孤帆の遠影碧空に尽き

年に3回ほどアジアの国を中心に旅行、それが時間の流れに刻む印となっています。そんな私の思うこといろいろ。

エボラ出血熱、終息までもう一息  人類と病原体との攻防 根絶できないポリオ・はしか

2015-01-25 22:15:40 | 疾病・保健衛生

(パキスタン 車が入れなければロバの背にのせてでもワクチンを運ぶことはできますが、迷信やイスラム過激派の妨害といった壁を超えることは難しいものがあります。 “flickr”より By UNICEF Pakistan https://www.flickr.com/photos/unicefpakistan/7155655777/in/photolist-bUjBat-9bVdPG-dgTXtE-psArvF-dgTXVf-cbFPpL-ajQcsr-dgTXgp-dgTXbg-gRvprk-bUjC7F-dgTXMS-dgTXQo-9pmbft-cbFP5d-dgTXva-dgTXi4-dgTXEU-9p9eyS-nwzHNH-8iTRCd-9w36Ag-dF9hCq-auux9Z-dgTXo2-cbFNW1-dgTXm6-cbFP8N-oBEkud-9wDo2k-oNWq7E-dz5uQb-9BB6wK-auuxQT-auxc57-9e3haw-dejLVM-9uXTat-qrw5JE-beGooB-kG3Jqi-ci6dDW-bCtYqH-5DJWor-5DPdjd-5DPd9G-5DJWgK-dfMjsc-edtfrv-avbv4n)

リベリアにおけるエボラ出血熱の患者は現時点で5人
昨年から西アフリカで猛威をふるっているエボラ出血熱は、ようやく沈静化の方向がはっきりしてきました。

****エボラ出血熱の感染者大幅減も警戒を****
西アフリカのリベリアなど3か国で猛威を振るってきたエボラ出血熱について、WHO=世界保健機関は、ここ3週間で感染者数が大幅に減ってきているものの、依然として警戒が必要だと強調しました。

WHOのエイルワード事務局長補は23日、ジュネーブで記者会見を行い、エボラ出血熱の最新の状況について説明を行いました。

この中でエイルワード事務局長補は、去年からエボラ出血熱が猛威を振るってきた西アフリカのギニア、リベリア、シエラレオネの3か国で、いずれも過去3週間に感染者数が大幅に減少し、ここ3、4か月の間では最低水準になっていることを明らかにしました。

その一方で、WHOが対策を続けていくための資金が不足しているうえ、5月以降、雨期の季節に入り、医療スタッフの移動が困難になって迅速に対応できなくなるおそれがあることなどから、引き続き警戒を緩めるべきでないと強調しました。

また、現地では学校の閉鎖や移動制限など、感染予防を最優先に講じていた措置を解除する動きなども出ており、今後は社会や経済基盤の復興に向けた国際的な支援の強化も求められそうです。

WHOの最新の発表では、西アフリカの3か国でエボラ出血熱に感染したか、または感染の疑いがある人は2万1797人で、このうち死者は8675人となっています。【1月24日 NHK】
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特に、3600名を超える最多の死亡者を出してきたリベリアでの状況は著しく改善しているようです。

****リベリアのエボラ出血熱患者5人に、国連発表****
国連エボラ緊急対応ミッション(UNMEER)は25日、西アフリカのリベリアにおけるエボラ出血熱の患者は現時点で5人しかいないと発表した。同国でのエボラ出血の流行が終局を迎えつつあることが改めて示された。

世界保健機関(WHO)がまとめた統計によると、リベリアで感染が確認された患者は現在5人だが、先週は一時1人にまで減っていたという。(後略)【1月25日 AFP】
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リベリアでは学校再開も2月から予定されています。

