Con Gas, Sin Hielo

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「カラフル」

2010年08月29日 05時09分46秒 | 映画(2010)
明るくて暗くて、苦くて甘い、中学生の原風景。


実はこの夏「インセプション」に次いで楽しみにしていたのがこの作品だ。

予告では何度も目にしており、原恵一監督が中学生の複雑な心情をどのように描くのか興味があった。

原作は未読だったが、オチというか物語のからくりはどう見ても鉄板で驚きはない。でもその分かり切っている解答の場面で、それでも温かな感動をもたらす。

それは原監督の持ち味である丁寧な描画から来ている。

描写ではなく描画だ。

時々わざとかなと思うほど人物はそれほど愛らしく描かれていないのに比べて、背景は入念に描き込まれている。

しかも彼が描く景色は、スケールが大きい自然というよりは、自然も含まれているけどどちらかと言えば生活臭が漂ってくるような日常に基点が置かれている。

前作の「河童のクゥと夏休み」では首都圏近郊の住宅地に住む小学生が主役で、彼らの夏休み、田舎の夏休み、そして東京タワーから映る東京が舞台となった。

「クレヨンしんちゃん」の「オトナ帝国の逆襲」では、20世紀博としてどこにでもあった昭和の町並みが描かれていた。

今回の舞台は等々力から二子玉川にかけての大井町線沿い。東急線、特に大井町線や池上線、昔の目蒲線のような比較的短い路線は、線路と町が切り離されず近い感じがする。

小林真はそんな町で中学生活を送り、ある日力が尽きた。

魂が呼び戻されてから次第に明らかになる彼の過酷な環境が少しずつ胸に刺さる。そう、中学生って実はとても厳しい。

自分が不確実な中で、感受性が強ければ強いほどあらゆることで傷ついてしまう。クラスメートの佐野曰く、真はそんな周りの攻撃を平然と受け流しているように見えていた。

でもそれは決して達観していたわけではなく、世界のすべてを閉ざし、自分を暗い闇の中に置いていることに過ぎなかった。

リセットして、周りの状況を一から捉え直してみたとき、真は自分の周りが光に映る様々な色で構成されていることに気付く。

もちろんその中にはどす黒いような暗い色も含まれる。ただ分かってくればそれも世界を成り立たせる一つの要素。感受性の強い彼だからこそそれが理解できる。

いつも明るく奔放なひろかの突然の告白に応えた真の言葉に、彼の本当の成長を感じる。

彼を蘇らせたのは、直接的には大らかな級友・早乙女くんの存在も大きいのだが、それはご都合でもなんでもなくて、おそらく誰にでも早乙女くんや天使(?)プラプラのような存在があるのになかなか気付けないでいる自分にある。

考えることは辛いけど、それは確実に自分を大きくしてくれるチャンスでもある。

すべての中学生に、そして悩める中学生だった人に観てもらいたい作品だ。原作も読もうかな。

(85点)
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