AcousticTao

趣味であるオーディオ・ロードバイク・車・ゴルフなどに関して経験したことや感じたことを思いつくままに書いたものです。

1784:郵便配達夫

2011年01月31日 | ノンジャンル
 REDの入ったCHATSWORTHからは、軽やかな音が流れ出した。重々しい風合いはない。帯域は広くないが、聴感上特に不足感は感じない。

 湿度感はややからっとしている。からっ風のように乾いた質感で、拘泥するようなところがなく、達観したかのような音である。こちらの思い入れや波立つような感情をさらっと受け流し、音楽を素のまま、直に差出すかのような感じである。

 CHATSWORTHは、郵便配達夫のように黙々と自分の仕事をこなす。彼の手によってもたらされた郵便物が、それを目にする人に与える影響には無関心に、郵便物を配達し続ける。

 ヘンデルのメサイアから4曲ほど聴かせていただき、さらにハイドンの交響曲第90番の第1楽章と第2楽章を聴かせていただいた。どちらも拘泥感のないすっきりとした味わいである。

 「GOLDも聴いてみますか?」と諏訪さんは訊かれたので「是非、聴いてみたいです・・・」と答えた。

 すると、諏訪さんはCHATSWORTHを入れ替えてくれた。軽いスピーカーなのでほんの数分の作業である。CORNER CHATSWORTHの3本の足の位置にはマークが付けられていた。そのマークに合わせて、位置を決める。

 さて、見た目の変更点はほとんどない。デザインは全く同一である。色合いはGOLDの入っているキャビネットのほうが若干色が薄めである。

 「テレマンのオーボエ協奏曲でも聴いてみますか?」「良いですね・・・ハインツ・ホリガーですか・・・PHILIPSの音は好みなんです」

 レコードのジャケットの表裏を見ながら、「どうなんだろう・・・GOLDになると、色彩感はアップするのであろうか・・・」と思った。

 同一のキャビネットであるので、違いはユニットのみ。もちろん駆動するシステムはTHORENS TD-124、Marantz7、Marantz8Bと同一である。

 出てきたGOLDの音は、明らかに音の温度感が上がっている。それと同時に湿度も上がった。からっ風が春風になったかのようである。

 郵便配達夫が、宅配便の配達人になった。郵便配達夫は普通ベルを鳴らさない。ハンコも要求しない。郵便物をポストに入れるだけである。しかし、宅配便の配達人はベルを鳴らす。「ここにハンコをお願いします・・・」と要求してくる。

 どちらがいいかは人それぞれであろう。私自身の個人的な好みで言うとGOLDの温度感により惹かれるものがあるのは、事実である。

 その後、ベートーベンのチェロソナタ第3番を聴いた。しっとりとした音の手触りである。丁寧な手作業によるレース細工を思わせる。

 リビングルームには1時間半ほど居たのであろうか、「2階の洋間には、RECTANGULARのCHATSWORTHがあります。taoさんがお持ちのものと同じキャビネットです。そちらも聴いてみましょう・・・」ということになり、2階に移動した。
 
 階段は180度に折り返すタイプのもので、折り返すところには小さめの窓が取り付けてある。ルーバー窓である。オペレータハンドルが右斜め30度くらいのところで停止していた。その窓からは乾いた明るい光が漏れ入ってきていた。
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1783:からっ風

2011年01月30日 | ノンジャンル
 埼玉県深谷市は埼玉県の北部の、利根川と荒川に挟まれた地域に位置している。市の人口は約15万人。気候は内陸的であり、冬は寒いうえ、乾燥した北風が吹き、体感気温を一気に引き下げる。

 今日も晴天であった。冬のこの時期、朝には霜がびっしりと地面を覆う。その霜が、雲ひとつない空に浮かぶ太陽の熱により、徐々に緩んでいく。風景は郊外の地方都市特有の
のどかさに溢れていた。

 花園ICを降りて、車で15分ほど走ったところに諏訪さんのお宅はあった。築年数は40年ほどであろうか。高度成長期を支えた工業化住宅が広めに土地にゆったりと立っている。

 当初は真っ白な色合いであったであろうその建物も40年の時間の経過によりくすんだ色合いに変わっている。積み木を短時間で積み上げたようなその住宅で、諏訪さんは二人の子供を育て上げ、2年前に定年で会社を退職して、奥さんと二人っきりで暮らしている。

