足しており、市民が闇市で食料や飲料を調達する光景も目立つが、価格が高騰しているため、なかなか手が出せないでいる。
 
議会の過半数を占める野党は、政府による価格統制が背景にあると主張し、今月11日、食料危機を宣言。政権の責任を追及する構えをみせている。

これに対し、マドゥロ氏は経済担当副大統領を交代させることで、状況の悪化に歯止めをかけようとしている。ロイター通信によると、マドゥロ氏はサラス副大統領に代えて、財界との関係が深い穏健派を起用する方針。
 
ウォールストリート・ジャーナルが国際通貨基金(IMF)のデータを引用して報じたところによると、今年の同国のインフレ率は世界で一番高い700%に達する見通し。2015年の経済成長はマイナス10%だったが、今年はさらにマイナス8%となる可能性が指摘されており、このままでは市民生活はさらに悪化すると予想される。
 
マドゥロ氏やその周辺からは「米国を中心とする敵対勢力が経済戦争を仕掛けている」「民間企業が政権の不安定化を狙っている」といった声が聞かれるが、経済悪化の影響は、政権与党が大敗した昨年12月の総選挙にもはっきりと表れていた。

食料をはじめとする物資不足が、反米左派政権の勢力衰退に拍車をかける情勢になってきた。
石油輸出国機構(OPEC)加盟国のベネズエラは協調減産を訴えているが、各国の温度差もあり実現へのハードルは高い状況だ。【2月17日 産経】
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“ここ数年、食料品やトイレットペーパーなどの生活必需品の不足が続き、商店には夜明け前から長い行列ができる。商品は身分証明書の番号で購入が制限され、買えるのは週1度。レジでは買い占め防止の指紋認証が導入されている。”【2月4日 朝日】とも

タダ同然だったガソリン価格も引き上げられました。60倍に。

****ただ同然だったガソリン、60倍まで値上げ ベネズエラ****
ベネズエラのマドゥロ大統領は17日、世界で最も安く「ただ同然」とされてきた国内のガソリン価格を約60倍まで値上げすると発表した。外貨収入の96%を原油輸出に頼る同国は、原油の国際価格の下落で財政が急速に悪化。補助金による低価格の維持が難しくなった。1999年の故チャベス政権の誕生以降、値上げは初めて。
 
地元紙エルナシオナルなどによると、レギュラーガソリンは1リットル当たりの価格を0・07ボリバル(約1円)から1ボリバル(約17円)、ハイオクは0.097ボリバルから6ボリバルに引き上げる。(後略)【2月20日 朝日】
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ベネズエラに限らず、補助金で低く抑えられてきたガソリン等の燃料・食糧価格を財政難から引き上げると、国民の不満は一気に高まり、ときに暴動の形で噴出します。政権にとっては大きなリスクを伴う措置です。

干ばつによる電力不足も 公務員「週休5日」】
マドゥロ政権の苦境に追い打ちをかけるように、ベネズエラは深刻な干ばつにも見舞われており、水力発電所のダムの水位が極めて低くなっています。そこで政府は節電のため、4月8日から6月6日までの2か月間、金曜からの週末3日を休業日にすることを決めました。週休3日制です。

なお、一般世帯を対象とした電力配給制の導入や、電気代の引き上げは見送っています。

しかし、それでも追いつかなかったようで、ついに「週休5日」に。

****ベネズエラ、節電対策で公務員を週休5日に 議会は給与払えず****
経済危機に見舞われている南米ベネズエラの政府は、節電対策の一環として公務員を週休5日にすると発表した。
 
ベネズエラではこれに先立ち、金曜を休業日としたり、国内の大半の地域で1日4時間の計画停電を実施するなどの措置も講じられている。

これに加え、アリストブロ・イストゥリス副大統領は26日、テレビ放送で「公的部門では水曜と木曜、金曜、必要不可欠なものを除き業務を行わない」と明らかにした。
 
一方、野党が多数派を握る国会のヘンリー・ラモス・アラップ議長は27日、政府が予算を割り当てないため、議員や職員に給与を支払えなくなっていると訴えた。
 
野党リーダーの同議長は記者団に「今月は給料を支払う金がない。政府が金を回さないからだ」と憤りをあらわにし、リセッション(景気後退)にあえぐベネズエラの新たな犠牲者だとこぼした。
 
首都カラカスではこの日、ニコラス・マドゥロ大統領の罷免の是非を問う国民投票を求めて、野党の呼び掛けで大規模な署名活動が行われた。【4月28日 AFP】
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公務員の「週休5日制」は、少なくとも2週間の一時的な措置とされており、給与は通常通り払われるそうです。
「だったら、休めていいじゃないか・・・」とも思ってしまいますが、暑い中で1日4時間しか電気が使えないという生活ですから・・・。