****エボラ熱で休校、2月に全学校再開へ…リベリア****
AFP通信によると、西アフリカ・リベリアの教育省が5日、エボラ出血熱の感染対策のため休校としていた全学校を、2月に再開する方針を示した。

同省は声明で、各校が消毒液や体温計を用意することや、同省が推奨する感染防止策を実施するよう求めた。

リベリアの新学期は9月に始まるが、政府は昨年8月、感染拡大を防ぐため、全ての学校を休校とする措置を取っていた。(後略)【1月6日 読売】
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1月18日までの7日間に、ギニアで20人、リベリアで8人、シエラレオネで117人の新たな患者発生が報告されたとのことで、シエラレオネがもう少し・・・という状況です。

エボラ出血熱を封じ込めつつある原因は、安全な埋蔵、患者の隔離、接触者の健康監視という対策が軌道に乗ってきたことにあります。

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●流行3か国は患者を隔離し治療するために、確定患者と可能性の高い患者に2床以上のベッドを充てられるだけの十分な収容能力を備えました。それぞれの国において、ベッドの計画数は患者発生数の減少にともない、減らしていく状況です。

●同様に、各国はエボラウイルス病で死亡した全ての患者を埋葬する対応能力を整えました。

●流行3か国では、多くの地域で患者に対する接触者数が予想されるよりも少人数にとどまるものの、登録された接触者の89%から99%が健康監視下におかれていると報告されています。
出典 WHO. Situation reports: Ebola response roadmap-Situation report. 21 January 2015.【厚生労働省検疫所サイトFORTH】
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なお、去年10月から11月にかけて6人の死者が出た西アフリカのマリでは、それ以降、新たな感染者は報告されておらず、マリ政府は1月18日、感染の終息宣言を行い、対応に当たってきた医療スタッフや国際的な支援に感謝の意を表明しています。

マラリアは半減 それでも年間58万人が死亡
一方、13年の感染者は世界全体の概算で約1億9800万人で、約58万4000人が死亡(死者の9割がアフリカに集中)というエボラ出血熱とは桁違いの犠牲者を出しているマラリア(病原体はマラリア原虫)ですが、こちらも改善の方向にあるようです。

****マラリアによる死者、13年間でほぼ半減 WHO****
世界保健機関(WHO)は(昨年12月)8日、マラリアに関する最新報告書を発表し、マラリアによる死者数が2000年からほぼ半減したことを明らかにした。

その一方で、エボラ出血熱が流行する西アフリカでは、死者数が増加に転じる恐れがあると指摘した。

WHOによると2000~13年、全世界でマラリアによる死亡率は47%、5歳未満では53%低下した。

マラリアによる死者の90%はサハラ以南のアフリカでの犠牲者だが、ここでも死亡率は54%低下している。

5歳未満に限れば死亡率は58%低下し、およそ390万人の子どもたちがマラリアによる死を回避できたことになる。

同時にWHOは、蚊帳が入手できなかったり、予防医療を受けるられなかったりする人たちもまだ多いと指摘するとともに、一般的な殺虫剤に抵抗力を持つ蚊の存在に懸念を示した。【12月9日 AFP】
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半減したことを喜ぶべきか、未だ“感染者は世界全体の概算で約1億9800万人で、約58万4000人が死亡”という状況にあることを憂うべきかは迷うところですが。

WHOのチャン事務局長は「われわれはマラリアとの闘いに勝利できる」と強調しているそうです。

パキスタンから拡散するポリオ 「予防接種はイスラム教徒に対する謀略だ」】
また、本来であれば封じ込めるはずのウイルスが、人間の浅はかさのために猛威をふるうケースもあります。
パキスタンでのポリオ(小児まひ)です。

ポリオはウイルスが主に乳幼児の中枢神経に感染し、足や腕にまひが残ったり、命を奪ったりする疾患です。
かつて世界中で猛威をふるいましたが、国際的な撲滅キャンペーンによって世界的に激減し、日本では1980年を最後に自然感染はなくなっています。

