孤帆の遠影碧空に尽き

年に3回ほどアジアの国を中心に旅行、それが時間の流れに刻む印となっています。そんな私の思うこといろいろ。

中国  習近平政権が目指す新時代「新常態」 

2015-01-19 22:41:38 | 中国

(2013年武漢国際モーターショー 【2012年10月15日 RecordChina】http://www.recordchina.co.jp/a65489.html
人間は色欲、金銭欲、権力欲・・・等々の塊であることは言うまでもありませんが、それだけに、節度を保てるような内的な規範も必要になります。中国の場合は、そのあたりの節度を保つ規範・モラルに乏しく、みながむき出しの欲望のままに暴走しているようにも見えます。)

【「反腐敗の手を緩めず、新たな常態とする」】
中国共産党の汚職を取り締まる中央規律検査委員会は1月7日、最高指導部・政治局常務委員会前メンバーで、巨額収賄や機密漏えいなどの容疑で追及が進む周永康・前党中央政法委書記(72)を既に送検し、法に基づき処理していると明らかにしました。

習近平国家主席が進める腐敗粛清運動については、昨年11月18日ブログ「中国  腐敗摘発で粛清の「嵐」 党・国家への批判を許さない“体制引き締め”」http://blog.goo.ne.jp/azianokaze/d/20141118でも取り上げましたが、
習近平国家主席の意を受ける王岐山中央政治局常務委員が書記を務める中央規律検査委員会を中核として、年が明けても勢いが衰えません。

****反腐敗、文化人も標的 規律委、追及を強化 中国****
中国共産党の「反腐敗」の取り組みを担う党中央規律検査委員会の全体会議が12日、北京ではじまった。

大幹部の摘発などで専門家の期待以上の「成果」を上げてきたが、習近平(シーチンピン)指導部は追及を継続する構え。幹部に近い文化人など、標的は広がりつつある。

14日まで、党員の腐敗摘発や綱紀粛正の取り組みを総括し、今後の方針を定める。2013年1月の会議では習氏が「反腐敗」の号砲となる演説を行った。

昨年、党は13年の約3倍に上る2万3千人余の党員を規律違反で処分。周永康(チョウヨンカン)・前党中央政法委員会書記や令計画(リンチーホワ)・前党統一戦線工作部長ら前指導部の中枢幹部も相次ぎ摘発した。

反腐敗は「どうせかけ声だけとの予想をいい意味で裏切った」(政府シンクタンク研究者)と、学者や庶民の評判は上々だ。

厳しい姿勢は党や軍内の反発を招く恐れもあるが、習指導部は「反腐敗の手を緩めず、新たな常態とする」(王岐山〈ワンチーシャン〉・党中央規律検査委書記)と、一時的なキャンペーンに終わらせないとの姿勢を強調している。

全体会議の開幕に合わせるように、党中央規律検査委は反腐敗を巡る習氏の指示をまとめた本を出版。
「腐敗と政治問題は往々にしてセットで生まれる。(党内で)徒党を組み、味方を増やすために不正に金を動かす必要が出てくる」「政党の命運は人心がついてきてくれるかどうかで決まる」など内部会議での発言を紹介し、腐敗問題が党の存続にかかわるとの危機感を強く印象づけている。

北京の外交筋によると、規律検査委は最近、調査の対象を著名な書家や音楽家などの文化人にも広げている。文化人たちが書画などを好む高官との親しい関係を背景に、口利きを望む商人や官僚などから金品を受け取ったりする動きがあるためだ。

党最高指導部は昨年末、党中央組織部、党中央宣伝部など、政権の中枢部門にも党中央規律検査委の出先機関を置くことを決定。同委員会の影響力は、かつてなく拡大しつつある。【1月13日 朝日】
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党だけでなく、軍でも粛清が進んでいます。

****<中国>「重大腐敗案件」で軍高官16人調査****
中国人民解放軍は15日、ウェブサイトで、昨年1年間で軍内の重大腐敗案件で16人の幹部将校を軍の規律検査部門が調査したと発表した。

軍制服組の最高幹部で党籍剥奪処分となった徐才厚・前中央軍事委員会副主席のほか、軍総後勤部・劉錚(りゅう・そう)副部長=中将=が違法犯罪の疑いで立件・捜査されている。(後略)【1月15日 毎日】
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経済面でも、中国経済の根幹をなしている、それだけに政治・経済・社会問題の中核ともなっている国有企業について、“国有企業経営者の年収は従業員平均の8倍以内に抑えなければならない、その上、すべて公開する”という年収の上限を定める通達が出されたそうです。

社会的にも風紀を引き締める動きが進んでいるようで、庶民の暮らしに身近なところでは、こんな話もあります。

****女性コンパニオン」に逢えなくなる?・・・・ネット上の「噂」を否定しない、上海モーターショー主催者側=中国メディア****
中国メディアの京華時報は10日、4月に開催予定の上海モーターショーで女性コンパニオンによる演出が禁止されるとの噂(うわさ)がネット上を駆け巡ったとし、この噂に対して主催者側は「モーターショーの本質に回帰するため、女性コンパニオンによる演出禁止を含めた措置を検討していることは事実」と回答したことを紹介した。【1月14日 Searchina】
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コンパニオンのコスチュームについては、以前から、ヌードぎりぎりの衣装、肌の過度な露出、透けたコスチュームを禁止する「裸・露・透」禁止令が主催者から出されていますが、徹底しないので・・・という話でしょう。

