孤帆の遠影碧空に尽き

年に3回ほどアジアの国を中心に旅行、それが時間の流れに刻む印となっています。そんな私の思うこといろいろ。

南アフリカ  経済悪化で噴出す社会混乱 深刻な犯罪多発

2009-08-28 21:43:11 | 世相

(アパルトヘイト時代の黒人居住区(1985年) 長い目で見れば、急速に社会状況は改善しつつありますが、まだ残る問題も少なくないようです。 “flickr”より By United Nations Photo
http://www.flickr.com/photos/un_photo/3312304596/)

【G14】
フランスのサルコジ大統領は26日、フランスが11年に主催する主要国首脳会議(サミット)では、参加国を現在の8カ国(G8)から、中国、インドなどを含めた14カ国(G14)に拡大したい考えを明らかにしました。

****サルコジ仏大統領:「G8をG14に拡大を」外交方針表明*****
大統領は、サミット拡大について、「既に14カ国拡大への道は前進しつつある」と発言。加盟国拡大を求めるブラジルへの支持を公言した上で、10年のカナダ会議でG14の枠組みを作り、11年にG14を正式発足する考えに自信を示した。
仏外務省関係者によると、拡大6カ国は中印以外にブラジル、南アフリカ、メキシコ、エジプトが考えられている。だが、日本など一部G8のメンバーは、加盟国増による発言力低下を懸念。今後、現加盟国との折衝が必要になるとみられる。【8月27日 毎日】
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経済問題についても、温暖化対策についても、新興国の意向と向き合うことなしには国際的な決定が成立しない状況になってきていますので、G8が残存するのか、G14に転換するのかは別にしても、主要な協議の場がG14に移っていくことは時代の流れに見えます。
先のラクイラ・サミットを主催したイタリア・ベルルスコーニ首相も、G8会合後の記者会見で「今後はG14が力を強め、世界のガバナンスにおいて基調的影響力を持つことになると考える」と語っています。
G14を主張するフランス、イタリアには、またそれぞれの思惑もあるのでしょうが。

もちろん、チベットやウイグルなどの民族・人権問題を抱え、経済成長重視の陰で環境問題・格差拡大が深刻化する一党独裁の中国、膨大な貧困層と身分制度が残存し、パキスタンとの対立が続く、核拡散防止条約(NPT)枠外の核保有国インド・・・など、新興国と呼ばれる国々には問題も多いのも事実ですが、これらの国々が世界の重要なパートを占めるようになっていることも事実です。

【ストライキと暴動】
上記記事にもあるように、G14ということになると、アフリカからは南アフリカが招かれます。
アパルトヘイトを廃止し、経済的にも順調に推移してきたアフリカの地域大国・南アフリカですが、成長と裏腹の格差拡大、世界的不況のなかでの経済的混乱などが、ここにきて表面化しています。

今も100万人以上が電気や水道もない粗末な小屋で暮らしており、失業率は23.5%に達するとも言われています。その失業者の4分の3は35歳以下で、7割は一度も働いた経験がないとも。

7月9日には、南アフリカで来年6月に開幕するサッカーW杯で使用される9都市10カ所の競技場建設現場の労働者ら約7万人が、賃上げを求めて無期限ストライキに突入しました。
ストは、公共交通機関や地方自治体の労働者にも拡大し、暴動も続発しています。
仕事のない黒人貧困層が外国人労働者を襲撃する事件も昨年から相次いでいます。