 諏訪さんのリスニングルームは1階のリビングルームと2階の洋間の二つ。リビングルームにはCORNER CHATSWORTHが2台置かれている。2階の洋間にはRECTANGLAR CHATSWORTHが2台置かれている。

 1階のシステムはTHORENS TD-124、Marantz 7、Marantz8Bというラインナップ。部屋のコーナーに設置されたCHATSWORTHはほっそりとしている。優雅な佇まいである。リビングルームに置かれた皮製のソファに座って聴く。

 「今はREDの入ったCHATSWORTHをセットしています。あちらに置いてあるほうにはGOLDが入っています。」どちらのキャビネットの色合いも明るめの茶色である。三本足が華奢なイメージを醸し出している。

 1階のリビングルームの広さは10畳ほどであろうか、今の住宅と違い、昔は部屋の機能ごとにそれぞれ部屋を独立させる構造となっている場合が多い。隣はダイニングルームになっているのであるがそのためには扉を開けて移動する。

 リビングルームには大きな書棚が三つ壁に並んでいる。そのうちの一つにレコードが収納されている。部屋は隅々まで几帳面に整理されていて、雑然とした要素がまったくない。

 「何を聴かれますか?」「普段は、ビバルディ、ヘンデル、ハイドンなどをよく聴いています。」「バロックが好きなんですね・・・」「ブルックナーやマーラーも聴くのですが、そういったものはCDで聴くことが多いのです。」「では、ヘンデルのメサイアから何曲か聴いてみますか・・・」

 いつくしむようにレコードをジャケットから出して、THORENS TD-124に載せる。SMEの古めのトーンアームにORTOFONのカートリッジが装着されている。ざらざらとした針音の後、ゆったりとした弦楽合奏の音が紡ぎだされた。

 「REDの入ったCHATSWORTHって、いったいどんな音がするのであろう・・・我が家のCORNER LANCASTERと比べてどうなんだろう・・・」そんなことを思いながらその音に耳を傾けた。
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1782:二つのアルテック

2011年01月29日 | ノンジャンル


 私はいわゆるビンテージに属するスピーカーとアンプを使っている。しかし、ビンテージ・オーディオ全般に詳しいわけではない。ごく一部しか知らないのである。

 ビンテージ・オーディオにおいて重要な位置を占めるアルテックについては、ほとんど何も知らない。もちろん、オーディオ雑誌でその雄姿は見かけたことはあるが、型番やその製品いついては、極く一部の情報しか有していない。

 今日は、そのアルテックの二つのスピーカーを聴く経験ができた。写真に写っている外側の黒いスピーカーは3ウェイでいかにもアルテックという姿形をしている。これに真ん中の巨大なサブウーファーを加えて4ウェイ構成となっている。ユニットごとにマルチアンプ駆動される大掛かりなシステムである。こちら「黒」と呼ぶことにしよう。

 もう1セットは、内側の茶色のスピーカー。2ウェイ同軸でシンプルな構成。キャビネットの上に乗っているスーパートィーターは接続されていない。こちらは「茶」としよう。

 場所はFさんが主催するオーディオ工房。「QUADを聴く会」でご一緒するメンバーが集まって新年会を行ったのである。

 二つのアルテックは結構異なった性格の持ち主であった。外側の「黒」はゆったりとした鳴り様。低域は量感豊かでピラミッドバランス。どっしりとした安定感があり、音楽がたおやかに流れる。

 私自身のアルテックのイメージにピッタリの音である。なんだか「これぞ、アルテック」といった定番感があり、安心感がある。

 「まずは、構えやすい。そして安心感がある・・・」ゴルフのドライバーを構えた時には、その形状によって構えやすいものと少々違和感があるものがあるが、この「黒」はあきらかに前者である。

 そして、「茶」。こちらは、同軸2ウェイらしい、正確な音の出方である。ゆったりとした音の出方ではなく、きっちりとした几帳面さを感じさせる。アルテックというメーカーに対する先入観とは少しばかり食い違う音の出方である。シャープでスピーディーとすら感じられる。

 同じメーカーであっても、やはり違うものである。わが家のTANNOYも同様である。2階のCHATSWORTHと1階のCORNER LANCASTERは性格は違う。

 「黒」と「茶」・・・Fさんの二つのアルテック、どちらも高いレベルの音なのであるが、個人的な好みからすると「黒」である。ゆったりとした音の出方は、音楽を楽しめる。「茶」はモニター系。短時間に集中して聴くならこちらか・・・
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1781:クリスマスローズ