習近平政権の腐敗粛清に対しては、当然ながら、党内、軍、国有企業に抵抗もあるのでしょうが、現在のところは習近平国家主席のペースで事が運んでいるように見えます。

習近平氏は従来より太子党とも言われていますが、組織的な実態のない太子党といったものではなく、習氏自身の自前の派閥も党内に形成されつつあるとも指摘されています。

****習近平派」じわり…汚職で失脚の政敵後任に元部下、党内勢力図に変化の兆し****
中国の習近平国家主席は、汚職や横領などの名目で政敵になり得る有力者を次々と失脚させる一方、自身が地方指導者として勤務した時代の元部下らを重要ポストに登用、共産党内で新しい派閥を形成しつつある。

上海閥、共産主義青年団(共青団)派と太子党という三大派閥の拮抗(きっこう)といわれてきた党内の勢力地図が、様変わりしようとしている。(後略)【1月6日 産経】
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小平の時代に終止符 しかし、新たな時代の方向性はまだ不透明
こうした党・軍・経済界・更には文化人までを網羅した、毛沢東時代の文化大革命すら彷彿とさせる面もある粛清運動は、新たな時代を作り出そうとしているようにも見えますが、今後どういう社会を目指しているのかは判然としないところもあります。

****小平の時代に終止符を打った習近平中国の新時代が幕開け、しかし先行きは不透明*****
・・・・共産党中央委員会政治局前常務委員の周永康氏が腐敗、姦通、機密漏えいなどの罪に問われ逮捕されてから、ネット上では習近平国家主席を支持する書き込みが増えている。

だが習近平氏の反腐敗キャンペーンには大きな落とし穴がある。それは、腐敗して罪を犯した幹部を摘発しているが、その幹部がなぜ腐敗したかという総括がない点だ。共産党幹部が今後腐敗しなくなるような制度作りはなされていないのである。

習近平政権がこの2年にわたって繰り広げてきた反腐敗キャンペーンは、日本の年末の大掃除のような“恒例行事”であり、効果は一時的と見る向きがある。

また、反腐敗キャンペーンは権力闘争の一環に過ぎず、習近平氏が政敵を倒すために展開しているだけだという見方もある。これらの見方はいずれも一理ある。

小平路線を終わらせる習近平政権
ここで改めて習近平政権誕生の意味を検証してみよう。筆者は、1つの時代の終焉を象徴するものと捉えている。
すなわち、小平の時代が習近平政権の誕生で終わったのである。

小平路線は35年にわたって奇跡的な経済高成長を成し遂げたが、行き詰まっているのも明白である。
経済こそ成長したが、環境汚染が深刻化し、所得格差も極端に拡大してしまった。
政治改革がまったく着手されなかったため、共産党幹部の腐敗も空前絶後と言われるほど深刻化している。

習近平国家主席にとって、小平路線を継承する選択肢はもはやない。習近平政権の誕生は中国では新たな時代が始まったことを意味するものと言えるかもしれない。
つまり、成長一辺倒よりも公平、公正、平等を追求する時代になるということだ。(中略)

35年前、小平も改革しなくて済むならば改革を断行しなかっただろう。ただ、当時、毛沢東時代末期、中国経済は破綻寸前にまで陥っていた。実権を握った小平は改革を進めなければ、中国が崩壊する恐れがあった。

この文脈で言えば、習近平国家主席にとっても改革を先送りする選択肢はもはやない。問題はいかに改革を進めるかである。ここで問われているのは習近平氏の描く国家像である。

民族主義、毛沢東主義、資本主義を束ねられるか
専制政治の特徴は、民主主義の合議制で物事が決まるのではなく、政治指導者の権威がものを言うことである。胡錦濤政権の10年間、胡主席の権威は予想以上に弱体化してしまった。その結果、ほとんどの改革が先送りされた。

その負の遺産を引き継いだ習近平国家主席は同じ轍を踏まないように、毛沢東主義に回帰し、反腐敗キャンペーンを展開するなかで自らの権威を急速に強化しようとしている。毛沢東主義は強権政治が特徴である。

習近平氏は毛沢東時代の経済運営の失敗を実際に体験したので、統制経済の実施はあり得ない。2年前にも習近平氏は市場メカニズムの機能を強化するための改革を推進すると強調した。経済的には資本主義のやり方を受け入れ、それを一段と強化する考えのようだ。

さらに、中国社会において充満している民衆の不満と怒りをガス抜きしなければ、社会はますます不安定化する。では、どのようにして中国社会の不満をガス抜きしていくのだろうか。

