孤帆の遠影碧空に尽き

年に3回ほどアジアの国を中心に旅行、それが時間の流れに刻む印となっています。そんな私の思うこといろいろ。

トルコ  天然ガス輸送パイプラインで欧米・ロシアを“天秤にかける”対応

2009-08-08 13:28:24 | 国際情勢

(イスタンブールの観光スポット「グラン・バザール」 交渉次第で値段が決まる買物では、何倍もの値段を吹っかけられたり、相場がわからなかったりで、疲れることもしばしばあります。
“flickr”より By ClixYou
http://www.flickr.com/photos/clixyou/324765553/)

欧米が進める欧州向け天然ガス輸送パイプライン「ナブッコ」計画については、7月16日ブログ「天然ガスパイプライン「ナブッコ計画」通貨国5カ国調印 供給国は未だ・・・。」
http://blog.goo.ne.jp/azianokaze/d/20090716
で取り上げたところですが、今日は「ナブッコ」計画と競合するロシアが主導する「サウス・ストリーム」計画の話題。

****ロシア:天然ガス輸送計画でトルコと合意*****
ロシアのプーチン首相は6日、トルコの首都アンカラを訪問してエルドアン首相と会談し、ロシアが推進する欧州向けの天然ガス輸送パイプライン「サウス・ストリーム」計画の建設協力で合意、署名を交わした。欧州向け天然ガス供給の独占体制を維持したいロシアと、地域の資源集積地として影響力を高めたいトルコの思惑が合致した。

「サウス」計画は、ロシアから黒海を通ってブルガリアやオーストリア、ギリシャなどへ向かうライン。ロシアは来年までに建設を始め、15年の稼働開始を目指している。
黒海のパイプライン敷設を巡っては、ロシアと確執を抱えるウクライナが、自国水域での敷設を許可しないのではないかとの懸念があり、黒海対岸のトルコの協力取り付けは、ルートを確保する上で重要だった。

一方、トルコは東西を結ぶ「資源回廊」になることを狙っている。アンカラでは7月、別の欧州向け天然ガス輸送パイプライン「ナブッコ」計画を進める多国間協定も結ばれ、トルコはこれにも参加している。
「ナブッコ」は、天然ガス需要のロシア依存を軽減したい欧州連合(EU)が主導する計画で、本来なら「サウス」と競合するが、トルコは二つの計画をてんびんに掛け、単なるパイプラインの「通過国」にとどまらず、エネルギー安全保障上の国際的影響力を高めようとしている。

AP通信によると、プーチン首相は記者会見で、「サウス」計画の意義を「(天然ガス供給の)基盤整備が進むほど欧州向けのエネルギー供給は安定する」と強調。エルドアン首相も「将来的には依然、欧州向け供給は十分とは言えない」と重要性を指摘した。
署名には、「サウス」計画に参加するイタリアのベルルスコーニ首相も同席した。【8月7日 毎日】
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「ナブッコ」計画の方は、肝心の天然ガス供給国確保で問題を抱えていますが、「サウス・ストリーム」計画については、今回トルコが自国水域の通過を認め建設に協力することを明らかにしたことで、ロシアが安定供給の障害とみなすウクライナを迂回するルートが確立される見通しとなり、計画は一段と現実味を帯びてきました。

来年11月までに着工する見通しとされています。
ただ、ロシアは経済情勢の悪化でガス生産が頭打ちになるとの観測もあります。また、両計画でパイプラインが通過するブルガリアなどとの交渉が長引く可能性もあるとも。【8月8日 産経】

なお、今回合意については、トルコに対しロシアは見返りとして、トルコ中部を南北に結ぶ石油パイプラインの建設を支援するほか、トルコに現在よりも安価でガスを供給する意向を示しています。【同上】

欧米の「ナブッコ」計画とロシアの「サウス・ストリーム」計画・・・どちらが先に現実のものとなるのかも関心が持たれるところですが、両計画への各国の対応も興味深いものがあります。

「ナブッコ」計画に関して、ガス供給国のアゼルバイジャンやトルクメニスタンが欧米・ロシアを両天秤にかける対応を示していることは7月16日ブログでも触れましたが、今回の通過国トルコの対応も両天秤そのものです。

アメリカ外交と一体となっており、最初から結論が決まっていることが多い日本外交の感覚からすれば、あるいは信義を重んじる日本的感覚からすると、危なっかしい、あるいは二股をかけるような“両天秤”にも感じられるのですが、本来国際的な対応というのは、国益を考えながら広い選択肢の中からなるべく有利なものを探すという、“両天秤”的なものが通常なのでしょう。

瑣末なことですが、アジアの国々では、買物の際に定価がなく売り手と書い手の“交渉”で値段が決まるスタイルが一般的です。
定価に慣れた日本人にはわずらわしく思われることもありますが、買物でも外交でも、手持ちカードと相手の顔色・足元をみながらの交渉が基本です。

コメント
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