えらい「ともだち」になりたくて。
どうせおいらはゲームの悪役、わかっちゃいるんだ親友よ。
本欄の2013年No.1作品、約6年ぶりの続篇がついに公開。なかなか字幕版の座席がとれなかったので、最初に吹替版で観てその数日後に字幕版と立て続けに2回鑑賞した。
はじめに観たときは、ヴァネロペに自分勝手な印象を抱いてしまいあまり好意的に受け取れなかった。ラルフも心情が理解できないわけではないが、大人げない行動をとって原題通りにインターネットを破壊してしまう点に首を傾げざるを得なかった。
しかし2度めの鑑賞でイメージが変わった。決して吹き替えと原語の違いのせいだけではないとは思うが、彼ら自身の個性や二人の友情という部分を思い出した時点で一連の行動も選択も理解できるようになったのだ。
前作の記事でも書いているが、古いゲームのキャラクターであるラルフは我々中高年の世代と重なるところがある。
前回不具合キャラクターのヴァネロペを救い「私のヒーロー」という称号をもらったラルフ。めでたしめでたしの中で6年間のんびりと過ごし、これからもずっとこのままでという思いは余生の安寧を願う高齢者のようであった。
親友のヴァネロペも同じ思いであればそれでいい。しかし彼女はポップな世界の住人であり、変化が欲しいと口にするようになっていた。
今回初登場のオンラインゲームキャラクターのシャンクは「友情は形を変えていくもの」と言った。前作でヒーローとは何かを体得したラルフは今回友情のあり方を学ぶ。
そばにいなくてもお互いのことを思い合うこと。決して自分の思いだけを相手に押し付けないこと。好きだから相手にこうしてほしいというのではなく、相手が満ち足りることこそが自分の幸せと思うこと。
大暴れするラルフのウィルスを見て「俺ってこんなに醜かったんだ。これじゃ嫌われるのは当然だよな」とつぶやくラルフに2度めの鑑賞でじんと来た。
離れていても友情は永遠。ラルフがインターネットの世界へたびたび遊びに行って楽しんでいる様子が挿し込まれたエンドロールは、楽しいと同時に観る側を穏やかな気持ちにさせてくれる。
原題の"Ralph Breaks the Internet"はインターネットをぶち壊すだけではなく、ラルフがネットとの垣根を破って行き来するようになるという意味も込められているのかもしれない。
本作は「ディズニー、ここまでやる?」という宣伝文句が付いているように遊びの面でも注目されている。スターウォーズやマーベルまで幅を広げた優位性を生かして、ありとあらゆるキャラクターがインターネットの住人として登場する。
中でも歴代プリンセスたちがゲームキャラクターのプリンセスであるヴァネロペと遭遇する場面は目玉となっているが、予告等で何度も見てしまったせいか特に感慨は抱かなかった(そもそもプリンセスが多すぎて一部を除いて誰が誰だか分からない)。
それよりも既存のキャラクターではないが、インターネットの世界の描き方が洗練されていて印象的だった。
巨大な街に建ち並ぶ建物が一つ一つのサイトになっていて、ネットユーザーが無防備な表情のアバターとして動き回っている。その間を縫うようにポップアップがユーザーに近づき自サイトへの誘導を狙っている。明るくて華やかだけど裏の怖さも垣間見える世界観は、子供と楽しく鑑賞しながら教育することもできる使い手がある教材という印象を持った。
今回珍しく吹替版を観たが、本職の声優陣を起用しているので違和感はない。しかし字幕版を観るとやっぱりだいぶ違う。英語版のヴァネロペはとてもクセのある、いわばダミ声が充てられているのだが、実はこれが非常にいい。
プリンセスらしからぬヴァネロペだからこそ危険なレースに憧れるのであり、他のプリンセスたちとの凸凹なやりとりも光ってくるのである。一度は自分勝手と思った彼女を、やっぱりかわいいと思ったのはS.シルバーマンの声によるところが大きいと思う。
やはり字幕版こそおすすめである。
(85点)
どうせおいらはゲームの悪役、わかっちゃいるんだ親友よ。