即効性のあるやり方はナショナリズムを煽る民族主義である。このやり方は綱渡りのような危険な賭けだが、それ以外の良い処置法は見つかっていない。

これまでの2年間を振り返ると、習近平国家主席は就任当初から「中国の夢」を国民に唱え、中華民族の復興を提唱してきた。これはまさに民族主義の鼓吹(こすい)である。

そして、2014年、習近平氏の一存で国内の有名な左派芸能人たちが集められ「文芸座談会」が開かれた。その座談会で習近平氏は、「かつての毛沢東を見習って、いかなる文芸活動も社会主義に貢献しなければならない」という談話を発表した。

その座談会に参加した画家の1人は即興で漢詩を作成した。その漢詩のなかで習近平氏を皇帝に例えた。これこそ毛沢東主義の復活である。

一方で経済運営を見ると、上海の自由貿易実験区で行われた改革のように規制緩和を進め、民営企業の市場参入のハードルを引き下げると言われている。

これによって、胡錦濤政権のときに進んだ「国進民退」(国有企業が前進し、民営企業が後退する)に歯止めがかけられると期待されている。

しかし、これらの民族主義、毛沢東主義、資本主義という、まったく異なる方向へ向かっているベクトルを、習近平国家主席は同じ方向へ向かわせることができるのだろうか。

習近平政権の誕生で中国社会の流れは確かに小平の時代に終止符を打った。しかし新たな時代の方向性はまだ不透明なままである。【1月19日 柯 隆氏 JP PRESS】
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“習近平中国の新時代”は、別の言葉で言えば、習氏自身が語る「新常態(ニューノーマル)」でもあるでしょう。

経済的には成長速度を抑えながら、これまでの高成長のもたらした経済格差・環境汚染などのひずみを是正。
一方で、腐敗や格差の温床となる規制を緩めて、効率的な自由貿易・民間企業参入を促進。
社会的には綱紀粛正を進める。
対外的には、「中国の夢」の実現を目指す。

・・・といったところでしょうが、まとまり・整合性をもった方向性が実現できるかは、これからの話です。

いずれにしても、習近平国家主席が目指す「新常態(ニューノーマル)」には、欧米的な“民主化”の要素はなさそうです。

新公民運動への弾圧はこれまでも取り上げてきましたが、天安門事件で学生らに理解を示したことで失脚した趙紫陽元総書記の再評価がなされないことにも、民主化の方向には向かっていないことが窺えます。

****趙紫陽元総書記の再評価なし=死去10年「沈黙が態度」―中国紙****
中国共産党機関紙・人民日報系の環球時報は17日、1989年の天安門事件で失脚した趙紫陽元共産党総書記の死去から17日で10年を迎えたことを受けた社説を掲載した。

「中国政府は一貫して趙紫陽を語り論じることを避けており、この種の沈黙は通常、一種の態度と認識される」と強調、改革派・自由派の知識人らが求める趙氏への再評価はないとの見方を示した。

社説は「(趙氏死去時の)2005年の政府の評価はおおかた、今日の態度である」と主張。

国営新華社通信は05年1月29日、趙氏の葬儀を報じた際、同氏が改革・開放政策の推進などで「党・人民事業のため有益な貢献を行った」と功績を評価した。一方で「89年の政治風波(天安門事件)で重大な誤りを犯した」と批判している。

社説はこの評価が今も変わっておらず「社会はますます同意している」と強調した。

一方、今年が趙氏と同じく開明派指導者で同氏より先に失脚した胡耀邦元総書記の生誕100周年であることも挙げ「政府筋は盛大な記念活動を開催すると既に公表した」と指摘。党・政府が、胡氏と趙氏を区別していることを示唆した。【1月17日 時事】 
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新時代に向けて一番重要なことは・・・・
ところで、下記記事は、毎日のように報じられる“中国ネタ”のひとつです。

****韓国でゴミを「投函」する中国人観光客・・・「郵便ポスト」を開ければ露店商が分かる!?****
中国メディアの今日早報は14日、韓国メディアの朝鮮日報がこのほど韓国を訪れる中国人観光客が郵便ポストにゴミを入れるため困っていると論じる記事を掲載したことを伝えた。

記事は、中国人が海外を訪れるにあたって、中国との違いで困ることとして「公衆トイレが少ないこと」、「ゴミ箱が少ないこと」があるとし、郵便ポストにゴミを入れる中国人観光客が韓国で増えていると紹介した。

さらに、ソウル市内のロッテ百貨店前では、中国人観光客が郵便ポスト内に捨てたゴミの量が1週間で10リットル分に達するとしたほか、東大門平和市場の入り口付近の郵便ポストでは週に2-3リットル分に達すると報じた。

続けて朝鮮日報の報道を引用し、「(ソウル市内の繁華街である)ミョンドンの郵便局職員が郵便ポストを開けると、タバコの吸殻やみかんの皮、竹串のほか、中国人が好んで食べるカボチャの種の殻などが出てくる」と伝え、同職員の話として「郵便ポストを開ければミョンドンでどのような露店商がいるか分かる」と報じた。(後略)【1月19日 Searchina】
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ゴミ箱が少ないからと言って、ゴミを郵便ポストに投げ込むような国民である限りは、習近平国家主席が何を目指そうともおのずと限界があります。
国内における公正・公平も達成できませんし、対外的な信頼を得ることもないでしょう。
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