****南ア、16万人スト 失業率23%、暴動も続発 ズマ政権試練****
世界的な金融・経済危機で景気後退入りした南アフリカで、公共交通機関や地方自治体の労働者16万人以上が27日から1週間の大規模ストに突入した。失業率は23・5%に達し、黒人居住区では暴動が続発。警官隊はゴム弾や催涙ガスで鎮圧に乗りだし、約200人を逮捕した。黒人貧困層や労働組合の支持を受けて5月に就任したズマ大統領は早くも試練を迎えている。【7月28日 産経】
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“ズマ氏は、ムベキ元大統領を「緊縮財政と規制緩和で格差拡大を招いた」と批判した労組などの支持を集めて大統領に就任した。だが、就任後はムベキ時代の経済政策を継承、貧困解消などで目に見える成果を上げていなかった。今回の抗議行動は、ズマ氏への不満が噴出したものだが、南ア経済が17年ぶりの不況に陥る中、「ばらまき政策」の財源を確保するのは困難で、局面打開の見通しは立っていない。”【7月30日 読売】

「ばらまき政策」の財源に苦労しそうなのは、南アフリカのズマ政権だけではなく、あさっての総選挙後成立する日本の新政権も同様な気もしますが、その話は置いておきましょう。

混乱は更に拡大して、今度は兵士が賃上げを求めて無許可でデモを行う事態に。

****南アフリカ:大統領府前で兵士数千人がデモ 賃上げ要求で*****
南アフリカの首都プレトリアで26日、大統領府が入居するユニオン・ビルの前で、数千人の兵士が賃上げを求めて無許可でデモを強行、警察部隊との衝突で兵士2人が逮捕され、双方に負傷者が出た。デモ参加者の一部が暴徒化し、火炎瓶を投げるなどしたため、警察側がゴム弾や催眠弾を発射。車両が燃やされるなど現場は一時騒然となった。【8月27日 毎日】
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【1日約50件の殺人事件】
もともと、ヨハネスブルグが“世界一危険な街”と言われるぐらいに治安には問題があった南アフリカですが、最近の経済的混乱で更に治安悪化が進んでいるようです。

****南ア:安全とされるショッピングモールで強盗殺人が多発*****
サッカーW杯が来年開かれる南アフリカで、観光客が唯一安全に買い物ができるとされてきたショッピングモールを舞台にした強盗殺人事件が多発、今月だけでも少なくとも4人が射殺された。武装警備員を配置したモールが強盗団の「新たな標的」として浮上したことで、W杯観光が「命がけ」にもなりかねないと、政府は対策に頭を痛めている。(中略)
ショッピングモールは、経済成長の結果生まれた新富裕層を目当てに開設されたもので、高い柵で囲まれ、武装した警備員も随所に配備されている。1日約50件の殺人事件があるとされる南アでは、気軽に買い物し、飲食店を利用できる数少ない場所とされてきた。

事件が発生したモールを訪れた40代の女性は「最後の安全な場所も失った気持ちだ」と話し、警備員のシーボさん(32)は「給料が良くても殺されたら終わり。転職も考えたい」と恐怖を語る。
首都プレトリアや商都ヨハネスブルクを抱える同州はW杯の競技会場や宿泊施設も多い。モールでの犯罪の多発は、ファンの行き先が一層制限され、W杯の経済効果への阻害要因ともなりかねない。
事態を重く見た南ア政府は犯罪情報の共有化やモールも含めた犯罪多発地帯での警備強化を打ち出したが、効果は薄いのが実情だ。【8月27日 毎日】
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“南アフリカ犯罪統計(2007年7月3日南アフリカ警察当局発表)によると、2006年3月~2007年3月までで約1万9200件の殺人事件が発生した(前年統計に比べ2.4%増加)。1日に約53人が犯罪により殺害された計算で、1日の強盗発生数は約350件に上った。その中で7割以上で拳銃などの銃器が使用されたと発表されている。強姦発生率についても123.85件/10万人(国連薬物犯罪オフィス(UNODC))となっており、世界最悪の発生率(日本の約123倍)である。”【ウィキペディア】

サッカーW杯について言えば、電力不足も以前から懸念されていましたが、改善したのでしょうか?
経済成長で“黒いダイヤ”と呼ばれる黒人中間層が拡大し、アパルトヘイトがもたらした人種間の教育格差、それによる人種間の経済格差は改善しつつあるとも言われていますが、南アフリカが乗り越えるべき障害はまだまだ多いようです。

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