Hampton Hawesの「The Trio Vol. 1」のレコードジャケットがオーディオ装置の脇に置かれたスタンドに立てかけられていた。レーベルはComtemporary Recordsで、録音は1955年。この「Trio」のシリーズはVol.3まである。
1950年代にこれらのレコ-ドで成功を収めた彼であったが、その後の人生は波乱万丈であった。この時代の多くのジャズメンがそうであったように、彼もヘロイン中毒に陥っていた。1958年には、ヘロイン取引のために逮捕され、禁固10年の刑に処された。その後ケネディ大統領によって1963年に与えられた特赦によって、自由を得た。放免されたホーズは、演奏と録音を再開した。
そんなその後の人生の暗転を微塵も感じさせない軽快な音楽が「Rummy」の店内に流れていた。
この店のオーディオ機器は少し変わっているが、なかでもスピーカーであるHales Desingn GroupのConcept Threeは、ほとんど見かけないものである。
興味を抱いたので、コーヒーを飲みながら、スマホで「Hales Desingn Group Concept Three」を検索してみた。
発売されたのは1998年のようである。特徴的なのはポリマー系セメントをバッフルの素材として採用していることである。そのため重量が1台82kgもある。ユニットとして、低域には20cmコーン型ウーファー、中域には5cmアルミドーム型スコーカー、そして高域には2.5cmハードドーム型ツィーターを搭載している。
これらのユニットは、フォーカル社やビファ社に特別注文したもので、またその他のパーツであるコイル、コンデンサー、ターミナルポストなどはカルダス社ものを採用するなど、 オーディオ界で名の通った信頼性の高いユニットやパーツが贅沢に使われている。
その姿はAVALONやTHIELを思わせるデザインである。日本にも20年ほど前までは正式に輸入されていたようである。
かかっていたレコードの片面の演奏が終了して、「ボツ・・・ボツ・・・」と針音がし始めた。店主と思しき男性が手早く、レコードを取り換えた。
新たにターンテーブルにセットされたレコードに針先が落とされた。
そのレコードは、CURTIS FULLERの「BLUES-ETTE」であった。1959年の録音である。A面1曲目の「FIVE SPOT AFTER DARK」の軽快なメロディが流れてきた。
そろそろと店を出ようかと思っていたが、その曲が始まって、「もう少し、ここにいよう・・・」と思い直して、足を組みなおした。