****ポリオ猛威、陰に銃火 パキスタン、発症者3倍****
主に乳幼児に感染するポリオ(小児まひ)がパキスタンで猛威をふるっている。発症者数は今年、260人を超え、昨年の3倍近い。

武装勢力が予防接種を妨害して感染源となっていた地域で軍が掃討作戦を始め、避難民とともにウイルスが全土に広がっている。

 ■武装勢力、予防接種を妨害
アフガニスタン国境に近い北西部の中心都市ペシャワル。南郊にあるバダベル地区の農家、ザイヌラさん(26)の生後10カ月の息子ファヒムラちゃんは今年9月末、突然高熱を出し、数日後にポリオと診断された。

「熱は下がったが、両足が動かなくなった。何度か予防接種を受けていたのに、接種を拒否している家庭から感染した」。ザイヌラさんが説明した。

地元州政府の資料によると、今年に入ってペシャワルでポリオ発症が確認された22例のうち8例はこの地区に集中。

抑え込むには、医療チームが各家庭を訪問して、感染の可能性がある5歳以下の子供全員に予防接種を徹底することが欠かせない。

だが、住民によると、この地区では3割近い家庭が協力していない。

住民を予防接種から遠ざけるきっかけは昨年6月、接種チームの女性2人が射殺されたテロだった。犠牲者の1人、ソンバル・カーンさん(当時18)の父親グル・カーンさん(58)は「娘は学費の足しにと、接種のアルバイトをしていた。帰りのバスを待っていて首を撃たれた」と話す。

犯行声明を出したのは、反政府勢力パキスタン・タリバーン運動(TTP)。

「接種を受けた子供が将来、不妊になる」という迷信に加え、米政府が国際テロ組織アルカイダのオサマ・ビンラディン容疑者の潜伏先を、偽の予防接種チームを使って確認しようとして以来、接種チームをスパイと疑うようになった。

射殺事件後、警察は疑わしい男たちを手当たり次第拘束したが、事件はうやむやなままだ。予防接種チームには重武装の警護がつくようになったが、TTPは住民に「予防接種はイスラム教徒に対する謀略だ」と触れて回り、拒否するよう脅迫を強めているという。

 ■住民避難で全土に拡散
世界保健機関(WHO)の在パキスタン・ポリオ対策緊急調整官エリアス・ドュリー氏によると、感染は昨年まで、TTPの拠点だった部族地域の北ワジリスタン地区周辺に集中していた。

TTPはビンラディン容疑者殺害後の2012年、接種の禁止を宣言。支配下に住む約40万人の子どもへの接種は2年近く途絶え、ウイルスの温床になっていた。

しかし、今年6月、軍がTTPの掃討作戦を始めると、100万人近い住民が地区外に避難。「蛇口を開いたようにウイルスが全土に拡散した」(ドュリー氏)。

政府は避難民が通る検問所で、一斉接種をした。だが、「衛生状態が悪く、接種したワクチンが体内の他のウイルスと競合して免疫がつきにくい。先進国で3~4回ですむ接種が、10回近く必要」(ドゥリー氏)とされ、対応が追いつかない。

ペシャワルのバダベル地区にある難民キャンプにも、北ワジリスタン地区からの避難民の一部が身を寄せているようだ。最大都市カラチなど大都市部でも、部族地域出身者が多い地区を中心に多数の感染例が確認されている。

脅威は隣接するアフガンやインド、中国にも及ぶ。武装勢力が渡ったとみられるシリアやイラクでもパキスタン起源のウイルスによる発症が確認されている。

WHOは今年5月、パキスタン政府に対し、出国者に予防接種証明書の携行を義務づけるよう要請。だが、空港などでは徹底されなかった。国際監視委員会は10月、各国に接種証明を持たないパキスタンからの渡航者の入国拒否を求める厳しい勧告を出した。

無策ぶりを批判されたシャリフ首相は11月5日、関係機関を集め、「対ポリオ戦で負けるわけにはいかない」と述べ、対策を対テロ戦になぞらえて号令をかけた。(ペシャワル=武石英史郎)