本欄の2013年No.1作品、約6年ぶりの続篇がついに公開。なかなか字幕版の座席がとれなかったので、最初に吹替版で観てその数日後に字幕版と立て続けに2回鑑賞した。
はじめに観たときは、ヴァネロペに自分勝手な印象を抱いてしまいあまり好意的に受け取れなかった。ラルフも心情が理解できないわけではないが、大人げない行動をとって原題通りにインターネットを破壊してしまう点に首を傾げざるを得なかった。
しかし2度めの鑑賞でイメージが変わった。決して吹き替えと原語の違いのせいだけではないとは思うが、彼ら自身の個性や二人の友情という部分を思い出した時点で一連の行動も選択も理解できるようになったのだ。
前作の記事でも書いているが、古いゲームのキャラクターであるラルフは我々中高年の世代と重なるところがある。
前回不具合キャラクターのヴァネロペを救い「私のヒーロー」という称号をもらったラルフ。めでたしめでたしの中で6年間のんびりと過ごし、これからもずっとこのままでという思いは余生の安寧を願う高齢者のようであった。
親友のヴァネロペも同じ思いであればそれでいい。しかし彼女はポップな世界の住人であり、変化が欲しいと口にするようになっていた。
今回初登場のオンラインゲームキャラクターのシャンクは「友情は形を変えていくもの」と言った。前作でヒーローとは何かを体得したラルフは今回友情のあり方を学ぶ。
そばにいなくてもお互いのことを思い合うこと。決して自分の思いだけを相手に押し付けないこと。好きだから相手にこうしてほしいというのではなく、相手が満ち足りることこそが自分の幸せと思うこと。
大暴れするラルフのウィルスを見て「俺ってこんなに醜かったんだ。これじゃ嫌われるのは当然だよな」とつぶやくラルフに2度めの鑑賞でじんと来た。
離れていても友情は永遠。ラルフがインターネットの世界へたびたび遊びに行って楽しんでいる様子が挿し込まれたエンドロールは、楽しいと同時に観る側を穏やかな気持ちにさせてくれる。
原題の"Ralph Breaks the Internet"はインターネットをぶち壊すだけではなく、ラルフがネットとの垣根を破って行き来するようになるという意味も込められているのかもしれない。
本作は「ディズニー、ここまでやる?」という宣伝文句が付いているように遊びの面でも注目されている。スターウォーズやマーベルまで幅を広げた優位性を生かして、ありとあらゆるキャラクターがインターネットの住人として登場する。
中でも歴代プリンセスたちがゲームキャラクターのプリンセスであるヴァネロペと遭遇する場面は目玉となっているが、予告等で何度も見てしまったせいか特に感慨は抱かなかった(そもそもプリンセスが多すぎて一部を除いて誰が誰だか分からない)。
それよりも既存のキャラクターではないが、インターネットの世界の描き方が洗練されていて印象的だった。
巨大な街に建ち並ぶ建物が一つ一つのサイトになっていて、ネットユーザーが無防備な表情のアバターとして動き回っている。その間を縫うようにポップアップがユーザーに近づき自サイトへの誘導を狙っている。明るくて華やかだけど裏の怖さも垣間見える世界観は、子供と楽しく鑑賞しながら教育することもできる使い手がある教材という印象を持った。
今回珍しく吹替版を観たが、本職の声優陣を起用しているので違和感はない。しかし字幕版を観るとやっぱりだいぶ違う。英語版のヴァネロペはとてもクセのある、いわばダミ声が充てられているのだが、実はこれが非常にいい。
プリンセスらしからぬヴァネロペだからこそ危険なレースに憧れるのであり、他のプリンセスたちとの凸凹なやりとりも光ってくるのである。一度は自分勝手と思った彼女を、やっぱりかわいいと思ったのはS.シルバーマンの声によるところが大きいと思う。
やはり字幕版こそおすすめである。
(85点)
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