2011年01月28日 | ノンジャンル


 クリスマスローズはうつむき加減に咲く。種類もたくさんあるようで、花の形や色合いも様々である。この花が大好きで、庭にいくつか植わっている。毎年その種類ごとの色合いの花を咲かせる。

 寒い時期に咲く花は貴重である。特に今年のような本格的な寒さの冬に、庭の一角で色づいているクリスマスローズは心を幾分暖かくしてくれる。そして、この花はそのうつむき加減の容姿のせいか、華麗、豪華といった雰囲気ではなく、控えめで密やかですらある。

 「クリスマスローズのような音が欲しい・・・」その花を眺めながら心に思う。真正面を向いて、「綺麗でしょう・・・」と訴えかけるような音ではないものが欲しい。うつむき加減に庭の片隅で咲いている・・・よく見ると可憐で素敵な花である・・・そんな音が・・・

 1階のCORNER LANCASTERは、それほど大きなスピーカーではない。威圧感というものはまったくない。部屋のコーナーにすっぽりと納めてしまえば、その存在感は緩やかに部屋に溶け込んでいく。そんな容姿がとても好きである。

 しかし、現状は部屋のコーナーにすっぽりと納まっているわけではない。ずりずりと側壁から離れ、本来の定位置からは異なったポジションをとっている。

 音のほうは、そのおかげで当初よりは良くなった。しかし、花がうつむき加減ではない。結構こちらを見据えてくる。その可憐な容姿とは裏腹に、内臓されているモニター・レッドの性格が前面に出てくる。

 そこで、内振り角度を強め、部屋の吸音率もさらに下げる方向での対策を進めることにしている。この1階のリスニングルームで目指しているのは、小ホールの7列目ぐらいの音。2階は大ホールの15列目であるのでかなり違う。

 小ホールであるので、かけるレコードは室内楽曲や器楽曲が中心。けっしてマーラーやブルックナーはかけない。それは2階の担当である。

 小ホールの7列目なので、それほど空間的な広がり感は要らないのである。ではあるが、現状ではまだ音が前に出すぎであり、間接音をもう少し増やしたい。そこで内振り角度を調整し、部屋の吸音部分をシナ合板で覆って、吸音率を下げることにする予定である。

 この作戦で、クリスマスローズが1階のリスニングルームでも咲いてくれると良いのであるが・・・そして、その花はしっかりとうつむいていてほしい。 
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1780:ジェットストリーム

2011年01月27日 | ノンジャンル


 箸にも棒にもかからなかったCORNER LANCASTERであったが、設置位置をコーナーキャビネットという概念を逸脱したところで調整し始めたところ、可能性が垣間見えてきた。

 まあ、とりあえず箸か棒にはどうにかこうにかひっかかるようになってきた。しかし、好みの音の方向性からすると、もう少し響き成分を多めに盛りたい。直接音と間接音の比率を逆転させたい。

 そこで取り出したのが、SOUND HANTER製のカエデボードである。これはカエデの集成材のボードである。とても軽く、値段も1枚13,500円と、この手のボードとしては比較的良心的な価格である。

 これは響き成分をのっけてくれる。解像度を甘めにしてくれるのである。直接音を引っ込めて、ブレンド音にしてくれる。わが家では登場回数が多い。2階のCHATSWORTHの足元を飾っているのも、このボードであり、特注のぴったりサイズでLINN CD12を格調高く持ち上げているのもこれである。

 CORER LANCASTERをこのボードに乗っけて、さらにスピーカーとボードの間には、屋久杉製の木片をスペーサーとして挟む。この木片は本来の用途は箸置きである。その証拠に真ん中辺に丸い窪みがあり、いざとなれば、その窪みに箸を休ませることができる構造となっている。1個120円と価格も安い。阿佐ヶ谷の木工所で見つけた。

 さて、その効果の程であるが、やはり良い具合である。ふわ~と音が広がる感がある。響きの滞空時間が延びる。城達也の「ジェット・ストリーム」を思わせるような滞空時間というほどには、さすがに伸びないが、音にストレスがなくなる感じである。

 しばらくは、これで落ち着くまで待とう。今後はチューバホーンさんから色々教わった「トントン一発」マニュアルに基づいて、微妙なセッティング作戦を実践することにしよう。さらに日曜日にはCHATSWORTH同盟会の会長宅訪問も控えている。まだまだ、紆余曲折はあるかもしれない。
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