(“flickr”より By Breff
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【有罪 自宅軟禁に減刑】
ミャンマーの民主化運動の象徴、アウン・サン・スー・チーさんが、自宅に侵入した米国人男性(53)の事件で国家防御法違反罪に問われた裁判は、国際社会も注目するなか判決が延び延びになっていましたが、各紙が報じているようにようやく一定の結論が出されました。
*****ミャンマー:スーチーさんに有罪判決 1年6ヶ月の自宅軟禁******
ミャンマーの民主化運動指導者、アウンサンスーチーさん(64)が国家防御法違反罪に問われた裁判で、同国の特別法廷は11日、スーチーさんに禁固3年の有罪判決を言い渡した。しかし、軍事政権は直後に判決を1年6ヶ月の自宅軟禁に減刑した。
AP通信などによると、裁判官が有罪判決を言い渡した直後、法廷で軍事政権内務相が減刑を命じる書類を読み上げた。書類は軍事政権トップのタンシュエ国家平和発展評議会議長が署名したものという。
ミャンマーでは来年、軍事政権主導で進めてきた民主化プロセスの最終段階となる20年ぶりの総選挙が行われる。軍事政権はスーチーさんの総選挙への参加を阻止するため、事実上の自宅軟禁の継続を選択する一方で、判決を減刑したことで国際社会の裁判への非難をかわす狙いがあるとみられる。【8月11日 毎日】
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軟禁期限切れの5月27日を目前にしておきた今回事件は、軍事政権によるスー・チーさん拘束のための“いいがかり”としか言いようのない事件ではありますが、有罪判決が出ることは間違いないと言われていました。
そして、有罪ならば最長5年の禁固刑が言い渡される可能性も指摘されていました。
軍事政権による“1年6ヶ月の自宅軟禁に減刑”という今回措置は、記事にもあるように、来年予定されている総選挙が終わるまでは軟禁を継続するという軍事政権の意志であり、また、国際社会を一定に意識した判断でもあります。
仮に、この事件がなくても、軍事政権は何らかの理由をつけて彼女の軟禁を継続するか、解除後すぐに“違法な活動”などを理由に再度軟禁措置をとったものと思われます。
総選挙を前に、彼女に政治的自由を与えたとは考えられません。
そのように考えると、許しがたい暴挙ではありますが、禁固刑ではなく“選挙終了までの自宅軟禁”という処分で落ち着いたことに、個人的には安堵の気持ちもあります。
【名ばかりの“民政移管”ではあるが・・・】
来年二十年ぶり行われる総選挙の枠組みは、サイクロン被害を無視して投票が強行された新憲法によって、軍部の意向が保証される形に決められています。
国家元首たる大統領(任期5年)は「政治、行政、経済、軍事」の見識が必要。国会議員の4分の1は国軍司令官が指名する。大統領と議員は外国人の影響や恩恵を受けていてはならない。憲法改正には全議員の75%以上の同意が必要。・・・およそ“民政移管”とは名ばかりで、スー・チーさん排除を意識した内容です。
ただ、スー・チーさんの処遇に抗議し、二十年前の選挙結果の正当性を主張し、名ばかりの民政移管を批判する形で、この政治的枠組みの外でなんらか有効な反政府的活動を行う余地は現実的には難しいように思えます。
“人権機構”にみるように、近隣ASEAN諸国すら軍政批判に及び腰の現状では、国際社会の批判だけでは、ミャンマーの人々の生活は少しも改善しないようにも思えます。
そうした現状を考慮すると、国民民主連盟(NLD)など野党勢力も、先ずは新憲法のもとでの総選挙の土俵に上がる形で、民意を政治に反映していくしかないのでは・・・と考えます。
当然に、新憲法下の議会での活動は軍部及びその周辺の意向で厳しく制約されるものとなるでしょうが、そのことを明らかにすることで、新憲法体制の欺瞞を明らかにし、次のステップの可能性を探る道も開けるのでは・・・。
スー・チーさんの処遇がけしからんと批判しているだけでは、現状は一歩も前進しないのでは。