 ■ワクチン拒否の家も 迷信・脅迫恐れ?「子いない」
首都近郊ラワルピンディで接種チームに同行した。

地方教育局と保健局の職員2人1組で、一軒一軒くまなく回る。5歳以下の子どもがいれば、クーラーボックスから生ワクチンを取り出し、口に1滴垂らす。「投与済み」を示す青インクを子どもの指につける。

協力してくれる家庭ばかりではない。ある家では、戸口で遊んでいる子を見つけ、呼び鈴を鳴らして待つこと10分。出てきた大人の男性は「この家に小さな子はいない」と言い張った。

チームの統括役のタイヤブ・カマルさん(25)は「断られても3、4回は訪ねるが、無理強いできない。迷信や脅迫のせいで10~15%は接種の網から漏れているのではないか」と話す。

行政の機能不全や腐敗も問題を難しくしている。接種チームの男性は「1日の手当はたったの200ルピー(約200円)。交通費程度なのに、何カ月も未払いのままだ」と言った。【12月2日 朝日】
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根絶できない「はしか」 1国対応の限界
身近なイメージがある「はしか(麻疹)」も、近年は封じ込めが進んではいますが、依然としてウイルスと人類の一進一退の攻防が続いています。

特に、ひとの移動が増加している現代社会にあっては、一国だけの対応では限界があります。

****米ディズニーランド周辺のはしか、米6州とメキシコにも拡大****
米疾病対策センター(CDC)は23日、米カリフォルニア州のテーマパーク「ディズニーランド」を中心に急増しているはしかの感染例が、新たに米国内の6州とメキシコで確認されたことを明らかにした。感染源はディズニーランドの外国人入園者である可能性が高いとしている。

CDCの発表によると、昨年12月下旬からこれまでにはしかに感染したと確認されたのは51人。このうち42人はカリフォルニア州に集中しているが、ユタ州(3人)、ワシントン州(2人)、オレゴン州とコロラド州、ネブラスカ州、アリゾナ州(各1人)でも確認されている。

米国に加えて、メキシコでも子ども1人の感染が報告された。この子どもはワクチン接種歴がなく、昨年12月17~20日にディズニーランドに入園していた。

感染者の年齢は生後10か月から57歳まで幅広いが、はしかワクチンの接種を避ける傾向が北米で出てきたのは近年のことであるにもかかわらず、接種歴を有していた人々は一握りにとどまった。

はしかやおたふくかぜ、風疹(ふうしん)を予防する新三種混合(MMR)ワクチンをめぐっては、自閉症の原因になるとの懸念から接種に反対する意見が見られるものの、多くの研究で自閉症との関連は否定されている。

CDCは感染源について、まだ特定していないと述べた上で、昨年12月の感染期間中にディズニーランドを構成する2つのパークの両方またはいずれかに入園した1人ないし複数の外国人の公算が大きいとの認識を示した。

はしかは感染性が高く、身体接触がなくても空気感染で広がる可能性がある。感染するとまず発熱があり、その後せきや鼻水、結膜炎、発疹といった症状が現れる。失明や難聴、肺炎といった合併症が出たり、死に至ったりする場合もある。感染した子どもの死亡率について、CDCは1000人に1~2人と説明している。

米国では2000年以降、はしかは公式に根絶されたとされてきた。その一方で、欧州やアフリカ、アジアなど他の地域では、現在も感染が広がっている。

ただ現実には、2014年の米国のはしか患者は644人と2013年の173人から急増した。

米紙ロサンゼルス・タイムズが昨年実施した調査では、カリフォルニア州オレンジ郡のある学区では、幼稚園児の9.5%が個人的な信条を理由にワクチン接種を免除されたことが明らかになっている。【1月25日 AFP】
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ウイルスと人類の攻防は、もともと変異が早いウイルスに分がありますが、更に迷信、脅迫、あるいは過度の副作用への警戒などでワクチン投与もままならないとあっては、人類に勝ち目はありません。
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