国民生活に直結する部門を除き、月曜日と火曜日以外はすべて休みとなるとのことですが、もとからお役所仕事が効率的だったとは思えませんので、週2日だけでは殆ど公務がストップしてしまうのではないでしょうか。

更に、大胆な節電対策が続きます。

****<ベネズエラ>標準時を変更 日光有効利用で電力消費抑制****
ロイター通信などによると、南米ベネズエラの標準時が5月1日から30分早まり、グリニッジ標準時(GMT)マイナス4時間に変更される。日光を有効利用し、電力消費を減らすための措置。同国では干ばつの影響で発電の主力である水力発電量が減っている。
 
政府は2007年のチャベス前政権下で標準時をGMTマイナス4時間から、30分だけ遅らせた。表向きの理由は無駄な消費の抑制。だが実情は、反米姿勢をむきだしにしていたチャベス氏が、米国の首都ワシントン(夏時間)とベネズエラが同じ標準時だったのを嫌がったとの説が有力だ。
 
今回、無駄な電力消費の抑制という似た理由で時計の針を戻すことになった。産油国ベネズエラの財政は原油価格暴落のあおりで破綻寸前。電力不足は泣きっ面に蜂だ。野党はマドゥロ大統領の解職請求の準備を進めており、政治も経済も先行きは不透明である。(後略)【4月30日 毎日】
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一方、物価上昇と収入不足で、国民の12パーセントが一日3食食べていないとの調査結果も。【4月28日 ロイターより】

政府は最低賃金引上げで対応しようとしていますが、基本的に市場経済が機能せず供給が不足していますので、賃金だけ挙げても、さらなる物価上昇を招くだけでしょう。

****ベネズエラ、最低賃金を30%引き上げ マドゥロ政権下で12回目****
ベネズエラのマドゥロ大統領は30日夜、最低賃金を30%引き上げると発表した。同国ではインフレが高進し、消費者の購買力が低下している。

5月1日付でベネズエラの最低賃金は1カ月当たり1万5051ボリバルとなる。これは公式為替レートでは1505ドルに相当するが、ブラックマーケットのレートでは13.50ドルにすぎない。

大統領は同時に1カ月当たりの食券の額も1万8585ボリバル(ブラックマーケットのレートで17ドル)に増やすことを明らかにした。

大統領は1時間にわたる国営テレビでの演説で、自身が大統領になってからの最低賃金の引き上げがこれで12回目であることを強調し、「ウゴ・チャベス(前大統領)の息子であるニコラス・マドゥロのような大統領だけ(が達成できることだ)」と語った。

一方、野党などからは、相次ぐ最低賃金の引き上げは、政府がインフレと深刻な景気後退に歯止めをかけられないことを露呈していると批判する声も聞かれる。【4月30日 ロイター】
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“自身が大統領になってからの最低賃金の引き上げがこれで12回目であることを強調・・・・”というのも、感覚がずれています。
12回も引き上げを実施しないといけない状況、それでも満足に生活できない状況の責任を感じるべきでしょう。

困難に見えるマドゥロ大統領の難局乗り切り
当然のように、大統領罷免を求める動きも出ていますが、混乱も報じられています。

****ベネズエラ首都で与野党支持者が衝突、大統領罷免の国民投票めぐり****
南米ベネズエラの首都カラカスの選挙管理当局で8日、ニコラス・マドゥロ大統領罷免の是非を問う国民投票の実施を求める野党支持者らと大統領の支持者らが衝突した。【4月8日 AFP】
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ベネズエラの政治状況は知りませんが、大統領罷免の是非を問う国民投票が実際に行われると、故チャベス大統領のようなカリスマを持たたない“チャベスの息子であるマドゥロ”では乗り切るのは難しいのではないでしょうか。
原油価格が急速に上昇するようなことがない限り。

昨年末総選挙結果をみると、チャベス前大統領を支えてきた貧困層も離反し始めているようですから。
デフォルトが先か、リコールが先か・・・といったマドゥロ大統領です。

貧困層に手厚く所得再分配するということ自体は、それをバラマキと呼ぶかどうかは別にして、ひとつの政治選択です。また、原油価格低迷とか干ばつによる電力不足といったマドゥロ大統領にとって“不運”な要因もあります。

ただ、原油収入だけに依存し、国内産業の育成・効率化を行わず、インフラ投資も怠ってきた、チャベス前大統領以来のつけが回ってきたと言うべきでしょう。
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