「残り5km」と書かれた表示板の前を通りすぎた際にサイコンのタイムをチェックした。「1:01:12」と表示されていた。
昨年よりも1分程遅いタイムである。残り5kmは体の疲労感が重くのしかかるので、ペースは上がらない。1kmあたり5分はかかるであろう。
5kmを25分で走り切って1時間26分台のタイムである。昨年よりは1分程タイムを落とすことになるが、どうにかそれくらいの遅れで走り切りたかった。
腰の具合は予断を許さない感じであった。筋肉が強張った感じはずっと続いていた。背中を反らせるような感じでフォームをキープしようとするが、体が疲れてくるとそのフォームはしんどくなってきてしまう。
ゴールまで5kmを切ると、1kmごとに残り距離を示す表示板が道の左脇に設置されている。「残り4Km」「残り3km」「残り2km」「残り1km」と続くのであるが、その白い表示板を心待ちにしながら、厳しいコースを走り続けた。
「残り5km」から「残り3km」までの2kmは時折斜度の厳しいエリアが参加者に襲いかかる。終盤にきて脚がほぼ売り切れている状態で10%を超えるような斜度の坂を越えていくのは、心身ともに実に過酷なものである。
場所によっては、押して歩いた方が速いのではと思えるような速度でダンシングした。斜度が緩んでも脚の余力がないのでペースを上げることができない。
サイコンに表示されるスタートからの平均パワーは下がり続け204Wまで下がった。周囲の参加者もその多くが、疲労のため脚がしっかりと回らない状態であった。
ようやく「残り3km」の表示板を通りすぎた。眼前に広がる景色は素晴らしいものであった。青い空を背景に乗鞍岳の雄大な姿が目に飛び込んでくる。
もちろん、景色を楽しむ余裕など微塵もなかった。これ以上平均パワーが下がらないようにどうにかこうにか200W以上の出力を維持しようとクランクを回し続けた。
「残り3km」の表示板を過ぎた時にタイムを再度チェックした。「1:11:46」であった。残り3kmを15分で走り切ればぎりぎり1時間26分台で走れる。
ペースを上げようとする気持ちとは裏腹に体は頑なにその要求を拒んでいる感じであった。それでも歯を食いしばり続けて残りわずかになってきた行程を走っていった。
「残り2km」の表示看板を過ぎると、気持ちが少し前向きになってきた。体はきついままであるが「もう少し・・・もう少し・・・」と自分自身を励まし続けた。
ようやく「残り1km」となった。「10秒平均ワット」は200ワットを超えたり下回ったりといった具合で推移していった。
その数字を睨みながら、ゴールを目指した。青空に向かって飛び立つための滑走路のような坂道を走っていき、最後の左カーブを曲がった。
カーブを曲がるとゴール地点である。ダンシングでラストスパートした。緑色のタイム計測ラインを越えた瞬間にサイコンの小さなボタンを押した。
惰性で少し走ってからサイコンに視線を向けた、するとタイムが進み続けていた。「あれっ・・・」と思った。
どうやらスタート・ストップボタンではなく、その隣のラップボタンを押したようであった。あわててストップボタンを押した。タイムは「1:27:05」で止まった。
一旦データーを保存して、ラップデーターを呼び出した。ラップ1として区分されたスタートしてからゴールまでのタイムは、「1:26:54」と表示された。
昨年のタイムは1時間25分42秒であったので、1分12秒タイムを落としたことになる。しかし、現在の身体のコンディションを考慮すると、思っていた以上にタイムを落とすことにはならなかった。
腰回りの筋肉は10km程走ったあたりから強張った感じが続いていたが、痛みが出ることはなかった。痛みが出ていたら、もっとひどいタイムになっていたであろう。