AcousticTao

趣味であるオーディオ・ロードバイク・車・ゴルフなどに関して経験したことや感じたことを思いつくままに書いたものです。

4540:多摩湖坂

2018年08月18日 | ノンジャンル
 「富士宮口5合目」は寒かった。白く霧に煙り、気温は低い。着いたばかりは、まだ体が発熱していたが、その熱は時間の経過とともに奪われていった。

 6名のメンバー全員が「富士山スカイライン」を上り終えて、記念撮影を済ませた。しばしの休息の後、下り始めた。

 その頃には体は冷え切っていて、筋肉は寒さにぶるぶると震えていた。ウィンドブレーカーを着込んでいたが、それだけではとても防寒対策にはならなかった。

 震えながら下り始めた。霧に煙った下り道を進んでいくと、やがて空からは雨粒が降り始めた。その雨粒は数を徐々に増やしていき、やがて本降り、そして土砂降りとなった。

 下りでは強い風が体温を奪う。そこに激しい雨が加わると、その冷却効果は倍増する。寒さに震えながら、下っていくと、サングラスが曇り始めた。

 視界が一気に悪くなった。道の左端を縁取る白いラインと道路のセンターを表すオレンジのラインがぼんやりと見える程度で、視界全体が曇ってきた。

 雨で路面はびしょびしょであるのでタイヤはグリップを失いやすい。それに極端に悪い視界が加わることによって、恐怖心がいや増す。

 ブレーキングを強めてスピードを抑えた。どうにか落車せず下っていき、「水ヶ塚駐車場」までたどり着いた。

 標高が下がったので、気温は上がったはずであるが、雨にびっしょりと濡れたため、相変わらず筋肉はがたがたと震えていた。自販機でホットコーヒーを購入して飲んだ。体を中から暖める作戦である。

 ここで脚と体を少し復活させてから、さらに「富士山スカイライン」の残りを下っていった。私は頭の中で「下り終えると、『籠坂峠』と『山伏峠』の上り返しが待っている・・・脚がもつかな・・・」と不安に思っていた。

 やがて最初の上り返しである「籠坂峠」にさしかかった。緩やかな斜度の上り道が15km程続いている。

 雨は一旦止んだが、籠坂峠を上り始めるとまた激しく降ってきた。「雨の下り」も嫌であるが「雨の上り」も気持ちの良いものではない。

 籠坂峠をようやく越えて山中湖に向かって下った。山中湖周辺では雨は止んでいて穏やかな夕刻を迎えていた。もうすぐ日が沈む。この先の道志道は暗い中を走ることになりそうであった。

 山伏峠の上り返しはそれほどの距離ではない。思っていたよりも早いタイミングで山伏トンネルの入り口が見えた時にはほっとした。

 ここからは下り基調の道志道を走ることになる。道志道は街灯がほとんどない。次なる敵は闇である。

 道志道は下り基調であるのでハイスピードで駆け抜けていく。時折短い上り返しが混じる。下りの勢いでその上り返しをやり過ごしていった。

 道志道の途中でサイコンの充電が切れた。ちょうど私の脚の余力が切れたタイミングと同じくらいのタイミングで・・・
 
 サイコンの画面が真っ暗になる直前の走行距離は240kmぐらいであった。それから家に帰りつくまでには、さらに50km程の距離を走った。

 家が近づいてきて、最後まで一緒に走ってきた東大和市在住のメンバーと会話した。「明日、仕事行きたくないな・・・」「明日の方がつらいかも・・・」「そうですね・・・午前中休んじゃおうかな・・・」自宅の少し手前でそのメンバーとも別れた。

 最後の最後に多摩湖に向かう上りが待っていた。「そうか・・・まだこれがあったか・・・」目を2度3度瞬かせて、諦め顔でその坂に向かった。緩やかな坂であるが、その坂はゆるぎなくそこに存在していた。
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