孤帆の遠影碧空に尽き

年に3回ほどアジアの国を中心に旅行、それが時間の流れに刻む印となっています。そんな私の思うこといろいろ。

台湾豪雨被害  馬英九政権への批判と中台「同胞意識」

2009-08-14 21:11:04 | 国際情勢

(台湾・台東県の太麻里で発生した洪水で土砂に埋まった住宅 “flickr”より By Jon@th@nC
http://www.flickr.com/photos/jcphotos/3814539451/in/set-72157621988100890/

【最大で計約3千ミリ】
日本も台風9号の影響による大雨、更に静岡沖地震と災害が続いていますが、台湾を直撃した台風8号の被害は甚大な規模になっているようです。
“最大で計約3千ミリという異常な降雨があった” 【8月13日 朝日】とも言われていますが、本当でしょうか。
一桁少ない300ミリでも大きな被害が出ることを考えると、信じられないような大雨です。
700人の村ごと土石流に飲み込まれた、いや救出された・・・とか、情報が錯綜しており、死者などの人数は定かではありませんが、500人を超え、今後更に増加し、59年に台風で667人が犠牲となった記録を上回ることになるのではとも報じられています。

****台湾、台風の犠牲者500人超へ 各地で生き埋め*****
台湾の馬英九(マー・インチウ)総統は14日、台風8号の被害をめぐる対策会議で、死者が500人を超えるとの見通しを明らかにした。土石流などで住民らが生き埋めになったとみられる村は各地にあり、最終的な犠牲者の数はさらに増える恐れがある。
14日夕の時点で確認された死者は118人だが、土石流で大勢が生き埋めになったとされる南部・高雄県甲仙郷小林村の死者について馬総統は「約380人」との見方を示した。さらに行方不明者が57人いるほか、同県や屏東県など各地に数十人単位で生き埋めになったとされる村が複数あるという。

台湾では半世紀前の59年に台風で667人が死亡しており、今回と比較する議論が出ているが、馬総統は「被災の深刻度ではすでに50年前を上回った。我々は救援や再建の任務を貫徹し、被災民の生活の回復を支援する」との決意を示した。【8月14日 朝日】
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【「見ちゃいられない」】
この災害の影響として、対応が遅れたとされる馬英九政権への批判が出ています。
特に、三軍を統括する立場にある総統に対して、軍の初動が遅れたことへの批判が強いようです。
世論だけでなく、李登輝元総統も12日、知人を通じて馬政権の対応を「見ちゃいられない」と批判。
与党の国民党内ではハリケーン「カトリーナ」への対応のまずさで政権支持率が下がったアメリカ・ブッシュ政権の例を念頭に懸念が広がっているとも。【8月13日 朝日より】

****馬政権批判“暴風” 台風被害拡大 救援活動後手に*****
・・・・被害が拡大するにつれ、馬英九政権への批判は一段と強まっている。中央気象局の予報の誤りに加え、政府による救援活動が中央、地方、軍隊の連携を欠き、大きな混乱を招いたからだ。
99年9月の台湾中部の大地震(死者2415人)では、李登輝総統(当時)が非常事態宣言に相当する「緊急命令」を発令し、軍隊を動員してトップダウンで救援、復興を進めた。
馬英九総統は今回、「地方(政府)が責任を負って救済を進め、中央がこれを支援する」との方針を表明したが、緊急命令は発令しなかった。
ただ、広域にわたる未曾有の大災害を前に、地方ベースの救援では限界がある。三軍を統括する総統の指示が明確でないため、軍隊の初動も遅れた。このことで、与党、中国国民党内からも批判が強まっている。救援活動が続く一方で、馬英九政権は大きな試練に直面している。【8月14日 産経】
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【“中華民族のひとり”】
もうひとつ、今後出てくるのでは・・・と想像されるのは、中国から義援金の話。
昨年5月の四川大地震ときは、台湾政府は20億台湾元(約68億円)の支援計画を発表。
当時は、3月の選挙で馬英九氏が勝利したものの、まだ総統就任前で、独立志向の強い民進党・陳水扁政権でした。
その陳水扁政権が人道支援に踏み切ったのは、四川大地震によって台湾でも「同胞意識」が高まっていた状況があります。
馬英九氏は約70万円の義援金を出した際、「一つは人道面から、もう一つは中華民族のひとりであるからだ」と述べています。【08年5月17日 朝日】
また、中国に拠点を持つ台湾大手企業や、中国で活躍する台湾芸能人が続々と巨額義援金の拠出を表明し、08年5月15日付「中国時報」紙によると、企業の義援金は計4億元(1元は約15円=約60億円)に達したと報じられています。
“大陸で活動する台湾企業にすれば、払わざるを得ない雰囲気でもあるが、中国のネット上では「同胞」からの支援に対して感謝の表明が相次いでいる。”【同上】

今回の台湾の豪雨被害も史上最悪規模になりそうですから、四川大地震の返礼も兼ねて、中国からの義援金の動きが起きるのではないでしょうか。それ自体は結構なことです。
最近しきりに中台接近を演出する中国政府も、同胞意識の高まりや義援金については、これを後押し利用しようとするのでは。
ただ、台湾側の中台接近を進める国民党・馬英九政権への先述のような世論・野党からの批判の動向、台湾人の中国への警戒感・中国への微妙な感情なども、中国側の動きと併せて注目されます。

【「強盗に遭った気分だ」】
なお、四川大地震の義援金使途について、中国国内で“義援金が政府に取り込まれてしまった”との批判が起きているそうです。

****8割は政府収入!? 四川大地震義援金 1兆円使途不明に反発*****
約8万7千人の死者・行方不明者を出した昨年5月の四川大地震で、中国史上最高額といわれる約767億元(約1兆600億円、中国民政省統計)の義援金が国内外から集まった。しかし、この大金が誰によってどう使われたのか、当局による説明はほとんどない。大学の研究チームが最近、「義援金の約8割が政府の臨時収入となった」との調査結果を発表したことが波紋を広げており、「強盗に遭った気分だ」などと反発する市民も少なくない。

「南京市のホームレスが手持ちの小銭をすべて街頭の募金箱に入れた」「河南省の老教師が長年ためた金を赤十字の口座に振り込んだ」。地震直後、こうした美談が連日メディアに報じられ、多くの人を感動させた。中国各地では募金活動が盛んとなり、義援金を送るために長蛇の列ができる銀行もあった。しかし、募金を受け付けた公的、民間機関はその後、使い道についての説明をほとんどしておらず、寄付をした人々の多くは自分のお金が実際に被災者に使われたのかに疑問を抱いているという。

清華大学NGO研究所の研究チームは半年以上をかけて、義援金の行方を追跡し、「総額の8割以上が中央や各地政府の財政に組み込まれた」との調査結論を発表した。各地政府が直接集めた寄付金がそのまま政府の“臨時収入”となったほか、中国赤十字、中国慈善会などの公益民間団体が集めた金も、大部分が政府に流れたという。「震災復興支援金」との名目で各地の予算に組み込まれているケースもあるが、実際の使途は不透明だという。(後略)【8月14日 産経】
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この調査結果について、民政省の高官は「民間団体の社会的信用が低いため、義援金を政府が使っている」と“疑惑”をほぼ認めているそうで、政府の言い分にネットには、「政府は民間団体よりもっと信用が低い、事前に知っていたら寄付しなかった」「被災者に出した金が汚職官僚の懐に流れたと思うと悲しい」といった書き込みが殺到しているとか。

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