孤帆の遠影碧空に尽き

年に3回ほどアジアの国を中心に旅行、それが時間の流れに刻む印となっています。そんな私の思うこといろいろ。

ミャンマー・アメリカ  対話を模索する動きも

2009-08-18 22:32:30 | 国際情勢

(外交委員会東アジア太平洋小委員会委員長のウェッブ米上院議員(右から2番目)と奥さん(中央) どうでもいいことですが、奥さんはアジア系の方のようです。“flickr”より By studio08denver
http://www.flickr.com/photos/studio08denver/2800813327/)

【「関係改善へ向けた米国のシグナル」】
ミャンマーに対するアメリカの対応がやや変化しつつあるようです。
アメリカ上院議員のジェームズ・ウェッブ外交委員会東アジア太平洋小委員会委員長がミャンマーを訪問し、15日にはタン・シュエ国家平和発展評議会(SPDC)議長と会談、同日、自宅軟禁下の民主化運動指導者アウン・サン・スー・チーさんとも面会、16日には有罪判決を受けた米国人男性、ジョン・イエタウ被告が国外退去処分として釈放されました。

スー・チーさんとの面会は、7月に国連の潘基文事務総長が訪問した際には認められておらず、軍事政権側の異例の対応でしたが、国際社会の批判をかわし、今後のアメリカとの関係修復を模索する狙いと見られています。
それにしても、国連も軽視されたものだ・・・という感もしますが。

ミャンマーのこうした対応をアメリカ側も一定に評価し、これまでの制裁一辺倒の姿勢を改める機運が出ています。
ただ、ミャンマー民主化グループには、こうした動きを「軍事政権を利するだけ」と警戒する見方もあります。

****米国:ミャンマーとの対話模索 男性釈放処分を評価*****
ミャンマー軍事政権が、同国を訪問したウェッブ米上院議員(民主)の求めに応じて16日、有罪判決を受けた米国人男性、ジョン・イエタウ被告(53)を国外退去処分として釈放したことに、米国側は一定の評価を示している。民主化運動指導者アウンサンスーチーさん解放が実現しない限り、両国関係が一気に改善へ向かうのは困難だが、今後水面下で、両国間で対話を模索する動きが活発化する可能性がある。
イエタウ氏は16日、ウェッブ議員とともにバンコクへ出国した。

ウェッブ議員は米要人として初めて軍事政権トップのタンシュエ議長と会談。7月に訪問した潘基文(バン・ギムン)国連事務総長には許可されなかった、スーチーさんとの面会も認められた。
上院外交委員会東アジア太平洋小委員長を務め、オバマ政権にも近い同議員の訪問を、軍事政権は「関係改善へ向けた米国のシグナル」と受け止め、最大級の歓迎姿勢を示した可能性が強い。

オバマ政権は、軍事政権に厳しい制裁を科してきたブッシュ前政権の対ミャンマー政策の見直しに着手している。背景には、欧米各国の圧力一辺倒の姿勢が軍事政権の孤立化をもたらし、中国の影響力の増大や、北朝鮮との軍事協力強化など負の側面を生んでいることがある。
一方で軍事政権の側にも、米国との関係改善をきっかけに、国際社会の強い非難を和らげたいとの思惑があるとみられる。

両国関係改善の最大の障壁が、スーチーさんの解放問題であることに変わりはない。米国務省広報担当のラッシュ氏は16日、毎日新聞に「(イエタウ氏釈放を)歓迎する」と語る一方で、米国とミャンマーには「人権問題で大きなギャップがある」とし、早期の関係改善は困難との見通しを示した。

ミャンマー民主化グループの間には、今回の議員の訪問について「軍事政権を利するだけ」との反発が根強い。タイを拠点とする民主化活動家の一人は、「(8月上旬の)クリントン米元大統領の北朝鮮訪問が、核開発問題の成果を得られなかったのと同様、ウェッブ議員の訪問も、民主化という本質的な部分に触れず、表面を取り繕っただけだ」と批判した。【8月17日 毎日】
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記事にもあるように、両国の関係修復にはスー・チーさんの解放問題という障壁がありますが、ウェッブ米上院議員(民主党)は17日、CNNに対し、アメリカによる軍事政権への経済制裁について「スー・チーさんは一部解除の考え方に反対ではないとの印象を受けた」と語っており【8月18日 朝日】、スー・チーさんの意向にも反していないという形で、制裁の部分的な解除についての検討を進める方向とも報じられています。

部分的な制裁解除はともかく、全面的な関係修復にはどうしてもスー・チーさんの解放が必要になります。
ミャンマーが総選挙前にスー・チーさんを解放することは考えにくいところですが、逆に言えば、来年総選挙後であれば、オバマ大統領がミャンマーを訪れ、スー・チーさんが解放される、そして両国関係の全面的な修復・・・といったドラスティックな展開もありえるのかも。
仮にそうであっても、それは軍事政権が目指す新憲法下の“民政移管”を追認するものであり、ミャンマーの真の民主化にはならないという考えもあるでしょうが。

クリントン米元大統領の北朝鮮訪問といい、ウェッブ上院議員のミャンマー訪問といい、アメリカの外交姿勢は変化の兆しがうかがえます。
もちろん、アメリカ自身の利害を考慮してのことでしょうが。

【対話と制裁】
おりしも、南北朝鮮の和解を目指した「太陽政策」を推し進めた金大中氏が死去しました。
「太陽と北風」の寓話、第2次大戦前のチェンバレンのナチス・ドイツ融和政策・・・対話と制裁のどちらが効果的かは判断が難しい問題です。
どちらかの路線で成果が出なければ、もうひとつに切り替えて事態の転換をはかるというのは妥当な判断かも。

【「スーチーさん裁判は内政問題」】
一方、周辺国ASEANのミャンマーへの対応は、あいかわらずまとまりがないようです。

****ASEAN:スーチーさん恩赦要求、足並みに乱れ*****
ミャンマー軍事政権による民主化運動指導者、アウンサンスーチーさん(64)への有罪判決をめぐり、東南アジア諸国連合(ASEAN)内部の足並みの乱れが表面化している。議長国タイは加盟各国に、スーチーさん恩赦を軍事政権に要求することで合意するよう求めたが、ベトナムやラオスは不干渉の姿勢を強調。ASEANが一致して恩赦要求を打ち出すのは困難な情勢だ。

加盟国のベトナムは13日、「スーチーさん裁判は内政問題」との立場を表明。さらにラオス外務省報道官は14日「裁判はミャンマーの司法制度に基づいて行われた」と述べ、軍事政権の立場を全面的に支持したと受け取られかねない姿勢を示した。
域内の民主化進展や人権の尊重をうたうASEANだが、ミャンマー問題に関してはフィリピンやシンガポール、インドネシアなどが厳しい姿勢なのに対し、共産党による一党支配が続くベトナムや国内に人権問題を抱えるラオスなど、90年代以降の新規加盟国は常に軍事政権寄りだ。【8月17日 毎日】
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